藤野可織のレビュー一覧
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奇想小説とまではいかないまでも、ちょっぴり不思議な世界が描かれた7編が収録された短編集です。
短編集とはいえ1編1編がかなり短めで、1冊の合計が200ページ弱ぐらいしかありませんが、どれも繰り返し読みたくなるような密度の濃い作品ばかりが並んでいます。
いずれもいつの間にか非日常が日常を侵食する、といった趣ですが、著者は読者が「何となく納得できる」ところを突くのがとても上手いですね。村田沙耶香さんの解説にある通り、筋だけ聞くと荒唐無稽なように思えるのに、全体を読むと妙な納得感が残ります。
トップを飾るのはオフィス街の真ん中に造られた人工的なキャンプ場を舞台にした「大自然」。
本書中最小のページ -
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ネタバレ12人の女性作家などの酒に関するエッセイです。「泥酔懺悔」、2016.9発行(文庫)。面白かったです。①三浦しをんさん、30代から泥酔すると記憶を失う。朝起きると下半身裸で便器を抱いた形で寝ていたと。飲酒の習慣に並ぶのは読書ぐらいとか。②角田光代さん、飲み始めたら途中でやめられない。とことん飲んで記憶がなくなる。覚えていない泥酔時間、角田さんはどうなっているのか?w。③大道珠貴さん、女のひとのグラスについた口紅を指二本で拭うしぐさ、あれ。あの指をあとどこへなすりつけるんだろう、すごうく、気になる。
12人の女性作家の酒にまつわるエッセイ集。「泥酔懺悔」、2012.11刊行、2016.9文庫 -
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理科室にあった猿のホルマリン漬けに永遠と話し続けたこと。いじめっ子といじめられっ子。
トランジのそばにいると周りが次々と不幸にあうこと。
猿の頭と鮭の体で作られた人魚のアイデンティティ。
撮った写真が必ず心霊写真になる人。
壊れた宇宙船が胚細胞に念じていること。
一日一回嘘をつかなければ死んでしまうエイプリル・フールの人生。
頭のおかしい奴の異様な足の速さと蜂蜜と通り魔。
夫の会社の人たちとの夢広がるホームパーティー。
点画を鑑賞する心得と作品に掛ける情熱。
遅読症の人と真っ黒な血を吐く本。
ホラーでいながらもキュート。
おはなしして子ちゃんは、怖かったなー。
ぞくぞくして、中毒 -
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村上春樹/ルイス・キャロル/大島弓子/谷崎潤一郎/コナン・ドイル/J・R・R・トールキン/伊坂幸太郎/太宰治
どれかの名前にピンときたら読んでみてもいいかもしれない。
書評家、作家、翻訳家が10人。
ブコウスキーの訳者として知られる都甲幸治さんをホスト役にして1作家3人ずつの鼎談方式のブックガイド。
ブックガイド好きな上に本について語り合ってる人たちも好きな自分には楽しかった。
各テーマも興味深く、例えばキャロルは「あえて男三人で『不思議の国のアリス』を語る」とか太宰は「ダメ人間を描く小説の作者はダメ人間か」とか。
なるほど~と膝を打ちたくなるような考察もあって面白かった。いやあ、自分 -
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元ネタのアイアムアヒーローを読んだことも観たこともないのですが、好きな作家さんが多かったので手に取ったら個人的にはあたりのアンソロジー。
朝井リョウくんの話もさみしい青春、恋愛小説ですき。いじめっ子と人気者と一匹狼的なこのカースト。
藤野可織さんの話も久しぶりに読んだけどよかったな。やっぱりさみしい。仲間内って難しい。
最高だったのは佐藤友哉、島本理生夫婦の合作。こんな豪華な作品が辞めるなんて…!!! よかった、かなりよかった。引きこもりと心に傷を負ったシスターの話でよかった
全部にもちろんゾンビのような感染症の元ネタの設定が絡んでいるのですが話を知らなくても面白かったです -
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最初の3つは文句なしに良かった
「おはなしして子ちゃん」
自立のため、教養を欲しがるそいつの姿は
親の承認欲求で腰砕けにされた子供たちの自我そのもの
「ピエタとトランジ」
名探偵の周辺では必ず事件がおきるという現象を用いて
学校を破壊してしまう女の子の話
「アイデンティティ」
出来損ないのミイラのキメラ
その引き裂かれた心が、あるがままの自己を受け入れるまで
「今日の心霊」
自分のことを変な奴だとどうしても認識できないある種の天才
そしてそれにつきまとう紳士の集団(涼宮ハルヒみたい)
「美人は気合い」
エゴを持たない人工知能と、それに作られた生命体のやりとり
閉じて不毛なルーチンワー -
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芥川賞や直木賞なんて世界の文学賞のうちに入るのだろうか?日本の作家が書いた日本語の小説しか対象になっていないのに。なんてことを思ったけれども、読んでみました。今年も話題になっているのは、もちろんノーベル文学賞。村上春樹さんがとるかどうか、メディアで騒がれました。この本を読むとわかるのですが、その根拠になっているのがカフカ賞。この賞をとった人が二人、ノーベル文学賞をダブル受賞しているんだそうで、まだ受賞してないのが村上春樹なんだそうです。カフカ賞はチェコ語の翻訳が一冊は出ていないと受賞できないそうで、村上春樹がとった2006年は『海辺のカフカ』が翻訳された年。タイトルがよかった?
そのノーベル -
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久しぶりに、何のためでもなく、「ただ活字を読む」という欲のためだけに読み終えました。時間に追われているときに読む、良質な短篇はこの上ない至福ですが。ああ怖かった。
帯の「史上最も怖い」という言葉は的を得ているからこそ、究極のネタバレというべきか、予感を促しすぎる意味で読者からすれば勿体無いような気もします。
事実、悍ましいと感じる要素が沢山詰まっています。具体的な言葉で分析し始めようものなら自分の世界にピキッとひびが入ってしまいそうな感のある、人の奥底にある不気味な禁に触れてしまっている作品です。
語ることの出来る要素で面白みを感じたのは、やはり「目」の役割です。解説にあった、動物の目の発達の -