【感想・ネタバレ】正しい女たちのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 絡め取られていくような因果の残忍性は、女たちの復讐のようにも思える。忘れられないような人生の一片が、そのときは輝いて見えて、儚くて、永遠のものにしたいようにも思えていても、時が経ち、幸福が普遍のものとなれば色褪せ朽ちていく。とどめ置くことはできないのだ、という事実が短編を読み重ねるのにあわせて、しんしんと心に募っていく。
 お気に入りは「幸福な離婚」。穏やかに流れる日々は別れという終着点の存在によって、ひとつひとつが重く取り扱われる。何気ない日常、感情が、女の視点によって四角く切り取られ、拡大され、印象的なものとなる。あたりまえになっていたものが、紆余曲折を経て手に入った特別なものだったと気付かされる瞬間は、どうしてこうも美しく思えるのか。きっと心の隅ではもう取り返しのつかないことに気づいて泣いているからだと思う。
 連作短編に仕掛けられた糸のつながりにはぞっとするものがある。けれど、読み終わった今、私には愛おしく思う心もある。いい話を読ませてもらえました。桐野夏生さんの解説も秀逸。

0
2023年12月02日

Posted by ブクログ

千早さんの文章は、文学的だけど硬くはなく、読み始めると話の中に吸い込まれてつい読み耽ってしまいます。立場の違う主人公たちの、心の動きを言葉にするのがとても上手いなと思います。
個人的には「海辺の先生」と「幸福な離婚」が好きです。

0
2023年11月28日

Posted by ブクログ

女性目線の、価値観を覗き見することができる短編集。千草茜さんの著書を初めて読んだけど、文章といい構成といい、話の展開といいすごく文学的でとても好みだった。どの話も、自分よりは年齢が上めな話だったから、そこを通して未来を見た感覚。主にこんな大人になりたくないけど、将来もそう思いながら生きてるんだろうな
客観視しないと、渦中にいることに気づけないもんなんだよね。「温室の友情」と、「描かれた若さ」が特に好きだった。

0
2023年10月29日

Posted by ブクログ

 三十路を迎えた4人の女性が登場する短編集。      
 「横にさりげなく置かれたバッグは、恵奈はセリーヌ、遼子はプラダで、派手ではないがどちらも今シーズンのものだった。二人はすごく美人でも人目をひくほど可愛くもないけれど、自分に似合うものを知っていて、その質を年々きちんと上げていく。【桃のプライド】)
 何気ないけれど、凄みのある文章。持っているバッグのブランドからは、都内で正社員として働く恵奈と遼子それぞれのキャラクターがなんとなく想像できる。また、堅実な道を進むふたりの「普通」であるが故の屈託のなさを感じさせるし、それが、モデルという不安定な職業につく環に残酷さを与えることも伺える。
 どの話にも、同質の者が集まるグループの中にいることへの幸福や、そこから逸脱することの喜びや恐怖が、共通して描かれているように感じられた。

0
2023年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

離婚が決まっている夫婦の残り少ない日々を描いた「幸福な離婚」が一番印象に残った。
別の人生を歩むことになって初めてパートナーの良さが見えてきたり、互いを思いやり穏やかな生活ができるようになるのが切なかった。
けれどこの時間が離婚後一人で過ごす日々を後押ししてくれるのだろうか。
あと痛快だったのが「描かれた若さ」。
女性は若いことがすべてだと言わんばかりの失礼な中年男が主人公の短編で、男性に年齢をあげつらわれて中傷された経験を持つ女性におすすめしたい。

0
2022年12月13日

購入済み

怖くて面白い

以前読んだことがあったのですがそれでも面白かったです。あまりにも度の過ぎた酷い内容が増えている昨今の小説の中でこちらはゾッとしたりヒヤリとしたりを読後楽しめる作品ばかりでした。購入して良かったです。

#シュール #怖い

0
2021年09月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

少しずつ繋がりのある短編集
細かい繋がりに気付けず読んでしまったところも
あったが、解説に繋がりについて書かれていて
もう一回読み返したくなった。

正しい女たち
タイトルの通り正しさについて書かれている箇所

なんとなく正しく生きたいと
去年から思うようになった私に
正しさを考えさせられるような気がした

0
2024年01月09日

Posted by ブクログ

海辺の先生が好き。自分のことはあまり語らないけど、静かに見守って導いてくれる大人がいてくれるって素敵なこと。

0
2023年12月15日

Posted by ブクログ

女ってなんなんだろう。
考えさせられる作品だった。
もっとドロドロしてるのかと思ってたけど女って美しい、そんな女としての人生を楽しんで美しく生きていきたいなって思った。
最後の解説で色々なところで交わってるところがあると分かったのでいつかまた読み直したい。

0
2023年10月22日

Posted by ブクログ

この小説に出てくる女たちの正しさは、多かれ少なかれわたしも持っているし、身に覚えもあり、それ故に怖くもあり、とても面白かった!

