検索結果

  • 脱出
    3.8
    1巻572円 (税込)
    昭和20年夏、敗戦へと雪崩れおちる日本の、辺境ともいうべき地に生きる人々の生き様を通し、〈昭和〉の転換点を見つめた作品集。突然のソ連参戦で宗谷海峡を封鎖された南樺太の一漁村の村人の、危険な脱出行を描く表題作。撃沈された沖縄からの学童疎開船・対馬丸に乗船していた一中学生の転変をたどる「他人の城」。東大寺の仏像疎開作業に従事する僧侶と囚人たちをめぐる「焔髪」など5編。

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  • 陸奥爆沈
    4.2
    連合軍の反攻つのる昭和18年6月、戦艦「陸奥」は突然の大音響と共に瀬戸内海の海底に沈んだ。死者1121名という大惨事であった。謀略説、自然発火説等が入り乱れる爆沈の謎を探るうち、著者の前には、帝国海軍の栄光のかげにくろぐろと横たわる軍艦事故の系譜が浮びあがった。堅牢な軍艦の内部にうごめく人間たちのドラマを掘り起す、衝撃の書下ろし長編ドキュメンタリイ小説。

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  • 高熱隧道
    4.2
    1巻572円 (税込)
    黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。

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  • 戦艦武蔵
    4.2
    日本帝国海軍の夢と野望を賭けた不沈の戦艦「武蔵」――厖大な人命と物資をただ浪費するために、人間が狂気的なエネルギーを注いだ戦争の本質とは何か? 非論理的“愚行”に驀進した“人間”の内部にひそむ奇怪さとはどういうものか? 本書は戦争の神話的象徴である「武蔵」の極秘の建造から壮絶な終焉までを克明に綴り、壮大な劇の全貌を明らかにした記録文学の大作である。

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  • 生麦事件(上)
    4.0
    文久2(1862)年9月14日、横浜郊外の生麦村でその事件は起こった。薩摩藩主島津久光の大名行列に騎馬のイギリス人四人が遭遇し、このうち一名を薩摩藩士が斬殺したのである。イギリス、幕府、薩摩藩三者の思惑が複雑に絡む賠償交渉は難航を窮めた──。幕末に起きた前代未聞の事件を軸に、明治維新に至る激動の六年を、追随を許さぬ圧倒的なダイナミズムで描いた歴史小説の最高峰。
  • 虹のヲルゴオル
    4.2
    女性の魅力をあらゆる角度から論じた、本当は映画評論家になりたかった橋本治の、女優論にしてかつ卓抜な映画論。――女にとって「美しい」ってことが重要だってこと、学校じゃどうして教えないんだろう……。『いつも二人』のオードリー・ヘップバーン、『七年目の浮気』のマリリン・モンロー、ブリジッド・バルドーなど13人のヒロインたち、その魅力についてあらゆる角度から分析してみたら――。やっぱり「女」だってことをおそれないっていうのは、強いもんね! 「美しい」とは何かという大命題に迫る快著。
  • P+D BOOKS 津田梅子
    値引きあり
    -
    新五千円札「津田梅子」の傑作評伝。 日本の女子教育の近代化に生涯を捧げ、新五千円札の肖像画にも選定された津田梅子。 ある日、梅子が創設した津田塾大学(女子英学塾)の倉庫から、おびただしい数の手紙が発見される。それは梅子と、留学先の里親アデリン・ランマンとの往復書簡の束であった。 完全にアメリカナイズされた梅子と日本文化とのギャップ、開明的な政治家・伊藤博文一家との交流、女子教育にかける熱意などが生々しく記された手紙の真意を、同じく津田塾大学出身の著者が自らの渡米経験も踏まえて読み解いていく。 第42回読売文学賞(評論・伝記賞)を受賞した傑作評伝。
  • P+D BOOKS 三匹の蟹
    値引きあり
    5.0
    乾いた筆致で描くある主婦の“孤独と倦怠”。 異国に暮らす由梨は、夫と自分双方の浮気相手が集うホームパーティーに参加する気になれず、ひとりで外出してしまう。 遊園地の民芸館で知り合ったアメリカ男に誘われ、海辺のドライブについて行き、そこで男は、赤いネオンが点滅している宿「三匹の蟹」へ行こうと誘うのだった。 果てしない存在の孤独感、そして愛の倦怠が引き起こす生の崩壊を乾いた筆致で描き出した「三匹の蟹」は第59回芥川賞を受賞。「三匹の蟹」以前に執筆された日本人女性留学者の青春への決別を描いた連作「構図のない絵」、「虹と浮橋」も併録。
  • 海軍乙事件
    4.2
    昭和19年3月、パラオ島からフィリピンに向かった2機の大型飛行艇が、荒天のため洋上に墜落した。機内には古賀連合艦隊司令長官と福留参謀長が分乗していた。参謀長以下9名は漂流するも一命をとりとめたが、米匪軍とよばれるフィリピンゲリラの捕虜になる。果たして参謀長の所持する海軍の最重要機密書類は敵方に渡ってしまったのか……。戦史の大きな謎に緻密な取材で挑戦する、極上の記録文学。「海軍甲事件」「八人の戦犯」「シンデモラッパヲ」もあわせて収録。
  • 冷い夏、熱い夏
    3.9
    1巻583円 (税込)
    何の自覚症状もなく発見された胸部の白い影――強い絆で結ばれた働き盛りの弟を突然襲った癌にたじろぐ「私」。それが最悪のものであり、手術後一年以上の延命例が皆無なことを知らされた。「私」は、どんなことがあっても弟に隠し通すことを決意する。激痛にもだえ人間としての矜持を失っていく弟……。ゆるぎない眼でその死を見つめ、深い鎮魂に至る感動の長編小説。毎日芸術賞受賞。

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  • 光る壁画
    3.7
    1巻583円 (税込)
    胃潰瘍や早期癌の発見に絶大な威力を発揮する胃カメラは、戦後まもない日本で、世界に先駆けて発明された。わずか14ミリの咽喉を通過させる管、その中に入れるカメラとフィルム、ランプはどうするのか……。幾多の失敗をのりこえ、手さぐりの中で研究はすすむ。そして遂にはカラー写真の撮影による検診が可能となった。技術開発に賭けた男たちのロマンと情熱を追求した長編小説。

