あらすじ
下町の西洋菓子店を舞台にしたキュートな連作短編集
下町の西洋菓子店の頑固職人のじいちゃんと、その孫であり弟子であるパティシエールの亜樹。甘やかで、ときにほろ苦い連作短編集。
フランス菓子作りを修業したパティシエールの亜樹は、
菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子店「プティ・フール」で働く。
女ともだち、恋人、仕事仲間、そして店の常連たち――
店を訪れる人々が抱えるさまざまな事情と、それぞれの変化を描く連作短編集。
巻末にパティシエール・岩柳麻子との対談を収録。
解説・平松洋子
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でも、そんななくてもいいものにあたしは今まで生かされてきた。それがあたしを強くしてくれた。あたしにはあただけの世界があって、そのおかげで今こうして立っている。?自分を卑下しても、自分が好きになったものを否定しちゃダメだ。っていうミナのセリフだいすき
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洋菓子をテーマにした甘いだけの作品かと思っていましたが、良い意味で裏切られました。
甘美で少しほろ苦く、時々どきっとするほど官能的な大人のための連作短編集です。男女問わず、スイーツ好きな大人の方にぜひおすすめしたい一冊でした。
特に印象深かったのが、作中で語られる「クリームの科学」についての表現です。クリームは、二つ以上の脂肪球がぶつかり、溶け合い、繋がってこそ、ツノが立つような理想的な形になる。けれど、混ぜすぎると崩壊してしまう。
夫婦関係はもちろん、様々な人間関係に当てはまる深い比喩だと感じました。お互いを知ろうとしなければ一緒にはいられない。でも他人だから、完全に一緒にはなれないし、それでいい。その絶妙なバランス感覚は、まさに繊細な洋菓子そのものだと腑に落ちました。
千早茜さんならではの五感に訴える表現も本当に素晴らしいです。
「優しい黄色の皮に歯をたてると、生クリームがあふれでてくる。吸いついてクリームを飲む瞬間がたまらない。甘い幸福がとろとろと身体に流れ込み、脳を満たしていく。クリームと柔らかいシュー皮、単純な味に安心する。」このシュークリームの描写には完全にやられてしまい、読んでいる間、何度シュークリームを欲してしまったことか…この読後感を携えて近所の洋菓子店に行ってみようと思います。
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千早茜さんの作風の持ち味は、読み手の五感にストレートに訴えるところにあると思う。今回は、洋菓子についての描写がふんだんに盛り込まれていて、目の前にシュークリームやお洒落なケーキが浮かんで、読み手は想像上のおやつを堪能できる。
じいちゃんと主人公の亜樹はパティシエの師弟関係。じいちゃんが亜樹やその周りの人々に時折かける言葉が金言でそこに作者の熱量を感じた。再読したい作品。
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甘いものが大好きだからずっとわくわくしながら読んだ
千早茜さんの香りを題材にした本を読んだ後に読み始めたから、甘い香りを想像しながら読むのが楽しかった
プティ・フールって言葉を知らなかったけど、ちいさなスイーツの集まりだって知って、絶対可愛いに違いないと思って画像を調べてみた
やっぱり私は、小さくて可愛くて、キラキラしたものが好きなんだなぁ
甘いスイーツだけではなくて、結婚の話とかも組み込まれていてリアルさがあった
昔ながらのショートケーキが無性に食べたくなった
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昔ながらのケーキが並んでいる西洋菓子店「プティ・フール」。店主の孫のパティシエールの亜樹を軸にした6篇の連作短編集です。片思いをテーマに書かれた話の中には、数々のケーキが出てくるのですが、読み終わったのが夜でよかった…これ昼間だったら絶対にすぐ買いに走っただろうなぁと思うほどに、千早さんのケーキの表現が素晴らしい。
パティシエだけではなく弁護士やネイリストの世界にも触れているので、すごく面白かった。
久々の千早さんでしたが、やっぱりこの人の文章は好きだなぁと実感しました。
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独占欲、嫉妬、男女のすれ違い、不安や焦燥感、憧れや一途な恋心、隠し味の秘密を詰めた宝石箱みたいな菓子作りの話
色や香りで心情を描くことに長けた千早さんが、味でもそれを成し遂げてる
皆スイーツに救いを求めてるよね
甘い物が食べたくなる
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グロゼイユ、ヴァニーユ、カラメル、ロゼ、ショコラ、クレーム