同じ塊だったと思っていたのに、いつの間にか別の塊になっていること、あるよね、、、


「描かれた若さ」だけ他の話と浮いてる感じだったけど、それがまたゾクっと痛快だった!
清水は失礼で最低で哀れな男だと思う反面、若さへの執着や老いへの恐怖など、女が自分にかけてる呪いもあると思った。

0
2023年09月28日

Posted by ブクログ

【2023年75冊目】
大好きな千早茜さんの短編集。やはり、湿度を伴った感情表現の仕方が好きで、一文一文を噛み締めながら読みました。短編集だけど、しっかり繋がっているのがお見事で、最後の話だけ男の人目線だというのもまた秀逸でした。時間を置いてまた読み返したい一冊です。

0
2023年06月29日

Posted by ブクログ

普段は隠している人間の本性や欲望が、ふとしたことをきっかけに表面化してしまう瞬間をリアルに描いていた。

0
2023年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

温室の友情
海辺の先生
偽物のセックス
幸福な離婚
桃のプライド
描かれた若さ

海辺の先生と桃のプライドがすき。
短編だけど、少しずつ繋がってるのもすき。
桃のプライドのMORIの言葉。
「わたしは桃娘にならなくては、と思ったの。
だからあなたたちのつぶやきを見るのよ。
あなたたちは求めるばかりで、求められることを考えていないから。あなたたちと同じことをしないために」

0
2022年12月28日

Posted by ブクログ

「女たち」と複数形になるとなんだか不穏な空気になってくる
いろんな女の感情が蠢いていて最初読むのが怖そうでなかなか積読から手に取れなかった連作短編集
最後の短編が女を若さでしか見ない「ババア」と見下す男が仕打ちを受ける話がスッキリした
女は「ババア」て言葉に傷ついてるのよね

0
2024年02月19日

Posted by ブクログ

『透明な夜の香り』の描写が素敵でこちらの作品も読んでみた。いや、タイトルに惹かれて手に取ったら、同じ作家さんじゃない?と気付き、購入に至った。

正直にいうと前半はあまり好みではなく、いわゆる中高生女子特有のベタベタ感があり(今思えば、それを思い出すくらい描写がリアルだったのかもしれない)、うわぁという感じ。そうそう、私はこういうの嫌いだったなぁと。

後半は、大人になってから感じる友達との距離や不安や、諸々の話が展開された。こちらは面白く、考えさせられる部分もあり、止まることなく読み進められた。

何が正しいのかは分からないし、どれも正しいのだと思う。色んな立場や生き方の女の葛藤や不安が盛り込まれている物語だったと思う。

0
2024年01月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

それぞれが独立した物語かなと思っていたけれど、登場人物が同じだったり繋がりも見えて面白かった。ただそれがわかったのは最後の方だったので、わからなくても短編エピソードとして十分楽しめる。読んだ後に。正しさってなんだろう…と思った。ある一方からは正しくても、違う方向から見ると正しいとも言い切れないこともあるのかな、と思った。

0
2024年01月13日

Posted by ブクログ

人それぞれ正しいと思っている事は違うんだな。
.
短編集でした。
友情のために、友達の不倫相手の家に突撃する話...売れない女優の話...
.
ねっとりまとわりついてくる様なセリフがクセになりました。笑
言っている事は確かに正しい...でもどこか怖いというか、狂気じみているというか。
女性って怖いなぁ笑
ヒェ...

