千早茜のレビュー一覧

  • グリフィスの傷

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    ネタバレ

    また千早茜さん。これは短篇集です。すべて、心や体に傷を負った人を描いている。高校でクラスメイトから完全に無視されていたけど、ある日ケガをして血を流しながら登校したところ、みんながぎょっとして、さわぎになった…心にいくら傷を負っても誰も気づかず、黙殺され続けていたのに、ちょっと(ちょっとではないんだけど)体に傷を負って少々血が流れているだけで無視されなくなるなんて変なの…という話や、
    初めてのセックスで相手の女の子を傷つけてしまったかも…というカップルの話や、
    かつて犬にやられて体や顔に傷を負っており、とにかく犬が嫌いな男と、かつて集団レイプされて心に深い傷を負っており、とにかく男が嫌いな女の子

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    2025年10月21日
  • しろがねの葉(新潮文庫)

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    後半の引き込まれ感がすごい。私も日に日に病気に侵されていく人と生活しているかのよう。辛い咳が、隣から聞こえてくるような、、、それでも生活のために間歩に入る。
    ウメの波瀾万丈すぎる人生。それでも生きていく。

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    2025年10月17日
  • 赤い月の香り

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    ネタバレ

    朔さんの「正しい執着」に対するアンサーが「赦し」なのであれば、朔さんが一香を傍においておくためには、まず朔さんが母親のことを赦すことが必要なのだろうけれど、『透明な夜の香り』であった通り、朔さんは"忘れられない"ひとだからこそ母を赦せないために一香を遠ざけることでしか大切にできないのがもどかしくて、でも美しい。
    あるいは赦さないことで、愛着と執着のちがいすら知らなかった自分が一香を傷つけないようにしているのか、、、どちらにせよ前作に対する朔さんのアンサーが聞けてよかった。

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    2025年10月16日
  • 神様の暇つぶし

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    愛って、いったい何なんだろう。
    この物語を読んで、改めてそう思った。

    登場人物たちは決して理想的じゃない。
    むしろ、自分の欲に忠実で、そのためには他人に無慈悲になれる人たち。
    何を考えているのかわからない、恨まれても嫌われても平然としている。
    そんな人ほど、なぜか心が惹かれてしまう。沼のように。忘れられない。

    幸せになれそうにない人を、どうして愛してしまうのだろう。
    その問いがずっと胸に残って離れない。

    読んでいる間、心が痛くて、怖くて、
    登場人物が離れていきそうになるたびに、
    まるで自分の体まで反応してしまうほどリアルだった。

    “人を愛することの残酷さ”と“それでも求めてしまう心”を

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    2025年10月16日
  • グリフィスの傷

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    傷ー痛みを伴う。身体に刻まれるものもあれば、魂に刻まれるものもある。傷のない人間なんていない。でも他人から見たら、その傷は分からない。そんなお話を10個集めた短編集。

    艶やかで、それでいて澄んでいる。境界線がくっきりと浮かぶ話が多かった。
    その中での「この世のすべての」の話は特徴的だった。でも、他者から見たお爺さんの傷と主人公の傷なんて、どっちも分からない。結末には驚かされたけど、理にはかなっている。読んだ後にモヤモヤっとしたけれど、納得はできてしまう。
    「林檎のしるし」可愛い話だった。丸くツヤツヤした林檎色が浮かぶ。ちょっと切ないけど、湯たんぽを用意すること、そこに込められた想いが&quo

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    2025年10月15日
  • しろがねの葉(新潮文庫)

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    両親と共に夜逃げしたウメは道中で両親と生き別れとなる。さまよいつつ一歩一歩き川を遡り間歩にたどり着いた先で山師喜兵衛と出会う。女児のウメを育てることに冷やかな反応も多い中、喜兵衛はつかず離れずでも大きな愛情をもってウメを育てていく。いつしか銀堀になりたかったウメだが、そこに立ちはだかる性の問題。家族を生かすために必死で銀堀する夫と家で子供を守りじっと夫の帰りを待つ妻。やがて夫は銀堀の病に侵され次々と死を迎える。妻は子供を養うために次の夫と結婚していく。このような銀山の生活の中にウメも入っていくこととなる。性別によりどうしてもかなわない事への悲しみ・怒りなどを自分の中でもがき、受け入れながら必死

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    2025年10月15日
  • しろがねの葉(新潮文庫)

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    時代小説を初めて読んだ。今まで読む機会なく敬遠していたが、千早さんの作品ということで挑戦してみた!

