千早茜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
精神的に弱っている時のよすがにしたいような、傷痕を撫でてもらいたいような、そんな短編集。
(厨二病に罹患した時に得た)オタクの知識でタイトルの意味は知っていた。古傷を撫でて回顧する話もあれば、癒えない傷痕を守るために必死な話もあり、テイストの違う傷にまつわる話を読んだ後は頭が熱に浮かされるようなくらくらする読み終わりだった。
一番好きな「竜舌蘭」は現代人には共感できる話だと思う。相手が平気そうだから傷ついてないと思った、実際に血を流していないと傷ついていないことに気が付かない、というどこかで見たことのある光景・体験したことのある痛みがじくじくと心に疼いてくるようだった。
千早さんの文章は読 -
Posted by ブクログ
この作者さんは「赤い月の香り」が文庫になるまで既刊をボチボチと読んでいく、の5冊目。本当にボチボチだ。
『下町の西洋菓子店を舞台にした連作短編集』と聞けば、出てくるお菓子がおいしそう、みたいな感想を書く話かとも思えたのだが、さすがにこの作者さん、そんな甘い話ではなかった。
フランスで菓子作りの修業をし有名なパティスリーで働いていながら、今はそこを辞めて菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子店「プティ・フール」で働く亜樹が主人公。
亜樹の中学時代の友人が描かれる第一話、グロゼイルの実とガラスが刺さった脚から流れる血の珠の、それぞれの赤が艶めかしい。元々官能小説を集めた小説誌のために書かれたものら