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Posted by ブクログ
「私たちは、もう滅びているの」
栗本薫の生死観。「滅び」の詰まった短編集。個の死と、人間の滅亡。時の流れと、地球のまたたき。あっという間に終わるのではなく、気づけばじわじわと、AIDSや戦争やその他の一つ一つは小さくても複雑な何かで、人類はゆっくりと「滅び」に向かって進み続けている。短編を読みその感覚の中に浸ると、今の生活が諦念を持って静かでもあり愛しくもあるように感じられます。
「巨象の道」と、赤ん坊のミイラを見た体験が著者が一番表現したかったものかなぁ。これはアレ(エイズ)で死に向かうまだ元気な若い夫婦の話だったけど、モチーフが当時話題になったばかりのエイズなだけで、2人の会話、本当の人生、人間の終焉、その辺はいつの時代にも通じる気がします。若干同じ話をくどくど聞かされてる気もするけど、その分染み透ってくる。
「それは、広大な草原を、たった一頭でのろのろとよこぎり、誰も知らぬ谷あいの死の場所をめざして、たゆみなく歩み去ってゆく、老いて死を待つばかりの巨象の、目のまえのもったもたしかな運命と不条理に対して、「生」に残されたさいごの尊厳と勇気そのものの象徴のようなすがただった。」
「でもとにかく、私たちは、そういうことをすべて、バラバラに、一つ一つの孤立した症候群としてしかとらえることができなかったんだわ。本当はそれは、ただ、「現代」という時代に、固有の滅びの相だというのにしかすぎなかったのに」
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