千早茜のレビュー一覧
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ネタバレ香りシリーズの最終作。
「透明な夜の香り」の前日譚にあたる。
京都の香老舗 瑞雲堂。社長の娘である真奈は現在、社長代理を務めている。父が部屋から出てこなくなってしまった。妹 丹穂が亡くなってしまったのだった。丹穂が火葬されて骨になったとき、最高峰の香木、伽羅の香りが充満していた。骨が伽羅になったのか、と思われたが、そんなことはあり得るのか。真奈のもとに胡散臭い男、新城がやって来た。どうやら妹の骨の伽羅を手に入れたい様子。そして小川朔が丹穂に頼まれたと言って、丹穂の調合室に滞在するように…この作品の世界観が大好きなんだけれど、やはり、私は朔、一香、源さんのやり取りが好きなので、「燻る…」と「赤い月…」はそこまで夢中にはなれなかった。といっても1日で読んでしまったけれど。新城が「透明な…」の時より、もの言いも、やることも、酷く感じる。この話の新城は本当に、嫌な感じだ。
真奈さんが納得いくような形になれたのはよかったんだけれど、結局、相伝の香は聞くことが出来なくなっちゃったんではなかろうか。あ、でも新城の依頼人がお父さんなら、全部は沈香は全部はなくならないか。よかった。名前も出てこない、真奈さんの彼氏さん、もうちょっと登場して欲しかったかな。 -
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ネタバレ香りのミステリーと人間関係が複雑に絡み合う、香りシリーズ最終作。
香は「場を制圧する」。小川朔の言葉が、香を焚いて実際に聞いたわけじゃないのによく分かった。
文章から、執着、閉塞感のある生活、主人公真奈のコンプレックスなどがひしひしと伝わってきて、今作は軽やかな香水ではなく香がぴったりだと思った。
真奈が真相に近づいていくにつれ、ページを捲る手がとまらなかった。重たい話で、確かに執着や暗さを雰囲気として感じるのに、抑制の効いた文章で思いの外あっさりと読むことができる。素人意見だが、千早先生は本を出す度に私でも分かるくらい文章力が上がるのが凄いと思う。
続きが読めないのは寂しいが、シリーズとして綺麗に終わったと思う。香り三部作をリアルタイムで追えて本当に良かった。 -
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大好きなシリーズの新作にして完結編。
寂しい…
朔と一香のその後…を誰もが期待すると思いますが、一香と出逢う前のお話になります。
自分のお店を持つ前の若き日の朔。そして若き日の新城。
今作の舞台は香老舗の瑞雲堂。前二作は朔のお店が舞台で、印象としては爽やかなハーブや薔薇のイメージだったのですが、今作は肌にまとわりつくような、家に染み付くような、重く絡みつく香りのイメージがどのページにも漂っていました。
香りが強すぎて頭痛になりそうな一冊。
でも、この雰囲気は嫌いではなかった。全ページに漂う強すぎる香りと、主人公真奈の持つ秘密や、母と妹の死にまつわる謎、一族の嘘…全てが絡まり合い、どんどん引き込まれていきました。
第一作でも出てきた「執着」というキーワードが今作でも出てきて、改めて読み返してみたい気持ちになってしまった。
なんとも重苦しい閉塞感のある一冊だったけれど、嫌いじゃない、こんな本に時々巡り合いたい、好みだなぁと思った一冊でした。 -
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この本が刺さったこと、救われたと思う箇所があるところを、親に知られたくない。
コンプレックスではないですが、人と少し感覚が違うことは理解しているので、そんな風に思ってしまいます。
言い方が難しいですが、女の子扱いはされたくないけど異性と認識したうえで大切にしてくれる。そんな友人たちがいます。女の子の友達もいっぱいいるけど、彼女たちでは自分の子の気持ちを埋めることができない日、今は彼らに聞いてほしいということがあります。
間違いなく、お互い大切で愛情があって、好いているけど、愛してないし恋もしない。ただ切実に幸せでいてほしい。そんな外から見たら都合がいい「男ともだち」がいます。
