あらすじ
放っておいて欲しい。それが僕が他人に求める唯一のこと――
ファッション誌編集者の羽野は、花と緑を偏愛する独身男性。帰国子女だが、そのことをことさらに言われるのを嫌い、隠している。女性にはもてはやされるが、深い関係を築くことはない。
羽野と、彼をとりまく女性たちとの関係性を描きながら、著者がテーマとしてきた「異質」であることに正面から取り組んだ意欲作。
匂い立つ植物の描写、そして、それぞれに異なる顔を見せる女性たち。美しく強き生物に囲まれた主人公は、どのような人生を選び取るのか――。
※この電子書籍は2017年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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『女は花なのかもしれない。愛でられたいという本能だけで咲く花。』
植物を偏愛し、自宅に自分だけの庭を持ち、そこに自己の存在肯定を見出す編集者の羽野は、表面だけ相手が望むようにふるまっているだけで、他人に対する意思や望みがない。よって人に傷つかない。また女性の底の知れなさが怖い。一度応じてしまったら、果てのない「感情共有」という欲望に、永遠に応え続けなくてはいけない気がするから。
人が孤独なのも、さびしいのも、当たり前のことで、それは幸福でも不幸でもなく、ただの事実だ。愛情によって、ぴったりと重なるような理解ができたと思えたとしても、それは錯覚に過ぎないのだけれど、その錯覚を求める女性は多い。羽野はきっと、そういう認識で生きている自分のことを尊重してもらいたい。
恋愛感情なしに自分をさらけ出すことの出来ていた相手である緋奈が、温度なく諦めのこもった目を向け、あなたは「不自然だ」と言い放ち、目の前から消える。そこで初めて羽野は自分の臆病さを自認する。こうしてそぎ落とされた己の欲望を直視するところで、物語は終わりを迎える。
『僕は彼女の体温を知らない。彼女の肌も、その奥も。』理性的であることはある種、楽をすることだと思う。完全に正しさに行ききらない曖昧さを手放さない大人は、たしかに危ういけれど、鮮烈な魅力を放つ。どハマりしたくなる何かがある。赤い唇をもつ理沙子に溺れていく、痛々しくも人間らしい羽野の姿を、もっと見ていたいなと思った。
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初めて千早茜さんの作品を読んだ。
好きな雰囲気でした。
気になって、読み返した言葉
「・・人が一人なのも、さびしいのも当たり前のことだ。それを不幸と思わなければいいだけのことだと思う。幸福でも不幸でもない、ただの事実なのだから。」
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尾崎世界観さんの後書きの
千早さんの小説の登場人物は、いつでも個包装された清潔を持っている。どの繫がりもしっかりと精神的ソーシャルディスタンスを保っていて、読むと落ち着く。
という言葉に千早茜ワールドの魅力が詰まってる。
千早先生の作品の主人公は、社会一般の価値観や倫理観に迎合せず、それが凛としてもあり、傲慢でもある。割と社会に迎合してしまうタイプの私には魅力的にうつるのかもしれない。
私はきっと植物にすべてを注ぐことも、他人に理解してもらえないことをありのまま受け入れることもできない人間だけど、だからこそ自分にない要素を提供してくれる千早茜ワールドを定期的に摂取したくなるのかもしれない。
「めずらしいんですよ、とても。僕が腹をたてるのは」のシーンは個人的にすごく好き。
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植物の香りや湿度が生々しく、土の中の目に見えない部分や増殖など、強さの中に怖さすら感じる作品でした。
千早茜さんの別作品もいくつか既読ですが、五感を刺激される「生の物語」という感じが好きな作者さんです。
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植物、庭園、夜といった大好きなモチーフにうっとりしながら、他人との距離感や、交じり合い方について考えさせられた
