藤野可織のレビュー一覧

  • ピエタとトランジ

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    ネタバレ

    最高の二人だった……。誰もこの二人の仲を割くことはできないのだよ、と思うと泣ける。この感じなら、死後もずっと一緒にいるんじゃないかな。
    ピエタとトランジ、この二人のキャラクターが凄く光っていて、二人の関係性が最大の魅力。特殊な体質を持って生まれたトランジに、それに影響されない唯一の人ピエタ。二人とも一緒にいるのが楽しくて離れたくないけれど、決して恋愛対象ではないというのがポイントで、でも運命の人であることには変わりない。この体質について何か根拠があるのかと思ったが、最後までそれは分からないまま、名探偵でも解けない謎だった。他の全ては分かるのに、自分のことが分からない探偵というのも可愛い。
    まさ

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    2023年07月12日
  • ピエタとトランジ

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    頭脳明晰なトランジは殺人事件を誘発する体質の持ち主で、周囲でどんどん人が死んでゆく。そんなトランジと、彼女の助手であり友人であるピエタのロマンシス小説。
    『おはなしして子ちゃん』に収録されていた『ピエタとトランジ』の続編であり完全版です。

    ずっと文庫化楽しみにしていたので、珍しく発売してすぐに読みました。
    短編集に収録されていた話はピエタとトランジが高校生の時初めて出会った時の話で、こちらはその後の2人、高校を卒業してから大学、就職などのライフイベントを経て、老人になるまでの人生を描いています。
    もちろんその間でも2人の周りでは人がどんどん死んでいき、高校の卒業時には全校生徒が半数以下になっ

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    2022年10月20日
  • ファイナルガール

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    世の中の人間は2つに大別される。藤野可織が好きな人とそうじゃない人である。理解できるとかできないとかじゃなくて、それはもう人間としての初期設定かもしれない。だんだん好きになるとかそういうことも無いかもしれない(あるかもしれないが)。でも読んだときに“好き!“と思う人とそうじゃない人は明確に分かれる気がする。描写における独特の表現や修飾の使い方、時間と空間の操り方、好きとしか言いようがない。小説家という人種は基本的にこれでいいと思う。平均⭐️は2.5から3.0くらいが大作家の条件だ。

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    2021年06月05日
  • おはなしして子ちゃん

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     2006年に『爪と目』で芥川賞を受賞した著者の、その受賞後第一作として刊行された短編集。2013年度の第4回Twitter文学賞の結果発表放送を観ていた時に、絲山秋子さん、古川日出男さんとともに第8位に選ばれている選評を聞いたのがきっかけで、興味を抱いて手に取った一冊です。
     全体的に不穏でシュールなテイストに満ちているのが特徴であり魅力でもあるのですが、個人的にはホラーというより「ストレンジ・フィクション」と呼ぶのが最もしっくりくる印象。

     いじめに使った理科準備室のホルマリン漬けの猿に「お話をして」といじめっ子が乞われる表題作。十四歳で高熱を出して以来「一日に一度だけ嘘をつかなければ死

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    2021年05月05日
  • おはなしして子ちゃん

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    これまで読んだ藤野さんの作品集の中では一番良かったです。
    まず一作目にあたる表題作で引き込まれました。「ホルマリン漬けの猿」と「いじめ」と「おはなし」をこんな風に結びつけるとは。結末もひねりも効いていて、他では味わうことのできない読後感を堪能できます。
    続く「ピエタとトランジ」は、ミステリのお決まりのパターンってやつを念頭に置いたパロディで、こちらもなかなか面白いです。東野さんの名探偵シリーズを思い出しました。ちょっと内容を詰め込みすぎかな、とも思ったのですが、どうやら完全版の長編として別途発表されるようなので、そちらも楽しみです。
    本書ではこの二作が双璧をなしていると思いますが、他の作品も佳

