藤野可織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「愛は可笑しい」を帯に冠する私にとっての不思議ちゃん、藤野可織の短編恋愛小説集。
いやぁ笑ったね、いろんな意味で笑わせてもらいました。リノリウムの大自然を泳ぐ深海魚、熊の防犯ブザーに別れを告げられるストーカー、バイキンマンのJKに死なない狼とファイナルガール…でもやっぱり圧巻は不屈のヒーローブファイェンベルガーだろうな。
きっとこの「可笑しい」は英訳するとsuspiciousか、いや敬意を込めて彼女にはYou are insane ! と言ってあげたい。
何かと批判の多い昨今の芥川賞作家のリアル純文学、でも表紙を飾るマルティンクリマス氏の液体窒素でぶっ飛ぶ少女を見ればなんとなくわかるんじゃない -
Posted by ブクログ
「いやしい鳥」
「溶けない」
「胡蝶蘭」
文芸誌で短編一本読んだときから何となく気になっていた作家さん。
やはり好みな作風だった。
いずれの話も非日常・非現実な事柄が登場するのだけれど、それがもしかしたら語り手だけの体験なのではないかと不安を抱かせる。
この非日常との距離感がとても自分にしっくりくるもので、もっと他の作品も読みたいと思った。
「いやしい鳥」
即座に結びつく証拠は、この表題作でも消されている。最初に詮索好きで勝手に妄想を膨らます主婦の視点から、この物語の主要な語り手を外から描写。そして男の語りも最初は支離滅裂。とても疑わしい。
鳥になった男の不気味さは秀逸。同じ人間とは思えな -
Posted by ブクログ
「いやしい鳥」
鳥を飼う男。その隣人たる主婦。この二人の視点が交錯しながら、鳥とそれを食した青年の惨劇が紡がれる。
「溶けない」
幼い頃、母を恐竜に食われてしまった女性、その記憶と、その後の人生、そして再びの遭遇を描く。
「胡蝶蘭」
物喰らう胡蝶蘭。それを引き取った女性。その、奇妙に、愛しい日々。
3作ともに完成度が高く、なかなか満足だった短編集。個人的には「溶けない」が好きですかね。
現実と幻想がぐるぐると静かに渦巻いて、奇妙で、不気味で、どこか惹かれる世界を形づくる。読者はとにかくその流れに身を任せてしまえば良し。
文章もかなり好み。感覚をここまで適切に書ける -