千早茜のレビュー一覧
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森閑とした気味の悪さの物語。
登場人物それぞれの家族が錘のように、被さってしまう。
あとがきにあるように、この物語は不健康かもしれない。
こういったひとたちにとって、家族という存在や、子どもを産むという行為はまるで枷や呪いのようなのだ。
そして、こういうひとはどんなに楽しそうに仕向けられても、どこか世界や他人が不穏であると感じてしまう。
P.124『「なんか嘘くさいじゃない。あの夢みたいな場所も、あそこに連れて行けば喜ぶと思っている親も。きらきらしているのは表面だけで、中は空っぽな気がする。」』
P.128『「従業員も客もみんな笑っていて、何もかも楽しむだけに作られていて、遊び続けなくてはいけないような気分にさせられる場所だと思った。(・・・)心から楽しめる人もいるのだろうけど、私は小さい頃からそうじゃなかったな。怖いし、なんか、すごくさ みしかった。」』
こうした恐怖心やさみしさは深く、自他を知らず知らず傷つけてしまう。
他者との距離感をどうしても掴みにくくなってしまうのだろう。
美里はこれに加えて女性性という枷も加わり、出産した友人の姿を薄気味悪くとってしまう。
出産直後の原初的没頭の姿も気味が悪いのだろう。
まりも君も知らず知らず他者を傷つる。
p.144『嘘をついても本当のことを言っても怒られてしまった。おまけに怒らせただけでなく傷つけてしまった。』
この物語は家族という呪いの物語であって、その呪いは「家」という家族の器に湖のように溜められ、その湖は深く一度沈むと浮き上がれないように、のしかかる。
物語後半のあおの湖はこうした家族という繋がり、ひととひとの境界という暴力的な側面の象徴なのかもしれない。
あおの湖の逸話は大黒柱としての男性によって作られたものであるのも暴力的で気味が悪い。
しかし、本当に気味が悪いのはまりもの母親(?)である香穂子だ。
空虚で中身のない、まるで気配だけの存在のようだ。
P.98『「気配はあるけど、顔は見えない」』
しかし、その気配は生々しい。
森閑とした、気味の悪さが漂う物語。 -
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面白かったです。
昏く、でも鮮やかな赤も感じる世界でした。
近すぎる父と娘、そして娘の小波と奪い合う人たち。
「アカイツタ」では堕ちていく人たちに魅せられて、澱んだ息苦しい空気でした。
「イヌガン」では小波は澪という新しい名前で新しい人生を選んでいきます。小波の気持ちわかる…となったので、耀と幸せになれたらいいなと思いました。
わたしの「好き」はどんな「好き」だろう?改めて考えてみると難しいです。
「人はわかり合えない」、というのは真理だと思うので、わたしも毎日そこから始めます。
冒頭の独白は多分、土の中の真壁教授のものなのでしょう。凄絶で綺麗。 -
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ネタバレ*村山由佳、坂井希久子、千早茜、大崎梢、額賀澪、阿川佐和子、嶋津輝、森絵都―当代きっての人気女性作家8人が「女ともだち」をテーマに豪華競作!「彼女」は敵か味方か…微妙であやうい女性同士の関係を、小説の名手たちが描きだす逸品ぞろいの短編小説集。コワくてせつなくて愛しい物語の世界をぜひご堪能ください*
前半は女同士の執着や束縛が続くありがちな展開でしたが、後半は力量のある作家さんの本領発揮で、一味違う物語を堪能しました。
特に気に入ったのは、森絵都さんの「獣の夜」。最初はハラハラしたものの、パプリカで大笑い出来る、いつでもあの頃に戻っていける、これこそが女の友情の真骨頂ですね。でも、これはひと歳取らないとわからないかも。型に嵌らず反旗を翻す二人がカッコよくて、痛快な物語。 -
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これも大阪で買ってきた一冊。
以前から読みたいと思っていた本です。
スカイツリーを見上げる下町のかたすみに、
ひっそりと息づく商店街がありました。
それがー『明日町こんぺいとう商店街』。
明日町こんぺいとう商店街を舞台にした7つの物語。
七人の作家さんのアンソロジー。
大島真寿美 『カフェスルス』
大山敦子 『あずかりやさん』
彩瀬まる 『伊藤米店』
千早茜 『チンドン屋』
松村栄子 『三波呉服店ー2005-』
吉川トリコ 『キッチン田中』
中島京子 『砂糖屋綿貫』
読んだことのある作家さんは、彩瀬まるさん、中島京子さんの二人だけ。
どの物語も心がほんわかします。 -
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街。
大山淳子氏の「あずかりやさん」がとても良かったので、"出身地"である、こんぺいとう商店街のことをもっと知りたくなりました。
個人商店が立ち並ぶ商店街は、現代では衰退の傾向にあるけれど、こんぺいとう商店街は、たたむ店あり、新しくできる店ありで細々と続いている。
家業を継いだ若者や、出て行ってまた戻ってきた者、新しい商売の形、幼なじみと小さな恋の話など、懐かしい雰囲気の中で語られる。
後に行くにしたがって、他の商店の名前が登場するようになって、箱庭世界が充実していくのが面白い。
一軒目『カフェ スルス』 大島真寿美
ほぼ還暦世代の演劇仲間が集まって、カフェを開くことになる。
バイトで食いつないで来た者ばかりなので、即戦力!
「スルス」はフランス語で「泉」
ちょっとお洒落なカフェができたと、なかなか繁盛。
二軒目『あずかりやさん』 大山淳子
一日100円で何でもあずかる、あずかりやさん。
開店のきっかけになった男が桐島透にあずけた物と、盲目の店主に本を点訳してくれる女性、少年に託された茶色いかばんの中身。
三件目『伊藤米店』 彩瀬まる
「米屋の息子がいい男になって戻ってきた!」と、桐子の周りで話題になる。
なんと、かつての同級生、「野球部の伊藤くん」だった!
おいしいおにぎりと、ひと時の幻想。
四軒目『チンドン屋』 千早茜
テレビが普及してCMがかかるようになるまでは、「チンドン屋」は貴重な宣伝手段だった。
今毘羅屋清治郎が語る、チンドン屋、今昔。
五軒目『三波呉服店――2005――』 松村栄子
着物を着る人が少なくなって、由緒ある呉服店も、卒中で後遺症が残る店主が帳場を守るばかり。
そこへ吹く新しい風と、人間国宝が染めた辻が花の着物の由来。
六軒目『キッチン田中』 吉川トリコ
「ヒナギク生花店」の娘・ひな菊が胸に秘める、「キッチン田中」のシェフ・修(おさむ)への思いのゆくえ。
七軒目『砂糖屋綿貫』 中島京子
砂糖屋の二階に下宿した、浅木耕太が見る、大家・綿貫徳次郎のシルバー・ライフと、耕太の後輩・キズナの謎の行動(耕太にとって)