藤野可織のレビュー一覧
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「私は幽霊を見ない。」
という一文から各エピソードが始まる
題名通り作者には一切霊感がなく、自身の恐怖体験を集めた本ではない
…のにも関わらず、一つ一つの話に何とも言えない奇妙な読後感がある
旅行先の経験・他人から聞いた話・見た映画・いつもいく場所…
自分は何も見ない、見えない、聞こえない、感じない、ならばそれでおしまいとなるところ
飄々と淡々と、時にはクスッと笑えるような感性と想像力によって受け止めたものから思考を広げる
例え自身に怪奇現象は起きなくとも、不思議と不気味は「見出すもの」と改めて思えた
そして読む人間に作者の感じた「奇妙」をお裾分けしていただけるのは有り難い
各エピソードは短く、一気読みもできるし
1日1エピソードという楽しみ方もいいかもしれません
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Posted by ブクログ
幽霊を見たいけど見ることができない著者が、周りの人たちから怪談を蒐集していくエッセイ。
著者の語り口がとても面白くて笑いながら読めるけど、蒐集した怪談はなかなかゾッとする話もあって、笑いと怖さの塩梅が絶妙だった。
最後の「私は今も幽霊を見ない」の本当にラストの老夫婦の話が一番ゾッとしたかもしれない。
人間だとしてもだいぶ怖い。
映画をみると必ず途中でとまってしまう人の話も怖かった。怖いというか嫌だなという気持ちのほうが大きいかもしれないけど。
本を読んだり映画を観ているときに自分が幽霊のような気持ちになる、というのはよく理解できた。
私もそう思うし、それがとても心地良い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ3歳児の「わたし」が明らかに乳幼児を超えている違和感は強烈なのに、飲み込まれるようにして読み終えてしまった。
何が起きているのか明確に分かるような作風ではないのだけれど、随所に気味の悪さと不快感がある。嫌な音を耳元で鳴らされ続けているような、胸の内を爪でカリカリされているような。
なんでこんなに自分のこと以外興味関心が特にない人達のふるまい、様子に解像度が高いのだろう。
ただ図太さというのは、誰しも多かれ少なかれ持っていて、自分にもあるかもしれない無神経さを拡大して見せられている気分になるからこそ、不快感を持つのかもしれない。
「わたし」の元々の母親もその類で、ブログに出す部屋をお洒落にするため度々「わたし」をベランダに閉じ込めており、「わたし」がやり返した結果がベランダでの凍死なのではという考察を見かけたのがしっくりきた。
もっと知りたい気がして、久しぶりに読み終わったあと他の人の考察や作者インタビューを見漁ってしまった。
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購入済み
読むのに気力のいる本だった
息子が中学にあがり、性教育を考えると男性視点の情報では難しいと思う事が多々ある
SNSでこの本のことが流れてきて書評を見た時、長男の女性に対する理解に何かしら寄与するかと思い、つい反射的に購入した。
男より女性の生き方はある意味で難しいが、性を持ち出すと安易に楽な選択を選ぶこともできる。
でも、それを選ぶと多くの場合、後でツケがまわる。だから、安売りするな、という言葉を親の世代は言う。
でも、若い世代が持て余す感情は大人の説教なんて聞き入れない。で、大人になって、同じように若い世代に言う。
そこに使える武器があってもそれを使わないって難しいこと。男が腕力で相手を従わせる選択をなかなか選べないのにどこか似てる。
それでも、男は無言の圧力を与えてる。そして、女性も無言の魅力を巻き散らかしてる(人もいる)
本当に、性というものは複雑で厳しいものだ。
女性の、子を成す性の役目は特権でもあり重しでもある。セックスは多様な価値を持ち、時に持て余し、崇高なものにもなり娯楽にもなりうる。。
そんな世界で、女性は男にどう見られるかに迷い陳腐化する。パンツを売り、安易に自己承認も得ている一部の女性を男が「女はずるい!」と叩く。
でも、そんな事ができる性の生き方は辛いだろうな、とも思う。
男と女、どちらが辛いと比較するものじゃないけど、男よりも女性の辛さは複雑で、どれを選ぶにしても(選ばないにしても)自己責任を押し付けられる生き方は厳しいと思う。男の辛さも簡単ではないけども、女性は年齢とともに役割と身体がめまぐるしく変わり、それにつられて求められ方も変わる。
僕は、見ず知らずの女性に数万円払えるほどお金もないし、あったとしても自分の為か家族の為にお金を使おうと思う人だけど、世の中にはお金で女性を買う事に躊躇のない人がいるのも知ってる。ひょっとすると僕がいつも遊んでいる連中にもいるのかもしれない(彼らがそんなにお金をもってると思えないが)
それだけのお金があるのは一部の男なんだろうけど、多かれ少なかれ男は性の対象として女の人を見てるというのは分かる(逆に比べればその対比のバランスの悪さが本当に悲劇でしかないと思う)。そして、女性は男性の欲望を当たり前として受け止める事に疲れ果てて諦めて、で、今、怒りを示している。
いろんな価値観がアップデートされている。「ねーちゃん、えぇケツしてんな」は失礼な事。
そのアップデートがで -
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爪と目の作家と知って腑に落ちました。常識が歪んでいくちょっと気持ち悪い感じ、うんうん、こんな感じの読み心地だったね〜と懐かしく思い出したけど、爪と目より大分読みやすかったのは人称が二人称じゃなかったからかしら??
