千早茜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
夏に読むと、もっと良かったかもしれないなとどうにもならない事を思った。
みずみずしい桃の描写が印象的で、水分を含んだ果実の輝きとグロテスクなほどの生々しさがひと夏の恋を象徴しているようだった。
描かれているのは紛れもなく藤子の恋で、でも私の知っているどの恋とも違っていて、私は本当の恋をもしかして知らないんじゃないの?とまで思わされる、嵐のような感情。幸せな結末を迎えるわけではないのだけど、ここまで溺れられることがむしろ羨ましい。
「みんな自分の恋愛だけがきれいなんだよ」
恋は結局、ふたりでするものであっても、わたしとあなた、それぞれの物語でしかなく、それこそ神様の暇つぶし…。
ズブズブに沈 -
Posted by ブクログ
p.27 言った。「猪だってでるしね」
「ここはまだ敷地内ですか」
「そうだね。凍死されると迷惑だから迎えにきた。下の住宅街をでなければ見失わないよ。
よほどの豪雨でない限り」
「それも、匂いで、ですか」
返事はなかった。薄く微笑んだ気配が伝わってくる。明らかに人の常識を超えたことなのに、なぜだか納得している自分がいた。
なぜ逃げたんだろう、と思う。この人はすべてを見透かしているのに。
ひどい言葉を浴びせられたことは無数にある。でも、この人の言葉が一番遠慮がない。なのに、攻撃されている感じはない。
俺はきっと、俺から、逃げたい。
「方向音痴みたいだけど、覚えてね。ここは果園の外れ。育てている -
Posted by ブクログ
いつも、千早さんの描く繊細でたくさん傷をもち複雑だけれど懸命にいくている登場人物にいつも惹かれてしまいます。
今回は、一部が
小学六年生という多感でどんどん心も身体も変わっていく
葉と真以が狭くて古い慣習の島の中で、いろいろな偏見や差別に
もがきながらも、二人寄り添って過ごしていく姿をうつしています。
悲しみや怒り戸惑い不安が手に取るように書かれていて
あっという間に引き込まれてしまいました。
第二部は
事件に巻き込まれて別れ別れになった二人が、大人になって
また再会した時、またお互いを思う力に後押しされながら、子どもの頃の傷を少しずつ再生して
成長していく姿に
まだ彼女たちの姿を見ていたい -
Posted by ブクログ
年上の男が年下の女を落とすのなんて赤子の手をひねるくらい簡単って20代で得た知見で読んだのに、やっぱり惹かれしまうんだよね〜。
物静かで影のある大人の男性を知りたい、と思ってしまうのやめたい。
フジコは逃げられた、捨てられた、全部嘘だったと思ってしまうと思うけど、全さんにとって撮りたいと願うことが恋することと同義だったんだと信じたい。
人を好きになるのって本当に傷つくし傷つけちゃうし、結局いつかは別れることになって独りに戻るし、もうしたくないけど、でも気付いたらまた心動かされる人に出会ってしまって、人生そのくりかえし。
食べて寝て仕事して友達と遊んでたまに恋して、それが生きてくってことなん -
Posted by ブクログ
帯にある『心をざわつかせ、ヒリヒリさせる』というキャッチコピーに惹かれて、手に取った6編の連作短編集で、4作目の千早 茜作品。
タイトルから、もっとドロドロとした暗い人間関係を描いた作品かと思っていましたが、いい意味で裏切られた作品でした❗️一編一編はページ数が少ないわりに、最初に登場する四人の女性達と何らかの関わりがあったりしてとても奥深く、それこそとてもヒリヒリする内容です。
好きな話しは、『海辺の先生』と『幸福な離婚』の2編で、『偽物のセックス』は少しホラーぽっくてちょっとドキドキしてしまいました❗️
個人的には、定期的に読み返したい作品です。