甘いお菓子が食べたくなる小説
お菓子の描写がすごく好き。絵になくても、実際にそこにあって、より繊細に見えてくるようだった。いつも一瞬の美しさが、永遠にあるよう。
なんか読んだことあるな〜と思ったら、読んだことあった。再読だったけど、前回にはない発見、思いの変化があって読んでよかった。
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*フランスで菓子作りの修業をしたパティシエールの亜樹は、菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子店「プティ・フール」で働く。女ともだち、恋人、仕事仲間、そして店の常連客たち……。店を訪れる人々が抱える様々な事情と、それぞれの変化を描く連作短編集*
大人テイストのスイーツ小説、とでも言いましょうか。
甘くてかわいいお菓子たちが全てを解決してくれてハッピー♡みたいな単純な展開ではない所がとても良かった。
そして、甘さの裏に潜むほろ苦さにやるせなさ、人生のままならなさ…など、お菓子に絡めた心理描写が本当にお上手です。
もろもろ胸焼けせずに最後までじっくり堪能致しました。
装丁も内容にぴったりの雰囲気でとても素敵です。
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パティシエの亜樹が主人公だけど
各短編でいろんな登場人物の目線でかかれていて面白かった。
ネイリストのミナの、美味しかったことをおそらく憎いであろう相手に思わず伝えた描写で
やはりスイーツは人を幸せにするなぁとおもった。
「世界に色がつくみたい」 紅茶屋さんの長岡さんの話が読みたい。
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千早茜さんの「西洋菓子プティ・フール」読んだ
やっぱ言葉の表現が素敵〜千早さんのお菓子の味とか見た目の表現が素晴らしすぎて、読む度に今すぐにでも近くのケーキ屋さんにケーキを買いに行こうとしてた。お菓子の話の他にも恋愛も絡んできてて、スミ、祐介、ミナの一方通行なな恋心、愛が切ない部分もあった。(あと過食嘔吐の人もか、、)面白かったー、ナミとすみたかくんは結ばれるのだろーか。すみたかくんはパリへ行って、すっぱり亜樹を諦められるだろーか。色々気になる所はあるけどそれぞれ、前に進んで歩いててかっこよかった。でもお菓子の表現は最高だったけど書かれたのが2014年って言うのもあって、服とかネイルのセンスみたいなのがちょい古で懐かしさを感じつつ、、、でもお菓子の美味しそうさ?はいつまでも変わらないんだはーとおもった
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初めての千早さんの小説。
スイーツのお話なのに(?)、その元にある人間心理の薄暗いところの描き方が好き。ふわふわスイーツな話ではありません!
テーマも「片思い」とのことですが、「片重い」です。ほんと。
特にカラメルとロゼが生々しくて好き。対談も興味深く、もうネイルの話は書かない等千早さんの取材力にも感服した。
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洋菓子の上品さ、繊細さと物語の切なさが相まった物語だった。
みんな幸せになって欲しいな。
洋菓子をもっと、繊細に大切に味わって食べたくなった。
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甘いだけがお菓子じゃない 様々な人物による、スイーツと絡ませた群像劇。
著者のスイーツに関する知識、そしてそれらを際立たせる物語の構成に脱帽です。一話を読み終えるたびに唸ってしまうほどに大好き。
甘いだけではない。
甘さを引き立てるための苦味、酸味があってこそ。
恋もまた、スイーツと同じ。
苦味や酸味があるからこそ、記憶に残るのです。
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最初ピンとこない感じだったのに、途中からめっちゃ引き込まれて一気に読んでしまった。
あれこれ理由をこじつけて、自分を納得させようと頑張って、それでもうまくコントロールできない現実から逃げたくなる。
そんな人達が主人公の連作短編集。
ふんわり甘くて心地いいお菓子で、一瞬見たくない現実から逃れられても、容赦のない現実から目を背け続けることはできない。
嗜好品をはけ口として消費するのではなく、ちゃんと楽しめるように、この主人公たちのように、向き合いたくない現実に立ち向かいたいと思った。
特に、ネイリストの主人公が発したセリフがお気に入り。
「自分を卑下しても、自分が好きになったものを否定しちゃダメだ。」
なんて胸が掴まれるセリフだろう。
再就職で悩んでる自分にものすごく響いた。
そしてその短編の締めの一言がまた素晴らしい。
「いつか、あなたの人生を薔薇色に染めるのはあたし」
かっっっこいい!
