千早茜のレビュー一覧
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不穏。ただならぬ雰囲気に目が離せない。好きではないジャンルなのに、その世界に留まっていたいと思ってしまった。「好き」という二文字に込められる妖しく切ない想い。きっとこの物語のことは忘れないだろう。
あらすじ(背表紙より)
女子校の臨時教員・萩原は美術準備室で見つけた少女の絵に惹かれる。それは彼の恩師の娘・小波がモデルだった。やがて萩原は、小波と父親の秘密を知ってしまう…。(「アカイツタ」)大手家電メーカーに勤める耀は、年上の澪と同棲していた。その言動に不安を抱いた耀が彼女を尾行すると、そこには意外な人物がいた…。(「イヌガン」)過去を背負った女と、囚われる男たち。2つの物語が繋がるとき、隠された真実が浮かび上がる。 -
購入済み
感覚的な作品
とても読後感の良い作品でした。絵画をみてるようなそんな気分になれる、読んでいるといろんな風景が想像できます。で読み終わったら好きな人に会いに行きたくなる(笑)そんな気持ちにさせてくれる本です。オススメ!
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登場人物は皆、どこか「屑」である。しかし、それは人として何かが欠けているということであり、彼らはその欠落を自覚しながらも、自分なりに生きている。
恋愛は誰もが自分の経験や価値観をもとに「普通」を測りがちだ。浮気や不倫を悪いことだと糾弾するのは簡単だが、それだけで人間を理解したことにはならない。
人には誰しも長けた部分と欠けた部分がある。大切なのは、その欠落を否定することではなく、どう向き合い、共生していくかだと思う。
ハセオは自分の欠落を認めながらも、自分自身を見失わずに生きていた。その揺るがない芯の強さに魅力を感じた。
この作品を通じて、自分の「普通」を他人に押し付けず、先入観を捨てて人と向き合うことの大切さを改めて実感した。
そして何より、欠けていることと、自分らしく生きることは矛盾しないのだと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【感想】
大好きなシリーズの最終巻という事で非常に残念なので、スピンオフとかないかなと期待。
ストリーは所謂前日譚的な時系列で過去の朔と香りの老舗家での人間関係が渦巻くストーリー。
シリーズ的には1番話の内容としては重く感じ、瑞雲堂家という名家の中で起こる人間模様を朔と新城が解決?していくのだが、香りの表現などはそこまで多くなく、ちょっとシリーズの中では物足りなさも感じたが、ミステリー感は増している印象。
天才的な嗅覚を持つ朔と丹穂が嗅覚を通じて感じあっている関係性やラストに真奈が救われる部分、また【透明な夜の香り】に続くような描写は良かった!
瑞雲堂家の関係性の描写が多かったのと、シリーズ的には1番難しいというかちょっと読みづらさは感じてしまい、【透明な夜の香り】がやっぱり1番好みだったなーと感じた。装丁はシリーズ全て大好きです。
【ストーリー】
江戸時代から続く京都の香老舗・瑞雲堂。社長の娘である真奈には、飛びぬけた香の才能を持つ妹・丹穂がいた。亡くなった彼女の遺体を荼毘に付す際、あたりを満たしたのは、するはずのない最高級の沈香・伽羅の薫り。
葬儀から数か月後、真奈の前に「伽羅の骨」を探す男・新城と、生前の丹穂との約束を果たしに来たという調香師・小川朔が現れ……。
香りのサロンを開く前、二十代の朔を描いた前日譚にして完結編。
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ネタバレ・温室の友情
遼子、環、麻美、恵奈
遼子が恵奈の不倫相手にしたこととラストの展開に思わず声が出た
・海辺の先生
海沿いの田舎町のスナック店の娘美優とスナックに来た先生
個人的に先生が少し不思議な人で惹かれた
・偽物のセックス
麻美の夫視点の話
同じマンションの既婚の女に惹かれる
その女の旦那が海辺の先生だと思うんだけど、違う人かと思うほど私の中で同一人物に思えなかった
・幸福な離婚
4ヶ月半後に離婚が決まっているミカとイツキの話
離婚してしまうのがもったいないくらい2人の空気感とか関わり方がすきだった
・桃のプライド
環の話
あんまり環を好きになれなかった
・描かれた若さ
清水と舞と沙耶香の話
読み終えた時復讐からのスッキリよりも怖さや衝撃が残った
女って怖い
でも清水は嫌い
千早茜さんは神様の暇つぶし以来2作目
短編集で読みやすくも、どこかに少しづつ繋がりがあって「あ、あの時の」「この人って…?」と読んでいて面白かった
正しいからと言っていい事ばかりではないし、正しさのナイフに私も少し刺された
海辺の先生と幸福な離婚がすき -
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まず一言。ハセオー!!!!お前、このッ……めろめろの、メロ男!!!!
