千早茜のレビュー一覧
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十七世紀から現代までの、一万点以上もの大量の服たちが眠っている服飾美術館で、洋服補修士として働く纏子は、一般の人たちが見ることはできない閉じられた場所で、繊細な衣服と日々向かい合っている。
纏子は幼い頃の事件によって、男性恐怖症を抱えている。
デパートでの展示をきっかけに店員の芳と知り合うのだが、男性だけど女性服が好きな芳も幼い頃他人に傷つけられた過去がある。
館長の青柳さんにもらった名刺がきっかけで、真四角の白い建物『青柳服飾美術館』を訪れた芳はそこでボランティアとして働き始め、纏子や学芸員の晶たちと関わりを持つうちに、纏子と芳が繋がっていたであろう遠い昔の記憶がだんだんと明らかになってい -
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女性ジェンダーの苦しみが、寄せ続ける波や潮のように、じっとり重くのしかかる話。この方の書くジェンダー問題は、本当に苦しい。主人公は、瀬戸内の小さな島の一つに住む祖父母のもとに引き取られた小学高高学年の女の子。そして唯一の友になるのが、橋がつなぐ隣の島に住む、やはり祖父に引き取られている同い年の女の子。
古い価値観のままの、狭い島。寄り合いでは男が上座に座り、女は下座で立ち働く。男は大声で威嚇し、女は男の世話をする。大人の振る舞いを鏡に映したような子供の世界と嫌がらせ。ああ苦しい。私だったら…きっと立ち向かいたくなる。いや、どうかな、いざとなったら立ち向かえないのかな。
第1部「海」は島で -
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千早さんの食エッセイシリーズ3作目。相変わらず食に関連するエピソードが濃くて面白い。
本作は千早さんが離婚して東京に引っ越した2021年ごろのエピソードが収録されている。ステイホームで自炊に関連する話、たまに外食する話などが多い。
印象に残っている話の1つは、「鰻といえば『ごんぎつね』」という「狐色のどんぶり」。『ごんぎつね』の切なさ悲しさとうなぎの異色の組み合わせのインパクトが大。
他にも山形に引っ越したという担当編集者のT嬢との山形旅行に関するお話や、浅草で「どぜう」を食べたお話もインパクトが大きかった。大食漢の千早さんと一緒に、いつもたくさんのグルメを堪能しているT嬢の胃袋もすごいなとい