    最初は慣れない言葉や文体に慣れなくて読み進むのに時間がかかったが、千早さんの圧倒的な文章力に惹き込まれた。

    銀掘りたちとそれを支える女たちの一生。力強さと儚さ。
    この作品はフィクションだが、実際に昔の石見銀山ではこのような日常があったのだろう。
    病に倒れていく男たち、それを最後まで見届ける女、辛い。でも掘り続ける。ここで生きていくという覚悟に魅せられた。

    登場人物たちが魅力的だったな。

    「死にたいと望むことは生きたいと同義なんかもしれん」
    「銀がなくなっても、光るなにかを人は探すと思いま

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    2025年10月12日
  • しろがねの葉(新潮文庫)

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    静岡県の土肥金山に行ったことがある。呑気に砂金採りや坑道に潜るなどの体験をした。

    この小説は石見銀山の話。そうか、実際の鉱山というのはこれほど苛烈で闇で熱く苦しいものであったかと、啓かれた感じ。資料や観光地などで見聞きしてはいたが、ここで描かれる生活と金と権力と病、男たちは次々と死んで女は何人もの夫に嫁ぎ、男子は育つとまた坑道に送り込まれる、というリアルは全然わかっていなかった。

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    2025年10月11日
  • しろがねの葉(新潮文庫)

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    なんだろ、ジブリ映画を一本みた後のような読後感。爽やかな部分と、人間の欲望の部分がメリハリよく描かれていて、複雑な気持ちになる作品でした。

    私は石見銀山に行ったこともないですし、勿論戦国時代に生きたわけでもないです。ましてや男なので、女性の体や気持ちの変化など体験したこともなく、わからないことだらけなのですが、なんだか自分がタイムスリップして、ウメ(主人公)になったような感覚を覚えるほどリアルに世界が描かれていたと思います。きっと著者は石見銀山や当時の人々の生活について、細かく調査されたのだろうと察します。

    間歩(まぶ)や手子(てご)など、聞き慣れない言葉が多々でてくるのですが、自然とそう

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    2025年10月09日
  • 赤い月の香り

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    前作の一香さんと朔の間の、不思議と落ち着く雰囲気、通じ合っている関係性と比べると、今作の主人公と朔さんとの関係はかなりちぐはぐ。

    主人公の特徴が強めで自己主張がある。だから、新城や朔さん、屋敷や依頼人だけに注目して見られた前作と比べると、主観的な印象を受けた。

    前作とはまた違った朔さんや新城、そして同じ所があって、読んでいて楽しかった。

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    2025年10月03日
  • 雷と走る

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    ネタバレ

    またまた千早茜さんです。切なくて、とても良かった。
    千早茜さんらしく、主人公は30歳を少し過ぎて、結婚を考えている恋人もいるんだけど、妊娠・出産に関しては少し慎重になっていて、その気持ちを恋人とうまく共有できていない、という設定。
    そのことは、彼女の生い立ち(幼い頃の思い出)と関係している。
    主人公は幼い頃、父親の仕事でアフリカにいて、そこは非常に治安が悪く、インターナショナルスクールには車で通い、自宅の広い敷地と、インターナショナルスクールは頑丈な塀で囲われ、そこから外に一歩でも出ると危険、という環境だった。自宅の敷地には、番犬用に大型犬を何匹も飼っていた。現地で生活する外国人は、番犬を飼う

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    2025年10月01日
  • しつこく わるい食べもの

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    食には人並みにこだわりがあるのでとても楽しく読めた。「自分の好きなものを、好きなときに、好きなだけ食べる」という終始変わらない作者のスタイルは真似したいと思う。読むと絶対にパフェが食べたくなります。

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    2025年09月30日
  • しろがねの葉(新潮文庫)

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    千早茜さんの作品は幾つか読んできたが、今回の作品は群を抜いて良かった。

    時代背景は、なんと関ヶ原の戦いの頃の日本。
    島根県は石見銀山を舞台とした人間の生き様を描いた作品。

    シルバーラッシュに生きる望みを託した両親に連れられ、住み慣れた村を出たウメは、一人きりで銀山の山師である喜兵衛に拾われる。
    夜目の利く童だったウメは、喜兵衛に慈しみ育てられ、やがて間歩で銀を採ることを志すのだが・・・

