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Posted by ブクログ
昔ながらのケーキ屋さんを舞台にした連作短編。テーマはほろ苦い初恋なんだと思う。
危うかったり醜かったり病的だったりするものを、うまくスパイスにしてあっと言わせる構造の短編たち。
私自身、好きな人にうまく好きと言えないとか、駆け引きとか、察してとかとは無縁なので、「えー!なんで?言えば良くない?」とか「いやいやそれは独りよがりすぎでしょ」とか心の中で思いながら読んだんだし、本来はこういう登場人物たちの出てくる作品は痺れを切らして読むのをやめることが多い。けど、千早作品は、その匙加減が絶妙。まさにスパイスや苦味をギリギリまで利かせてるけど美味しくまとめる亜紀の作る西洋菓子みたい。
そして何より「普通とは何か?」を問うような「枠から外れたもの」の美しさを鮮やかに描いていて、かなり好きな作品だったです!はい!
Posted by ブクログ
洋菓子をテーマにした甘いだけの作品かと思っていましたが、良い意味で裏切られました。
甘美で少しほろ苦く、時々どきっとするほど官能的な大人のための連作短編集です。男女問わず、スイーツ好きな大人の方にぜひおすすめしたい一冊でした。
特に印象深かったのが、作中で語られる「クリームの科学」についての表現です。クリームは、二つ以上の脂肪球がぶつかり、溶け合い、繋がってこそ、ツノが立つような理想的な形になる。けれど、混ぜすぎると崩壊してしまう。
夫婦関係はもちろん、様々な人間関係に当てはまる深い比喩だと感じました。お互いを知ろうとしなければ一緒にはいられない。でも他人だから、完全に一緒にはなれないし、それでいい。その絶妙なバランス感覚は、まさに繊細な洋菓子そのものだと腑に落ちました。
千早茜さんならではの五感に訴える表現も本当に素晴らしいです。
「優しい黄色の皮に歯をたてると、生クリームがあふれでてくる。吸いついてクリームを飲む瞬間がたまらない。甘い幸福がとろとろと身体に流れ込み、脳を満たしていく。クリームと柔らかいシュー皮、単純な味に安心する。」このシュークリームの描写には完全にやられてしまい、読んでいる間、何度シュークリームを欲してしまったことか…この読後感を携えて近所の洋菓子店に行ってみようと思います。
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