孤独を守ることは決して悪いことではいけれど、他人と深く関わり合いたいなら、生臭く血の匂いのする池の底へ飛び込んでいかなければいけない時もある
個人的に、様々な角度から共感できた一冊だった
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出てくる女性のちょっとした一面が私が持っている一面でもあって、こういう風に見えるんだなって客観的に思ったりもした
うまく説明できないけどとても好きな作品でした
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淡々と進んでいき、主人公の感情がかなり緩やかだからか寝る前に読むと丁度区切りのいいところで眠くなる。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない終わり方はすごく好きだった。
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自分の好きなものに囲まれて生きている、というのは良くも悪くも執着の塊なのだと思った。
人と自分の間に境界線を引いて、「自分の庭」に閉じこもっている主人公が可哀想に思えたし、とても切なく感じました。
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「透明な夜の香り」からちょっと気になる作者さん。
「赤い月の香り」が文庫になるまでは既刊をボチボチと読んでいく、の2冊目。
実は1年前にフォローしている方のレビューを読んで、「透明な夜の香り」を読む前からずっと「読みたい」に入れていた。
主人公は、植物を偏愛する30歳を過ぎた独身男性・羽野。
ファッション雑誌の編集をこなし、社内外の付き合いもそれなりにしている彼だが、その心中では『放っておいて欲しい。それが、僕が他人に求める唯一のことだ』と思いながら生きている。
親の仕事の都合で『途上国』の広い庭や畑や小さな果樹園まである家で育ち、その時とその後の経験が彼の人格を形成し、睡眠と植物のためだけにあるという部屋で植物たちを丹精して育てている。
ずっと昔、初めての海外出張で行ったマレーシアで、現地会社へ出向して社長を務めている人の家を訪ねた時のことを思い出した。
正に羽野が住んでいたような環境がそこにはあり、子どもがああいった中で育つと、羽野のような思いに至るのも理解できないこともない。
そうして出来上がった、日常的な人間関係を超越したような羽野の考え方には、結構共鳴するところがあった。
一人でいることは飽きるとか、そういうことではない気がする。一人は基本だ。(P.28)
嫌いとか好きとか、あれが欲しいとか、自分の手の中でする限りは自由じゃない。良い悪いなんてないし、好き嫌いに意味も理由もいらないよ。(P.34)
異性でも同性でも、僕は仕事で同士はいらない。(P.62)
幻滅したくなかったらなにも求めない方がいい。(P.126)
仕方ない、でたいていのことはやり過ごせる。(P.188)
『でも、それじゃ……さみしくないですか』と問われて『さびしくないよ』と言い切るところには、こういう生き方ができるといいよねえと思わすところがある。『僕の感覚は少しずれている』と自覚するように、なんとなく何かが欠落しているようには感じるが…。
そんな彼と関わってくる女性たち。アルバイトのミカミさん、同期のタナハシ、モデルのマリ、バーテンドレスの緋奈、写真家の理沙子。
それぞれに個性的で魅力的な彼女らとの関係性が描かれる中で、羽野の生き方を楽しんで読んでいたが、誰にも手を差し伸べなかった羽野の前から彼女らが消えていった時、羽野が揺らいだのにはやや心外。そういうことをやり過ごして、植物を偏愛する男として通して欲しかったなあ。
“なんとなく何かが欠落している”ところを突かれたわけだが、なんかこういう生き方もいいよねと思ったところもあっただけにちょっと残念。
Posted by ブクログ
植物を愛する羽野は、人間と深く関わるのが苦手で人と常に一定の距離を置いている。どこか周りの人たちを達観して見ているような羽野だったが、実は人の気持ちを何もわかっていなかったことに気付かされるお話。
終盤で緋奈が羽野の生き方や部屋を「不自然だ」と指摘していくシーンには圧倒された。緋奈の言葉が適切で、花が崩れるように羽野の価値観がバラバラと崩れていく感じだった。
