あらすじ
あるとき、母が死んだ。そして父は、あなたに再婚を申し出た。あなたはコンタクトレンズで目に傷をつくり訪れた眼科で父と出会ったのだ。わたしはあなたの目をこじあけて――三歳児の「わたし」が、父、喪った母、父の再婚相手をとりまく不穏な関係を語る。母はなぜ死に、継母はどういった運命を辿るのか……。独自の視点へのアプローチで、読み手を戦慄させるホラー。芥川賞受賞作。
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Posted by ブクログ
「爪と目」こういう作品が芥川賞に求めてる地獄だなあ
「しょう子さんが忘れていること」いや怖いんだけど。37歳の娘の殴りたくなる感いいね
「ちびっこ広場」これは分かりやすいですね
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再読。まず、この著者の文体が好き。そして、視点や意識の移動のさせ方にも同期しやすいので、自分にとってリーダビリティナンバーワンの著者。初読の時にも感じたように、表題作の最後のフレーズが、句読点の打ち方も含め、最高に良い。
Posted by ブクログ
先ず"あなた"と"わたし"は誰と誰なのか理解するのに時間がかかりました。笑
読み終えた今もいまいち理解しきれていない感があるけど、最後のホラー展開は"わたし"から"あなた"への仕返しというか制裁と解釈しました。
"あなた"のような何も見ない、何も感じない、何も感じないから傷付きもしない、こんな人いないだろと少し前のわたしなら思っていたかもしれないけど、実際同じような人に最近出くわしたので言える。
"あなた"のような人間はたぶんけっこういる。笑
「これでよく見えるようになった?」
"あなた"はこれから先の人生を考えなおし、ちゃん見ようとするのだろうか。
それとも今までと同じようにただなんとなく生きるのだろうか。
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3歳児の「わたし」が明らかに乳幼児を超えている違和感は強烈なのに、飲み込まれるようにして読み終えてしまった。
何が起きているのか明確に分かるような作風ではないのだけれど、随所に気味の悪さと不快感がある。嫌な音を耳元で鳴らされ続けているような、胸の内を爪でカリカリされているような。
なんでこんなに自分のこと以外興味関心が特にない人達のふるまい、様子に解像度が高いのだろう。
ただ図太さというのは、誰しも多かれ少なかれ持っていて、自分にもあるかもしれない無神経さを拡大して見せられている気分になるからこそ、不快感を持つのかもしれない。
「わたし」の元々の母親もその類で、ブログに出す部屋をお洒落にするため度々「わたし」をベランダに閉じ込めており、「わたし」がやり返した結果がベランダでの凍死なのではという考察を見かけたのがしっくりきた。
もっと知りたい気がして、久しぶりに読み終わったあと他の人の考察や作者インタビューを見漁ってしまった。
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二人称にしているのはどうしてだろう。いつ時点?
主人公の女性がサイコパスっぽいのが芥川賞っぽいなと思いながら読んだ。
うまく説明ができないが、不思議な雰囲気で着地点が気になって、面白かった。3つめの話もサラッとホラー感があってうまいなぁと思った。
他の作品も読んでみたい。
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幼児の「わたし」を語り手に、母の死と、父と「あなた」の(再婚を前提とした)同居が語られる。「あなた」が「わたし」に(というよりは周囲の人間すべてに)心から親密な関係を築けないことを傷のついたコンタクトレンズやほぼ見えない裸眼で表象し、「わたし」もコミュニケーション機能の不全に陥っている様を噛んで尖った爪で表す。
たしかにホラーだこりゃ怖い。
どのような話かがつかみきれない序盤からすでに相当怖い。すべての文章に「ひっかかり」を覚えるのだ。語り手の「わたし」は自分の心情を一切語らないのに、「あなたは~思った」と「あなた」の行動・心情を断定的に語る。それだけで「これは絶対に誰も幸せになれないタイプの小説だ」とわかるし、「ひっかかり」があるだけにじっくり読まされてしまう。そしてこの断定的な口調のわけが、最後の"あとはだいたい、おなじ。"で推測され、なんだか自分まで地獄におとされたような気持になったのだった。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ怖い、とTwitterで見て読んだ一冊。確かにめちゃくちゃ怖かった。おかしなことが起きているのにずっと静かで、二人称のせいで気が狂いそうだった。
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怖かった
初めて読んだ時目の描写に強い恐怖をおぼえて、発狂しそうになりながら読んだのを覚えている
何度か読み返そうと試みたがどんなホラー映画やホラー小説よりも怖く感じでなかなか開けていない笑
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少し長めの表題作と短編が2つ.「爪と目」は、父、母、わたし とあなたと母親が出てきて、父とあなたが眼科で出会い、母が死んで最終的に父、あなた、わたしが一緒に暮らすことになる話だが、あなたの生活に対する思いが独特で違和感というより、唖然とする感じだった.わたしが爪を噛む件で題名の片方が認識でき、わたしがマニュキュアの薄片を作る場面で題名のもうひとつが分かった."しょう子さん"と川端くんの関係は謎めいており、"大樹"の甘えに的確に対応したお母さんの気持ちは、大樹とよく通じている.
