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Posted by ブクログ
かなり好き!女同士のバディもの。シスターフッドとも言えるけど、“バディ”の方がしっくりくる。
ピエタとトランジ以外の登場人物は入れ代わり立ち代わり出てきてどんどん死んでいくけれど、2人が楽しそうならもうそれでいいねと思えるぶっ飛んだ本。倫理観なんてない。でもこれでいい。これがいい。だって2人が最高だから。
女子高生のままお話が進むのかと思いきやだんだん2人も歳をとっていく。
歳をとっても高校生の頃の変わらない温度感のやり取りをする2人が最高!一時的に離れることはあっても結局二人でいることを選ぶ。選んでくれる。
本当に仲のいい女同士の会話ってこういう感じだよな……としみじみ思う。
こんなに愛に溢れた「死ねよ」「おまえが死ねよ」がありますか?
ピエタがトランジのことを気に入っていることはもちろん、トランジだってピエタのことをいたく大切にしていることが伝わってくるのがとても良い。二人の間にあるのがあくまで友情であり、相棒であるという感覚なのも最高。
全編通してかなり血みどろだし、存在するだけで周辺に死を振りまいてしまうだなんてわけが分からない設定だし(しかも感染もする)
でもそんな世界でも2人のやり取りはずっと変わらないこざっぱりさ。かっこいい。
(トランジがかっこいいのは言うまでもないけれど、ピエタも相当かっこいい。)
読み終わるのが惜しいエンターテインメント小説だった。同じような事件が繰り返し起きたっていいから、2人のやり取りをもっとずっと見ていたかった。
Posted by ブクログ
792
352P
藤野可織
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』で第2回フラウ文芸大賞を受賞。他の著作に『ファイナルガール』『ドレス』『私は幽霊を見ない』『来世の記憶』などがある。
わたしがこの世で一番好きな小説は「ピエタとトランジ」です 2人の女子高生がやがて死を呼ぶババア探偵バディになって世界を滅ぼす話……
ピエタとトランジ (講談社文庫)
by 藤野可織
臨時休校中で、私たちは真っ昼間からずっと四人用のボックス席に居座っていた。ランチに彩り野菜のドリア(トランジはうどん)を食べ、夕飯にとろ~り卵の濃厚カルボナーラ(トランジはそば)を食べたほかは、ドリンクバーでむりやり間を持たせ続け、私はひたすらメロンソーダばかり飲みながらトランジの指定した問題集を解き、トランジはひたすらジャスミンティーばかり飲みながら読書をしていた。
いっぽうの私とトランジは、ほとんど会話を交わさなかった。トランジが問題集をめくり、「ん」と設問を指差してこっちへ押しやる。私は解く。解いているあいだ、トランジは読書。解けたら、あるいは解けなくて降参したら、「ん」とノートをあっちへ押しやる。するとトランジは別の問題集の中から私が次に解くべき設問をすでに見出しており、「ん」とそれを押しやる。私はもう一冊のノートでそれを解きにかかり、トランジは採点をやる。出来ていない箇所には、解答と解き方を走り書きする。さっさとそれを終わらせてしまうと、トランジは読書に戻る。
その点、私はちがう。私は髪を茶色に染めてふわふわのパーマをかけたり巻いてみたりうしろを刈り上げてみたり、やりたいことは片端から試しているし、化粧品が大好きだからアイラインもアイシャドウも口紅もハイライトやコンシーラーも新作が出たら勇んで買いに行き、高い美容液を片端から試して肌の張りや潤いを楽しんでいる。四十代の私はぜんぜん悪くない。むしろ、三十代の終わりからまぶたがたるんで、奥二重だったのがはっきりとした二重になってちょっとラッキーだ。それに、若いころ大きらいで心底呪っていた頰のむにゅっとした丸みが加齢とともに削げ落ちて、頰骨が荒涼とした崖のようにあらわになってきたところも好みに合っている。セルフイメージと自身の姿が近づいてきた気がする。
「あー」と私は言った。「シオシオだ」何十年も口にしていないあだ名がするっと出た。シオシオ。いた、そういう子、たしかに。クラスはいっしょになったことはない。でもたぶん一度、チア部で趣味は料理なシオシオのもう一つの趣味がアクション映画鑑賞で、それを彼氏の影響だと勘違いしていもしなかった彼氏が誰かを探りまくってた別のクラスの男子が、思い余ってシオシオに直接尋問するのになぜかカッターナイフを片手に持ってたところを私がジャン=クロード・ヴァン・ダムばりの華麗な足さばきでキックして助けたんだった。そのあと、シオシオは誰も殺さず誰にも殺されず、ふつうに高校を卒業したんだっけ?
