あらすじ
幼い頃海外で暮らしていたまどかは、番犬用の仔犬としてローデシアン・リッジバックの「虎」と出会った。唯一無二の相棒だったが、一家は帰国にあたり、犬を連れて行かない決断をして――。
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またまた千早茜さんです。切なくて、とても良かった。
千早茜さんらしく、主人公は30歳を少し過ぎて、結婚を考えている恋人もいるんだけど、妊娠・出産に関しては少し慎重になっていて、その気持ちを恋人とうまく共有できていない、という設定。
そのことは、彼女の生い立ち(幼い頃の思い出)と関係している。
主人公は幼い頃、父親の仕事でアフリカにいて、そこは非常に治安が悪く、インターナショナルスクールには車で通い、自宅の広い敷地と、インターナショナルスクールは頑丈な塀で囲われ、そこから外に一歩でも出ると危険、という環境だった。自宅の敷地には、番犬用に大型犬を何匹も飼っていた。現地で生活する外国人は、番犬を飼うのが当然とされていた。
日本では見られないような大型の猟犬で、現地のスタッフによく躾され、飼い主に従順ではあるがかなり凶暴。主人公のまどかは、1匹の犬に虎と名付け、可愛がった。
その野性性と自分との関係、結局は日本に帰るときに置いていかなければならなかったことが、彼女の心をとらえている。
まどかの現在と、アフリカ時代の回想が交互に描かれる。まどかは、虎を愛したように、恋人や子供を愛せるのか自信をもてずにいるが、ラストは恋人がまどかを理解しようと歩み寄って(寄り添って?)くれていて、希望がもてる感じで良かった。
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とらぁぁぁあ!大型犬なのかな、あ、いや、なんか犬種書いてあったな最後の方に…。
心細い生活で自分と家族を守ってくれる無償の愛に近い虎達との関係、いいなと思います。
というか、表紙の絵が綺麗すぎる!!
後に、胃が合う二人を読んで、千早さんの幼少期の頃を元にしてるんだと分かってまた好きになった
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所謂ペットではなく、ガードドッグとして暮らしていた虎は野生と人との共生との間にいた存在であった。それ故に、まどかは日本に共に帰国するという選択肢を選ぶことはなかった。いや、できなかったのだろう。
「幸せってなに?」幼いまどかから大人たちへと投げかけられた疑問は、合理的な選択をする大人たちへの批判でありながら、後に自身も同じような選択肢を避けざるを得ない状況で自らにも問うたのではないだろうか。
命の重たさをひしひしと感じる一冊。
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去年の夏、新刊案内で気になった『雷と走る』(千早茜)。
狼のような表紙とタイトルで惹かれて読んだその本は、
主人公が抱える犬に対する罪の意識が色濃く、出産・育児にまで及ぶ話だった。
この本を読んで思ったのは、子どもの頃に経験した事は大人になっても響き続ける事、
そして、それが暗いものだった場合、親は現実逃避のための外出で紛らわすのではなく問題そのものに向き合う行動に出るべきだという事。
子どもなんて親以上に何やったらいいかわかんないし、中には「自分がやった事のせいで、又はこんな体に生まれたせいで親に苦労をかける」と罪悪感を持つ事なんて稀じゃない。
無知ゆえに無鉄砲な行動を起こしがちな幼少期を経る育児だけに限らず日々の生活・仕事も含めて大変なんだろうけど、そこまで見る責任が伴う事でもあるんだと。
読んだ後ちょっとま何をするわけでもなく、そればっかりかんがえてたな。
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世界には、本に描かれているような治安の悪い国があることを初めて知った。
人間を守るための犬がいることも…
今の生活があたりもえでなく、幸せであること覚えておこう
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私も犬を物心ついた頃から飼っていて、
今の犬が3代目。
幼いまどかと同じで
無責任に所有していたのだと、ハッとした。
虎とまどかとの愛と罪のお話を読み終えて、
私も虎を失ったような気がして、
昔飼っていた犬たちも、もちろん
今飼っている犬も大切に
かけがえのない時間を共有していきたいと強く思った
Posted by ブクログ
まどかには忘れられない犬がいた。ローデシアン・リッジバックの『虎』。『全身で伝えてくる愛となんの曇りもない信頼のまなざし』にグッときた。今は亡き愛犬たちを懐古し、静かに本を閉じた。
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サラサラ読めるけど読み応えのある文章はさすが千早茜さんだ、と思う。
犬を飼っている人は読んでほしい。
虎の幸せって、人が犬を飼う事の意味って、責任って、、、
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千早さんの新たな一面をまた見せてもらいました。
日本から離れた異郷の地で、幼かった主人公と犬の愛を描いた小説です。
犬を飼う人間として感じるところがたくさんありました。
彼らの与えてくれる愛は私たちを幸せにしてくれます。
では、私たちは彼らを幸せにできているでしょうか。
We have to consider what is happiness for dogs.