0
2023年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

•「だから、あなたたちのつぶやきを見るのよ。あなたたちは求めるばかりで、求められることを考えていないから。あなたたちと同じことをしないために」

0
2023年12月08日

Posted by ブクログ

最近気になっている千早茜さんの短編集かつ、タイトルに妙に惹かれて本作を読むことにしました。本作の短編の中では、不倫や偏見、差別、セックス、結婚生活、年齢などが千早さんのテイストで描かれていて、とても読みやすい短編だったと思います。

個人的に読んでて面白かったなと思ったのは、「温室の友情」と「幸福な離婚」ですね。以下簡単に感想を述べます。

「温室の友情」。叶わぬ恋に悩む友人の恋愛相談に乗るお話。本作のスタートから女性特有のコミュニティでの会話シーンに魅力されるとともに、正義の押し付けを行う主人公の考えと行動に考えさせられました。

「幸福な離婚」。夫婦間の約束で決められた離婚の時期までともに生活する夫婦のお話。離婚するとは言っても夫婦の絆が見られるのが良いです。今年刊行された「マリエ」とかに近い雰囲気で、千早さんっぽい感じが1番感じられた作品。

0
2023年11月21日

Posted by ブクログ

正しいって気持ちいいし大好き。
同じくらいにたまにある正しくないも好き。
けど結局正しいは気持ちいいから戻ってくる。

自分はいますごく正しい。(と思う)

0
2023年11月08日

Posted by ブクログ

短編集かと思ったら連作短編集だった…!!
遼子、恵奈、麻美、環の「普通」の仲良し4人組女子高生の関係が、大学生、社会人と人生のステージが進んで行くにつれて変化していく。友情とは、恋愛とは、正しいとは、を女性目線で描いている作品たちでした。「偽物のセックス」と「描かれた若さ」は女性からの男性に対する復讐のようなお話でスカッとする部分もありました。

0
2023年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公は4人の女の子で、それぞれの子について語られたり4人と微妙に繋がりのある人物が登場するオムニバス作品だった
千早茜さんの本を読んでいると登場人物が正しさについてよく考えている
正しい生き方、正しいセックス、正しい女の人生…
正しさという確らしさが曖昧なものに囚われて生きることの窮屈さなどについて考えさせられる

普段私は、男女についてあえて主語を大きくしてその性質について考え出すと脳内でネットで見たような意見を発するイマジナリー批判者が反論を始め出し、嫌な気持ちになるから見ないように考えないように努めている
その考えないようにしていた男女の嫌な部分についてよく描かれていた作品だった
最後の章の男性なんて現実に居て欲しくないよなあんな人…と女性からすると思ってしまった
個人的に好きなのは幸福な離婚の章だった
これで終わりと思うと人間お互いに優しくなれることもあるよね…
残りわずかな夫婦生活、穏やかで優しい日々が素晴らしい表現力で描写されていて、その暖かさがまた切なくなるお話だった

アホだね〜と頭に残ったのは偽物のセックスの章
感情に対する優先順位が低い男性が感情迷子になってストレスがたまって突拍子なく訳の分からない行動を取ってしまうという愚かな様子がよく描かれていた
主題とは逸れるんだけど…
この章の中で3歳の子供が出てきて、母親が食事を与えるシーン、3歳はもう普通食食べてる月齢なのに描写が離乳食では?と気になって気になって…
ハッキリと離乳食と描かれてる訳ではないが、緑や白の混ざったどろどろしたものを与える〜という書き方だと私の解釈では離乳食しかも後期ですらなく中期の離乳食になってしまい…
文章表現力のある作者さんだからより鮮明に思い描かれてしまった
細かすぎるし、話の流れには関係ないから気にしないようしようと読めば読むほどふとした時に思い返してしまって読書の邪魔になってしまったのであった…

0
2023年10月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

たしかに、あまりにも“正しい”女たちがそこにいた。

表現力が秀でているゆえか、全体を通して粘度が高くまとわりついてくるような空気を纏っているなと感じた。

女の共同体の醜い部分が多く描かれていたが、作者は「幸福な離婚」で描かれた朝食の場面のような表現がほんとうに眩しくて美しいので、正直なところ、そういったものをずっと見ていたいなと思った。そして、この世界には女と男しかいない、とでも言うような描き方をするんだな、と引っかかる作品ではあった。