私は彼氏から、異常な記憶力を持つ知的障害者の話を聞いたことがあるのを思い出した。そういう映画があるんだって。すっごく泣けるからお前も見ろって、泣きそうな顔で長いこと話してくれた。トランジはふつうの女の子に見えたけど、どこかに障害を抱えているのかもしれない。そういう人にはやさしくしなきゃいけない、彼らのすばらしい能力はみんなで大切にしなきゃいけないんだって彼氏が言ってた。
私はあらためてトランジの全身をよく見た。真っ黒で地味な髪はきれいにとかしてあり、耳にピアスの穴は開いていない。シャツのボタンは上まできっちり留めている。袖口のボタンまで留まっている。スカートは校則どおり膝丈で、紺色のハイソックスを穿いた脚はけっこう細い。私より細いかも。胸はあんまりないみたいだった。私のほうが大きい。顔は化粧はしてなくて、眉だけそれなりに整えてある。化粧してないわりには、自前の 睫毛 が長くてまあまあかわいいかもしれない。つまり、連れて歩くのに恥ずかしくないレベルはクリアしている。それに加えて、彼氏は茶髪でばっちりメイクの子がタイプだから、彼氏を盗られる心配がないっていうのも重要なポイントだった。
トランジはまだ十七歳なのに、たくさんの死体を見たことがあった。殺人、事故、自殺、なんでも見ていた。きれいな死体も、腐乱死体も、バラバラの死体も。液状化したやつも見たことがあるらしい。人間って死んでから長いこと放っておかれると、床の染みになっちゃうんだって。私は、この前の元カレのと、小学生のときに死んだおじいちゃんの死体くらいしか見たことがない。おじいちゃんは病気で死んだ。私が病院に着くとおじいちゃんはものすごく黄色くなっていて、お葬式の日にはもっと黄色くなっていた。
「うわ!」私は手をたたいて笑った。もともと斉藤は好きじゃなかった。私のことを見た目で判断して、勉強ができないって思い込んでたけど、私はわりと数学が得意なんだ。私がテストでいい点を取ると、カンニングしたんじゃないかって遠回しに嫌みを言った。古文の橘だっていやな奴だ。ひょろっとして眼鏡をかけてて、一部の女子には草食系だとかなんだとか言われて人気があるのはたしかだけど、まるで全女子生徒に好かれているみたいな自信たっぷりの態度をとる。
Posted by ブクログ
頭脳明晰なトランジは殺人事件を誘発する体質の持ち主で、周囲でどんどん人が死んでゆく。そんなトランジと、彼女の助手であり友人であるピエタのロマンシス小説。
『おはなしして子ちゃん』に収録されていた『ピエタとトランジ』の続編であり完全版です。
ずっと文庫化楽しみにしていたので、珍しく発売してすぐに読みました。
短編集に収録されていた話はピエタとトランジが高校生の時初めて出会った時の話で、こちらはその後の2人、高校を卒業してから大学、就職などのライフイベントを経て、老人になるまでの人生を描いています。
もちろんその間でも2人の周りでは人がどんどん死んでいき、高校の卒業時には全校生徒が半数以下になっていたり、大学の寮もほぼ全滅。2人の存在は世界の危機へと繋がっていきます。
見ようによっては、とても綺麗な滅亡の形かもしれない。滅ぶのは世界ではなく、人間だけだから。
そんな右を向いても左を向いても事件や事故が起こる世界の中、どこまでもどこまでも2人で駆け抜けてゆく、疾走感のあるロマンシス小説。
とんでもない世界観なんですが、2人の関係性、互いが互いにとってどうしても必要な存在であるという姿にぐっときます。時を経ても変わらない関係・気持ちと変わっていく世界の対比も美しい。
老人になった2人も出てきますが、それでも最強の「ガールズ小説」だと思います。
ピエタもトランジも、森ちゃんという新しく出てきたキャラクターもそれぞれとても魅力的なのですが、私は特にピエタがとても好きで、最初の短編でピエタは若く可愛く奔放で、若さゆえにトランジとトランジの引き寄せる破滅に惹かれるようなイメージで描写されているのかと思っていたのですが、年をとってもどんな経験を積んでも変わることなく、どこまでも美しく自由で奔放で、「今までの人生で今が一番輝いてる!」と自信を持って言えるピエタがとても素敵でした。
表紙がピンク色の背景のドクロの隠し絵というのも、甘さと不気味さがあって可愛いですよね! ちょっとラノベ感のあった単行本の表紙も良かったですけど、こちらの方がイメージに合ってる気がします。
Posted by ブクログ
それは高校2年の春。私のクラスに転入生がきた。きれいに櫛の通った長い黒髪を持つ彼女は、膝丈のスカートと首元までボタンがきちんと留められたブラウスという規則通りの制服姿で、担任の隣に立ち、教壇から私たちを見下ろしていた。
第1印象は、地方都市の郊外にある退屈な高校にぴったりの地味な子、というだけだったけれど……。
天才的な頭脳と特異体質を持つ探偵トランジと、助手として彼女を支えるピエタの破天荒な生涯を描くサスペンスロマン。
◇