千早さんの書く男はどうしてこうも癖ド真ん中を突いてくるのだろうか。紫煙を燻らせ、爛れた色気を撒き散らしながらも、心を許した相手に向けるふとした眼差しは泣きたくなるほど優しいんでしょ。わかる、わかるよ。後半からは、どうか蓮沼みたいに死にませんようにと祈るばかりだった(あの死に方はせんやろ)。
冗談はさておき真面目に作品内容へと言及していくと、神名と長谷雄が互いに持つ「寝たら終わり」の感覚は分かる気がする。というより、自分の学生時代はそれ以前の問題で「両思いが確定してそういう雰囲気になった時点で冷める」なんて有様だった。
曖昧な関係で重ねる応酬にこそ価値を感じていたのか。いや、わたしの場合そんな大層なものではなく、単に余所行きモードの自分というか、ドラマチックな感情やシチュエーションそのものに浮かれていただけ。
先ほど分かる気がすると言ったのは経験に基づく共感でなく、ニュアンスを理解できるということ。この物語の二人の関係は、本当に「恋」を挟むことなく「愛」になってしまったのだと思う。
浮気や不倫に関して、わたしは
・子供がいる or 作る予定ならやめとけ
・大人二人の問題ならお好きにどうぞ(上手くやれ)
のスタンスだ。
つまり真司はアウト。美穂はそのあたり弁えているというか、線引きが上手いから好ましい(過去を経て、本当に自分が欲しいものをきちんと見極められる人という感じがする)。長谷雄も言わずもがな。
神名は、自分の欲に正直で尚且つ客観性も備えているあたり見ていて気持ちいいけれど、そもそも恋愛を必要としないタイプだろうに何故恋人や愛人を作ることに執着するのか、という点は引っかかる。
性欲や鬱憤の発散にセックスを求めるにしても、セフレの方がよほど合理的で後腐れもないのに。そこが露月さんの言うように理想や期待を諦めきれず、割り切れないものを抱えた状態=“難儀な魂のまんま生きている”ということなのか。それって滅茶苦茶しんどいことだよなぁ。
神名に限らず、本作の登場人物に対する嫌悪だとか失望のような感情はわたしの中にない。むしろ尊敬している。
だって、もはやメインどころは全員「恋愛せずとも一人でやっていけるだけの能力と図太さがありそう」なのに、皆誰かしらとそういう関係をもって生きていこうとするから。何故ああも面倒な事に手が出せるんだろう?と不思議に思う。
わたしは一方的な恋からのスタートでは上手くいかず、じゃあマチアプで端からお互い恋愛目的なら~と試したものの、半年程度経つと相手に時間を割く意義をすっかり感じなくなった。そもそも自分が主体となって恋愛せずとも、第三者視点から観察や妄想をしているだけでそういう欲は満たされることに気付いてしまったのだ。ゆえに相手にリソースを割いて得られる効用が、人付き合いによるストレスを上回ることはない。
こうなってしまうと自分の恋愛、結婚はいよいよ単なるステータスだ。あまつさえ、そのステータスすらも最近はどうだっていい。おひとり様という楽園を守るためなら、仕事も家事も健康維持も何だって必死にやる――というのがわたしの現状である。完。
そんな自分にとっては、世間的に褒められた関係でなかろうが人と交わることに価値を見出す姿勢はとても目映い。己の欲望と真っ向から向き合い、他者にぶつかっていける人間が尊い。これは大人たちによる等身大の青春小説だと思う。
そして、えぐ味のあるテーマをこれだけ美しく印象的に書き上げられるのは千早さんの描写力あってこそ。
特に第三章、大晦日に長谷雄がいる富山へ行く話が好きだ。二人で交わした「雪の色」の会話を、後で一人になった神名が思い出すシーンなんて本当に鮮やかで。情景が浮かぶとはまさにこのこと。別れ際のくだりも、各々の不器用な思い遣りと照れ隠しがとにかく愛おしい。
何度でも読み返して温かい気持ちになれる。
神名と長谷雄はきっとお互いに大事なままであり続けるのだと信じさせてくれる、祈りのような作品。公開予定の映画も楽しみにしている。 -
Posted by ブクログ
かつて転勤先の山陰に住んでいた頃、本作の舞台である石見銀山に足を運んだことがあった。当日は生憎の空模様だったが、しっとりと肌にまとわりつく湿度がこの土地の雰囲気に不思議なほどマッチしていて、今も印象深く記憶に残っている。本書を読んでいると、あの日感じた空気感とともに、数百年前にこの地で生きた人々の姿がリアルに目に浮かんでくるようであった。
物語は、石見銀山で山師に拾われた少女・ウメの波乱に満ちた人生を描いている。男たちと同じように、銀堀として働きたいと願いながらも、抗えない身体の変化や性差の壁に直面し、葛藤する姿に胸を締めつけられる。
やがて自らの性を受け入れて暮らしていく中でも、しろがねへの思いと間歩の深い闇にどこまでも翻弄されていく。どんなに足掻いても逃れられない宿命を背負いながら、闇に魅せられ、その中で命を燃やしたウメの生き様に切なさと虚無感を感じた。
またいつか石見銀山を訪ねてみたくなったし、その時は銀堀たちに想いを馳せながら、間歩の底知れない闇を感じてみたいと思った。