Posted by ブクログ
自分を隠すことでしか自分を守れないのだろうか。
他人の心に踏み込まないことでしか他人を傷つけず生きられないのだろうか。
自分が傷つかないこと、他人を傷つけないことに
腐心をしてひどく大人びた子供のような主人公だった(主人公は30代くらいの男性だけど)
主人公は極端なように描かれているが、
自分を守り、他者を傷つけまいとした時、
誰しもこの主人公のようになることがあるだろうと思う
節々に刺さる言葉があり、好きな小説。
個人的には高津さんが好き
Posted by ブクログ
主人公の、人に心を開いていないどころか、
自分にさえも心を開いていない感じ。
一人称語りなのに、本当の心情、動揺、歓喜、熱量みたいなものが全く感じられず、そのまま話が進んでいく。
そつない動きや、大人の余裕を感じさせる言動は、一見すると綺麗なのかもしれないけど、人間らしく無いというか、温かみがない。
一つ一つの動作だけで、登場人物の感情さえも表現できる千早さんの作品なのに、こんなにも主人公が理解できないものなのか。
読み進めても読み進めても一向に距離が縮まらない。
そんなことを思っていた時に、ひなちゃんが主人公に向かって「誰かが庭を壊してくれたらいいのにね」
と発言。はっとした。ここで言う“庭”とは、主人公が大切にしている、植物で溢れかえる美しい部屋だけではなく、主人公の内部に宿るものも皮肉を交えて指していると思う。
物語内で他の登場人物らに腹の底を見せない主人公は沢山いると思うがこの主人公は自分の“庭”から出られなくなっている。本人もそれに気がついてない。
植物に対しても愛情というより管理、完璧。
枯れてほしく無いな、元気でいてねといような植物を育てている人なら持つであろう当然の想いと言うより、あくまで自分のお気に入りで周りを埋めていたい、枯れたらそのままそこには執着しない、と言った具合で、愛でる行為がない。
愛情の一部は対象への執着心も多少はあると思う。
その塩梅というか、肝心の部分が感じられないのだ。
それについても終盤、ひなに「あなたの部屋は不自然」と指摘されている。
ここまで伝えてくれたひなの言葉にも特に気づきや焦り?なども無く、そのままひなも主人公の前から姿を消す。
一体この主人公は何人の女性に呆れられているのか。世間一般的な「ダメな人、ひどい人」というような呆れではない。
可哀想に、、というような哀れみ。
物語冒頭からやたら主人公1人に対してさまざまな女性が絡んでくると思っていたが、それもあってか、この主人公の呆れられ具合は一層引き立つ。
Posted by ブクログ
千早さんの描く登場人物たちはみんな人間らしくて好きだ。羽野って人間に興味なさそうなのに、本心では人が気になって仕方ないから距離を置いてるんだろうなと思った。近づけば近づくほど乱されると分かっているから。
文章なのに読めば読むほど植物たちの青臭さで体が満たされた。梅雨の日、むせ返る緑の中でもう一度読み返してみたい。
Posted by ブクログ
こういう男の人ってたまに居るよなぁ
"帰国子女"等、人間は何かのレッテルを貼りたがる生き物なのかもしれない
それにしても、やっぱ極限まで頑張っちゃうと崩れ落ちてしまうものなんだなぁ
Posted by ブクログ
千早さんの子供の頃の海外生活経験を交えつつ書かれた、元帰国子女でいまは植物を愛し、他人とは一定の距離を置き深く関わらないようにしている男性の物語。そのせいで、次々と周りの女性は離れていき…せめて、誰か一人の女性ときちんと向き合っていれば…でも気づくのが遅かった。
「透明な夜の香り」は、実際には香水の香りを嗅ぐことができないのに、読んでいると不思議と香ってくるような物語でしたが、こちらは読んでいると植物の青々とした香りや湿度を感じるような物語でした。
Posted by ブクログ
千早茜作品では珍しい?男性主人公作品。人との距離感って悩ましい。SNSを例にした表現に唸る。『伝えたいけれど、そこまでダイレクトでなくてもいい。ちょっと目にとまって、興味と時間があったらコメントを返してくれれば嬉しい程度。それくらいの淡い繋がりが欲しい時がある。根や触手をじわじわとゆるく伸ばしていくような関わり方。相手の反応にゆだねた一方的なコミュニケーションは楽だ。自分のことをさりげなく知ってもらえるし、相手のことも自分のペースで知ることができる。〜〜〜繋がりたいけれど、繋がれたくはない。』