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    2019年11月30日
  • いやしい鳥

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    表題作は大学の非常勤講師である高木成一のパートと、高木の隣家に住む主婦の内田百合のパートが時系列をずらして交互に描かれる構成ですが、とにかく高木のパートがめちゃくちゃ面白かったです。飲み会で泥酔したことがきっかけで高木の家に来ることになった「トリウチ」が、高木が飼育していたオカメインコを食べてしまったことにより徐々に鳥へと変身していく、というカフカみたいな感じのストーリーですが、高木vs鳥の壮絶なバトルシーンをはじめ、笑えるポイントが満載でたいへん楽しく読むことができました。雰囲気はもろ「世にも奇妙な物語」で、いつか映像化してほしいなあと思います。
    解説にある通り、登場人物たちの感情・記憶など

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    2019年07月29日
  • 爪と目

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    再読。まず、この著者の文体が好き。そして、視点や意識の移動のさせ方にも同期しやすいので、自分にとってリーダビリティナンバーワンの著者。初読の時にも感じたように、表題作の最後のフレーズが、句読点の打ち方も含め、最高に良い。

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    2019年03月05日
  • ファイナルガール

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    ふつうに小説を読む気持ちで読むと、はじめ物語の不思議さに???となる。笑
    でも奇妙で現実的ではない話なのになぜか現実味はある。
    特に印象に残っているのは「去勢」と「ファイナルガール」。
    何年もストーカーに付きまとわれているのにさほど気に留めない女の子だったり、狼と戦ったり、一生のうちに何回も殺人鬼に出くわしてこれもまた戦ったり。
    そんなことあるわけないんだけど、もしかしたらこういうこともあるかもしれないし、いるかもしれない人たち。
    「爪と目」もそうだったけど、読み終わったあとのこのゾワっと感がクセになる。笑

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    2018年07月09日
  • 爪と目

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    先ず"あなた"と"わたし"は誰と誰なのか理解するのに時間がかかりました。笑
    読み終えた今もいまいち理解しきれていない感があるけど、最後のホラー展開は"わたし"から"あなた"への仕返しというか制裁と解釈しました。
    "あなた"のような何も見ない、何も感じない、何も感じないから傷付きもしない、こんな人いないだろと少し前のわたしなら思っていたかもしれないけど、実際同じような人に最近出くわしたので言える。
    "あなた"のような人間はたぶんけっこういる。笑

    「これでよく見えるようになっ

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    2018年06月02日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    本屋で見つけて、編者が都甲幸治ってこともあり、是非読みたいと思って入手。最近特に、洋邦問わず文学賞が気になるってこともあり、これもとても楽しく読ませてもらいました。方々で言われていることだけど、ノーベル賞より注目すべき文学賞は、あれもこれもあるってことですね。実際には”8大”文学賞では決してないけど、芥川賞と直木賞の章も設けられていて、それはそれで日本人なら気になるものではあるし、ちょっとした息抜きみたいにもなっていて、高感度高しでした。毎度のことながら、また読みたい本・作家がたくさん見つかって、嬉しい悲鳴再び。

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    2018年05月10日
  • ファイナルガール

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    藤野可織さんの恋愛小説集、と聞いて、ちょっと意外ではあった。読んでみて、やはり一筋縄ではいかない「恋愛」小説ばかりだった。

    小説、特に「純文学」とカテゴライズされる類のそれにおいて重要なものが二つあって、それは小説全体に漂う「空気感」と、小説の行く先を決定付ける「瞬間」の二つなのだと私は思う。このどちらか(またはどちらも)がちゃんと書かれている小説は面白いし、面白い小説にはちゃんとそれが書かれているのだと私は思う。

    収録されている7編はどれも、現実が幻想に切り替わる瞬間が滑らかであり劇的だった。
    たとえば深海魚のことを考えた瞬間に、部屋の電気を点けた瞬間に、玄関のチャイムが鳴った瞬間に、見

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    2014年04月13日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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    ある種ディストピアのような、人によってはユートピアのような、現実とは少し違う世界での沢山の"青木きらら"の短編集。「スカート・デンタータ」が少しいいなと思えてしまう現実ってかなり嫌だな。

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    2025年11月28日
  • ピエタとトランジ

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    ある意味最強バディ物の話だと思った!
    コナン君体質のトランジと、そのトランジに高校の時に出会ってから親友となったピエタの2人のハチャメチャな物語。
    個人的にはこう言う話の終わりが大好きで、読者の想像力を、掻き立てるいくらでも結末が広がる終わり方最高!
    特にこの本の内容的にはよりそう思った。

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    2025年11月26日
  • 来世の記憶

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    ほとんどのお話が不穏な余韻を残していく、仄暗い世界観を纏った短編でかなり好み。

    「眠りの館」
    眠って眠って放棄して何もかも終わった世界、でも本当に?