すべての短編が「温室の友情」の4人に何処かで関わっているのだろうと思わせる仕掛けがおもしろかった。

0
2023年08月31日

Posted by ブクログ

中学時代からの仲良し4人組の話から始まるストーリー。
高校、大学、就職、転職、出産と時が進むに連れて付き合う人は常に変わるけれど、昔からの友達も大事な友達。
環が遼子、恵奈と自分を比べてしまう描写はあるけれど、書かれてはいないけれど大事な友達だからこそ30代になっても会っているのでは、と思いました。
頑張れ環!と応援したくなりました。

「30代の自分はもう何にも揺るがない大人になると思っていた」
本当にそれだ…。実際はこれまでの人生の答え合わせをさせられるかのような、大いに揺らぐ30代。

それぞれの短編集の繋がりを理解しきれなかったので、解説をどこかで探したいです。

0
2023年08月28日

Posted by ブクログ

仲良しだった女子4人の、大人になっていくにつれそれぞれの人生を歩み、いろいろな人と出会い変化していく様が短編集になっている。
人の欲望や感情は、その人の中にあって、その人にしかわからないものだなと思った。

0
2023年08月26日

Posted by ブクログ

短編集。最初のストーリーが後に繋がり、読み物としては面白い。不貞操な話が多く、共感は出来ない。何も考えずに読み進め、終わった後も特に何かが残ったというわけでもない。女心は複雑なんだなぁといった感想と、みんなが同じじゃないからなという結論に私は至りました。

0
2023年06月24日

Posted by ブクログ

私立中学で出会った四人の少女達。彼女達の連作短編6編。
「温室の友情」
彼女達の中学時代から大学、社会人へと、道が別れていく様子を。不倫している友人へ、そこから救い出したい正しい女としての行動が危うい。
「海辺の先生」
スナックを経営する母を持つ娘。勉強の機会を失っていたその娘の大学進学を手助けする偽りの先生。彼女の大学進学を機にその先生も研究室に戻っていく。この一冊の研究職の男性率が高く、誰かと重なっていると思うのだけど、はっきりわからない。
「偽物のセックス」
四人の中で専業主婦となった女性の日常生活。夫は、同じマンションに住む女性の自分の欲求に正直な女に惹かれていく。その女のポリシー婚姻を結んだ正しいセックスという意思に、妻に戻る。
「幸福な離婚」
妻の不倫と転勤とに、離婚を4ヶ月後に決めた夫婦。別れを決めた後の満ち足りた婚姻生活。妻の不倫相手が、温室の友情の不倫好きの男性。この夫も研究者だから、どれかと重なるのかな。
「桃のプライド」
四人のうちタレントとなった女性。三十を超えて自分の限界を感じる。正しい職を得た他の二人、家庭と子供を持った一人との、人生の差を見つめる。
「描かれた若さ」
女の年齢への不謹慎な発言と態度を、その結婚願望を逆手にとって、復讐される。ホラーっぽい。

0
2023年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「温室の友情」
男は女のこととなると怖がってばかりだ。ああ、面倒くさい。
ここ、激しく共感。

「幸福な離婚」
もうすぐ死ぬとわかっていれば優しく出来る。死は別れだ。そうだとしたら、イツキはこの結婚の死を看取ろうとしてるのかもしれない。
この2人の離婚後が気になる。

0
2023年05月29日

Posted by ブクログ

幸福な離婚がお気に入り。

千早さん作品はどれも
女の、醜くて目を背けたくなる部分を、じわじわと描き出しているので
向き合うことができる時に読む。笑

0
2022年12月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

連作短編集。不倫や暴言吐いたりする間違ったことする男の人がやられ気味。いい気味〜とも思ったり。でも「幸福な離婚」は男の人が不倫される側でしたね…

「温室の女たち」では4人グループで学生から社会人まで仲良くやってきた女の子たち。仲が良いから全部話すし、口出すし。その辺の空恐ろしさを感じる話。でも私も大人になったから分かりますが、学生時代は同じでもそれぞれ歩む人生は変わるんだと。それを他人が口出すのは果たして仲が良いのか、というとこでしょうか。

0
2022年12月10日

Posted by ブクログ

「30代の自分はもう何にも揺るがない大人になると思っていた」

みんな自分の思う正しさを追求しながら、どこか他人を窺っているのかも。
SNSで更に拍車が掛かってるように思う。

嫉妬や眺望、諦観…他人事とは思えないリアルなあれこれ。

0
2022年10月09日

「小説」ランキング