藤野可織のレビュー一覧
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凄かった。エッセイというものをほぼ読んだことがなかった私にとって強烈な読書体験だった。
ほんタメというYouTubeチャンネルで紹介されており興味を持って読んでみた。これは、映像化はきっと難しい、本という媒体のみを通して伝えられる感覚だと思った。
共感できる部分も多く、一方で共感できなかったあの子の振る舞いはこんな感覚にルーツがあったのではと思い至るところもあって、強烈に胸に響いた。私の感じたもやもやを言語化してもらったようで嬉しさもあった。自身も女性性を元とした経験はポジティブ面、ネガティブ面ともにあり、同じような経験をした作家がそれをどう捉えるかを聞けたことが嬉しかった。
性に関する体験をもとに感情が描かれていて、一読するだけでは飲み込みきれなかった部分もあった。一作ずつ丁寧に読みといていきたい。 -
Posted by ブクログ
「青木きらら」という名詞を与えられて、
どんな人物を思い浮かべるだろうか。
可愛いorカッコいい?
華奢or小太り?
高身長or低身長?
長髪or短髪?
性格は?服装は?髪色は?
思い浮かんだ数が積み上げた悪徳で、
当てはまった数が積み上げた悪行です。
9人の青木きららが同じ特徴を持っていたとしても、
10人目の青木きららがその特徴を持つわけではない。
永い永い人類の歴史の中で
張り付いて取れなくなった「女性」に対する
役割、幻想、強制、思惑。
それらを引きはがそうと試みた小説。
のように、自分には読めた。
……ところで、青木きららは女性だと、思い込んでいませんか? -
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを覚えている)。この社会で、そうやって女性は、否応がなしに「私の身体」は本当に私のものなのかと、「私」がモノとして扱われ得るということに向き合わされてしまう。時には、まだ第二次性徴も迎えていないうちに。だからこそ、このようなアンソロジーが興味深い。
とはいえ男性視点の「身体」やその社会的表象については私にはわからない部分なのだが(この辺りのアンコンシャスバイアスについて、鳥飼茜さんとパートナーの方との会話が面白かった)。男性作家たちに、同じテーマでアンソロジーを書いてもらったらどのようなものが生まれるのだろう?と好奇心を抱く。 -
Posted by ブクログ
かなり好き!女同士のバディもの。シスターフッドとも言えるけど、“バディ”の方がしっくりくる。
ピエタとトランジ以外の登場人物は入れ代わり立ち代わり出てきてどんどん死んでいくけれど、2人が楽しそうならもうそれでいいねと思えるぶっ飛んだ本。倫理観なんてない。でもこれでいい。これがいい。だって2人が最高だから。
女子高生のままお話が進むのかと思いきやだんだん2人も歳をとっていく。
歳をとっても高校生の頃の変わらない温度感のやり取りをする2人が最高!一時的に離れることはあっても結局二人でいることを選ぶ。選んでくれる。
本当に仲のいい女同士の会話ってこういう感じだよな……としみじみ思う。
こんなに愛に溢れた「死ねよ」「おまえが死ねよ」がありますか?
ピエタがトランジのことを気に入っていることはもちろん、トランジだってピエタのことをいたく大切にしていることが伝わってくるのがとても良い。二人の間にあるのがあくまで友情であり、相棒であるという感覚なのも最高。
全編通してかなり血みどろだし、存在するだけで周辺に死を振りまいてしまうだなんてわけが分からない設定だし(しかも感染もする)
でもそんな世界でも2人のやり取りはずっと変わらないこざっぱりさ。かっこいい。
(トランジがかっこいいのは言うまでもないけれど、ピエタも相当かっこいい。)
読み終わるのが惜しいエンターテインメント小説だった。同じような事件が繰り返し起きたっていいから、2人のやり取りをもっとずっと見ていたかった。 -
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792
352P
藤野可織
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』で第2回フラウ文芸大賞を受賞。他の著作に『ファイナルガール』『ドレス』『私は幽霊を見ない』『来世の記憶』などがある。
わたしがこの世で一番好きな小説は「ピエタとトランジ」です 2人の女子高生がやがて死を呼ぶババア探偵バディになって世界を滅ぼす話……
ピエタとトランジ (講談社文庫)
by 藤野可織
臨時休校中で、私たちは真っ昼間からずっと四人用のボックス席に居座っていた。ランチに彩り野菜のドリア(トランジはうどん)を食べ、夕飯にとろ~り卵の濃厚カルボナーラ(トランジはそば)を食べたほかは、ドリンクバーでむりやり間を持たせ続け、私はひたすらメロンソーダばかり飲みながらトランジの指定した問題集を解き、トランジはひたすらジャスミンティーばかり飲みながら読書をしていた。
いっぽうの私とトランジは、ほとんど会話を交わさなかった。トランジが問題集をめくり、「ん」と設問を指差してこっちへ押しやる。私は解く。解いているあいだ、トランジは読書。解けたら、あるいは解けなくて降参したら、「ん」とノートをあっちへ押しやる。するとトランジは別の問題集の中から私が次に解くべき設問をすでに見出しており、「ん」とそれを押しやる。私はもう一冊のノートでそれを解きにかかり、トランジは採点をやる。出来ていない箇所には、解答と解き方を走り書きする。さっさとそれを終わらせてしまうと、トランジは読書に戻る。
その点、私はちがう。私は髪を茶色に染めてふわふわのパーマをかけたり巻いてみたりうしろを刈り上げてみたり、やりたいことは片端から試しているし、化粧品が大好きだからアイラインもアイシャドウも口紅もハイライトやコンシーラーも新作が出たら勇んで買いに行き、高い美容液を片端から試して肌の張りや潤いを楽しんでいる。四十代の私はぜんぜん悪くない。むしろ、三十代の終わりからまぶたがたるんで、奥二重だったのがはっきりとした二重になってちょっとラッキーだ。それに、若いころ大きらいで心底呪っていた頰のむにゅっとした丸みが加齢とともに削げ落ちて、頰骨が荒涼とした崖のようにあらわになってきたところも好みに合っている。セルフイメージと自身の姿が近づいてきた気がする。
「あー」と私は言った。「シオシオだ」何十年も口にしていないあだ名がするっと出た。シオシオ。いた、そういう子、たしかに。クラスはいっしょになったことはない。でもたぶん一度、チア部で趣味は料理なシオシオのもう一つの趣味がアクション映画鑑賞で、それを彼氏の影響だと勘違いしていもしなかった彼氏が誰かを探りまくってた別のクラスの男子が、思い余ってシオシオに直接尋問するのになぜかカッターナイフを片手に持ってたところを私がジャン=クロード・ヴァン・ダムばりの華麗な足さばきでキックして助けたんだった。そのあと、シオシオは誰も殺さず誰にも殺されず、ふつうに高校を卒業したんだっけ?