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⬛︎ ほんわかだと思ったら、違いました
千早さんの小説を読みたい。でも重たい話はちょっと避けたい……(わがまま)そんな気分で本屋をうろうろしていて目に留まったのが本書でした。
甘いお菓子が登場する、ほんわかした物語かな?と思って手に取りましたが、実際はどっしりとした人間ドラマを描いたお仕事小説。いい意味で裏切られました。
主人公・亜樹は、有名パティシエールを退職し、将来的に店を継ぐことを見据えて祖父の営む洋菓子店に戻ります。
この祖父がとても魅力的。
昔ながらの頑固で職人気質な人物ながら、根は深く優しく、しかも人を見る目が鋭い。静かにかっこいいおじいちゃんでした。
亜樹もまた、幼少期から祖父の背中を見て育ち、両親の反対を押し切ってパティシエの道へ進んだ女性。
一本筋が通っていてかっこいいけれど、どこか不器用で、冷たく誤解されやすいタイプにも映ります。
同じ“お菓子”でも、ふたりが作るものはまったく異なる個性を持っていて、その違いが文章からしっかり伝わってくるのが面白かったです。
祖父のお菓子は、毎日食べても飽きない安心と安定の味。味の想像がつく(もちろん褒め言葉)。ほっとする、王道の洋菓子という印象。
一方、亜樹のお菓子は創作性にあふれ、一口ごとに新しい発見があるような世界。
ただ、使われるワードが難しくて正直あまり想像できない……笑。
でも、私はお酒やスパイスの効いたお菓子が大好きなので、「きっと絶対おいしい」という確信だけはありました。
終盤は恋人・祐介との関係が中心になりますが、仕事をバリバリしている女性にありがちな
「圧倒的な会話不足」の気配を感じて、かなりやきもき……笑。
亜樹はきっと“仕事命”。
それ以外を大事にしたくないわけではないけれど、どうしても優先順位が偏ってしまう人なのだろうな、と感じました。
だからこそ祐介には、もう少し自信を持って
彼女をリードしてほしい……なんて思ってしまったり。
三角関係めいた恋の展開も、王道ながら切なかったです。
澄孝くんの一途さには、こちらまでしんみり。
(個人的には、亜樹×澄孝コンビの会話の相性の良さがかなり気になりつつ……
同じ方向を向きすぎた二人は、逆にうまくいかないものなのかもしれない、
などと勝手に邪推してしまいました。)
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直木賞と書いていたので気になりながらも手が出づらかったです。読んだらスラスラ読めて面白い話でした。短編集でいろんな視点で恋愛を見れて、お菓子の描写も丁寧でよかった!
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主人公が身勝手な感じだけどお菓子のことだけをスキルアップした末の人物像なのだとしたら仕方ないかな。
1章ずつカフェでスイーツをいただきながら読みました。
内容が各タイトルのスイーツの特徴と上手く繋がっていて甘さ、ほろ苦さ、深みのあるストーリー性で更に五感も伝わってくる。構成が上手いなぁ。
ROSE/ミナの章に共感した。
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前から気になっていた作品。
もっと堅苦しいパティシエのお話かと思っていましたが、意外と読みやすく、適度に先の気になる内容でサクサク読めました。
皆さんの感想にもあるように、甘いお菓子を一緒に食べたくなる、この季節にぴったりな作品だと思いました。
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甘いものが片手にないと読めないくらい、この本は甘いものとセットで読むことをおすすめしたい。
このケーキを食べて解決!的な無粋なオチじゃないからすき。
千早さんの作品は五感がなぜか伝わってくる。
艶かしい。
じいちゃん、さすが人生の先輩すぎるんだが、どんな人生送ったんだい。
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祖父の経営する西洋洋菓子店ではたらくアキとその周りの人々を描いた連作短編。食べ物を描かせたらさすがの千早先生。本格フランスのスイーツから街の洋菓子店のケーキまでどれも繊細。キャラクターも個性があって長編っぽい満足感が得られた。
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単純なスイーツの甘さだけではなくて、ほろ苦さとか深みの部分をストーリーに詰め込んだような印象を受けた。
皆んながハッピーエンドになるわけではないけれど、落ち込んでも前に進む姿勢が読者をポジティブにさせてくれてよかった。
千早さんの文章は視覚嗅覚が刺激されるお話が多い気がする。なんだか近所のケーキ屋さんに行きたくなった。