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植物の香りや呼吸に満ちた作品。植物の描写が丁寧で、独特の青臭さが香るようだった。
主人公の変化や選択に期待したが、変わるのは周囲の人間が多く主人公自身の変化はそこまで無かったように感じる。彼自身が変化を拒んだとも捉えられた。
きっと彼は今後も幼少期のターニングポイントに固執したまま、変化できず、植物に囲まれ生きていくのだろう。
Posted by ブクログ
"放っておいて欲しい。それが僕が他人に求める唯一のこと"、この文章に惹かれて読んでみた。『透明な夜の香り』の読後で期待値も高かったが、途中まではあまりピンとくるものもなく読み進めタナハシさんの非常事態の場面からは引き込まれた。植物にとっての病気、人の精神、水面下で綻び始めて表立って見えないもの。そこに気づけるかどうか。見えている部分や知っている部分だけが全てじゃないということをつくづく感じた。
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人間に疲れた時に、味方が欲しくなってこの本を読み始めた。
「放っておいてほしい」の一言が、今の私の気持ちの全てを代弁してくれていたから。
本編は植物の匂いと色彩で満たされていた。
眠る時に肺いっぱいに香りを入れると、私も安心するから、その共感が主人公と自分をより強く結びつけた。
千早茜先生は人の孤独に触れるのが上手だと思う。
皆んなそれぞれ孤独な部分を持っている、そのひとすくいがとても優しくて、肯定的で安心する。
欲を言えば、主人公が新しい幸せや人間との距離を見つけられるところまで、見守りたかったなとおもった。
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たくさんの観葉植物たちと過ごしている主人公の家、部屋がすごく気になった
自分も植物を買いに探しにいきたくなったのを覚えている
帰国子女とのやりとりはすごく興味深かった。自分もストーリーをちかくでみている、参加しているような気分。静かに一人の男性の日常がながれていく
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羽野のことをとても淋しい人間だと思う
けど、それはわたしが違うタイプだからで、同じ人生を送っていないから 幼少期の体験は良くも悪くも影響を与えすぎる
彼のように人との関わりを避けて傷つけ傷つけられることから避けていたらきっと楽なのだと思う 過不足のない状態 でもそれは本当に充実していると言えるのだろうか 心は、その底では?ずっとジュースを差し出す誰かを求めているように思えた
「でも、あの子は結婚に向いていると思うわ。自分を殺すことを愛や喜びと思えるタイプだから」
うすうすそうだと分かっていながらも認めたくなかったところを刺された気がする
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自分のために生きることに疲れたら、物言わぬ何かに愛情を注ぐ__植物との空間は閉ざされた世界だった。植物は強い生命力に溢れているが、登場人物からは生きづらさと心の渇きを感じた。自分の世界という安全圏で生きたい気持ちはとても共感した。
Posted by ブクログ
発展途上国で過ごした少年時代から植物を偏愛し、他人と深く関わらない編集者の羽野、ある日知り合った理沙子に帰国子女であることを隠す理由を問われたことから関わりを持つようになる。彼女と出会い様々な人の変化を知り羽野の人生観がゆらぎはじめる
小説は植物の描写とともに描かれた様々な登場人物たちも魅力的、羽野のまわりには羽野を好いているのではと思われる女性が何人か登場し、最初と最後で印象が大きく変わる人が多くてとても強く惹かれました
とくに印象的なのはバイトのミカミさん、マスコットみたいなキャラという印象から登場回数を重ねて行くごとに抜け目のないしっかり者であることがわかる。ミカミさんの好きなものに対してのことやお寺でのお願い事のことなど何気ない言葉だったとしても強く印象に残った