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怖かった。
読みやすく好きなタイプの文だった。
結膜炎なりやすいので痛みがよく伝わってきて、その点やだった。
なぜかみなさんあまりコメントしないちびっこ広場が、最後ゾッとした。
お母さんが、何度も電話してちびっこ広場に連れ出してるから呪いは実行されてるのでは、、?
1回だけの呪いで、夜に広場に行くだけで終わるならいいけど怖い目に遭わなきゃいいな。。と変に心配になってしまった。
Posted by ブクログ
芥川賞を受賞した表題作、3歳の女の子がこんなに理路整然とした語り手になれるわけないやんけ、と思いながら読んでいたのですが、ラスト近くにちゃんとからくりが書いてありました。すごく目立たないところに。この点もそうなのですが、ミスリードを誘うような書き方もされていたりして、これまで読んだ藤野さんの作品と比べてかなり技巧に凝っているなあという印象を受けました。
一方で「いやしい鳥」で描かれていたような訳の分からないエネルギー・勢いのようなものはあまり感じられず、そのあたりに魅力を感じていた自分にとってはちょっと肩透かしをくったような読後感でした。いや、もちろん上手いんですよすごく。特にラスト3行なんかはかなり印象に残る箇所ではあるのですが、これを怖いかっていうとちょっと違うような気もします。そういう意味では玄人向けの作品と言えるのかなあと。もちろん芥川賞受賞には何の文句もありません。
Posted by ブクログ
久しぶりに、何のためでもなく、「ただ活字を読む」という欲のためだけに読み終えました。時間に追われているときに読む、良質な短篇はこの上ない至福ですが。ああ怖かった。
帯の「史上最も怖い」という言葉は的を得ているからこそ、究極のネタバレというべきか、予感を促しすぎる意味で読者からすれば勿体無いような気もします。
事実、悍ましいと感じる要素が沢山詰まっています。具体的な言葉で分析し始めようものなら自分の世界にピキッとひびが入ってしまいそうな感のある、人の奥底にある不気味な禁に触れてしまっている作品です。
語ることの出来る要素で面白みを感じたのは、やはり「目」の役割です。解説にあった、動物の目の発達の過程の説明を含めて、考えさせられるところ、日頃考えることと繋がるところがありました。物事から恣意的に目を逸らせば、人はその物事を無かったことに出来て、ある種の独裁者になれるということ。でも、、、ということ。「目を閉じれば同じ」という言葉が出てくる宇多田ヒカルさんの歌をふと思い出しました。人は疲れてしまうと思考を停止して、目を閉じて、次に開く頃には状況が変わっていることを期待したりするものです。それは必ずしも現実逃避を示唆しているのではなくて、日常における睡眠も同じでしょう。でも、、、がいっぱいあります。自分の住んでいる世界に見たいものと見たくないものがあるということと、目が開いている限り物事を見続けなければならないこと、をどう理解すればよいのでしょう。自分で一生付き合って戦うしかないのでしょうけれど、戦うのに疲れてしまった人は他の存在を精神で殺してしまうのでしょう。私は目が見えることは尊いと思っていて失いたくありません。それでも、一見「できる」という良い機能に思われるものが、「できることをしない」という選択肢を危険を孕んでいるという事実は心に留めておくべきだと思っています。
久しぶりに、心の向くままに目的もなく言葉を綴った気がします。少し気持ちが休まったのでこの辺りで。
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日常感のある出来事と二人称のお陰で読んでいるうちに、あなたが私自身であるような、わたしが私自身であるような、境界線が曖昧になって行く不安定さと緩い不気味さに包まれました
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過去の芥川受賞作品、ってだけでは読む対象にしないから、プラスどこかの書評で扱われていたものと思われる。積読状態にはあったんだけど、今回、夏のホラー特集の一環として手に取ったもの。芥川賞なのにホラー⁉ってのもちょっと興味深かったし。読み方によるのかもしれないけど、ホラーは”風味”っていうくらいで、読み応えは文学のもの。でもおかげで、エンタメ的にそれなりに楽しめました。ちなみに、表題作の中編と、短編2作品を収めたもの。
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芥川賞受賞作を含む3作品収録
表題作である受賞作は3歳の子供視点で描かれる
義母(予定)のお話でした
ちょっと読みにくさを感じつつもホラーな内容で
まぁまぁ楽しめたかなと
他2作もホラー系でした
機会があればほかの作品も読んでみたいかもです
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「あなた」がまるで一人称のような主語になっていて、「わたし」がまるで二人称のように語られているのが面白かった。
『ちびっこ広場』面白かった。結局噂話通りになっているとは。
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難しい。なんとなくぼんやりだけど幸せに生きている現代人の内面と生活を描写した作品?