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1.読んだ理由/きっかけ
料理や食べ物の小説が好きで気になっていたけど、ずっと「読みたい」に入りっぱなしだった本。
2.あらすじ(※ネタバレを避けて簡潔に)
有名なパティスリーをやめ、おじいちゃんの昔ながらの洋菓子店を手伝う亜樹。おじいちゃんの腕は本物で、色々と教わりながら自分の納得いくメニューを作ろうと模索している。亜樹の視点から始まり、亜樹に恋心を抱く元同僚、洋菓子店の常連である拒食症気味の主婦、元同僚に恋するネイリスト、亜樹の婚約者と色々な人の視点が描かれ、最後にまた亜樹に戻る。
3.感想
お菓子の描写が暴力的なくらいおいしそう。ダイエット中の人は読んでは行けないかも。昔ながらの洋菓子(特にシュークリームのクリームの吸って飲むシーン)も紅茶屋さんでサーブする本格的なお菓子も、読んでいてうっとりしてしまう。
一方、内容自体は結構ビターであり、なんとも切ない恋模様が多々。スミがかっこよかったな…。
この本を読んでお菓子欲を上げてから食べる甘いもののおいしさといったらたまらなかった。
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ただ甘いだけなら馬鹿でもできる。
西洋菓子店プティ・フールで働く亜季と、その周りの人の心の成長物語。各ストーリーに出てくる洋菓子はとても美味しそうで、読んでいると甘いものが食べたくなる!そして単行本・文庫本ともに装丁が可愛らしい。
亜季の作るお菓子は濃厚で挑戦的と表現されている。師匠兼シェフであるお爺さんからは「厳しい」と言われていたけれど、まさに亜季の性格そのもの。
恋人の裕介に対し、ただ彼は「甘えたかっただけ」と気付かされるシーンはお爺さん流石のナイスアシスト!
恋人同士、いやそれは夫婦になっても、お互いに甘えられる優しさと懐の余裕を持ちたいと思いました。
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千早茜さん、なかなか読む機会がなく、積読されていた中の一冊。
洋食や洋菓子店を舞台にした作品を最近読んでいたので、世界観は楽しませてもらいました。
千早さんはドロドロしているイメージがあったのですか、意外にもスラスラと、共感できる登場人物もいて読みやすかったです。
でもでも6編の短編がさまざまな登場人物の視点になり、あの時、相手はこう思っていたんかい!
みたいな描き方は面白い!その分、主人公亜樹やその恋人祐介への感情移入が前半少なく淡々と進みます。
青山美智子さんのさすが!っていう連作短編技に近藤史恵さんの料理愛と、微妙な人間関係の描写でモヤモヤするのを掛け合わせた読後感。
それでも、シェフおじいちゃんのおかげで読後感は良かった良かった!おばあちゃんもナーイス!
ちょっと不器用な職人肌の女の子のおはなし。
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連作短編
祖父の店の西洋菓子店で働く亜樹とその周りの人々のお話。
自分に余裕がなければ相手の気持ちに気づけない。すれ違いをなおすのは、自分の気持ちを整えてから。
お菓子は甘いのにちょっとビターな人間関係が似合いお話。
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パティシエールの亜樹は菓子職人の祖父のもとで働く。彼女自身や後輩、恋人、それぞれの視点から描かれる短編集。お菓子に対する情熱、こだわりが感じられる作品。読んでいるだけでお腹が空いてくる。
亜樹の原点とも言える中学生時代の思い出が鮮烈な情景として浮かぶ。その赤さえも。彼女の珠香に対する感情に近しいものを私も持ったことがある。根底を成す部分が崩れていくのは辛いもの。
印象的だったのがミナ(美波)ちゃん。ネイリストである彼女は女の子はお菓子-着飾り、コーティングし、大切にされるべきもの、という信念がある。満足に仕事ができない環境に辟易していたが、入った喫茶店での景色に心が変わる。薔薇色に染めるのは私。で締められるこの章は読んでいて私も頑張りたい!って気持ちになった。
お菓子作りの様子はある意味で官能的、恍惚とする。そこにはロマンさえある。美しい作品だった。
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お菓子の甘い描写と、登場人物の複雑な心理描写の対比が際立つ作品だった。
最後まで主人公には全く共感はできなかったな
…
自分の都合で婚約延期したのに、婚約解消しようと言われたら怒るなんてひどすぎる。
最後の展開は一気にまとめた感あって少し残念。
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珍しく千早さんの作品で苦手なキャラクターが…!