私は彼氏から、異常な記憶力を持つ知的障害者の話を聞いたことがあるのを思い出した。そういう映画があるんだって。すっごく泣けるからお前も見ろって、泣きそうな顔で長いこと話してくれた。トランジはふつうの女の子に見えたけど、どこかに障害を抱えているのかもしれない。そういう人にはやさしくしなきゃいけない、彼らのすばらしい能力はみんなで大切にしなきゃいけないんだって彼氏が言ってた。
私はあらためてトランジの全身をよく見た。真っ黒で地味な髪はきれいにとかしてあり、耳にピアスの穴は開いていない。シャツのボタンは上まできっちり留めている。袖口のボタンまで留まっている。スカートは校則どおり膝丈で、紺色のハイソックスを穿いた脚はけっこう細い。私より細いかも。胸はあんまりないみたいだった。私のほうが大きい。顔は化粧はしてなくて、眉だけそれなりに整えてある。化粧してないわりには、自前の 睫毛 が長くてまあまあかわいいかもしれない。つまり、連れて歩くのに恥ずかしくないレベルはクリアしている。それに加えて、彼氏は茶髪でばっちりメイクの子がタイプだから、彼氏を盗られる心配がないっていうのも重要なポイントだった。
トランジはまだ十七歳なのに、たくさんの死体を見たことがあった。殺人、事故、自殺、なんでも見ていた。きれいな死体も、腐乱死体も、バラバラの死体も。液状化したやつも見たことがあるらしい。人間って死んでから長いこと放っておかれると、床の染みになっちゃうんだって。私は、この前の元カレのと、小学生のときに死んだおじいちゃんの死体くらいしか見たことがない。おじいちゃんは病気で死んだ。私が病院に着くとおじいちゃんはものすごく黄色くなっていて、お葬式の日にはもっと黄色くなっていた。
「うわ!」私は手をたたいて笑った。もともと斉藤は好きじゃなかった。私のことを見た目で判断して、勉強ができないって思い込んでたけど、私はわりと数学が得意なんだ。私がテストでいい点を取ると、カンニングしたんじゃないかって遠回しに嫌みを言った。古文の橘だっていやな奴だ。ひょろっとして眼鏡をかけてて、一部の女子には草食系だとかなんだとか言われて人気があるのはたしかだけど、まるで全女子生徒に好かれているみたいな自信たっぷりの態度をとる。 -
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幽霊を見ない著者が人が体験した怖い話を聴いて回る様子をときにコミカルに書き綴った本。
様々な怪異に遭遇した人の話がみちみちに詰まっているのだが聴取している本人はそういったものは見ないのでカラッとしているというか。
私は一度だけ変なものを見た事があるが、この本に出てくる人達もそういう温度感で自身のエピソードを語る。
地続きの中の違和感をそのまま流してしまいただ日常は続く。
当たり前だけど幽霊に限らず自分の見ているものって真の意味で自分にしか見えていないし、知覚・認識できないものって一生分からんのだろうなと思ったし、そういうものの集積で世界が成り立っているのって不気味で怖いと思った。 -
購入済み
何かでチラッとだけで読んだことがあったけどその時はちゃんと読む事はありませんでしたが、今回たまたままた見つけて読みました。面白かったし、続巻も読むのが楽しみです。
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藤野可織さんの同名小説のコミカライズ。約1年前に小説を読んだ時、私は「自分がもし絵を描ける才能があるならファンアートを描いてみたい」というような感想を残したのですが、ファンアートどころか、漫画家のキスガエさんによって本格的にコミカライズされたのがとても嬉しくて1、2巻揃えて読みました。原作の雰囲気そのままで魅力的なピエタとトランジ二人が生き生きと描かれていてとても良かった。ダークなのに重すぎないのは、ストーリーが軽快に駆け抜けていくからだと思います。初対面の時は高校生だった2人が大学生になり、社会人になり、中年期、壮年期、老年期までバディを組んで突き進みます。
世界は滅びない
滅びるのは人類だけ
最高で最強の二人でした。 -
購入済み
スマホやSNS、夜間の塾といった最近の子供の事情を暑かった作品が目新しかったです。正直、文体は少し大人向けの作家さんも混じっており、そのせいか内容的に少し子供向けとしては上級の怖さかなと思いました。