「お前、俺がいてよかったね」というセリフにすごくすごく救われました。
簡単におすすめはできないし、したくもないけど、本当にこの本に出会えてよかったです。 -
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直木賞にしては、個人的に読みやすいと感じた。闇を書けば書くほど生を感じる1冊 というあとがきに納得。
あとは、女性の複雑な感情(父性と憧れ、 愛情とライバル心の狭間みたいな)の描写が上手いのかも。女性としてのキャリア面でのやりきれなさ、その一方で家庭を持てる満足感 とか。400年も前を舞台にしてるはずなのに、なぜか親近感がわく。
そして、女性体と銀山洞窟を一緒と見立てたのがすごいな。。。改めて考えると共通点が多くて考えるほどエロさを感じる。どうやってこんな発想に至ったのか。。。
・掘り進めて探し当てる、でも掘り進める側が死ぬ
・respectが無いと悪い結果(死/無)となる
・冷たさと温かさ
・離れられない
とかとか。。。 -
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もちろん恋愛模様だったり男ともだちについての定義だったり30の節目での仕事への向き合い方だったり..いろいろ着目する点はあるけれどシンプルに食事の描写や新幹線,路面電車や駅など、黄金の雪景色や大晦日,桜など季節ごとの情景、煙草,コーヒー,紙袋,着信履歴などお洒落するなど生活感のある描写が最後までずーっと続くのが心地よかった。
千早茜さんの作品は好きで、『男ともだち』もずっと積読していて他の本を読み進めているうちに映像化の予告を観てしまい、読み始めた頃にはハセオは完全に成田凌で想像してしまったのでキャストが明かされていない時に読んでいたら自分の中のハセオはどんな声で、表情で、佇まいだったのだろうと少し後悔、、ただ成田凌は元々大好きな俳優さんなのでもちろん上映されたら観に行きます。京都行きたいなあ。 -
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「ページをめくるたび、文字の奥から微かな香りが立ち上ってくる。もともと言葉とは遠い場所にあるはずの、姿を持たない、香り、と名付けられた空気の揺らめきが、文字を追う視覚よりもずっと繊細に伝わってくる。言葉の意味を越えて、嗅覚が際立つという稀有な体験をさせてくれる小説である」まさにその通りだと思った。
読み進めていくうちに心の奥深くから沸々と湧き上がる感情があった。興奮でも悲しみでも何かに強い共感があったわけでもない。ただ、沸々と。感情に名前がつけられなかった。すごく不思議だ。
感動したわけでもない。悲しんだわけでもない。ただ小説の中の人物たちに流れる時間はしごくゆっくりで、かなり落ち着き、シンとした空気が流れているが、その様子を1番近いところで見届けたい、ページをめくる手が止まらない。そんな感情だ。
それでも香りだけは1ページ目から最後の1行まで鮮明に感じ取ることができた。嗅いだことのない香りもあるはずなのになぜかわかるような気がした。それが妙に心地よかった。
それはもしかすると、私自身が日常生活の中で香りを頼りに生きているからなのかもしれないと感じた。柔軟剤を嗅げば何歳の時に使用して、どんな出来事があったのか全て鮮明にフラッシュバックしてくる。顔は思い出せななくても、人の行動や発した言葉、当時の感情、全て蘇ってくる。この小説の登場人物たちと同じように思い出したくないものまで。
柔軟剤だけではない。街中である口臭の人とすれ違えば私は自分の暗黒時代をフラッシュバックしてしまう。これは登場人物の一香と同じではないか?目を逸らし事実を受け入れきれていないのか?その人が何か言葉を紡ぐために口を開くたびにコーヒーと甘ったるいタバコの臭いが混ざったであろう腐ったコンポタージュのような匂いが漂ってくる。当時の私はほとんどの確率で鼻の空気の通り道を意図的に塞ぎ口から酸素を求めたものだ。決して気づかれることないよう。
もしかすると私自身も香りに執着して生きているのではないか?だから香水を好み、自ら良い思い出とお気に入りの香水とを選択して、己の海馬へ永遠の記憶として刻みこもうとしているのか?