私の真の人生は、高校2年生の春にはじまったと言える。それ以前の私のことなど書くに価しないものでしかない。
トランジと過ごした人生はそれほど強烈だった。
私が初めてトランジを見たのは、私の通う高校に彼女が転校してきた日だ。
そのときは私もまだ彼女に関心がなく、ただ退屈なこの土地にぴったりの地味な子だなと思ったぐらいだった。でも、翌日からその印象は一変してしまう。
きっかけは、私が学校をサボって当時つきあっていた10歳上の彼氏の家に行こうとしていた朝、同じく学校をサボってふらふらしているトランジに偶然会ったことだった。
転校してきて早々にサボりかよと思って話してみると、彼女の反応は私がそれまで知っている子とぜんぜん違う。気になった私は彼氏の家にトランジを連れて行くことにした。彼氏も面白がるだろうと思ったからだ。
ところが、彼氏の家に着きチャイムを押しても応答がない。自分が来るのはわかっているはずなのに、と不思議に思って試しにドアを引くと鍵が開いている。不穏さを感じつつ中に入って見たら、彼氏が死んでいて……。 ( 第1章「メロンソーダ殺人事件 ) ※全5章。
* * * * *
第1章冒頭で起きた事件。
恋人の無残な姿を見て取り乱すピエタとは対照的に、トランジは冷静でした。
死体の様子や部屋のあちらこちらの状態をすばやく調べてまわったトランジは、これが殺人事件であり、犯人は誰なのか、なぜ殺したのかを推理します。
さらに、動揺して現場を踏み荒らしたり指紋を付けたりしてしまったピエタに適切なアドバイスをしたあとで警察に通報するなど、テキパキと事後処理を行います。
やがて、警察の捜査で事件が解決してみれば、判明した事実はトランジが推理したとおりでした。
そんなトランジに魅せられたピエタは、積極的にトランジとの仲を深めていくのです。
ここまで読めば、てっきり女子高生コンビによる探偵もの連作短編ミステリーだと思います (私もそう信じて疑いませんでした) が、まったく違いました。
確かに各章で中心となる殺人事件はトランジによってすべて解明されるのですが、状況やわずかな証拠を分析して推理していくという、ミステリーとして欠かせない過程の描写がありません。
しかも、犯人が殺人に至る動機が、第1章では十分に理解できるものだったのに、章が進むに従って理解に苦しむものへと変わっていくのです。 (『異邦人』のムルソーが犯す殺人の動機よりも理解が困難です )
だから、寓話か何かを読んでいる感じがしました。
かと言って、決してつまらないわけではありません。
物語がかなりのスピード感で進んでいきますし、殺人事件や死体を前にしてもまったく動じないトランジや、第1章以外は動じなくなったピエタに、頼もしささえ感じるからです。
もう少しだけ、作品の魅力について触れておきます。
主人公の2人。名探偵トランジと、助手にして事件記録執筆者のピエタ。作者の藤野可織さんによると、ホームズとワトソンへのオマージュでもあるようです。
ですから、例えば、ホームズにマイクロフトという兄がいるようにトランジには「舞(マイ)」という姉がいたり、ワトソンが医師であるように、ピエタも医師免許を持っていたりします。
また、ホームズにはモリアーティという宿敵がいますが、トランジにも森(モリ) ちゃんという難敵がいるのです。
この設定だけでも、なにかワクワクしてきます。
さて、このトランジも天才的頭脳で数々の事件を解決する名探偵であるのですが、ホームズとは決定的な違いがありました。
それは「殺人事件を誘発する体質」を、トランジが持っていたことです。
トランジの周囲で、次々と人が死んでいくのですが、もちろんトランジが直接手を下して回っているわけではなく、殺人犯は別にいて、しかもトランジとは何の関わりもない人間だったりします。
一方、被害者はと言うと、最初のうちはトランジと同じ空間にいる人間、例えば学校内の生徒や職員、またはその知り合いでした。
トランジが卒業するまでの2年間で高校の生徒数は半減していたことを考えると、猛威と言っても学校閉鎖になるインフルエンザ程度 ( それでもスゴイですが ) です。
ところが、年齢を重ねるにつれトランジの殺人誘発力は勢力を広げていき、最終的に世界中を席巻するに至る ( 大氷河期に匹敵する脅威です ) というのが大筋です。
その大筋は、中盤で動かせないものとして読めてしまうのですが、怖いもの見たさとどんでん返しへの淡い期待とで、先を読まずにはいられなくなるのです。 ( トランジの殺人誘発力をピエタが増幅させているのではないかとも見られていましたが、それについては詳述されませんでした )
芥川賞作家による探偵小説。味わったことのないテイストで、なかなか新鮮に感じました。
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小説・文芸
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