藤野可織のレビュー一覧

  • ピエタとトランジ

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    ネタバレ

    表紙や目次の装丁に一目惚れして購入

    関わる人皆が死んだり殺人を犯したりするようになってしまうトランジと
    その影響を最後まで受けなかったピエタ
    ピエタからドランジに向ける愛は真っすぐで、彼女がいない人生に意味がないと思っている
    トランジもそっけない様で、唯一いなくならないピエタのことを想っていて
    2人を百合と表現している所もあったけれど、親友、戦友、の方が私はしっくりくるかな

    ピエタには本名なんて必要ないから、ピエタ以外の名で呼ばれるときは黒く潰されている表現が好き
    本当に彼女の頭にもそう聞こえていたんだろうなぁって思える

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    2024年01月30日
  • ピエタとトランジ

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    短編集『おはなしして子ちゃん』に収録されていた「ピエタとトランジ」のその後を描いた作品。
    主人公の2人のヒロインのキャラクターが立っているので、いくつかちょっとした事件を並べておけば、場面設定を大きく変えずに連作短編として十分一冊の本にまとまったと思うんだけど、あえてそれを行わずに2人に年を重ねさせ、世界を巻き込んだディストピアに発展していく形にしたのはとても良かったと思う。
    探偵を主人公にしたミステリー小説だと、なぜかその周囲で必ず事件が起きるというある種の「お約束」があるんだけど、本作はミステリーの体裁をとっていないにもかかわらずその設定を踏襲しているのが、何とも皮肉めいていて面白かった。

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    2023年10月03日
  • ピエタとトランジ

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    読後のこのなんとも形容しがたい気持ち。
    最近読んだ中では抜きん出たインパクトだった。
    想像していたこしらえとは全然違ってたなー。
    おもしろかった。

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    2023年08月20日
  • 来世の記憶

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    余韻の残る読後感。
    特に好きだったのは、
    『時間ある?』はラストにゾッとしたし、
    『スパゲティ禍』の茹で上がりのホカホカ感とすぐ冷めて「もうこれ以上冷たくなることはないと思っても、まだまだ冷たくな」るのが、スパゲティあるあるだなと思ったけど、それが元〇〇だった物だと思うとえも言われぬ気持ち悪さを感じたし、
    『鈴木さんの映画』はわたしもニコラス・ケイジのホログラムがほしかったし、
    『鍵』のシスターフッドにアツくなったし、
    『いつかたったひとつの最高のかばんで』は、彼女たちがうらやましかった。

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    2023年07月15日
  • 私は幽霊を見ない

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    ところどころクスッと笑える。
    私も幽霊は信じないけれど、幽霊は怖いし、不思議な話を聞くとおおっ!となる。聞くのは楽しい。
    著者のこのスタンスで集めた怖い話って読んだことがなかったので、なかなか面白く読めた。
    あと、本筋とは関係ないのだけど、ニコラス・ケイジだけでなくドニー・イェンの画像をせっせと保存するようになったと書かれていて、好感度爆上がりした。
    私はこの著者を推そうと思う。

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    2023年05月25日
  • ドレス

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    ネタバレ

    短編小説が何作かまとまっている。
    全ての話において、?と読んだ後に少しもやもや、する様な考えさせられる内容。つい何度も読み返し理解しようとしたのだが、自分の読解力が低いのか謎が残った。
    だが全体的に面白かった。

    1番面白かったのはカマキリの様な世界観の話である。
    男性が女性に飲み込まれ栄養として吸収される。
    主人公の女性の視点での話が面白い。

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    2023年05月18日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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     青木きららという女性が各編に必ず登場する短編集だが、青木きららは同一人物ではない。現代日本に似たパラレルワールドのような世界を舞台としているが、夢の世界を彷徨っているみたいな読み心地。
     「わかった」とは言えないが、響いた。寓意や暗喩のようなものを、掴めそうで掴めない、掴めたと思った瞬間にふぁっと霧になって消えてしまうような、「なに、わかった気になってるの」と氷の眼で見つめられているような緊張感が、このわかりやすさの求められる時代に、独特の歯応えを差し出してくる。

     以下、個人的な備忘メモ。タイトル前の記号は、「◯=好き」「◎=特に好き」を表す。

    ◯トーチカ
    青木きららの偽物を探せ、てな

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    2023年05月07日
  • ピエタとトランジ 1

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    大好きな『ピエタとトランジ』が漫画化されたって? そりゃ、読まなきゃ嘘だろう。連載を追うのがファンのあるべき姿だろうけれども、ドラマでも一気見タイプなので申し訳ないけれどもジリジリしながら単行本化を待ってました。

    藤野可織の同名の連作小説集をコミカライズ。
    だいぶ原作の雰囲気そのままで、ビジュアライズされることでより分かりやすくなる。頭の中でぼんやり浮かんでたあれこれが、目の前に!

