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あるとき、母が死んだ。そして父は、あなたに再婚を申し出た。あなたはコンタクトレンズで目に傷をつくり訪れた眼科で父と出会ったのだ。わたしはあなたの目をこじあけて――三歳児の「わたし」が、父、喪った母、父の再婚相手をとりまく不穏な関係を語る。母はなぜ死に、継母はどういった運命を辿るのか……。独自の視点へのアプローチで、読み手を戦慄させるホラー。芥川賞受賞作。
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Posted by ブクログ
再読。まず、この著者の文体が好き。そして、視点や意識の移動のさせ方にも同期しやすいので、自分にとってリーダビリティナンバーワンの著者。初読の時にも感じたように、表題作の最後のフレーズが、句読点の打ち方も含め、最高に良い。
先ず"あなた"と"わたし"は誰と誰なのか理解するのに時間がかかりました。笑 読み終えた今もいまいち理解しきれていない感があるけど、最後のホラー展開は"わたし"から"あなた"への仕返しというか制裁と解釈しました。 &qu...続きを読むot;あなた"のような何も見ない、何も感じない、何も感じないから傷付きもしない、こんな人いないだろと少し前のわたしなら思っていたかもしれないけど、実際同じような人に最近出くわしたので言える。 "あなた"のような人間はたぶんけっこういる。笑 「これでよく見えるようになった?」 "あなた"はこれから先の人生を考えなおし、ちゃん見ようとするのだろうか。 それとも今までと同じようにただなんとなく生きるのだろうか。
めちゃくちゃ怖い、とTwitterで見て読んだ一冊。確かにめちゃくちゃ怖かった。おかしなことが起きているのにずっと静かで、二人称のせいで気が狂いそうだった。
怖かった 初めて読んだ時目の描写に強い恐怖をおぼえて、発狂しそうになりながら読んだのを覚えている 何度か読み返そうと試みたがどんなホラー映画やホラー小説よりも怖く感じでなかなか開けていない笑
少し長めの表題作と短編が2つ.「爪と目」は、父、母、わたし とあなたと母親が出てきて、父とあなたが眼科で出会い、母が死んで最終的に父、あなた、わたしが一緒に暮らすことになる話だが、あなたの生活に対する思いが独特で違和感というより、唖然とする感じだった.わたしが爪を噛む件で題名の片方が認識でき、わたし...続きを読むがマニュキュアの薄片を作る場面で題名のもうひとつが分かった."しょう子さん"と川端くんの関係は謎めいており、"大樹"の甘えに的確に対応したお母さんの気持ちは、大樹とよく通じている.
芥川賞を受賞した表題作、3歳の女の子がこんなに理路整然とした語り手になれるわけないやんけ、と思いながら読んでいたのですが、ラスト近くにちゃんとからくりが書いてありました。すごく目立たないところに。この点もそうなのですが、ミスリードを誘うような書き方もされていたりして、これまで読んだ藤野さんの作品と比...続きを読むべてかなり技巧に凝っているなあという印象を受けました。 一方で「いやしい鳥」で描かれていたような訳の分からないエネルギー・勢いのようなものはあまり感じられず、そのあたりに魅力を感じていた自分にとってはちょっと肩透かしをくったような読後感でした。いや、もちろん上手いんですよすごく。特にラスト3行なんかはかなり印象に残る箇所ではあるのですが、これを怖いかっていうとちょっと違うような気もします。そういう意味では玄人向けの作品と言えるのかなあと。もちろん芥川賞受賞には何の文句もありません。
文字でしか味わえないスリリングな体験。 肝心なことは何も教えてくれないのに、過不足なくすべて書かれている感じ。
久しぶりに、何のためでもなく、「ただ活字を読む」という欲のためだけに読み終えました。時間に追われているときに読む、良質な短篇はこの上ない至福ですが。ああ怖かった。 帯の「史上最も怖い」という言葉は的を得ているからこそ、究極のネタバレというべきか、予感を促しすぎる意味で読者からすれば勿体無いような気も...続きを読むします。 事実、悍ましいと感じる要素が沢山詰まっています。具体的な言葉で分析し始めようものなら自分の世界にピキッとひびが入ってしまいそうな感のある、人の奥底にある不気味な禁に触れてしまっている作品です。 語ることの出来る要素で面白みを感じたのは、やはり「目」の役割です。解説にあった、動物の目の発達の過程の説明を含めて、考えさせられるところ、日頃考えることと繋がるところがありました。物事から恣意的に目を逸らせば、人はその物事を無かったことに出来て、ある種の独裁者になれるということ。でも、、、ということ。「目を閉じれば同じ」という言葉が出てくる宇多田ヒカルさんの歌をふと思い出しました。人は疲れてしまうと思考を停止して、目を閉じて、次に開く頃には状況が変わっていることを期待したりするものです。それは必ずしも現実逃避を示唆しているのではなくて、日常における睡眠も同じでしょう。でも、、、がいっぱいあります。自分の住んでいる世界に見たいものと見たくないものがあるということと、目が開いている限り物事を見続けなければならないこと、をどう理解すればよいのでしょう。自分で一生付き合って戦うしかないのでしょうけれど、戦うのに疲れてしまった人は他の存在を精神で殺してしまうのでしょう。私は目が見えることは尊いと思っていて失いたくありません。それでも、一見「できる」という良い機能に思われるものが、「できることをしない」という選択肢を危険を孕んでいるという事実は心に留めておくべきだと思っています。 久しぶりに、心の向くままに目的もなく言葉を綴った気がします。少し気持ちが休まったのでこの辺りで。
日常感のある出来事と二人称のお陰で読んでいるうちに、あなたが私自身であるような、わたしが私自身であるような、境界線が曖昧になって行く不安定さと緩い不気味さに包まれました
過去の芥川受賞作品、ってだけでは読む対象にしないから、プラスどこかの書評で扱われていたものと思われる。積読状態にはあったんだけど、今回、夏のホラー特集の一環として手に取ったもの。芥川賞なのにホラー⁉ってのもちょっと興味深かったし。読み方によるのかもしれないけど、ホラーは”風味”っていうくらいで、読み...続きを読む応えは文学のもの。でもおかげで、エンタメ的にそれなりに楽しめました。ちなみに、表題作の中編と、短編2作品を収めたもの。
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藤野可織
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