短編集でそれぞれ完全に独立した話なのですが、それぞれ読み進めていくと、「どうもこの物語世界は、こっちの世界の法則が一部通用しない世界線らしいぞ」と薄々勘付くに至ります。
わずか数語・数行でその説明がなされた時の気持ちよさと、物語世界の法則のキミ悪さの塩梅が絶妙。
◉テキサス、オクラホマ
生肉色のパーカーと、ドローン達の保養所。
◉マイ・ハート・イズ・ユアーズ
はかなげな夫とたくましい妻の生涯一度の子作り。
◉真夏の一日
ギャラリー、ほくろ、変化した私。
◉愛犬
隣人の家にかつて住んでいたはずの犬の痕跡は跡形もなく消え去っていた。
◉息子
非常階段の南京錠がかかった扉の向こう側にいる息子。
◉ドレス(表題作)
ドレスという名のそのブランドでは、奇妙なアクセサリーを扱っていた。どう見ても珍妙にしか見えない指輪を愛用する恋人に違和感を覚える恋人は、やがて街中の女性達の間でドレス製作のアクセサリが流行っていることに気付き…
◉私はさみしかった
毎日痴漢の被害にあうという友人を痴漢し、私だけに挨拶をしないゲイに挨拶させるべく笑顔で詰め寄る私の孤独。
◉静かな夜
「家の中に誰かいる」そう怯える姪を寝かしつけた私は、気付いてしまった。確かにレンジフードの中から誰かの声が聞こえるのだ。 -
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短編集『おはなしして子ちゃん』に収録されていた「ピエタとトランジ」のその後を描いた作品。
主人公の2人のヒロインのキャラクターが立っているので、いくつかちょっとした事件を並べておけば、場面設定を大きく変えずに連作短編として十分一冊の本にまとまったと思うんだけど、あえてそれを行わずに2人に年を重ねさせ、世界を巻き込んだディストピアに発展していく形にしたのはとても良かったと思う。
探偵を主人公にしたミステリー小説だと、なぜかその周囲で必ず事件が起きるというある種の「お約束」があるんだけど、本作はミステリーの体裁をとっていないにもかかわらずその設定を踏襲しているのが、何とも皮肉めいていて面白かった。
個人的には意図的に表題作をラストに持っいく必要は無かったような気がするのと、途中ちょっとダレた印象もあり、本作が藤野さんの代表作かといえばちょっと違うと思うけど、それでも十分楽しく読めた。 -
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大好きな『ピエタとトランジ』が漫画化されたって? そりゃ、読まなきゃ嘘だろう。連載を追うのがファンのあるべき姿だろうけれども、ドラマでも一気見タイプなので申し訳ないけれどもジリジリしながら単行本化を待ってました。
藤野可織の同名の連作小説集をコミカライズ。
だいぶ原作の雰囲気そのままで、ビジュアライズされることでより分かりやすくなる。頭の中でぼんやり浮かんでたあれこれが、目の前に!