They are different from humans.
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異国の空気や植物の色鮮やかさが閃き、香りまで漂ってきそうだし主人公の犬・虎は生命力に溢れ毛並みに触れた時の感触が思い出せる(私には存在しない記憶だが)くらい文章から質感を感じます。
犬の形にぽっかりと空いたまどかの胸の奥の穴は塞がることはないのでしょう。
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強烈な美しさに憧れながらも、完全には混ざり合えない異国の地。
確かな絆はありながらも、透明な壁に隔たれているような、少女と犬。
景色や空気の描写が匂いたつようにリアルで、虎とまどかの濃密な時間を追体験しているような気分で読んだ。
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幼い頃、乾季と雨季しかない治安の悪い国で大型犬を飼っていた時の回想がずーと続きます。
主人にだけは忠実だけど野生が出ると何をしでかすかわからないところがあり、本能のままの振舞いが愛おしさもあるが怖さも感じる。
私も小さい時、犬を飼ってた事があるので随所にみられる犬の習性が古い記憶を呼び覚ましてくれました。
犬とは主君関係が成り立つように感じますが、猫とは違い対等な関係性を感じたことがないので愛とゆうにはちと傲慢な感じでした。
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この本を正確に理解しようとすると難しいのかもしれない。
幼い頃愛を注いでた犬の本能に目を背け、異国の地に置いて来た事を後悔する自分と、その後悔故に今の恋人への愛に自信を持てない自分が交錯する。
何か結論があるわけではなく、淡々とした語り口。
停滞した自分を停滞したままに描く。短いので読みやすい。
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主題は愛と本能。
早朝のランニング、ひとりただひたすら走るまどかの心は、
過去の愛と現在の愛を行ったり来たりする。
過去の愛は、海外で過ごした子どもの頃に飼っていた、虎という名の番犬。
言葉でも理屈でもなく、愛し愛された存在。
確実で強固な愛の存在を感じていたのに、
野生の本能が目覚める瞬間、愛は本能には太刀打ちできなくなる。
現在の愛は、恋人の博人。結婚を見据える博人の
気持ちと自分の気持ちに違和感がありつつも言葉として明確にならない。
愛情はあるのに、愛には理屈が必要。本能ではないものが蠢く。
過去でも現在でも、愛と本能に揺れ動く、
繊細なまどかの心理描写がとてもよかった。
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異国で犬たちと暮らしていた少女の過去と現在の話。
主人公はあまり感情移入がしやすいタイプではなかったが、異国の空気と犬の描写が素晴らしく惹き込まれる作品だった。
犬と生きる異国でのどこか幻想的な空気と、日本で暮らす現在のリアルな質感とのギャップの表現が上手く、その狭間に立つ主人公が丁寧に描かれていた。
一点だけ気になったのが、作中メインで登場する犬種と表紙の犬が明らかに別物であること。表紙はとても美しく話の雰囲気にも合っていたので、この犬の方が良かったということか…?と少し複雑な気持ちになった。
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はあ〜…力強い本だった…!
虎の本能の力強さに呑まれながら読んで、読後は脱力感がすごい
この本は千早茜がアフリカで過ごしていた小学生の頃の事が基になってるのかな?