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  • 水曜日のジゴロ 伊集院大介の探究
    3.7
    深夜の六本木。同性を愛する男装の麗人・樹(いつき)の店に出入りできる男は、名探偵・伊集院大介だけだった。この店に美しい男・千秋が舞い込んでから猟奇事件が頻発する。樹と店で愛し合った雅子が翌朝惨殺死体で発見され、店内でも次の犠牲者が。千秋を疑いながらも強く惹かれていく樹に、友人として伊集院は!?(講談社文庫)
  • 猫のほそ道 ノラ猫俳句旅
    値引きあり
    4.0
    ノラは子猫を探し「奥のほそ道」の旅に出た。 《我が家の老猫ノラはある日コツゼンと姿を消しました。ノラは、芭蕉さんの「奥のほそ道」の旅に出たのだと思うのです。消えてしまったノラの念力をいただいてこの話ができました。》東京から松島へ、そして平泉へ、ノラの旅はつづく。登場する猫たち――ボイシー、トーちゃん、ニャー水、ネコ尼、ネコ丸……いずれも個性豊かで、みな俳句を詠む。句会はもちろん、連句(五七五の句のあとに七七の脇をつける)もあるし、句合せ(持ちよった句の勝ち負けを決める)もある。全篇に猫たちが詠んだ句があふれ、人気猫イラストレーター・浅生ハルミンの絵も多数収録された(カラーも5点)傑作猫物語。文庫化に際して全篇にわたり加筆訂正した完全版、待望の刊行。全14章、見出しは全て俳句。 猫たちの句の一部をご紹介:片すみに猫がかたまる走梅雨/老猫の小さな足に西日さす/みちのくの涼しさつげよ猫の旅/水を飲む猫の小舌に秋の風/渋柿の花散る里に帰りゆく そして連句―― スーパーの煮干しの固き余寒かな  ノラ 貧しき家にけふもいついて     トーちゃん
  • 幸いは降る星のごとく
    3.0
    ときは1990年代前半、“女芸人ブーム”前夜。東京の国立大学に通う真名子は、幼なじみの貴子とお笑いコンビ「モンスーンパレス」を結成した。自らの不美人を認識しない真名子と、世間ズレしたOL志望の貴子。笑いとは縁遠い生活を送ってきた彼女たちが、なぜその世界に入り、どう生き延びていったのか。時代によって作り出された“女芸人”の先駆者となる四人の女性の悲哀と幸福を描いた長編小説。
  • 野望の夏
    5.0
    すべては夏のせいだったのだ。その夏、私たちは野望に燃えていた――。26歳の夕香は平凡なOL生活にうんざりしていた。そんな夕香の前に現れたアキは、獣のように美しい男だった。誘惑されるがままに彼の腕に転げ落ち、炎熱の中で荒々しいセックスに溺れる夕香は、もう一人の自分に目覚めてゆく――。すべてを狂わす夏の中で、絶え間ない快楽の波に押し流されて、夕香がたどり着いた場所は……。暴走を続ける男女たちの“狂った夏”を描く異色のミステリーロマン!
  • 六道ヶ辻 ウンター・デン・リンデンの薔薇
    4.2
    廃校となった良家子女の教育機関・青渓女学院。その取り壊し作業が進められる中、現場からはあいついで白骨化した死体が発見される。死亡推定年代はおよそ40年前の大正時代。今や追及するものもいない死、しかしそれは、呪われた血が招いた恐るべき結末だった。かつて青渓女学院に学び、クラスメートと激しくも甘美な恋に堕ちた大導寺笙子、その存在は大導寺の家系図からひっそりと姿を消していた。数十年の時を経て発見された彼女のノートは今、封印された大導寺の惨劇を語り始めた――。六道ヶ辻シリーズ第2弾。
  • 蚤と爆弾
    4.3
    1巻600円 (税込)
    戦争の本質を直視し、曇りなき冷徹さで描かれた傑作! 大戦末期、関東軍による細菌兵器開発の陰に匿された、戦慄すべき事実とその開発者の人間像を描き、戦争の本質に迫った異色長篇小説。
  • リア家の人々(新潮文庫)
    3.5
    1巻605円 (税込)
    帝大出の文部官僚である砺波文三は、妻との間に3人の娘をもうけた。敗戦後、文三は公職追放の憂き目に逢うが、復職の歓びもつかの間、妻はがんで逝く。やがて姉たちは次々に嫁ぎ、無口な老父と二人暮らしとなった年の離れた末娘の静は、高度成長の喧噪をよそに自分の幸せを探し始めていた。平凡な家族の歳月を、「リア王」の孤独と日本の近代史に重ね、「昭和」の姿を映す傑作長編。
  • 「不良中年」は楽しい
    4.5
    マジメ人間よ、人生を楽しめ! 家じゃ女房に叱られて、忍び寄るリストラの影に怯え、それでも背負ったローンを思い、健気に働くサラリーマン。今こそ背広を脱ぎ捨てて不良になろう。自らも38歳で職を辞した著者が実体験で語る、痛快無比な不良生活実践法。「人生は遊びだ」そうつぶやけたとき、あなたは不良中年の第一歩を踏み出している! ローンがなんだ。仕事がなんだ。自分勝手に生きろ。背広を脱ぎ捨て不良中年をめざせ!
  • 蝶のゆくえ
    3.9
    【第18回柴田錬三郎賞受賞作】10代で出産離婚し23歳で再婚した美加だが、新しい夫は息子にまったく無関心だった。彼女もそんな夫に同調し、いつしか虐待が始まる……。突然、夫の両親と同居することになった37歳主婦のいらだち。定年退職した直後の夫をオヤジ狩りでなぶり殺された58歳主婦の孤独。現代に生きる様々な年齢の普通の女たちを鋭く描いた傑作短編集。
  • 貧乏は正しい! ぼくらの資本論(小学館文庫)
    3.7
    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 金融破綻、官僚汚職、経済不況などのバブル後の混乱をピタリと予言。日本人にとっての金と土地と家について解き明かす、目からウロコの必読書。世紀末を生き抜く若者もオトウサンも、これを読んで人生を考え直そう。 ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字サイズだけを拡大・縮小することはできませんので、予めご了承ください。 試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。
  • 貧乏は正しい! ぼくらの東京物語(小学館文庫)
    3.0
    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 ハシモト式人生の教科書第3弾。 ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字サイズだけを拡大・縮小することはできませんので、予めご了承ください。 試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。
  • 貧乏は正しい! ぼくらの未来計画(小学館文庫)
    3.0
    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 「貧乏は正しい!」シリーズは、若者が世紀の変わり目を生き抜くためのバイブルだ。もしかしたらバブルがはじけた後の日本を生き抜こうともがいているオトウサンたちのバイブルであるかもしれない(実はこのシリーズの正体は21世紀を見透かす「誰にでもわかる新・資本論」なのだ)。シリーズ完結編『ぼくらの未来計画』では、日本の資本主義が終わりつつあることを検証し、ぼくらの新しい生き方を模索する。人生を変えるのは今だ!(1999年発表作品) ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字サイズだけを拡大・縮小することはできませんので、予めご了承ください。 試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。
  • 夜

