千早茜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを覚えている)。この社会で、そうやって女性は、否応がなしに「私の身体」は本当に私のものなのかと、「私」がモノとして扱われ得るということに向き合わされてしまう。時には、まだ第二次性徴も迎えていないうちに。だからこそ、このようなアンソロジーが興味深い。
とはいえ男性視点の「身体」やその社会的表象については私にはわからない部分なのだが(この辺りのアンコンシャスバイアスについて、鳥飼茜さんとパートナーの方との会話が面白かった)。男性作家たちに、同じテーマでアンソロジーを書いてもらったらどのようなものが生まれるのだろう?と好奇心を抱く。 -
Posted by ブクログ
「わるたべ」シリーズ四作目。
このシリーズは大好きで刊行されたら直ぐ読んでいたのだが、珍しく三作目をまだ読めておらず(涙)
だったが、四作目を先に読んでも楽しめた。
今シリーズでは、作者が直木賞を受賞した際や後の心理状況や、離婚から再婚、新しい家族(猫)との生活、可愛い姪っ子のためにディズニーランドについての猛勉強、旅行話など、内容は盛り沢山。
環境の変化が大きく、目まぐるしい日々だったそうだが、食に関しては相変わらず偏屈で、食へのこだわりと執着の凄さは変わっておらず。
ただ忙しさのあまり冷蔵庫に入れている卵の数を忘れていたりしたことは読者の私にも衝撃的だった。(笑)
〝美味のためのひと手間はどんなに参っている夏でも苦ではないのだ″
と言い放つ彼女に驚きと感動を覚えた今作でした。(笑)
-
Posted by ブクログ
戦国末期の石見銀山を舞台に、幼くして父母と生き別れた少女ウメがたくましく生きていく物語。
銀で潤う町の様子とは対照的な、まっ暗闇の坑道「間歩」(まぶ)。
「信じるものがないとその闇は耐えられない」という喜兵衛の言葉から、そこに向かう鉱夫たちがどうやって自分を奮い立たせていたかを考えてしまいます。
当時の鉱夫の平均寿命は30歳ほどだったとのことですが、そこに明るく健やかな女たちの存在は大きかったんだろうな。
間歩の闇に魅せられ、恐れたウメ。
目を覆いたくなるような酷い目にも遭い、胸にズシンとくる辛い場面も多いです。でも自分を見失わず、時にしたたかに立ち回るウメの姿に、どうか闇にのまれないでくれと願いながら読みました。
ツツジや血の赤、夕鶴の白いうなじ、にぶく光る銀、そして間歩や闇夜の漆黒など、色の描き方もとても印象的。
魅力的な登場人物も多いのですが、なんといってもヨキ。ヨキ何者。ヨキ気になりすぎる。ヨキに全部持ってかれた。 -
Posted by ブクログ
千早茜さんの作品は五つくらい読んでいる。
彼女の書く繊細で美しい文章が大好きだ。きっと、すごく薄くて美しいガラスみたいな、非現実的な妖精みたいな、そんな女性なのだろうと思っていた。
あら、ちゃんと人間^_^フェアリーじゃなかった笑
それもすごく面白い人間(言い方!)!
食にすごくこだわりのある人だと分かった。
食を大事に大事にしている人。
私は胃腸がとにかく弱く、腹痛に苦しむ人生を送っているせいか、味よりも私の胃腸が機嫌を損ねないかどうかが一番の問題である。量も食べられない。
そのせいなのか反面なのかわからないけど、食にこだわりのある人や食べるのが大好きな人を見るのは結構好きだ。
美味しそうに食べる人は老若男女魅力的。
千早茜さんは真摯に食と向き合っている。すごく魅力的だ。
読んでいると明日の夕飯、何にしようかな〜とか、セリって美味しいんだ!?知らないぞーとか、なんだか私も食欲湧いてくる。
体弱いところは親近感がわく。食いしん坊な割に千早さんもお腹よわよわ仲間っぽいし笑
このエッセイはわるい食べものシリーズの第四弾とのことなので、他のシリーズも読んでみたくなった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレまた千早茜さん。これは短篇集です。すべて、心や体に傷を負った人を描いている。高校でクラスメイトから完全に無視されていたけど、ある日ケガをして血を流しながら登校したところ、みんながぎょっとして、さわぎになった…心にいくら傷を負っても誰も気づかず、黙殺され続けていたのに、ちょっと(ちょっとではないんだけど)体に傷を負って少々血が流れているだけで無視されなくなるなんて変なの…という話や、
初めてのセックスで相手の女の子を傷つけてしまったかも…というカップルの話や、
