藤野可織のレビュー一覧
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ネタバレ最高の二人だった……。誰もこの二人の仲を割くことはできないのだよ、と思うと泣ける。この感じなら、死後もずっと一緒にいるんじゃないかな。
ピエタとトランジ、この二人のキャラクターが凄く光っていて、二人の関係性が最大の魅力。特殊な体質を持って生まれたトランジに、それに影響されない唯一の人ピエタ。二人とも一緒にいるのが楽しくて離れたくないけれど、決して恋愛対象ではないというのがポイントで、でも運命の人であることには変わりない。この体質について何か根拠があるのかと思ったが、最後までそれは分からないまま、名探偵でも解けない謎だった。他の全ては分かるのに、自分のことが分からない探偵というのも可愛い。
まさ -
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頭脳明晰なトランジは殺人事件を誘発する体質の持ち主で、周囲でどんどん人が死んでゆく。そんなトランジと、彼女の助手であり友人であるピエタのロマンシス小説。
『おはなしして子ちゃん』に収録されていた『ピエタとトランジ』の続編であり完全版です。
ずっと文庫化楽しみにしていたので、珍しく発売してすぐに読みました。
短編集に収録されていた話はピエタとトランジが高校生の時初めて出会った時の話で、こちらはその後の2人、高校を卒業してから大学、就職などのライフイベントを経て、老人になるまでの人生を描いています。
もちろんその間でも2人の周りでは人がどんどん死んでいき、高校の卒業時には全校生徒が半数以下になっ -
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2006年に『爪と目』で芥川賞を受賞した著者の、その受賞後第一作として刊行された短編集。2013年度の第4回Twitter文学賞の結果発表放送を観ていた時に、絲山秋子さん、古川日出男さんとともに第8位に選ばれている選評を聞いたのがきっかけで、興味を抱いて手に取った一冊です。
全体的に不穏でシュールなテイストに満ちているのが特徴であり魅力でもあるのですが、個人的にはホラーというより「ストレンジ・フィクション」と呼ぶのが最もしっくりくる印象。
いじめに使った理科準備室のホルマリン漬けの猿に「お話をして」といじめっ子が乞われる表題作。十四歳で高熱を出して以来「一日に一度だけ嘘をつかなければ死 -
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これまで読んだ藤野さんの作品集の中では一番良かったです。
まず一作目にあたる表題作で引き込まれました。「ホルマリン漬けの猿」と「いじめ」と「おはなし」をこんな風に結びつけるとは。結末もひねりも効いていて、他では味わうことのできない読後感を堪能できます。
続く「ピエタとトランジ」は、ミステリのお決まりのパターンってやつを念頭に置いたパロディで、こちらもなかなか面白いです。東野さんの名探偵シリーズを思い出しました。ちょっと内容を詰め込みすぎかな、とも思ったのですが、どうやら完全版の長編として別途発表されるようなので、そちらも楽しみです。
本書ではこの二作が双璧をなしていると思いますが、他の作品も佳 -
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表題作は大学の非常勤講師である高木成一のパートと、高木の隣家に住む主婦の内田百合のパートが時系列をずらして交互に描かれる構成ですが、とにかく高木のパートがめちゃくちゃ面白かったです。飲み会で泥酔したことがきっかけで高木の家に来ることになった「トリウチ」が、高木が飼育していたオカメインコを食べてしまったことにより徐々に鳥へと変身していく、というカフカみたいな感じのストーリーですが、高木vs鳥の壮絶なバトルシーンをはじめ、笑えるポイントが満載でたいへん楽しく読むことができました。雰囲気はもろ「世にも奇妙な物語」で、いつか映像化してほしいなあと思います。
解説にある通り、登場人物たちの感情・記憶など -
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藤野可織さんの恋愛小説集、と聞いて、ちょっと意外ではあった。読んでみて、やはり一筋縄ではいかない「恋愛」小説ばかりだった。
小説、特に「純文学」とカテゴライズされる類のそれにおいて重要なものが二つあって、それは小説全体に漂う「空気感」と、小説の行く先を決定付ける「瞬間」の二つなのだと私は思う。このどちらか(またはどちらも)がちゃんと書かれている小説は面白いし、面白い小説にはちゃんとそれが書かれているのだと私は思う。
収録されている7編はどれも、現実が幻想に切り替わる瞬間が滑らかであり劇的だった。
たとえば深海魚のことを考えた瞬間に、部屋の電気を点けた瞬間に、玄関のチャイムが鳴った瞬間に、見 -
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ほとんどのお話が不穏な余韻を残していく、仄暗い世界観を纏った短編でかなり好み。
「眠りの館」
眠って眠って放棄して何もかも終わった世界、でも本当に?
「れいぞうこ」
腐ることを恐れて冷蔵庫で眠り、でも穏やかに腐りゆく未来を覚悟している少女
「スパゲティ禍」
死のかたちがあまりにもシュールすぎるディストピア
「スマートフォンたちはまだ」
なぜかはうまく言えないけどこのお話が一番好き。
自分自身に対してなんだか切実で祈りみたいなものを感じて。
「怪獣を虐待する」
怪獣の存在も、怪獣を虐待するという行為も、すべてが何か別の意味を持っている気がして。怪獣を虐待した夜に見る夢も不穏で、この世界 -
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女性作家の自身の身体にまつわるエッセイ集。特に30,40代の今人気の作家さんたちだけを集めたというのが面白い。自身の身長について書かれている方もいたが、自ずと性にまつわる話が多かった。
個人的に感動したのは村田沙耶香さんと能町みね子さん。こちらの感想で、女性なのに自慰について書かれている方が多くて引いた、という感想が少なくないのは正直ちょっと残念だなと思った。村田沙耶香さんは幼少期から行っていた自慰について、いやらしいものという周囲との認識の差に未だに慣れない、ということを書かれていたのだが、子供の頃の自分の王国という表現でその感覚について本当に美しい描写をされており、涙が出そうなほど感動し