    3.5
    「また、来るよ」そう言い残して父は女を作って家を出て行った。父親の「男」としての一面を垣間見て、戸惑いを覚える加那子だったが、次第にその存在は遠くなっていった。そんなある日、父危篤の報せが届き――(「暮色」)。女の視点から男を捉え、浮気、略奪、同性愛などの様々な愛の形に秘められた、男の存在の曖昧さを浮き彫りにした、著者の新境地。男と女の不条理を描く五つの物語。
  • ぼくらのSEX
    3.5
    □SEXって本当はどういうものなんだろう □男らしさ、女らしさ □オナニーがSEXの基本 □「純潔」ということ □恋愛と友情、純愛とSEX □SEXに関する「かんじんなこと」ほか全39章。SEXにまつわるさまざまなギモン、本当に知りたかったコトを、橋本治がわかりやすく解きあかす。コドモもオトナも、初心者からエキスパートまで、読んで役立つ、タメになる新しい性のテキスト。
  • 一家の主
    4.5
    夫と妻のこと、出産のこと、引越しのこと、勤務のこと、小説を書くこと……。この世のもろもろを引き受けながら、小説を書きつづける。それはなかなか楽ではない。生活と創作、両方にわたる喜び、悲しみ、ときに怒りもこみ上げる日々を、たくまざるユーモアとペーソスで綴る。作家・吉村昭のイマイチ時代を描く自伝的長編小説。
  • 大黒屋光太夫(上)
    3.9
    天明2年(1782)、伊勢白子浦を出帆した回米船・神昌丸は遠州灘で暴風雨に遭遇、舵を失い、七カ月後にアリューシャンの小島に漂着した。沖船頭・光太夫ら十七人の一行は、飢えと寒さに次々と倒れる。ロシア政府の意向で呼び寄せられたシベリアのイルクーツクでは、生存者はわずかに五人。熱い望郷の思いと、帰国への不屈の意志を貫いて、女帝エカテリナに帰国を請願するが……。
  • わたしの普段着
    4.0
    かつて電車で目にした、席を譲られた老紳士の優美な仕種。我が家に家出娘を迎えに来た父親が農村の事情を語る言葉の奥深さ。結核による死を覚悟した頃を思えば感じる、今この時に生きる幸せ――。気取らず、気負わず、殊更には憂いを唱えず。いつも心に普段着を着て、本当に知った人生の滋味だけを悠悠閑閑と綴ってゆく。静かなる気骨の人、吉村昭の穏やかな声が聞こえるエッセイ集。

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  • 極楽迄ハ何哩(電子復刻版)
    3.0
    「僕、プレゼントに花束贈ります。花束が一番いいと思っているんです。必要品じゃないし、豪華だし、なくなっちゃくから」――畜生道から出発して、いざ六道輪廻の旅へ。桃尻娘に鞍馬天狗、沢田研二にヴォネガットと、各界ごった煮の老若男女の釜ゆで大会。偉才・橋本治が、どんな類い希な美しい論理(ことば)の花束を贈るのやら……オバサン化した男、死にぞこないのメジャーは読むべからず!?

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  • 橋

    5.0
    1巻611円 (税込)
    ちやほやされない少女は、家族と男を憎むようになった。何故、どこで、どう間違ってしまったのか――世を震撼させた二人の犯罪と悲劇。 北国で2組の男女が所帯を持った。水商売の正子は年若い雄・義男に未来を託し、信用金庫勤めの直子は自分と同じ高卒の孝輔に将来を賭ける。高度経済成長の時代、勤勉な彼らの商売は軌道に乗った。が、娘たち、雅美とちひろは、昭和の終焉と低迷の平成を、空虚な心を抱えて育っていく。人間と時代を容赦なく描ききった傑作長編。
  • さらしなにっき
    3.5
    「小さかった頃にはまだ町ん中に原っぱがあって……」先輩の原口さんが、呑み屋で知り合った男と思い出話に意気投合しているのを、ぼくはぼんやりと聞いていた。中年男二人の他愛ない話と思っていたのだが、その日から原口さんはおかしくなっていった――少年時代の記憶に潜む恐怖を描いた表題作ほか、130年ぶりに地球に戻った宇宙飛行士の過酷な運命を物語る「ウラシマの帰還」など、美しくも哀しい8篇を収録したSF作品集。
  • 火星の大統領カーター
    5.0
    大統領選挙に破れ、失意の日々を送る元大統領ジミー・カーター。しかし、彼が気がかりな夢からさめてみると、なんとそこは火星!赤色人、緑色人がウロウロする宮殿の中で、エドガー・ライス・バロウズ描くところの火星の大元帥カーターと対面するのだった! 抱腹絶倒の表題作「火星の大統領カーター」、そして老宇宙パイロットと若い密航者の心理の襞を描く「最後の方程式」ほか、さまざまなパターンのパロディ作品をここに結集! SFを愛してやまぬ著者がおくるSFへのラヴ・レター。
  • セイレーン
    5.0
    2586年、高は《彼女》にはじめて出会った。それはスペースマンたちの伝説として語られた魔女セイレーン。そして1979年、《セーラ》は歌謡界に彗星のようにデビューを飾った。彼女はそれまでのありとあらゆる記録を書きかえつつ、まさに異常としかいえぬ人気を集めていったが……。しかし、同時に発生する狂気に駆られた人々の起こす事件は何をあんじするのか!? 表題作ほか、人類のあり方をSF的なシチュエーションにとらえ直して描いた「Run with the Wolf」を併録、江戸川乱歩賞受賞でミステリ界に衝撃的な登場をした著者のSF第1作品集。
  • 滅びの風
    3.7
    朝、自分のベッドで目をさましたとき、リーはその日がなぜ他の一日と違っているのか、理解できなかった。しかし、今日が特別な日であることは確かだった――魅力的な妻と愛しい息子を持つ男。その申し分のない生活にも、いつのまにか滅びの風がやってくるのだった――表題作を含む五篇を収録した連作短篇集。栗本薫が“死を見つめよ”のメッセージを核に、透徹した視点で、人類の歴史と滅亡について物語る問題作登場!
  • ゲルニカ1984年
    4.0
    「ぼくは、ゲルニカっていう本を読んだんだよ。その中に、ちょっと、おもしろい…というか、気にひっかかることがあったんだ」TVディレクターの安田修平は、ふとしたことから、日本がすでに戦争状態にあるのではないかという疑惑にとらわれた。しかし、妻も同僚も一笑に付して相手にしようとはしない。心を閉ざし、何かにおびえ、見えざる影に追われる修平。「戦争ははじまってるんだ…いまは戦時下なんだ。…皆、見ないふりをしてごまかしてる…そうなんだろう?」おそるべき感性で、見えざる恐怖を鮮やかに描き出した問題長篇!
  • あなたとワルツを踊りたい
    3.7
    真夜中の電話から洩れるあえぎ声。電車の中、内腿にまとわりつく指先。ねっとりとからみつくような視線。23歳の平凡な娘、はづきを執拗につけまわすストーカーの思いこみは、やがて狂気の領域へ踏みこみ、殺意へとエスカレートしてゆく。孤独な心、自己中心的な欲望、倒錯した性欲など、現代が抱えるさまざまな問題を盛りこみ、明日あなたにも起こるかもしれない、日常と隣り合わせの恐怖を描いた戦慄のサイコサスペンス。
  • レダ 1
    3.8
    ファー・イースト30。すべての人間が尊重され、社会秩序を乱そうとする者ですら《紊乱者》として容認される理想社会で、人々は自由を謳歌していた。そしてある日、少年イヴはレダに出会い、その銀色の髪と小枝のような肢体、そして風のように自由なレダの魂に魅了されてゆく。しかしこれは、ファー・イースト30の未来を揺るがす運命の出会いだったのだ! 栗本薫が、理想社会の矛盾と人間存在の問題を描く、未来SF大作。
  • 破獄
    4.1
    1巻616円 (税込)
    昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和22年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。

