千早茜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「竜舌蘭」
「結露」
「この世のすべての」
「林檎のしるし」
「指の記憶」
「グリフィスの傷」
「からたちの」
「慈雨」
「あおたん」
「まぶたの光」
傷に纏わる10話収録の短編集。
1行目で千早さんを感じる。
そしてすぐさまその静謐な世界観に惹き込まれた。
事故による傷、自ら刻んだ傷、心の傷。
傷はかさぶたとなり剥がれ落ちなめらかになる。
だが傷跡の記憶や、目に見えない傷(グリフィス)は、いつまでも心に居座り自分を苦しめ続ける。
犬嫌いな男と、この世の全ての男を嫌悪する女性を描いた『この世のすべての』
心の傷の深さに胸が締め付けられた。 -
Posted by ブクログ
調香師という職業があることを初めて知りました。複数の種類の香料を組み合わせて新しい香りを作り出す。自らの嗅覚、感覚を頼りに香りを調合していくというのは、非常に緻密な作業の積み重ねなんだろうなと思います。
本作では、人並みはずれた嗅覚をもつ男性が、顧客の求める香りを次々と作り出していきます。
香りは、永遠に記憶に残るー。
見ることや聞くことに比べると、香りは存在感が薄いように思われますが、瞬間的に過去の記憶や感情を呼び起こすことができる強烈なパワーを持っているのだと感じました。
淡々としたトーンで物語が進んでいくので、
表紙のイラストのような深い色の静かな空間でひっそりと読書をしているような