小川哲のレビュー一覧
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毎日の生活の光景を、異次元に誘い込むSFぽさがとても面白かった。何気ないシーンで、見慣れた言葉なのに、時間軸がずれていくような体験ができる、小川さんらしい小説でした。とても、面白かった。
p14
クリプキは、現実とは無数の可能性の世界のうちのひとつにすぎないと考えた。
p25
読者は自分の意思で本と向き合い、自分の力で言葉を手に入れなければならない。そんな拷問を、場合によっては数時間、十数時間も要求する。
素敵な読書の定義。
p44
クリプキによれば、僕たちの名前には、記述では回収できない剰余がある。その剰余とは、さまざまな可能性を繋ぎ止める楔のことだ。
p66
嫌な思い出というものは、 -
Posted by ブクログ
小川哲のラジオ番組でのゲストとの対談をまとめた本。
様々なジャンルのゲストが登場するが、その度にゲストが読んできた本について何かしら返事ができる小川哲の読書量と豊富な知識に驚かされた。
さすが、「地図と拳」巻末の参考文献を全て頭に入れて小説を書き続けた人だ。
個人的には「しろがねの葉」などを書かれている千早茜との対談が興味深く、当時の直木賞を生中継で見てたこともありとても楽しく読めた。
あとは「カイジ」などの作者、福本伸行もよかった。漫画は知っているが作者の人となりは知らず、興味が沸く話ばかりだった。
ゲストは小説家が多かったが、どなたも頭が良くあらゆることにアンテナを張ってる方ばかりで、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ満洲という激動の土地を舞台に、理想と暴力、計画と衝動がせめぎ合う壮大な物語。その完結編である下巻は、上巻で張り巡らされた思索と葛藤を、より深く、より鋭く掘り下げていく。
読み進めるうちに感じるのは、この作品が単なる歴史小説ではないということだ。そこにあるのは、「国家とは何か」「理想はどこまで暴力を正当化するのか」「人は歴史の歯車なのか、それとも抗う存在なのか」という根源的な問いである。登場人物たちは皆、巨大な時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念を握りしめて立ち続ける。その姿は、英雄的というよりもむしろ痛切で、人間的で、だからこそ胸を打つ。
タイトルにある「地図」と「拳」。地図は未来を -
Posted by ブクログ
すごく哲学的なお話で一見難しそうやけど、シンプルにわかりやすく描かれていて賢い人の書いた文章って感じで面白かった!
短編の主人公はそれぞれ作者を少しずつモデルにしているのかな?
日頃から
「〇〇とは?」「〇〇の定義とは?」
と、すぐに脳内会議しちゃう私。すごくこの作品ハマりました。あと、とても勉強になった!
残しておきたい言葉がたくさんあったのでメモ↓
「読書とは本質的に、とても孤独な作業だ。最初から最後までたった、一人で経験する。読者は自分の意志で本に向き合い、自分の力で言葉を手に入れなければならない。」
「本とはつまり、記述の束だ。豊かな世界を言葉に閉じ込める作業だ。」
人生の -
Posted by ブクログ
ネタバレ難しかった~
「スメラミシング」
ずっと「すみません」と謝っているのが印象的だった。
高校生の時に、クラスメイトの長田と小海線に乗りに行こうと計画を立てたが、
結局行けず、長田とはその後、疎遠になるのだけれど、あの時、一緒に行けていたら、
また違った関係になっていたのではと、そんなことを何度か考えたという話。
本筋とは関係ないけれど、こういう感じ、感覚が僕はとても好みでついつい繰り返して読んでしまう。
「何度か」という言葉に、「ああ、何度か考えたんやな」などと思ってしまうのだ。
自分の癖なのかもしれないです。
「神についての方程式」
数学的なことはさっぱりわからんが、物語の構造がおもしろか -
Posted by ブクログ
ネタバレ普通サイズの上下巻の本なのに、大河小説を読んだくらいには体力を失った。
長い年月「地図」を仕事としていたので、書名に「地図」という文字が入っていると、つい手に取ってしまうのだが、重苦しい本である確率が結構高い。
この本も、日露戦争を前にした時期から第二次世界大戦後までの長い年月を、ほぼ満州を舞台に書かれている。
最初から最後まで通して細川という男が出てくるところから、いかに短い期間に立て続けに日本が戦争という大きな波に翻弄されていたのかが、恐ろしいほどにわかる。
満州の東側の海に浮かぶ青龍島(チンロンタオ)が描き込まれた地図。
ないはずの島が、どうしてその地図に描き込まれたのか。
それを探 -
Posted by ブクログ
ネタバレ地図と拳(上巻)は、一つの都市を舞台に、人間の理想と暴力、知性と欲望が交錯するさまを壮大なスケールで描き出した、まさに圧巻の歴史群像劇である。
物語は、まだ何ものでもない「土地」に、人が線を引き、名を与え、意味を刻みつけていく過程を丁寧に追っていく。地図とは本来、世界を理解するための道具のはずだ。しかし本作では、その地図がやがて支配や野望の象徴へと変質していく。理性の結晶であるはずの“地図”と、衝動や暴力の象徴である“拳”。その対比が、時代のうねりの中で否応なく絡み合っていく構図が胸を深く打つ。
登場人物たちは誰もが単純な善悪では割り切れない。彼らはそれぞれの正義と信念を抱きながらも、時代