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  • 桜田門外ノ変(上)
    4.0
    安政七年(1860)三月三日、雪にけむる江戸城桜田門外に轟いた一発の銃声と激しい斬りあいが、幕末の日本に大きな転機をもたらした。安政の大獄、無勅許の開国等で独断専行する井伊大老を暗殺したこの事件を機に、水戸藩におこって幕政改革をめざした尊王攘夷思想は、倒幕運動へと変わっていく。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描ききった歴史小説の大作。
  • 星への旅
    4.1
    1巻627円 (税込)
    平穏な日々の内に次第に瀰漫する倦怠と無力感。そこから脱け出ようとしながら、ふと呟かれた死という言葉の奇妙な熱っぽさの中で、集団自殺を企てる少年たち。その無動機の遊戯性に裏づけられた死を、冷徹かつ即物的手法で、詩的美に昇華した太宰賞受賞の表題作。他に『鉄橋』『少女架刑』など、しなやかなロマンティシズムとそれを突き破る堅固な現実との出会いに結実した佳品全6編。

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  • アブサンの置土産
    3.0
    アブサン、時々そっと降りてきて俺と遊んでくれていいんだぜ……。書庫に漂うアブサンの匂い。外猫のアダチやステテコとの、微妙な交流。愛猫アブサンの死から五年、アブサンが残してくれた贅沢な余韻を、あらたなエピソードで綴る感動の書き下ろしエッセイ。大ベストセラー“アブサン”シリーズ第三弾!

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  • 桃仙人 小説 深沢七郎
    3.5
    「深沢さんはアクマのようにすてきな人でした」。斬り捨てられる恐怖と背中合わせの、甘美でひりひりした関係を通して、稀有な作家の素顔を描く。
  • 早春の少年 伊集院大介の誕生
    4.0
    領主に迫られ、天守閣から身を投げた雪姫。戦国時代の悲劇を再現したかのようなバラバラ死体が麓に流れ着く。そして一家六人惨殺事件。転校生・伊集院大介は、残虐さを身につけていく犯人に迫る。「早く大人になりたい!みんなを恐ろしい運命から救うために――」。伝説の名探偵、ほろ苦い14歳のメモアール。
  • 文人悪妻
    3.8
    夫に殉死した女優妻・松井須磨子、谷崎から譲渡された佐藤春夫の妻、精神錯乱の教師妻・杉田久女、夫に絶縁状を書いた華族出身妻・柳原白蓮、四回の人妻を経験した宇野千代。漱石、鴎外、鏡花、芥川の妻、そして与謝野晶子、林芙美子から幸田文、武田百合子まで、明治・大正・昭和の文壇を彩る53人。逞しく、したたかでパワフルな人妻たちの正体を描く、画期的な評伝集。『人妻魂』改題。
  • 兼好凶状秘帖 徒然草殺しの硯
    -
    崩壊寸前の鎌倉幕府と朝廷との対立が続く混乱の時代を、強烈な個性で生きぬく吉田兼好。そして兼好が綴りつづける『徒然草』は、彼の仕える邦良親王への帝王学の書だった――。無常迅速、定めない世を、兼好は尊治(たかはる)、のちの後醍醐帝暗殺というひそかなたくらみの実現をめざして生きた。女に欲望を放ち、智謀を尽くし、殺人技を駆使してみずからの求めるところをめざす。稀代のマキャベリスト兼好の壮年期をとらえ、絢爛と展開する人生ゲームを描いた、野望に満ちたピカレスク・ロマン!
  • グランドクロス・ベイビー
    5.0
    1巻638円 (税込)
    「どうでもいい。何もかんもどうでもいい。世紀末、どうせ世界は滅びるんだ」。アイドルの追っかけ、その資金かせぎに何気なく売春を始めた女子高生サッチは、「ショバ荒らし」をきっかけにヤクザの阿久津と出会う。阿久津の半ば強制的なSEXに自棄的に応じていくサッチ、その体はしだいに快楽におぼれ、心は流されてゆく。そして、サッチのあまりにも小さく脆い世界は、偶像(アイドル)が消失したとき、崩れ去った。爛れた世紀末を暴走する衝撃のポルノグラフィ。
  • いとしのリリー
    3.0
    女子高生・多田のぞみは、大病院の一人息子、島村譲(ジョー)との結婚を決めた。だが、ジョーには謎が多すぎた。毎夜、どこかへ消えていくジョーの後をつけたのぞみは、謎を握る男・高倉ケンにたどりつく。だが、彼の口から飛び出した真相は想像を遙かに超えていた。ジョーのなかには、全くの別人が棲んでいるというのだ……。悲しみが産み落とした人格〈リリー〉をめぐって、かつてない衝撃の物語の幕が開く。著者渾身、感動のサイコ・ラヴ・ストーリー!
  • 六道ヶ辻 大導寺一族の滅亡
    3.8
    平安時代から連綿と続く旧家・大導寺家。一人息子の静音は、毎年恒例の虫干し行事のさなかに奇妙なノートの束を発見する。大導寺を名乗り、大導寺の家系図にない謎の人物が記した「探偵記録」。それは、大正時代に一族を滅亡の淵にまで追いつめた殺人鬼がいたという恐るべき事実を語っていた――。しかし、それは過去の出来事ではなかった。次々におこるノートの記述と同じ奇怪な出来事、殺人鬼は現代に甦り、ふたたび大導寺一族を滅ぼそうとするのか? 著者渾身の傑作探偵小説。
  • 逃げ出した死体 伊集院大介と少年探偵
    3.4
    14歳の少年探偵は、伊集院を超えられるか! 14歳の秋本元気が家に帰ってきた時、玄関に見ず知らずの死体が転がっていた。ところが5分後、警察を伴って家に戻ってみると死体は消えていた。翌朝になっても母親は帰ってこない。当惑し、1人母親の帰りを待つ元気は何者かに襲われる。伊集院に憧れる少年がたどり着いた結末とは……。シリーズ第16弾。(講談社文庫)
  • 芭蕉という修羅(新潮文庫)
    4.5
    「古池や蛙飛こむ水の音」の句を詠んで華やかな江戸文化人サロン注目の俳諧師となった松尾芭蕉。遂には「風雅の正道」と喧伝され、没後は朝廷から「飛音明神」の号を賜り、偶像化され神となった。しかし、その芭蕉にはもう一つの顔があった。水道工事監督、幕府隠密、イベントプロデューサー。それぞれに危うい博打を打ち、欲望の修羅を生きた「俳聖」の生々しい人間像を描き出す決定版評伝。(解説・小澤實)
  • 芭蕉紀行
    4.0
    『野ざらし紀行』『冬の日』『笈の小文』『奥の細道』はもちろん、従来の案内書にはない『かしま紀行』『更科紀行』ゆかりのスポットも完全網羅。中学三年で芭蕉の言霊にふれ、自らも「旅を栖」とする著者が、足と目と感性で俳聖の全足跡を辿る。研究者のあいだではタブー視されている、蕉翁の衆道にも踏み込んだ稀有な書。沿道の美味な食べ物も紹介。著者手描きの絵地図入り。『芭蕉の誘惑』改題。
  • 陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内
    3.0
    新聞記者の伊庭緑郎に騙されるような形で「名探偵とゆく 京都ミステリーツアー」にかり出された伊集院大介。そのツアー中に、伊庭が失踪し、やがて幽霊騒動が発生。旅行会社のシナリオとは思えないリアルな事件の続発に、参加者たちはうろたえ始める。「本物」の探偵の推理が旅行客を救う、シリーズ第13弾! (講談社文庫)
  • 仮釈放
    4.3
    1巻649円 (税込)
    浮気をした妻を刺殺し、相手の男を刺傷し、その母親を焼殺して無期刑の判決を受けた男が、16年後に刑法にしたがって仮釈放された。長い歳月の空白をへた元高校教師の目にこの社会はどう映るか? 己れの行為を必然のものと確信して悔いることのない男は、与えられた自由を享受することができるか? 罪と罰のテーマに挑み、人間の悲劇の原型に迫った書下ろし長編小説。