亜樹さんの、技術ばかりで人に高圧的な人はどうも…
技術あればなんでも許されると思ってる?職人系が苦手。人間界で生きてるなら相手のこと考えろと思いますが、まぁ本物の技術って惚れ惚れしますよね。
でも異業界の専門職と専門職で結婚するのは
なかなかに難しそうですね!頑張れ!
亜樹の結婚がどうの〜となるまでは
お菓子と心情の繊細さが美しく生々しく苦しく
描かれていて、その描写にずっとうるうるしてました。私の涙腺が壊れてるのかと思うくらい胸にきました。
最後に、私は洋菓子にそんなに興味が無いことが分かったかもしれない。ここまで洋菓子を芸術的に見れてないな、、和菓子は表面のキメとかまで愛でるんですけどね、、色々あるなぁと分かりました!
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★3にしている作品の中ではかなり4に近い3だった。千早茜を読むのは2作目だったが、個人的には「透明な夜の香り」よりも好きな作品だった。短編集でありつつ、全体通して主人公周りの話が進んでいく構成。
千早茜は五感に訴えかける文章を書くのが好きで得意なんだなと思った。登場するお菓子がどれも味の想像がしやすい描写で、それがとてもよかった。複雑な味がするであろう亜樹の作る洋菓子も、不思議とその味の複雑さを想像できた。美味しそうだな、と思える描写の数々だった。
じいちゃんの洋菓子店で働く亜樹の中高生時代の甘美な記憶がグロゼイユ、尊敬でコーティングしていた亜樹への思いがヴァニーユ(バニラ)、不倫しているであろう夫との関係修復に向かう話がカラメル、スミに恋する可愛いで武装した女の話のロゼ、亜樹の婚約者の祐介の話がショコラ、そして最後の亜樹の話がクレーム。どの話もサブタイトルとなっているお菓子(また、それに使われる素材)が物語に上手い事紐づけられていて、その紐づけに無理がなくてよかった。
全体的に優しい空間が広がっているような雰囲気があり、そこが読みやすかった。短編だとキャラクターを人間として捉える前に話が終わってしまうことも多いが、それもあまりなかった。亜樹のそっけない雰囲気やお菓子作りにしか興味がなさそうな感じがよかった。じいちゃんの気前のいい感じもよかった。
ミナは武装された可愛さの女だったが、その「可愛さの追究」が本物だったのがとてもよかった。一本木を貫く女はかっこいい。スミを好きな理由が「スミはきれいだから」なところもいい。単純で、だからこそ強い理由でいいなと思った。
登場するお菓子の描写が細かく、しかしそれを冗長に感じなかったのもよかった。
Posted by ブクログ
下町の商店街に店を構える、西洋菓子店「プティ・フール」を訪れる人々が抱える様々な思いと、その変化が描かれた連作短編集。
菓子職人である祖父が作り出すふわふわと柔らかい皮にとろりとしたクリームがたっぷりと詰まったシュークリームがとても美味しそうで、脳内で何度かぶりついたことか。
そんな祖父のもとで働く孫の亜樹が菓子づくりを通して人としての甘さに気づいていく過程を描いた「クレーム」は、パティシエとして、1人の人間として、自分自身と向き合っていく姿が読み応えありました。
甘いスイーツがメインの作品かと思いきや、欲望渦巻く人間模様が著者によって貪欲に描かれている作品でした。
***
甘さっていうのはな、人を溶かすんだよ。
ほっと肩の力を抜けさせる。
でも、ただ甘いだけなら馬鹿でもできる。
相手の感じ方を想像して、旨みを感じさせる甘さをださなきゃいけない。(P.243)