それは果たして良い選択なのか?そもそも意図的にそのような行動をすることは悪なのか?
興奮を「昂奮」と記したり情景を想像しやすい香りの説明だったりと千早茜さんの書く文章はとにかく綺麗で澄んでいる。なぜか夏を描いていてもこの小説の中ではどこかひんやりした場所があって爽やかな風が通っている。私はそこが気に入ったのかもしれない。
また読もう。 -
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まず手に取って、イラストかわいい、装丁素敵!とテンションあがりました。
紙や印刷にも高級感がある。前半の餅は白、後半のチョコは少しチョコレート色を感じさせる紙になっていて、紙自体も厚め。遊び紙も前後2枚ずつ入っていて、とても凝った造りになっている。色や手触りもよい。本文の内容も千早さんなので同じくこだわりがあって読み応えありそうと期待が高まる。
千早茜さんは、細やかな感性と、それを物語へと昇華し、さらに美しい文章へと言語化して、ひとつの作品として構築する才能を、神様はよくぞ与えてくださったものだと思っていたけど、この作品を読んで好奇心、好きなものや興味のあるものへの貪欲さ、探究心と行動力も素晴らしいんだなと感じた。作家になるべくしてなった人なのだと思う。
餅もチョコレートも、とにかくこだわりと知識と愛がすごい。だけどクスッと笑ってしまったり愛嬌あってサクサク読めてしまうのだ。さらに千早さんの文章力が加わるとありありと風味や食感など五感に訴えかけられて手に取りたくなる。食べたくなる。買いに行きたくなる。
どっちもスーパーで売っている市販のものをそのまま食べても十分おいしいから、わざわざ専門店やデパ地下で買うことはふだんはほとんどないのに。
こんなに奥深くこんなにもたくさんの種類があるとは知らなかった。千早さんが味わっている餅とチョコレートの世界は私のそれとは全然違った。次元が違う。
そして最後は不覚にもほろりと。
チョコレートを食べられるということは、平和だということなんですね。
このまま続けて、明治の100周年のチョコレートのアンソロジー本も読みたくなりました。 -
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離婚後の楽しい話なのかな?と思って読み始めたら、思った以上に現実的でグサグサくる話だった。
子どもがいなくて、仕事もあって、自分でそれなりに稼いでいる。それなら離婚したって、お金があれば自由に生きられるんじゃないかと思う。
でも、実際はそんなに簡単じゃない。
老後を一人で過ごすこと。
婚活。
年下の恋人との不安定な関係。
誰かと一緒に生きるなら、何かを妥協しなきゃいけない。かといって、一人で生きることにも寂しさや心細さがある。なんで人生って、こんなにうまくいかないんだろう。
現実って難しい。
そして読んでいて思ったのが、マリエさんみたいに生きられる人って、実はそんなに多くないんじゃないかなということ。
マリエさんには自分で生活できる仕事や収入があって、子どももいない。
もし子どもがいたら、離婚したあとも自分の気持ちだけで人生を決めることはできない。
経済的なことや子どもの生活、元夫との関係……考えなきゃいけないことは、もっと増える。
だから「離婚して自由になった!」なんて、そんな単純な話ではないんだと思う。
それでもマリエさんは、何かを選ばなかった。
結婚することも、再婚することも、誰かに人生を預けることも。それはそれで、いいな!と思えた。
読んでいて楽しいのに、現実がどんどん浮き彫りになってくる。
でも最後には、
「あたしもマリエさんみたいに、もう少しゆるく生きてもいいのかも」と思えた。
人生に、これが正解っていう選択肢はないのかもしれない。
だったら、無理に何かを選ばなくてもいい。
自分なりのペースで、ゆるく生きていくのも悪くないのかも。