一穂ミチのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
みなさんのレビューを見て、すでに発行済みの本のスピンアウトだと知りましたが、前作は未読です。
読み始めてみたら、大好きなプラネタリウム話。へええええ、と思いました。
冒頭、メガネの昴くんが働く(アナウンスする)プラネタリウムで、大地と彼女がドラマみたいな痴話げんかを始めるところから物語は始まります。
大地という男は、適当なんだけど、適当ゆえに頭が柔軟。カタブツできっちりしている昴に興味を覚えてゆく、という……ある意味、王道なお話です。
王道なんだけど、きっちり読ませるのが一穂ミチ先生。
そして王道をいかに読ませるかが、このジャンルの力量だと思いますが、この話は星をテーマに優しく時間が動いていきます(というか、ミチ先生の話はどれも優しいんです、空気が)。
少しじれったいながらも、最後は昴をつかまえる大地。…どちらかというと、これからが見ものだったような気もします。
できれば続編希望。続編で評価を上げる可能性が高いお話だなと思いました。その分の評価があと一歩。 -
Posted by ブクログ
ネタバレわりと評価の分かれる作品のようでしたが、私は結構好きでした。
表題の『オールトの雲』というのは、冥王星のずっと先、太陽系の果てにある彗星が生まれるところ。
『空には星がたくさん光っているからきれいだろ。真っ暗じゃないんだよ』
幼い頃、暗いところが怖くて夜が苦手だった流星に、アメリカ人の父親が教えてくれた。
それ以来、夜の星空は流星にとって、とても大切なものになった。
対する太陽は、その名の通り、暖かい家庭で家族の愛をたっぷり受けて成長した真っ直ぐな男の子。
離婚して母ひとり子ひとりで育ち、不器用で周りにうまく溶けこめない流星の孤独を明るく照らして暖めてくれる。
ふたりは流星が近所に越してきた5歳の時から、お互いになくてはならない大切な存在になった。
ずっと傍にいたい、離れたくない、この先の未来もずっと隣にいたい。大好きだから。
そうできると信じていたけれど、流星の母親が癌で亡くなってしまったことで事態が急変する。
アメリカから父親が一緒に暮らそうと流星を迎えに来たからだ。
太陽は、父親の誘いを頑強に拒む流星の背中を押す。
『流星を取り上げないで欲しい。ずっと一緒にいたい』と心底願っているのに。
流星がずっとさびしいのも苦しいのもひとりでずっと我慢してきたのも自分だけはわかっていたから。
結果、流星は父親の元で暮らすことになり、ハワイへと旅立ってしまう。
今まですぐ手の届く場所にいたのに、遠く離ればなれになってしまった。
これから幾度、心細い夜を過ごすだろう。流星を行かせてしまったことを後悔する日もくるかもしれない。
でもどうにもできない。自分だけの力では何も変えられない。『好き』だけじゃどうにもできない。まだ大人にはなれないことの、もどかしさ。
時間はどんどん流れていって、変わらない変わりたくないと願っても、きっと少しずつ形を変えていく。
特別な『その時』は過ぎてしまってからでないとわからない。そのほんとうの値打ちが。どんなに特別で、どんなに幸せだったか。
『何かを選ぶっていうのは、何かを選ばないっていうことなのかな』っていう作中の太陽のセリフに泣かされた。
エンディング、ふたりはお互いを想いあいつつも、まだ遠距離のままだけど、きっといつかまた一緒に、ずっと一緒にいられるって思える。
木下けい子さんのイラストもとても雰囲気があって素晴らしかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『雪よ林檎の香のごとく』のスピンオフ。あのヤンデレの栫先輩のお話。(デレはどこだよ!)いざレビューを書こうと思った時、このお話は一体何にカテゴライズされるのか一瞬考え込んでしまった。結論として、サイコサスペンスかなと少し思った。恋愛はあくまでも付加的なもの・・・っていうか、これを恋愛小説と呼んでいいのか、わたしには正直わからなかった。『雪よ林檎の~』でも、栫先輩は十分に壊れている人だと思っていたけど、そんなもんではなかった。その壊れっぷりは半端ない。ただ、本作を読むと、栫の人格がどうして壊れてしまったのかの理由がわかる。プロセスは詳しく明かされていないけれど。