    「れいぞうこ」
    腐ることを恐れて冷蔵庫で眠り、でも穏やかに腐りゆく未来を覚悟している少女

    「スパゲティ禍」
    死のかたちがあまりにもシュールすぎるディストピア

    「スマートフォンたちはまだ」
    なぜかはうまく言えないけどこのお話が一番好き。
    自分自身に対してなんだか切実で祈りみたいなものを感じて。

    「怪獣を虐待する」
    怪獣の存在も、怪獣を虐待するという行為も、すべてが何か別の意味を持っている気がして。怪獣を虐待した夜に見る夢も不穏で、この世界

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    2025年11月26日
  • 私の身体を生きる

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    いろんな視点、テイストがあって面白かった。『てんでばらばら』がお気に入り。
    しかし性被害者の多さよ。加害者が多すぎるし許されすぎてる。やめてくれマジで。『女であることを喜びながらも、女であることによる気持ちの悪い経験を排除していきたい』。マジそれな。

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    2025年10月28日
  • ピエタとトランジ

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    人類滅亡間近の世界を救おうとすることもなく、絶望や悲観に暮れることもなく、楽しげに当たり前に一緒に歳を重ねていくピエタとトランジがすごく好きだった。
    最後、アイスを食べるピエタとその膝に頭を乗せたトランジの会話が高校時代の二人と変わらないのがめちゃくちゃえもい。
    たとえ通りすぎた道には死体の山しか残らなかったとしても、ずっと青春の延長線上で二人でいれば無敵!な関係性が何より価値がある気がしてうらやましいなあ。

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    2025年10月22日
  • 私の身体を生きる

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    女性作家の自身の身体にまつわるエッセイ集。特に30,40代の今人気の作家さんたちだけを集めたというのが面白い。自身の身長について書かれている方もいたが、自ずと性にまつわる話が多かった。

    個人的に感動したのは村田沙耶香さんと能町みね子さん。こちらの感想で、女性なのに自慰について書かれている方が多くて引いた、という感想が少なくないのは正直ちょっと残念だなと思った。村田沙耶香さんは幼少期から行っていた自慰について、いやらしいものという周囲との認識の差に未だに慣れない、ということを書かれていたのだが、子供の頃の自分の王国という表現でその感覚について本当に美しい描写をされており、涙が出そうなほど感動し

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    2025年10月20日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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    青木きららは誰でもなくて、でも私たちなのかもしれなくて、どこにも存在してなくて、でもどこにでもいるのかもしれない。
    非現実的な物語の中に女性が生きる上で遭遇する理不尽や生きづらさをすごくシビアに内包していて、毒を孕んだポップさが癖になる。
    「花束」のカルトっぽい切なさと「幸せな女たち」のハッピリーエバーアフターが特に好きだった。

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    2025年10月15日
  • ピエタとトランジ

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    最高!最高!
    最初は女子高生青春バディもの!二次創作待ったなし!とか思っていたけれど、想像してたよりずっと先まで描いてくれていて、ずっと一緒にいてくれて、とてもとても嬉しかった。そして描かれる事件がどれも意味を持っていて、女性として筆者のことをとても信頼できると感じた。
    でもなによりピエタが魅力的だ。ピエタになりたい。こんな風に自分の大切なもののために生きたい。

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    2025年09月27日
  • ピエタとトランジ

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    死を願う言葉が この二人にとっては こんなに愛のある言葉になるなんて、ほんとうにすごい友情の話だなと思う
    なんだか不思議な世界観がわたしはとても好き

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    2025年09月21日