私は犬を飼った事がないから犬を愛すると言う気持ちがあまり分からないところではあるけど、虎の荒々しいとも言える力強さに気押されて、いくら愛していても日本で飼うのは無理だろうな…と思った
私だったらとてと手に負えない
不自由を強いる事で一緒に過ごすか、一緒会えない選択をするか…酷だなあ
主人公の恋人が独りよがりで見ていて反吐が出そうだった
Posted by ブクログ
表紙を見たとき、何となく細田守さんの「おおかみ子供の雨と雪」が頭をよぎったのだけど、全然違った。
そもそもこちらは犬だった。
千早茜さん、初読みです。
文章から受けたイメージは、ひと言でいうのなら、クールビューティ。何だかこれがしっくりきました。
主人公が幼少期に過ごした海外の家で、番犬として迎え入れた犬(名は虎)との話。
飼い犬として心を通わす時と、番犬としての本能が働く時、虎はたちまち手がつけられなくなる。その葛藤。それは良かった。
でも、全体的に惜しい気がする。
現在の主人公も、あまり魅力的に感じられなかった。
幼少期、現在、虎目線あたりで連作短編集とかなら、もう少し入り込めたのでは、と思ったり…。
余計なお世話ですが…。
今回は少し残念だったので、また別作品を読んでみたいです。
Posted by ブクログ
思ってた話とは全然違ったけど、
アフリカ(と思われる)国で、野生味溢れる大型犬と共に過ごす日々を感じられて、それはそれとして面白かった。
動物を飼うってとてつもない責任が伴うよなぁ。
わたしも小学生の頃、家族に頼み込んで頼み込んで、トイプーを2匹飼っていたけど、今思うとその2匹に申し訳ないことをしたと思うこともあったり、それがどうしても償いきれない罪みたいに感じられたり…
でもまたやっぱり犬と過ごしたいと思ったり、そういう主人公の気持ちが結構重くのしかかってきたように思う。
最後の方は、もののけ姫みたいだなって思った。
P.S.
この国、ザンビア…なのか?
『わるい食べもの』に、千早さんは昔ザンビアに住んでいたことがあるって出てきた。
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ガードドッグ虎と少女まどか。
猛々しい虎の描写でスラスラ読ませてもらいましたが、うーんって感じ。
表紙に惹かれましたが、内容を誤解されそうです。
Posted by ブクログ
主人公の幼少期での異国での犬との日々が
ノスタルジックにそして、切なさも感じる
文体で綴られていました。
千早茜さん自身がアフリカで幼少期
過ごされていたということで、
主人公の異国での生活の描写が生々しく
伝わってきました。
私たちの国での犬との関係性は友人や家族のような
存在ですが、国や場所が変われば、番犬としての
機能を求められている犬たちもいるんだなと知ることができました。
本の中で出てくる「虎」は番犬として求められていますが、犬としての本能が剥き出しになるシーンを見ると犬と人間との関係性って何なのだろうかと改めて考えてしまいました。
本の中で
「犬は人の求めに応じて変わっていける。」と
書かれています。
人に求められる役割を担う犬は、人間のエゴに
振り回されることがあっても、
飼い主を純粋に思い、共に過ごしてくれる。
本当に愛おしくなる存在だなと感じました。
読んでいて苦しくなりましたが、人と犬との絆というのは、きっと存在していると信じたくなるお話でした。
Posted by ブクログ
人間が生き物を大事にするのは答えが返ってこないから、それができないと永遠に悔いが残る
という和の言葉に共感した 私も昔家で飼っていた犬が幸福だったのか自信がなくて悔いが残ってるし、たぶんこのもやもやが消えることはないと思う
彩度が高くて、光と陰がくっきりとわかれているような鮮やかな異国の描写が美しくもそら恐ろしかった 現代の日本よりも野生が近い感じの…その辺の感覚は拓ちゃんに一番共感できたかも 日本を離れてこの国で暮らすのめちゃくちゃ怖いしバッタの群れが大雨みたいに窓を打ったら私パニック起こすかもしれない…
このお話では対等な愛ってなんなのかってことを問いかけている気がした 異国のガードドッグも日本の愛玩犬も人間の意向一つで属する場所を勝手に変えられたり繁殖能力や子供を奪われたりする まどかが虎に感じてた愛はどんなにその強さを感じていてもやっぱり「所有」したうえでの愛にすぎなくて、最後まどか自身が下した結論を思い返してはそれを痛感している気がする
じゃあ人間同士の愛はどうなのか、必ずしも対等な愛なのか、そこに所有のような関係はないのか…指輪と首輪が重なって見えるのがいいなあって思った まどかがこの指輪をつけるのかどうかわからないところも好き 和が言っていたみたいに新しい犬を飼えばまどかは幸せになれるのかな 必ずしもそうじゃない気がする