かつて犬にやられて体や顔に傷を負っており、とにかく犬が嫌いな男と、かつて集団レイプされて心に深い傷を負っており、とにかく男が嫌いな女の子の話や、
かつて工場でのバイト中に指が全部ちぎれた男の子の話や。
↑この話切なかったな。このときに指を拾ってくれた社員さんとの、その後のやりとりが語られるんだけど、たぶんその社員さんはうだつの上がら、誰からも敬意を払われていない男なのだろう。でも事故のとき、自分の適切な処置で若い男の子の手をもとに戻すことができた!という想いが、その後の彼の人生を支えている。しかし男の子はもうそれがうっとうしくなってくる。それでも一応、礼を尽くしていはいる。最後に、身寄りのない男が孤独死した部屋を訪れる…。
これまで親しんだ千早茜さんらしい、「女性の目に見えない傷」を描いたものだけでなく、男性の生きづらさや、女性の男性に対する誤解なんかもさらりと描かれていて良かった。男性にも、女性にもあったかい小説。 -
Posted by ブクログ
傷ー痛みを伴う。身体に刻まれるものもあれば、魂に刻まれるものもある。傷のない人間なんていない。でも他人から見たら、その傷は分からない。そんなお話を10個集めた短編集。
艶やかで、それでいて澄んでいる。境界線がくっきりと浮かぶ話が多かった。
その中での「この世のすべての」の話は特徴的だった。でも、他者から見たお爺さんの傷と主人公の傷なんて、どっちも分からない。結末には驚かされたけど、理にはかなっている。読んだ後にモヤモヤっとしたけれど、納得はできてしまう。
「林檎のしるし」可愛い話だった。丸くツヤツヤした林檎色が浮かぶ。ちょっと切ないけど、湯たんぽを用意すること、そこに込められた想いが"興味ない"訳がない。切ないけど、キラキラしていた。
女性に対する"傷モノ"の意味を、今まで考えたこともなかった気がする。改めて認識した。そういった経験がないけど、痛いのかな…
千早茜さんのお話は色がよく思い浮かびます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレまたまた千早茜さんです。切なくて、とても良かった。
千早茜さんらしく、主人公は30歳を少し過ぎて、結婚を考えている恋人もいるんだけど、妊娠・出産に関しては少し慎重になっていて、その気持ちを恋人とうまく共有できていない、という設定。
そのことは、彼女の生い立ち(幼い頃の思い出)と関係している。
主人公は幼い頃、父親の仕事でアフリカにいて、そこは非常に治安が悪く、インターナショナルスクールには車で通い、自宅の広い敷地と、インターナショナルスクールは頑丈な塀で囲われ、そこから外に一歩でも出ると危険、という環境だった。自宅の敷地には、番犬用に大型犬を何匹も飼っていた。現地で生活する外国人は、番犬を飼うのが当然とされていた。
日本では見られないような大型の猟犬で、現地のスタッフによく躾され、飼い主に従順ではあるがかなり凶暴。主人公のまどかは、1匹の犬に虎と名付け、可愛がった。
その野性性と自分との関係、結局は日本に帰るときに置いていかなければならなかったことが、彼女の心をとらえている。
まどかの現在と、アフリカ時代の回想が交互に描かれる。まどかは、虎を愛したように、恋人や子供を愛せるのか自信をもてずにいるが、ラストは恋人がまどかを理解しようと歩み寄って(寄り添って?)くれていて、希望がもてる感じで良かった。 -
Posted by ブクログ
タイトルから連想されるのは、三角関係、おむすび、サンドイッチ・・・・
最初に、大好物の「塩むすび」があって、
涎がでそうだった。
京都の町屋のちょっと薄暗い、じめっとした背景に、
東京の生活に疲れた女性と、年下の男性、その恋人の仕事に忙殺されている女性との、微妙な三角関係の描写が何とも言えなかった。
高村は、大人で、料理も上手で、仕事もできて、自分をしっかりと生きている感じだった。
真逆のタイプである華との間で、揺れ動く伊藤君の気持ちもよくわかる。
3人がそれぞれの目線でストーリーが進んでいく手法はよかったと思う。
「ヒトってさ、自分にとって都合が悪いものを変だっていうんだよ」
ともちゃんの言葉は、普通じゃないと言われ傷ついた心に温かい灯をともしたと思う。
カップ麺ばかり食べる堀教授といい、わき役たちのキャラもなかなか良かった。
人は生き物である限り、どんな状況でも、食べ物から離れることはできない。
食べることは命を保つこと。
丁寧に手をかけられたたくさんの料理、マネしたいものや、食べたいものが盛沢山だった。