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  • 帽子
    3.5
    1巻649円 (税込)
    末期癌に冒された妻の最後の願いとは……。妻を優しく励ます夫の切ない心情を描いた表題作。かつて自らの家に住み込み、家事見習いをしていた女性と再会した医師の心の揺れを描いた「買い物籠」など、日常生活に潜む〈非日常〉を精緻な文体で描いた珠玉の九篇。

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  • 秋の街
    3.8
    1巻649円 (税込)
    16年ぶりに刑務所の外を歩いた無期刑の囚人。死を間近にして故郷への執念に憑かれた重病人など、人生の重大場面に直面した人々の心理をこまやかに描いた滋味溢れる短編集。

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  • 総員起シ
    4.2
    太平洋戦争時、日本領土内で起こった劇的な出来事を発掘! 当事者に綿密な取材を行って書き上げられた衝撃の戦史小説 北海道の海辺の寒村に次々と流れ着く死体の群れ。沖合で潜水艦に撃沈された輸送船では、上陸用舟艇に載れたのは将校ばかりだった(「海の棺」) ソ連軍の侵攻にさらされた樺太の炭鉱町で、看護婦たちが集団自決を図った。記者の取材に生き残った元看護婦たちは固く口を閉ざすが……(「手首の記憶」)。 昭和20年8月22日。戦争は終わったはずの北の海で、ソ連籍と思しき潜水艦の攻撃で沈没した「小笠原丸」の悲劇(「烏の浜」)。 沖縄戦で軍司令部の散発要員として軍に帯同した理髪師が見た、軍司令官自決の真実(「剃刀」)。 訓練中に不幸な事故で沈没した潜水艦・伊三十三。9年の歳月を経て引き上げられた艦内の一室からは、生けるが如き13名の遺体が発見された(「総員起シ」)。 全5篇を収録。
  • 上海醉眼
    -
    「ワンダー・シティ上海」の魅力のすべて描く! ダンスホ-ル、ジャズバンド、サ-カス、浴場、料理屋、上海ガニ……ーー体験した記憶もない者に、ノスタルジアという世界を与える。上海は、日本人の躯の奥から、何か妖しい夢を誘い出さずにはおかない街のようだ。この街に溶け込むには、酔眼をこらし、躯のゆれに身をまかせるしか方法はない……。作家の眼と写真家の眼が絶妙に交差して織りなす、上海Shanghaiのイメージ。港町・上海に吹く妖しい風を見事に把えた傑作。
  • 真夏の旗
    -
    夏の夜の小さな事件が、真治と町の人気スター・彰五を友だちにした。純粋で奔放な生き方をする彰五たちの世界は、北の港町の大人には受け入れられないが、平凡な少年・真治に、新鮮でめくるめくような夏の日々を体験させた……。やさしく繊細な目で若者たちを生き生きと描いた、三木卓の少年小説の傑作。
  • ミッドワイフの家
    -
    孤児だったわたしが、少年期をすごしたのは、産院、つまり、ミッドワイフの家。久しぶりにそこを再訪すると、相変らずクレゾールの匂いと、生殖の図式が満ち満ちている。陰性の性欲をもて余していた当時への回想、そして、ひそかに欲望の対象としていた娘との再会。性の本質と実在感を文学に結実しえた、著者の初期秀作集。
  • 七まいの葉
    -
    生と死、光と影の織りなす、繊細で透明な三木卓の世界を謳い上げた、短編童話集。「ふみ子のおともだち」「はなっていいな」「そらのひつじ」「コップの海」など、人間の内面を凝視し、宇宙的広がりをもつ作品7編と、「けんかして」「さようなら」「おこっている」「もうひねくれたぞ」など少年詩12編を収録。
  • ぼくらの世界
    4.0
    栄光のホームズ賞授賞式会場で起きた殺人事件。薫クンの推理は? ――ぼく、栗本薫。ぼくが書いた「ぼくらの時代」という推理小説が、かの有名なシャーロック・ホームズ賞をもらうことになったんだ。ところが、こともあろうにその授賞式の会場で、薫クンの担当編集者が殺された。トイレのドアに残されたのは「XY」の文字……。ユ-モア感覚にあふれた、待望の長編青春ミステリー。〈「ぼくらの時代」PART3〉
  • 夜光貝岬
    -
    ずっと考えて来ていたことは……誇らかに花咲かせたい……咲く君のそばにいたい……。芭蕉布を勉強するために沖縄に来ていた緋紗代の前に現れた、事業家・武富とホテルの支配人・伊集院。珊瑚礁の美しい徳之島を舞台に、愛人と夫の二人の間を揺れ動く女ごころを肌理細かに描く「夜光貝岬」、ほかに「沖ノ蔵千畳敷」「薩摩ずべい釣り」を収録。海に生きる男と女の愛の形を描く、珠玉の短編恋愛小説集。
  • さすらい波太郎 房州沖純情
    -
    海を愛するがゆえの痛烈な釣り客批判! 名人・波太郎の恋と冒険の武者修行の船出! ――「釣りの腕では誰にも負けぬ」と自信たっぷりの「四本竿の波太郎」の船へ現れた美女は、沖泊り源平の娘・暁子だった。源平からの挑戦を受けて立った波太郎は、故郷・千葉の港から、各地の名人を訪ねる修行の旅に出る。目指すのは、東京湾の対岸から小坪。暁子との再会は、思わぬ展開となった。痛烈な文明批評にあふれた海洋譚!
  • さすらい波太郎 相模湾慕情
    -