何も感じないような人間でも生活の中で変化のきっかけを得て変わっていく、無感情そうな人間でも他人の悪意ある行動で心が歪む?
幼い子供の心に与える親の影響は甚大。
人間は見た目ではわからない。
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「あんたもちょっと目をつぶってみればいいんだ。かんたんなことさ。どんなひどいことも、すぐに消え失せるから」
「さ、一緒にちびっこ広場に行こう」
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3歳児のわらしが父の再婚予定者をあなたと言い、感情の起伏なく観察している。気味が悪くもあり、時がなかなか進まない感覚も。最後は戦慄もの。2020.10.29
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主人公の視点が淡々としていて、その目線で読み進むのに慣れるのは案外早いが、ラスト怖い(笑)
娘が何事もなく幸せに暮らしていくことを望むと同時に、つまずき疲れ失敗することを望んでいた。
結婚式をしないのはちょっと寂しいと思った。しかし同時にあなたは挙式する自分の姿を見せたい友人などいないのだということにも気づいた。
目を瞑ればどんなひどい事もすぐ消え失せる。簡単な事。見えなければないのと一緒。
残り短編2篇含まれている。
しょう子さん〜はもう何もしなくていいのに、重荷は全て下ろしたはずなのにリハビリをしなくてはいけなかったり、ご飯を残さず食べなければいけなかったり。親世代ってこう思ってるのかなーと(受け入れたくはないけれど)感じる部分があった。
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連れ子のわたし視点で語っているが、幼稚園にいるはずの時間帯までも把握してしまっている。。何故。怖いは怖い。それより不気味さが勝つ。眼ん玉はしっかりと見ています。
2話のしょうこさん、どういうこと?(・o・)だれ?川端くん?
3話子供の頃よくあった似たような噂話。なのにゾクゾクする。ちびっこ広場に少女の霊がいないと証明できるといいですね、お母さん。
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「史上最も怖い芥川賞受賞作」という触れ込み。語り手の「わたし」は幼児、「あなた」は父親の再婚相手。「あなた」は「わたし」の父親と不倫。「わたし」の母親はある日ベランダで自殺とも事故ともつかぬ不慮の死を遂げ、父親は「わたし」を連れて「あなた」と再婚します。3歳の娘がこんなふうに話せるわけもなく、その違和感が読み手の不安を誘って面白い。特に美人でもないのになぜか男性の興味を惹いて女性からは敵意を持たれる「あなた」。母性にも欠けているけれど、「わたし」を持てあまし気味だった父親は、「あなた」が来てくれて安心します。「あなた」が与えるスナック菓子をぼりぼりと食べ続けて「わたし」が太っていく様子が手に取るようで不気味。衝撃度としては高いですが、この手法は一度しか通じないと思われ、以降の作品はどうなるか。表題作以外の2編もつかみどころなく、どれも単に思わせぶりだと言えなくもありません。次も手に取るかと言われると厳しいかも。
Posted by ブクログ
生活系ブロガーの描写がよかった…
p37
失ってもたいした痛手ではないものを残酷に奪われることを想像するのは、なんとなく楽しいものだ。
p75
あなたは、彼女たちの見せるものが、彼女たちの身を守る装備だということにまでは考えが及ばなかった。彼女たちが欲しいのは、傷ひとつない、ぴかぴかの体と心だ。あれらの記録は、彼女たちが懸命に貼り合わせてつくった特注品の体と心だ。
Posted by ブクログ
「『純文学ホラー』の確立を記念し」たとされる第149回芥川賞を受賞した表題作をはじめとする3作品が編まれた短編集。ホラーというよりか、恐怖を覚える前後に人間に生ずる狂気みたいなのを描いていて、それがとても怖い。人称の表現力にも目を見張る注目の作家だと思った。