それは、五歳の時に突然行方不明になってしまった結合双生児の兄弟の禄朗の存在。
ふたりは完全なシンメトリーだった。ふたりでひとりだった。だから栫に残されているのは、失われた半分の強烈な不在。片割れがいなくなってしまったのに、どうして自分だけが残っているんだろうという自分の存在意義への単純な疑問。そして彼の両親は、『失くしたものを気に病むあまり、その手に残されたものを健やかに育むことができなかった』
それは想像を絶するような人生だったのだろうな。希望を持ち続けることの絶望を目の当たりにしてきた人生というのは。
栫は周りにいる人たちを恐ろしいまでの冷静さで観察し、誰にも見られたくない秘密を暴いてしまう。でもそれは、彼にとってはゲーム、ほんの暇つぶしに過ぎない。それぐらい歪んでいる。きっと彼には感情のフィルターはないから、物事がありのままの正確さでみえてしまうのかもしれない。そんな栫だけれど、嵐は特別な子なのだろう。賢くて強い。栫の人格が破たんしていて、決して自分を愛したりはしないだろうとわかっているのだけど、やっぱり好きだからそばにいるのをやめない。それを選んだのは自分だと言い切れる潔さがある。嵐は栫の予想の斜め上を行く。だから、貴重で大切でおもしろい。栫にも嵐をグシャリと壊すことができない。だから、きっと手放せない。
エンディング、行方不明の禄朗が白骨遺体となって発見される。それがわかった途端、栫はこんこんと眠り続ける。生きることをあっさり放棄するみたいに。まるで禄朗のいない世界では生きたくないというみたいに。
でも、嵐の声で目を覚ます。
『あなたが、確実に存在する世界なら、まあ、起きてもいいか』と思えるぐらいに、嵐は特別な存在なんだろう。
この物語には、目に見える形のハッピーエンドは何処にもない。でも、ふたりはふたりにしかわからない形で、きっと幸せなのだと思いたい。
読後、ホッとしてうっすら笑いたいような、泣きたいような、そんな気分になる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルとカバーイラストがいまいち好みじゃなったけど、作家読みしました。うん、結構好きだった。前にどなたかのレビューでこの作家さんの文体が好き過ぎて盲目っていうのを読んだけど、すごくわかります。話の筋がどうこう以前に、わたしもこの作家さんの文章が醸し出す空気感が大好きです。今回もしっとりと美しい世界観だった。とにかくこの人のセリフまわしがリアルで好き。受のクールでツンとしたしゃべり方が特に好き。本当は色んなことを我慢して感情を殺した上で成り立っているクールなんだけども。受が藍を栽培する農家の子のなので、『藍』がキーワードです。作中のところどころに散りばめられた色、色、色。青だけでもそんなにたくさんあるんだな~と感心する。
物語はわたしの大好きな同級生ものです。ノンケで彼女持ちの攻視点。攻の子もいかにも恵まれた家庭環境で育ちましたっていう健やかないい子で、ちゃんと彼女のことも好きで大切にしてたんだけど、同級生で親友の受に告白されて以来、彼を初めてそういう目で意識し始めどんどん気持ちが持って行かれてしまう。もちろん最初は同性なんて受け入れられないと悩むのだけど。ゲイではないのに、親友の遥に心を傾けていったのは、思えば、どこが分岐点だったのかな。夜の観覧車の中で『好きだ』と魔がさしたように告白されてしまったところかしら。作中なんども、『ごめん』という言葉が出てくる。それをお互いに何度も言いあっているのだけど。(好きになって)ごめん。(気持ちに応えられなくて)ごめん。その都度いろんな気持ちがその三文字に集約されていて、とても印象に残った。