    海を愛する男の、恋と釣り修行のひとり旅! 波乱に満ちた釣り師の海洋ピカレスク! ――美女・暁子と再会したのは、真鶴。放流された鯛モドキをコマセで釣る船の前で、本物の腕を披露した武者修行中の波太郎は、暁子の前で名人沖泊りの源平に挑戦する。勝負は「忍法墨流し」。敗れた波太郎は、再挑戦を約束して、アメリカ西海岸へ旅立つ。最近の誤った釣りブームを痛烈に批判して大好評の、海洋冒険小説。
  • さすらい波太郎 再会遠州灘
    -
    下田、西伊豆、浜名湖から北海道へ! 釣り対決に美女が加わり、壮絶な冒険行! 魚に対する敬意と海への愛情ロマン! ――鯛釣り名人・波太郎は、アメリカから戻ると、下田から西伊豆、浜名湖へと、修行の旅を続ける。沖泊り源平とのカツオ釣り勝負は、写真家と地元漁師が加わって、大波乱。負けた方が陸(オカ)に上がる条件で、再び対決を迎えるが、事態は一変。美女・暁子と波太郎は、北海道へ飛ぶ。魚に対する敬意と海の愛し方を説く、真の男の冒険行!
  • うず潮のひと
    -
    天草の海を背景に描く、若い未亡人の秘めた愛の物語! ――カメラマンの夫を亡くし故郷の港町へ帰り、美しい海の町の天草・牛深で、特産の海産物加工品を本物の味に創り上げようとがんばる、若き未亡人・千帆子。夫の面影に守られ、頑固な父親と名人肌の海女や慕って集まる若者たちに支えられて、ようやく彼女の努力が実を結ぼうとしたとき、年下の純情な青年が現れて愛を告白する。自然と恋愛を大らかに描いた力作。長編恋愛小説。
  • 三匹の蟹・青い落葉
    -
    存在の孤独と愛の倦怠のただ中にある「現代の生」。……そのこわれてしまった姿を、乾いた抒情のうちに残酷に啓示して、芥川賞を受けた「三匹の蟹」。それに、三部作〈構図のない絵〉〈虹と浮橋〉〈蚤の市〉より成る、もの憂さ漂う青春への訣別の詩「青い落葉」を収めた、大庭文学の不朽の名作。
  • 孤独な噴水
    -
    新人王をめざす若きプロ・ボクサーの孤独な戦い! 暗い家庭を逃れてボクシング・ジムに通う〈私〉は、連戦連勝、やがて新人王の有力候補にのし上がり、小さなジムの期待の星となった。だがある日、心の支えだった恋人が、何者かに暴行された。ボクシング界の内幕をえぐり、若者の愛と孤独を鮮烈に描く長編小説。
  • 密会
    4.5
    夜の林の闇の底で、彼女は、興奮のすぎさった後のけだるい体を横たえていた――。大学教授夫人・紀久子が、夫の教え子である学生との密会中に起った、思いもかけぬ殺人事件。女の心の中に渦巻く生々しい情念を、ミステリー・タッチで描く「密会」ほか、「動く壁」「目撃者」など、「男と女」を描く名短編9編を収録。
  • メロンと鳩
    -
    「生と死」をドラマチックに描く短編小説集。処刑を目前にした死刑囚と面接委員との心の交流を鮮やかに描いた「メロンと鳩」、毎月数十人もの自殺者が飛びこむ断崖をひかえた村を舞台に「その瞬間」を警察官の子供の眼からとらえた「島の春」など、吉村昭の多彩な小説世界のエッセンス10編を収録する。
  • メロドラマ
    -
    港町・神戸に流れ着き、男ゆえの傷をかくしキザに生きる、謎の男・名倉。その彼を敬愛・崇拝しながらも、やがては追い越そうと狙う、チンピラの若者たち。そして、誘蛾灯のような名倉の魅力にひかれて寄ってくる女たち……。名倉をめぐる人物の相関図が次第に暴いてゆく、彼の謎の過去とは何なのか? 美しい神戸を舞台に、人生を踊る男女を洗練された手法で描く都会のサスペンス・ロマン。
  • 小説の如く奇なり
    -
    事実が小説よりも面白い、というのは間違いだ。小説のように面白い、と考えるのが正当ではないか。作家の自負心から、小説という虫メガネで事実をとらえてみたいと志した著者が、札幌の屋台、元横綱の断髪式、温泉場の芸者さん、能古島の愉しい漁師、シンガポールのラッフルズ・ホテルなどをたずね歩いた、出色の読みもの12編。奇なる事実の背後にある小説的なおもしろさを、作家の自負をこめ作家の目で捉え、ユニークな題材に挑んだルポルタージュ!
  • 灰左様なら
    3.0
    怪談咄を手に入れるためには、人間の奥深さや恐さを知らねばならない。怪談咄の祖・林屋正蔵のそんな気持ちが、「東海道中膝栗毛」の作者・十返舎一九への好奇心をより強いものにさせていった。一九には、想像もできない奥行きと恐さがある、その正体を暴く必要がある……林屋正蔵の執念を描く、時代小説の傑作。
  • サイゴン・ティをもう一杯
    -
    行きずりの恋から同棲し、奇妙な花屋をはじめたイサムとアンナは、演劇で挫折した者同士でもあった。彼らのあやふやで頼りなげな日常と、二人を取り巻く人間関係の濃淡。それはバラのブラック・ティや戦時下のサイゴンの酒場にあったサイゴン・ティの、妖しさや虚飾ぶりにも似ていた。やがてアンナは妊娠して……。時の流れに身をまかせる男女を通して、日常の側面に光をあてた都会小説。ベトナム戦争世代の心情をデリケートに描く野心的作品。
  • これも男の生きる道
    4.0
    男にとって大切なのは、一人前になることです。それは、自分のするべきことはなんでもできること、自分のするべきことはなんでもすると覚悟して、なんでもすることです。もちろん、できないこと、わからないこと、知らないことを、素直に認めることでもあります。かんたんなようで、なかなか困難な、これが男の生きる道。男も女も、この本を読んで、一人前になってください。