    掲載されているのは、ピエタとトランジの出会いである高校生のエピソードから、大学生まで。
    「ピエタとトランジ」前後編
    「高校教師飛び降り事件」
    「ファミレストイレ事件」
    「女子寮殺人事件」前後編

    ピエタとトラン

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    2023年05月07日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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    物語の設定やら登場人物の背景やら
    なかなか理解できなくて、
    ものすごく不安になりながら読み始める。
    ちょっとこつが分かってくると
    今度はそこに潜んでいたテーマに圧倒されてしまう。
    私が生きてる場所って、もしかしたら
    ものすごく不自由な世界なのではなかろうかと
    別の不安がムクムクと心に沸き起こって来るのだ。
    女性ならば思わず「そうだったのか!」と膝を打ちたくなる言葉がたくさん出てくるのだけれど
    男性はこの物語をどう読むのだろう。
    特に「スカート・デンタータ」・・・
    感想を誰かにきいてみたいものだ。

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    2023年05月01日
  • 爪と目

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    ネタバレ

    幼児の「わたし」を語り手に、母の死と、父と「あなた」の(再婚を前提とした)同居が語られる。「あなた」が「わたし」に(というよりは周囲の人間すべてに)心から親密な関係を築けないことを傷のついたコンタクトレンズやほぼ見えない裸眼で表象し、「わたし」もコミュニケーション機能の不全に陥っている様を噛んで尖った爪で表す。

    たしかにホラーだこりゃ怖い。
    どのような話かがつかみきれない序盤からすでに相当怖い。すべての文章に「ひっかかり」を覚えるのだ。語り手の「わたし」は自分の心情を一切語らないのに、「あなたは~思った」と「あなた」の行動・心情を断定的に語る。それだけで「これは絶対に誰も幸せになれないタイプ

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    2023年05月01日
  • ピエタとトランジ

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    ネタバレ

    高校2年生の時、ピエタの学校にトランジが転校してきた。地味だけど愛想のいいトランジは天才で、そうして殺人を引き起こす特殊な性質を持っていて、ピエタの彼氏の殺人現場を見ただけで犯人を推理してしまうし、ファミレスで勉強しているだけで周りが血の海となる。
    このファミレスの話から始まるのだけれど、高校生がファミレスで勉強するという比較的ありふれたシチュエーションなのに、クリームソーダが憧憬の象徴だよねという同意を取りやすい長閑さの話なのに、机に突っ伏していたピエタが全く突然、誰かに頭を持ち上げられて首にナイフを刺されそうになるというとんでも展開となる。なんかだらだらはじまったな〜面白いのかな〜なんて読

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    2023年04月22日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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    青木きららという女性がキーパーソンとなる短編集。
    どの話にも青木きららが登場するが、同一人物ではなく、話自体にも繋がりはない。しかし、どの物語も、同じような空気をまとっているような気がした。
    静謐だが、どことなく不安。
    きっと不安に感じるのは、読者である自分たちが普段気づかないようにしている不条理や未知のものを、あえて全面に押し出しているからだろう。
    社会にあらがうことなく受け入れ、そこでの不満はあれど不都合はないくらいの幸せを享受できれば良しとする「トーチカ」。
    未知のものに対して、ささやかな抵抗を試そうとする「積み重なる密室」。
    この2篇が特にお気に入りの話だった。

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    2023年04月11日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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    はじめて読む作家。
    現代作家をもっと読んでみようキャンペーンの一環で手に取る。

    読み始めてすぐには不条理小説なのかな、と戸惑う。
    二話目、三話目に読み進めてやっと外格が掴めてきた。
    青木きららという名前の周辺にある、主に女性の上に起こるさまざまな現象と現代の世界との摩擦。
    『花束』、『幸せな女たち』、『愛情』のところが面白かった。
    フェミニズム文学、と括られてしまうのだろうけど、この本をそんなふうに束ねないで、と思った。
    『幸せな女たち』の、結婚における苗字のくだりも泣けてくる。
    いま読めて良かった。
    毎日毎日みんなが感じていることをうまく言い当ててくれたことに感謝。

    短編集が最初のトーチ

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    2023年03月10日
  • ピエタとトランジ