他にも様々な女性が登場するが、羽野は変わらないことが幸せなのだと信じて疑わない規則正しく同じリズムで生活し、植物のように悪くなったら葉を切り捨てるような生き方に感動するような人物である。それを冷めてると感じる人もいるだろうが自分はその生き方に賛同してしまう。
子供の頃思ったこと感じたこと、それは自分にとって確かなものだから読んでいて自分を固定してくれるような気持ちになった。だから自分的に最後はそんな同士がいなくなるようで少し寂しく感じてしまいました
全体を通して、描写は読みやすく美しくしい、ページ数もそこまでないのでサクッと読めると思います。ですが人によって羽野に対してイライラされる人もいるかも?それでも登場人物たちが魅力的なのでぜひ読んでほしい小説です
Posted by ブクログ
相手の気持ちをわかったような気になってる。相手が求めていそうなことを自分の感情とは関係なしに、答える。まるで植物を相手にしているみたいだ。でも、本人がどう感じているか、どう思っているかなんて本人しか分からない。植物だって一緒だ。本当に理解できているかなんて、人間の驕りでしかない。
主人公は自分だけが被害者のような面をして生きている。相手には透明な膜を張るような、自分だけの庭に逃げ込んだ臆病者だ。相手に与えているようで、自分の殻を破らないだけの安全地帯から一生出てこない。そして、人が離れていく。
Posted by ブクログ
まさかこんな終わり方をするとは。
創り上げた幸福が
不自然なものだったことに気づかされてからの
崩れ去り方が悲惨だった。
主人公の潔癖気味な性格が気に入らなかったけど
なるほどこの性格がこの話を面白くする持ち味だった。
Posted by ブクログ
主人公は帰国子女の羽野くん。
植物(観葉植物や南国の草花)を愛し、自宅では沢山のそれらに囲まれて暮らしている。
編集という仕事柄か周りには沢山の女性たちが居るが、華々しい彼女たちとはいつも、一定の距離感を保っている。
いや、女性たちだけでなく、羽野は他者と深く関わらないように生きているように思える。
決して人付き合いが下手なわけではないけれど、
口先だけの褒め言葉や、信念を曲げてまでの軽口はたたかない。
スマートと言えばスマートなのだけど。。。
その場で口にするかは別にして、言いたいことがズバズバとト書きで書かれるのはちょっぴり清々しい。
また、植物の描き方が美しい。
濃密で、こちらにまでむんとする緑の匂いや花の香りが伝わってきそうだ。
けれど、この作品は苦手だった。
以前別のレビューで書かせていただいたことがあるが、私も沢山の植物を育てている。
私がハマっているのは山野草とクレマチスだが、狭いベランダに山ほど同居している。
彼らは正直だ。
弱いようでいて強く、羽野くんの家にある観葉植物や蘭ほど派手さや力強さはないけれど、楚々とした風情のある姿が可愛らしい。
世話をするほど花を咲かせて返してくれる。
それに、植物を沢山育てている方は経験がおありかもしれないが、外出している時でさえ、彼らは私と共に居る。
おかしな感覚だけれど、常に私自身の周りに彼らを感じる。
その点でいうと、羽野くんの感覚に近いのかもしれない。
だから本作で植物描写が事細かにされるほどに、人間が生々し過ぎて、女たちが痛くて、面倒で、苦手に思えたのだ。
自分も女なのにね。
女性特有の、自分自身でも嫌だな…と思う部分が多く描かれていて、なんだか不快感を感じた。
自分も含まれるだろう嫌な部分が際立って感じられて、それなのに物語は淡々としていて、
なんだろ………とにかく苦手だった。
植物が"生"に対して純粋に清潔に描かれている分、余計にそれらを感じることとなった。
でも、それだけ生々しく感じたということは、やはり千早茜さんの作家としての力量なんだろうな。
益々我が家の植物たちが愛おしくなった 笑
それでもラストシーン、あれは羽野くんの僅かな変化を描いているのかしら。。。
羽野くん、植物と生身の人間は違って当然だよ。自身を180°変える必要はないけれど、植物とは違う人間の温度を、少しでも安らぎと捉えられるようになれたらいいね。
こういう人いそう
主人公は女性からモテるが、面倒だから相手にしていない。
しかし、そのうちに女性にも相手にされなくなっていることに気づく。
主人公はどのように変わっていくのだろうか。