一穂ミチのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
くたくたに疲れて帰った日、ショート動画でだらだら時間を溶かしてしまう日。
「お風呂に入らなきゃ」と頭ではわかっているのに、入る覚悟が決まらない!
あなたに効く小説、ここにあります。
『わたしは本当にばかだ。あの会社を蹴ってしまうだなんて。
けれど、わたしが何度も頭を下げて選んでいただくなんておかしい。いま、こちらが未来を選んでいるはずだった。もっと気高くいなければ。わたしは落ち込んで醬薇風呂に入るような女なのだから。』
【個人的な感想】
お風呂に入りたい!とはならなかったが、色々な方の作品が読めて面白かった。
特に、この2作品が好きだった。
・無力 小原晩
・薔薇風呂の日々 くどうれいん -
Posted by ブクログ
ネタバレ一穂ミチ先生の「感情旅行」がよかった。いつもそうなんだけど、先生の描く小説に出てくる観光地は、行ってみたくなる。具体的な地名などが出てくるからなのかもしれないが、読んでて、行った気になってる。今回は出雲の玉造温泉。出雲大社では「二礼四拍手一礼」。一穂ミチ先生の小説には毎度豆知識がぎっしりで、そこも魅力の一つ。賢くなったような気がして気分が良い。
肝心の内容だが、今回の私の中でのキーワードは、「通用してる」かどうか。なるほどな、こういう分類もあるんだ。少しどきりとした。当然、いつまでも「通用してる人間」でありたいと思うが、歳をとっていくに連れて、少しずつ不安になる。この小説内での「通用してる」は社会的信用を指していると思うけど、歳をとるに連れて、たとえば、機械操作がうまくいかず、もたついて、後ろで並んでる人やスタッフさんに迷惑かけるだとか、増えていくのかなぁ、少し先だけど、定年をむかえ、会社という組織から離れることで、それって「通用してる」人間から、少しずつ遠ざかることだよなぁとか。違う?
徐々に「通用しない」人間になることを想像して、どきりと恐怖を覚えた。
それはさておき、私が勝手に恐怖を覚えたことはおいておいて、千歳と華の関係は奇妙なものだけど、今は亡き、蒔生を介して、ずっと繋がっていくんだろうな、と。千歳は頑張って医師免許とってね。 -
Posted by ブクログ
一穂ミチさんの小説とのことで読んでみました。
読んでいて、なんとも切なくなってくる……。
ある日、パートナーが「旅行に行く」と家を出たまま、帰らぬ人となってしまう。
しかも、そのパートナーは異性と一緒に亡くなっていたらしい。
残された人たちは、その事実とどう向き合えばいいのか。
生前の多実の足跡をたどるように、彼女が亡くなった島へ向かう青吾。
そして、多実と一緒にいたと思われる波留彦の妻・沙都子。
青吾と沙都子は、それぞれのパートナーが亡くなった島で、二人がなぜそこへ行ったのか、その理由を少しずつ探っていきます。
中でも印象に残ったのが、沙都子のこの言葉でした。
「本人にとっては不本意でしょうが、現状、わたしに残されたいちばん大きなものは、夫の秘密です。わたしはそれと向き合いたい。傷ついたっていいんです。それだって形見です。生きている彼が、わたしを傷つけることはもうないでしょうから」
“秘密すら形見”という言葉が重い。
夫が亡くなった以上、本人に問いただすことも、怒りをぶつけることもできない。
だからこそ、たとえ自分が傷つくことになっても、残されたものと向き合いたい。
沙都子の覚悟が伝わってくる言葉でした。
物語は衝撃的な幕開けから、青吾と沙都子が島へ渡り、多実と波留彦のつながりを一つひとつ紐解いていく形で進んでいきます。
そして、何か一つわかったと思えば、そこからまた新しい事実が浮かび上がってくる。
非常に情報量の多い小説でした。
人と人が関われば、そこには必ず感情が生まれます。
けれど、その感情はそう簡単に割り切れるものではないんですよね。
許すのか。
許さないのか。
忘れるのか。
抱えたまま生きていくのか。
割り切るためには時間が必要で、その時間がどれくらい必要なのかは本人にさえわからない。
しかも、その間にも時代は変わり、人の心も変わり、周囲の環境まで変化していく。
何でも合理的に整理できないのが、人間なんですよねぇ。
この小説では、人の持ついくつもの顔についても考えさせられました。
一見いい人に見える人ほど、実は深い闇を抱えていたりする。
逆に、一つの行動だけを見れば理解できない人にも、そこに至るまでの事情や感情がある。
人は一面だけを見て判断できない。
そんな当たり前だけれど難しいことを、改めて突きつけられたような気がします。
ラストの青吾と沙都子は、島での出来事を経て、それぞれ新しいスタートを切れたようにも見えました。
でも、だからといって、それまでの出来事をすべてきれいに割り切れたわけではないんですよね。
特に、青吾がタオルケットを受け取るシーンは感極まるものがありました。
前へ進むことと、忘れることは違う。
抱えているものが消えなくても、人は少しずつ次の時間へ進んでいくことができる。
そんなラストだったように思います。
かなり“大人の物語”でした。
明らかになる事実が一つひとつ重く、そのたびに登場人物たちの感情までこちらにのしかかってくる。
簡単に答えの出ない人間関係や、愛情、秘密、喪失を描いた作品でした。 -
Posted by ブクログ
結婚するつもりはない。今はそう言う人もいるし、そういう人に対して結婚したほうがいいよとか聞いてもないアドバイスをすることはナンセンスという風潮もある。一方で、まだまだ結婚や出産への無言の圧は(主に上の世代から)ひしひしと感じる。家族や近しい人なら言っても許される、むしろ助言してあげなくてはと思って口にする人は意外と多いよなぁと、本作を読んでいて改めて感じた。
こういう考えを持っている人は意外に都会でも一定数存在する。と同時に、主人公・美雨のように結婚に興味はなく、仕事も食べていける収入があればいいという人も男女問わず実在していて、ここ数年で増えている気がする。とても現代的でリアルな大人だと感じた。
そんな彼女が出会った、芸人の亨と相方の弓彦。美雨は彼らと偶然出会ってコントを見ることになり、ファンになって本人達とも遊ぶようになり「変なやつ(笑)」と面白がられて…って、展開自体はなんだか夢小説のようだった笑
美雨の価値観や核の部分があまり掴めなくて最後までふわふわした印象だった。けれど亨と弓彦による「安全ピン」のコントや掛け合いはなんだか不思議な居心地のよさがあった。
一穂ミチさんは「光のとこにいてね」以来2作目。「安全ピン」と同じで不思議な魅力があるから別の作品も読んでみたい。