    銀山はまさに生命そのものだ。
    間歩の闇の中で掘り出される銀は、そこに生きる道を求めた人々の生きる道標であり、欲望と夢と意地の境地だった。そして、その闇は人間の体を確実に蝕んでいく。

    医療や科学が未発達だ

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    2025年09月29日
  • しろがねの葉(新潮文庫)

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    とても読み応えのある物語でした。
    面白かったと書くのはなんだか違う気がして、まだこの胸の昂りを上手く言葉にできないです。
    圧巻でした。

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    2025年09月28日
  • 眠れない夜のために

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    ネタバレ

    千早茜さんの短編集。第一夜から第十夜まで、どの編も眠れない人が主人公です。第一夜の主人公は、眠れない夜にクッキーの缶を開ける。クッキーの缶っていいよね。小さい頃、ドキドキして開けて、姉と中身を分けたことを思い出すけど、そういう描写があって良い。ただ、この主人公は明らかに過食症だよね笑。シンクの下に、そうやって空にしたクッキー缶がたまっている。第三夜の「水のいきもの」は、不眠を克服する話なんだけど、自分と同じ不眠の青年に、深夜の住宅街で出会って、そっと手を差し伸べてもらったことがきっかけで、眠れない夜に出てくる水の中のイメージが克服できる。なかなか素敵なお話だった。
    雨が降ると、身近な人の気持ち

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    2025年09月28日
  • ひきなみ

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    心地よい。ずっと読んでいたくてゆっくりと読んだ。
    情景や感情が文章だけでこれほど五感に訴えかけてくるなんてね…

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    2025年09月28日
  • 胃が合うふたり(新潮文庫)

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    良いところだけ、弱みだけ、を見せ合うのではなく友情にできるだけエンターテイメント性を求める2人の関係が素敵。
    同じ物事について書いてあるけど文体も視点も違う。その中でも胃はとんでもなく合うお2人。
    するする読めるのに読み終わってしまうのが勿体無くて毎日ちょっとずつ読んだ。しばらく経ってからまた読み返しても、日常を少し楽しんでみようと思えるような気がする、そんな本でした。

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    2025年09月23日
  • さんかく

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    タイトルから連想されるのは、三角関係、おむすび、サンドイッチ・・・・

    最初に、大好物の「塩むすび」があって、
    涎がでそうだった。

    京都の町屋のちょっと薄暗い、じめっとした背景に、
    東京の生活に疲れた女性と、年下の男性、その恋人の仕事に忙殺されている女性との、微妙な三角関係の描写が何とも言えなかった。

    高村は、大人で、料理も上手で、仕事もできて、自分をしっかりと生きている感じだった。
    真逆のタイプである華との間で、揺れ動く伊藤君の気持ちもよくわかる。
    3人がそれぞれの目線でストーリーが進んでいく手法はよかったと思う。

    「ヒトってさ、自分にとって都合が悪いものを変だっていうんだよ」
    ともち

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    2025年09月21日
  • 西洋菓子店プティ・フール

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    グロゼイユ、ヴァニーユ、カラメル、ロゼ、ショコラ、クレーム
    甘いお菓子が食べたくなる小説

    お菓子の描写がすごく好き。絵になくても、実際にそこにあって、より繊細に見えてくるようだった。いつも一瞬の美しさが、永遠にあるよう。

    なんか読んだことあるな〜と思ったら、読んだことあった。再読だったけど、前回にはない発見、思いの変化があって読んでよかった。

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    2025年09月21日
  • 私の身体を生きる

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    様々な『自分の』性との向き合い方について書かれている。メタ的な性との向き合い方でないのは、女性の作家たちだからだと思う。
    女性も誰かの性を搾取することもあるだろうが、しかし圧倒的に搾取される側であり、自分の生命と性とが紙一重に近い存在だと思い知る。
    アンソロジーの最初の島本理生さんの作品が個人的ににとても響いた。
    なぜ自分の性と向き合うだけで傷ついてしまうのか。男性も同じなのだろうか。傷ついたことを思い出さないで自分の性について語れる人間がいるならば、どんな人生なのか知りたいと思う。

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    2025年09月20日