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    ネタバレ

    「死ねよ」「お前が死ねよ」という会話にこんなにぐっとくることある?
    お互い以外がどんどんいなくなる、究極の「セカイ」系かも。

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    2023年02月19日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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    短編集。
    ちょっと不思議且つ怖いような世界観で、どの短編にも「青木きらら」という名の人物が出てくる。名前が同じなだけで各短編のきらら達は何の関係もないが、まず、ちょっとインパクトのある名前だなと思う。
    苗字が「青木」だからこそしっくりくるというのに共感。「大久保きらら」だと何だか語感が悪い気もする(全国の大久保きららさんごめんなさい)。

    「スカート・デンタータ」が一番面白かった。スカートが痴漢の指を食い破るという過激な犯行に及ぶのに、誰もがそれを肯定している世の中で怖かった。そりゃもう履くしかないよね、自衛のためにも。夜な夜なスカートの歯をブラシで磨く人達を想像すると奇妙だが、皆がやるように

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    2023年02月01日
  • ピエタとトランジ

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    「……私の近くにいるとみんなろくな目に遭わないから」頭脳明晰な探偵トランジと親友で助手のピエタ。トランジは周りに殺人事件を誘発してしまう体質の持ち主(本人は望んでおらず手を出してもいない)であるゆえ、2人の行く先々で人が死んでいく。時を超え、国境を超え、デストピアを駆け抜けていく壮大な物語。『おはなしして子ちゃん』に収録されていた同名短編が独立して長編になったのが文庫化されたというので読んでみました。凄く面白かった。バタバタと人が死んでいく…という設定は本来私は好みでは無いのですが、ピエタとトランジの二人の関係性の魅力が輝いていてそちらの楽しさが勝っていました。いわゆる百合なんでしょうけど二人

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    2023年01月18日
  • 青木きららのちょっとした冒険

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    さまざまな「青木きらら」たちの物語を集めた短篇集。シュールでユーモラス、そして少しほっこりするかもしれない読み心地の一冊です。
    お気に入りは「スカート・デンタータ」。ある日痴漢に対して文字通りに牙をむいたスカートと、そのおかげで強くなってゆく女性たち。その状況に憤慨し苦悩する痴漢の主人公。もちろん痴漢はダメですよ。こんなことが起こったとしたら、多少はいい気味だとも思います。だけれどまるで被害者であるかのように悲哀を切々と語る主人公の姿がもう面白くって仕方がありませんでした。違う、悩むのそこじゃない。
    「花束」」「消滅」はシュールな光景と、愁いを抱えた物語の対比が印象的でした。無数の花束や無数の

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    2022年12月20日
  • ピエタとトランジ

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    ネタバレ

    探偵のように頭が切れるが、関わった人間がみんな死ぬか殺人犯になるかする特異体質のトランジ。その親友のピエタ。二人は周囲に巻き起こる事件を解決したり、わざと犯人を逃がしたりして異常な日々を楽しく過ごしていたが、ピエタがもう一人の友人をトランジに紹介したことで、徐々に世界の均衡が崩れはじめる。青春ミステリーみたいなポストアポカリプスSF。


    長く続く探偵シリーズものでよく言われる、「これって探偵自身が殺人事件を誘発する死神体質なんじゃないの」みたいなやつ。あれが実際一人の女の子に備わっていて、しかも他人に感染するという設定。だから高校時代に運命の出会いを果たした二人の青春ミステリーみたいに始まる

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    2022年10月29日
  • ピエタとトランジ

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    ネタバレ

    短篇集「おはなしして子ちゃん」に収録された「ピエタとトランジ」が帰ってきた!
    単行本版の書名は「ピエタとトランジ〈完全版〉」だが、文庫化に際して「ピエタとトランジ」と改題。
    「奇想の作家」として凄まじい短編ないし中編を続々発表してきた著者にとって、たぶん最長の作品ではないか。

    テーマや核心に関しては、ネット上の著者のインタビューや、山内マリコの「家父長制を殺しに来た」という書評(すごいタイトル)に言い尽くされていると思う。
    個人的には、読んでいる最中は気づかなかったが意外としっかりコナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズをふんわり下敷きにしていることに驚いた(しっかり、ふんわり、って

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    2022年10月26日
  • ファイナルガール

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    ジャンルとしてはホラー?寄りの作品が多い印象。表題作『ファイナルガール』の淡々とした進み方が好き。あと、『プレゼント』のナツキのキャラクターも良い。

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    2022年08月19日