藤野可織のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「史上最も怖い芥川賞受賞作」という触れ込み。語り手の「わたし」は幼児、「あなた」は父親の再婚相手。「あなた」は「わたし」の父親と不倫。「わたし」の母親はある日ベランダで自殺とも事故ともつかぬ不慮の死を遂げ、父親は「わたし」を連れて「あなた」と再婚します。3歳の娘がこんなふうに話せるわけもなく、その違和感が読み手の不安を誘って面白い。特に美人でもないのになぜか男性の興味を惹いて女性からは敵意を持たれる「あなた」。母性にも欠けているけれど、「わたし」を持てあまし気味だった父親は、「あなた」が来てくれて安心します。「あなた」が与えるスナック菓子をぼりぼりと食べ続けて「わたし」が太っていく様子が手に取るようで不気味。衝撃度としては高いですが、この手法は一度しか通じないと思われ、以降の作品はどうなるか。表題作以外の2編もつかみどころなく、どれも単に思わせぶりだと言えなくもありません。次も手に取るかと言われると厳しいかも。
-
Posted by ブクログ
一つ一つの話題はあまり深みに入り込まず、それぞれのテーマ毎の対談者が連想する関連する本を上げていくような感じで進む。友達同士で、あの本って面白いよねーと語り合っているような雰囲気。特に議論が入り組むようなところがなく、この本はすごい面白いのかなと異様にひきつけられることはない。総花的にあげられた中から、よさそうな本を読んでみようかなと思うような、雑誌に表紙の絵入りで載ってたら、いい企画だなーと思うだろう本。単行本として読むとすこし軽く、物足りない気がする。
ただ、単純にいって、なぜ今の時代でも谷崎が、普通にエンターテイメントとして楽しむことができるのか。アリスの永遠性。など。名作として考えられるものの普遍的な力のすごさに感服した。 -
Posted by ブクログ
よく本を読むひとはあまり本を読まない人によく聞かれると思う。〇〇の本が好きなんだけどそれ系ないか、と。難しいよね、例えばこの本にもあるけど伊坂幸太郎が好きな人ってたくさんいる。伊坂幸太郎が好きな人に薦める本ってなるとわたしは東野圭吾や湊かなえを薦めてしまうけど、本書では映画なされたベストセラーとしてハニフクレイシ、アーヴィンウェルシュ、カズオイシグロなどを挙げている。伊坂幸太郎が好きと言うよりも映画化されてる面白い本というニュアンスだろうが少し違和感。
逆に谷崎潤一郎の痴人の愛からはじまり、三島由紀夫、江國香織。大島弓子から、萩尾望都、ミランダジュライというセンスはわかる。好きだわどれも。
読書って本当に尽きない。読んでも読んでも読んでない知らない本がたくさんある。だから面白い -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編
自然とは呼べない美術館でのキャンプで、眠る妹を置いて夜中にひっそりと会う深海魚。
電話口からいつだってストーカーをしてくる存在と、少しも恐怖を感じない矛盾とクマの防犯ブザー。
亡くなった海外の映画俳優を思いながら映画館で閉じ込められる佐藤と伊藤。
虫歯があるとキスをしてから宣言され親知らずを抜歯した家庭教師と教え子で恋人の16歳の少女。
5歳のときに家に来た狼が再び現れたときのために体を鍛えたが、いざというときに怖気好き細くか弱い彼女に助けられた同棲初日。
小説の脇役サイモンに心奪われ、彼氏と別れ戦争により天涯孤独になろうとも、一番に悲しむべき死は存在しないサイモンただ一人だった。
母は自分の命と引き換えに娘であるリサを連続殺人鬼から救ったのは母が30歳頃のことで、
リサもきっとそのくらいで娘のために死ぬと思いきや、襲ってくる連続殺人鬼からを次々と叩きのめして生き延びる人生であった。
不思議な話。理解できないわけではないけれど、正直なぜそうなったのかとかよくわからない。
だけど、嫌いじゃない。爽快に連続殺人鬼を殺していくリサがうけた)^o^( -
Posted by ブクログ
「愛は可笑しい」を帯に冠する私にとっての不思議ちゃん、藤野可織の短編恋愛小説集。
いやぁ笑ったね、いろんな意味で笑わせてもらいました。リノリウムの大自然を泳ぐ深海魚、熊の防犯ブザーに別れを告げられるストーカー、バイキンマンのJKに死なない狼とファイナルガール…でもやっぱり圧巻は不屈のヒーローブファイェンベルガーだろうな。
きっとこの「可笑しい」は英訳するとsuspiciousか、いや敬意を込めて彼女にはYou are insane ! と言ってあげたい。
何かと批判の多い昨今の芥川賞作家のリアル純文学、でも表紙を飾るマルティンクリマス氏の液体窒素でぶっ飛ぶ少女を見ればなんとなくわかるんじゃない。大事だよ「なんとなく」 -
Posted by ブクログ
「いやしい鳥」
「溶けない」
「胡蝶蘭」
文芸誌で短編一本読んだときから何となく気になっていた作家さん。
やはり好みな作風だった。
いずれの話も非日常・非現実な事柄が登場するのだけれど、それがもしかしたら語り手だけの体験なのではないかと不安を抱かせる。
この非日常との距離感がとても自分にしっくりくるもので、もっと他の作品も読みたいと思った。
「いやしい鳥」
即座に結びつく証拠は、この表題作でも消されている。最初に詮索好きで勝手に妄想を膨らます主婦の視点から、この物語の主要な語り手を外から描写。そして男の語りも最初は支離滅裂。とても疑わしい。
鳥になった男の不気味さは秀逸。同じ人間とは思えないところから、本当に人外へとなってしまう。
「溶けない」
三編の中では一番好き。
幼いころ「恐竜」に飲み込まれた母親は、姿形も記憶もまったく同じ別の母親になって戻ってきた。
同じくカメレオンを見たという同じ大学の女性や、「恐竜」じゃなくコモドオオトカゲだと言う大家。
飲まれるって何なのか?
母親との関係性や主人公自身の変化などが、人を飲み込もうとする何かとつながりを感じられて、このつながってるぽい距離感もいい感じ。
明白じゃないけど、意味を感じる。
「胡蝶蘭」
スッキリとまとまった一編。
最後がおしゃれ。