掲載されているのは、ピエタとトランジの出会いである高校生のエピソードから、大学生まで。
「ピエタとトランジ」前後編
「高校教師飛び降り事件」
「ファミレストイレ事件」
「女子寮殺人事件」前後編
ピエタとトランジは、元々の名前があるはずだけれど、ここだはそんなの一切言及されない。ピエタは、マリアが(一見)死んだ(ように見える)キリストを抱くマリアを描いた絵を指していうものだそうで、対するトランジは、中世ヨーロッパの貴族たちの墓標に据えられた、死体が朽ちていく様を表した像を指す。どちらにしても強烈な死のイメージと分かち難いもので、それを自称する二人の周囲は、常に死に満ち満ちている。ちなみにトランジは本名を捩っていることが分かるが、果たしてどんな名前なのかな(笑)。
小説が全部コミカライズされているわけではないのだけれど、欠落が感じられないくらいにスムーズに読めた。けど、この作品をきっかけに小説に行く人も結構いるんじゃないかしら。彼女らが愛おしくて、みんな知りたくなるし。小説は、単行本のもよかったけれども、文庫のデザインがまためちゃ素敵なので、持っているだけでも幸せになれるよ。
小説での最初のエピソードが書かれたときには、すごく面白いし、楽しいし、好き、と思ったけれども、その時に胸の奥にあった違和感を原作者の藤野さんは、この本の巻末にもコラムとして書いてくれている。
最強バディなのは女子高生や女子大生だからじゃないし、そんな記号なんかなくたって、彼女らは最強なんだ。世界が滅ぼうとも、最後まで彼女たちは力強く歩いていくはずなので、次巻が待ち遠しい。
キスガエさんのことは、多分、何かの小説の表紙絵などで知っていて、漫画化の話が出たときにこの人なら原作を損ねずよい漫画になるだろうと思ってたけれど、期待に違わず、で嬉しかった。
さて、原作をまた読み返す旅に出るとするかな。 -
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ネタバレ幼児の「わたし」を語り手に、母の死と、父と「あなた」の(再婚を前提とした)同居が語られる。「あなた」が「わたし」に(というよりは周囲の人間すべてに)心から親密な関係を築けないことを傷のついたコンタクトレンズやほぼ見えない裸眼で表象し、「わたし」もコミュニケーション機能の不全に陥っている様を噛んで尖った爪で表す。
たしかにホラーだこりゃ怖い。
どのような話かがつかみきれない序盤からすでに相当怖い。すべての文章に「ひっかかり」を覚えるのだ。語り手の「わたし」は自分の心情を一切語らないのに、「あなたは~思った」と「あなた」の行動・心情を断定的に語る。それだけで「これは絶対に誰も幸せになれないタイプの小説だ」とわかるし、「ひっかかり」があるだけにじっくり読まされてしまう。そしてこの断定的な口調のわけが、最後の"あとはだいたい、おなじ。"で推測され、なんだか自分まで地獄におとされたような気持になったのだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ高校2年生の時、ピエタの学校にトランジが転校してきた。地味だけど愛想のいいトランジは天才で、そうして殺人を引き起こす特殊な性質を持っていて、ピエタの彼氏の殺人現場を見ただけで犯人を推理してしまうし、ファミレスで勉強しているだけで周りが血の海となる。
このファミレスの話から始まるのだけれど、高校生がファミレスで勉強するという比較的ありふれたシチュエーションなのに、クリームソーダが憧憬の象徴だよねという同意を取りやすい長閑さの話なのに、机に突っ伏していたピエタが全く突然、誰かに頭を持ち上げられて首にナイフを刺されそうになるというとんでも展開となる。なんかだらだらはじまったな〜面白いのかな〜なんて読んでたら。二度読みしてしまった。
以降も、ピエタとトランジが歳を重ねていくなかで必ず何かしらが起こるし、さまざまな人が現れては消えていく。物理的にも。でもトリックは語られず、動機を語る。わりとあっさり。
探偵が出るけど推理小説ではなくて、特異体質持ちのトランジだけどそのトランジと単純に友人としてつるむピエタをみているのが、最高に楽しかった。 -
Posted by ブクログ
「……私の近くにいるとみんなろくな目に遭わないから」頭脳明晰な探偵トランジと親友で助手のピエタ。トランジは周りに殺人事件を誘発してしまう体質の持ち主(本人は望んでおらず手を出してもいない)であるゆえ、2人の行く先々で人が死んでいく。時を超え、国境を超え、デストピアを駆け抜けていく壮大な物語。『おはなしして子ちゃん』に収録されていた同名短編が独立して長編になったのが文庫化されたというので読んでみました。凄く面白かった。バタバタと人が死んでいく…という設定は本来私は好みでは無いのですが、ピエタとトランジの二人の関係性の魅力が輝いていてそちらの楽しさが勝っていました。いわゆる百合なんでしょうけど二人の間には性的関係が一切無いのがまた良いですね。
私に絵を描く才能があれば二人のファンアートを描いてみたいところです。表紙の絵は帯を取ると髑髏になるのがすごいですね。