  • ふたりの平成
    3.0
    「おちょくりガイのある女は好きだ──昔っからそれだけで生きてたから」という橋本治と「大人宣言したい。私たちの戦後民主主義と全共闘体験を総括したい。きちんと昭和に決別したい」と意欲を燃やす中野翠の過激で知的な対談集。昭和の終わり、平成のはじまり、そして平成七年の大事件──阪神大震災、オウム事件まで、社会の姿をみつめ分析する。
  • 同窓会奇談
    -
    東京近郊の高校を卒業した男たちの数奇な人生。周辺住民に追い立てられるメッキ業者、サラ金に追われて非道な取立人に変身した男、怪しげな技でくいつなぐ大道芸人、強運な妻に救われる元博奕打ちなど、中年男たちの、怨念、反骨、乱暴な友情、切ない恋愛を、辛辣にユーモラスに描く、新風都会派の傑作短編小説集。
  • 心中天浦島
    4.0
    テオは17歳、アリスは5歳、そして二人は出会った。しかし、スペースマンと地上人の時の流れは平等ではない。22歳のテオは18歳のアリスと結婚したのだが、二人を近づけた相対性理論のいたずらが、いつしか二人を引き離し、ついにテオを遺してアリスはこの世を去った。だが、それも恐ろしい悲劇の序曲に過ぎなかったのだ! 異様なシチュエーションの生んだ悲恋の物語を描いた表題作ほか、異星生物との心暖まる交流をつづる「遙かな草原に……」など、本格SF全7篇収録。
  • いつまでも若いと思うなよ
    3.3
    若さにしがみつき、老いはいつも他人事。どうして日本人は年を取るのが下手になったのだろうか――。バブル時の借金にあえぎ、過労で倒れて入院、数万人に 一人の難病患者となった作家が、自らの「貧・病・老」を赤裸々に綴りながら、「老い」に馴れるためのヒントを伝授する。「楽な人生を送れば長生きする」「新しいことは知らなくて当然」「貧乏でも孤独でもいい」など、読めば肩の力が抜ける、老若男女のための年寄り入門。
  • これで古典がよくわかる
    4.3
    あまりにも多くの人たちが日本の古典とは遠いところにいると気づかされた著者は、『枕草子』『源氏物語』などの古典の現代語訳をはじめた。「古典とはこんなに面白い」「古典はけっして裏切らない」ことを知ってほしいのだ。どうすれば古典が「わかる」ようになるかを具体例を挙げ、独特な語り口で興味深く教授する最良の入門書。
  • 上司は思いつきでものを言う
    3.6
    この本はサラリーマン社会の閉塞を嘆じるものではありません。「上司は思いつきでものを言う」ということが、なぜ起こってきたのかを、儒教の伝来まで遡り、とてもスリリングに解剖していく本です。日本の男たちが、なぜ戦国時代と幕末維新の時代ものが好きなのか。こんな「なぜ」も見えてきます。そして、では日本はどうするのか――「現場」の声を聞く能力の復活に向けて、上司のみなさんにも、懇切丁寧な今後の道中案内の書であります。【目次】はじめに/第一章 上司は思いつきでものを言う/第二章 会社というもの/第三章 「下から上へ」がない組織/第四章 「上司でなにが悪い」とお思いのあなたへ/あとがき
  • 事物はじまりの物語
    3.8
    「解剖」「スキー」「石鹸」「洋食」「アイスクリーム」「傘」「国旗」「幼稚園」「マッチ」「電話」「蚊帳・蚊取り線香」「胃カメラ」「万年筆」の十三編のはじまりの物語。そのひとつひとつに歴史があり、人の営みがある。江戸から明治にかけて、人々は苦労して新しいものを取り入れ、初めてのものを作りだした。三十年以上歴史小説を書きつづけてきた著者が豊富な史料を駆使して書いた新鮮な驚きが溢れる物語。
  • ちゃんと話すための敬語の本
    3.7
    敬語は「人と人とのあいだの距離」ということを前提にして考えるとよくわかる。そのことをはっきりさせ、相手と自分との「距離」を認識すれば、敬語はもっと使いやすくなり、使い分けの難しい「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」もこわくない! さらに歴史や成り立ちを知ることで、現代生活での「ちゃんと話すための」敬語を身につけることができる。敬語は決して面倒なものではなく、コミュニケーションをより良くできる表現力豊かな日本語だ!
  • 魚影の群れ
    4.6
    津軽海峡を舞台に、老練なマグロ釣りの孤絶の姿を描く表題作。四国に異常発生した鼠と人間との凄絶な闘いの記録「海の鼠」。名人気質の長良川の鵜匠の苦渋を描く「鵜」など動物を仲立ちとして自然と対峙する人びとの姿を精密に描いた傑作小説四篇を収録した作品集。
  • 新・天狼星ヴァンパイア(上)
    4.7
    1~2巻660~691円 (税込)
    誘拐された少女3人の死体は、血が抜かれた上に、残酷な仕掛けがなされていた。ミュージカルのオーディジョンを受けた日、竜崎晶はN.Y.の吸血殺人鬼の事件を知らされる。ついにヴァンパイアが東京上陸か?迎え討つ名探偵・伊集院大介。最大の敵、殺人鬼・刀根一太郎と魔人・シリウスが復活したのか!?(講談社文庫)
  • 死ぬための教養
    3.2
    死の恐怖から逃れるための最大の処方箋だった宗教が力を失った今、「死を受け入れる」ために必要なものは、「教養」だけである。宇宙論から闘病記まで、5度も死にかけた著者が46冊を厳選! 「死」をまじめに考えるための、究極の読書のすすめ。

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  • 漂流記の魅力
    3.9
    奥州石巻を出港し、難破してロシアに漂着した「若宮丸」の乗組員たち。十年の辛苦に耐え、日本人として初の世界一周をなしとげた彼らの記録『環海異聞』を中心に、数々の漂流記の魅力に迫る。漂流記こそ日本独自の海洋文学であり、ドラマの宝庫なのだ。

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  • 復興の精神
    3.3
    東日本大震災以降、私たちはどのように考え、どのように行動し、どのように生きていくべきなのか。すべての日本人が向き合わねばならないこの問いに、九人の著者が正面から答えた。「精神の復興需要が起きる」「変化を怖れるな」「私欲を捨てよ」「無用な不安はお捨てなさい」「どん底は続かない」……その言葉は時に優しく、時に厳しい。3・11以降を生きていくための杖となる一冊。

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  • 天狼星
    4.8
    1~3巻662~768円 (税込)
    ファッションモデルが次々に殺され、バラバラ死体が発見された。死体には喰われたらしい痕跡があり、シリウスと名乗る犯人が山科警視に星座にちなんだ12人の女ともう1人、13人の殺人を予告してきた。生涯の宿敵シリウスと相まみえることになった名探偵・伊集院大介。待望の長編伝奇ミステリー。
  • 結婚
    4.0
    古屋倫子、二十八歳。旅行会社勤務。独身、彼氏なし。最近気になって仕方ないのは、卵子は老化するという事実。その時限爆弾を解除する方法は、結婚以外にない──でも、結婚ってなに? 倫子は周囲の既婚者を見渡すも、結婚というものがますますわからなくなる。そんな中、同僚の花蓮の結婚が決まり……。悩めるアラサー女性を主人公に、時代と共に変化する結婚観を冴えた筆致で描いた傑作長編。
  • 悪党芭蕉
    4.7
    ならず者と遊び人が集った蕉門、美男弟子との衆道関係、あの句にこめられた危険な秘密……いつしか神格化され「求道の人」のアイドルとなった松尾芭蕉。しかしその素顔は、芥川龍之介に「日本の生んだ三百年前の大山師」と言わしめるほど、凄腕の不良(ワル)だった! 「俳聖」を敢えて俗人と同じレベルで再考し、犯罪すれすれのところに成立した俳諧の真の凄味に迫る、画期的芭蕉論!
  • 失楽園の向こう側(小学館文庫)
    4.0
    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 21世紀は「楽園」が失われた世界だ。そんな今をどう生きるか? 答えは「カイシャ」の外にある。IT長者の転落もニートの増加もすべて予見した希望再生の人生指南書。
  • 零式戦闘機
    4.5
    昭和十五年=紀元二六〇〇年を記念し、その末尾の「0」をとって、零式艦上戦闘機と命名され、ゼロ戦とも通称される精鋭機が誕生した。だが、当時の航空機の概念を越えた画期的な戦闘機も、太平洋戦争の盛衰と軌を一にするように、外国機に対して性能の限界をみせてゆき……。機体開発から戦場での悲運までを、設計者、技師、操縦者の奮闘と哀歓とともに綴った記録文学の大巨編。

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  • 逃亡
    4.1
    戦争に圧しつぶされた人間の苦悩を描いた傑作 戦時下の緊迫した海軍航空隊で、若き整備兵が背負った過酷な運命とは? 軍用飛行機をバラせ……その男の言葉に若い整備兵は青ざめた。昭和19年、戦況の悪化にともない、切迫した空気の張りつめる霞ヶ浦海軍航空隊で、苛酷な日々を送る彼は、見知らぬ男の好意を受け入れたばかりに、飛行機を爆破して脱走するという運命を背負う。初期の力作長篇が待望の再登場。 解説・杉山隆男
  • 磔

    3.8
    1巻680円 (税込)
    慶長元年春、ボロをまとった二十数人が長崎で磔にされるため引き立てられていった。歴史に材を得て人間の生を見すえた力作。「三色旗」「コロリ」「動く牙」「洋船建造」収録。(曾根博義)
  • 嘘は罪(上)
    4.0
    1~2巻682~726円 (税込)
    大ヒットを連発し、大スター今西良の名を世に知らしめた作曲家・風間俊介。しかし愛する良は、風間を拒絶し去っていった。喪失の痛みに苦しむ風間は、野生の獣のような凶暴さを秘めた青年・忍と出会う。忍の中に奇跡的な音楽の才能を見出した風間は、その才に惹かれてゆく。しかし忍は、恐ろしくも美しい刺青を背負う、美貌のヤクザ・黒須に「買われた」存在で……。作家・栗本薫が、絶望の底の生を壮絶なまでに描ききった大作。
  • 新装版 日本医家伝
    -
    シーボルトと遊女・其扇(そのおうぎ)の間に生まれ、女でありながら医学の道を志した楠本いね、「解体新書」翻訳の偉業を成し遂げた前野良沢、ロシヤ抑留中に種痘法を習得した中川五郎治など、後に著者によって長編として描かれた人物を含む、わが国近代医学の先駆者である12人の医家たちの苦難の生涯を描きだす傑作短編集。
  • 「わからない」という方法
    4.0
    「わからない」イコール「恥」だった20世紀は過ぎ去った! 小説から編み物の本、古典の現代語訳から劇作・演出まで、ありとあらゆるジャンルで活躍する著者が、「なぜあなたはそんなにもいろんなことに手をだすのか?」という問いに対し、ついに答えた、「だってわからないから」。――かくして志向のダイナモは超高速で回転を始める。「自分は、どう、わからないか」「わかる、とは、どういうことなのか」……。そしてここに、「わからない」をあえて方法にする、目のくらむような知的冒険クルーズの本が成立したのである! 【目次】まえがき/第一章 「わからない」は根性である/第二章 「わからない」という方法/第三章 なんにも知らないバカはこんなことをする/第四章 知性する身体
  • 大本営が震えた日
    3.9
    昭和16年12月1日午後5時過ぎ、大本営はDC3型旅客機「上海号」が行方不明になったとの報告を受けて、大恐慌に陥った。機内には12月8日開戦を指令した極秘命令書が積まれており、空路から判断して敵地中国に不時着した可能性が強い。もし、その命令書が敵軍に渡れば、国運を賭した一大奇襲作戦が水泡に帰する。太平洋戦争開戦前夜、大本営を震撼させた、緊迫のドキュメント。

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  • 私、丼ものの味方です
    -
    天丼、牛丼、親子丼、ウナ丼……。庶民の味方「丼もの」的世界へようこそ!行儀や窮屈とは程遠い自由な食の領域から、極上の気分が味わえる。ユーモラスな蘊蓄で綴るとっておきの食べ物エッセイ六十八篇!

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