千早茜のレビュー一覧

  • 眠りの庭
     強さと弱さ、野生と抑制、絶望と生命力。正反対の性質が共存する者は、生々しくも美しい。
     支配欲に満ちた父親に育てられた小波は、意志を持たない。自我を持たない人間は、何も求めてこない。また側にいる者の欲求を、自分のものだと錯覚している。だからなのか、小波と関わった男性は、彼女に強く惹かれ、取り込まれ...続きを読む
  • 西洋菓子店プティ・フール

    菓子の魅力ってのは背徳感だからな。こんな綺麗なものを食べていいのかって思わせなきゃなあ。

    物語に出てくるお菓子を食べながら読みたくなる。
    ちょっとドキドキする大人なキャラメルや酸味の強いベリーみたいな王道ではない恋模様にドキドキしました。

  • マリエ
    現代の女性の生き方は多様化していて、結婚して子どもを育てるのだけがあたりまえではない。好きなように生きていいと寄り添ってくれているように感じた。恋愛なんて興味がないように振る舞うマリエも結局、恋愛がやめられない。気づいたらハマってて夢中になってしまっている。彼のいる生活に慣れてしまって、連絡がないこ...続きを読む
  • 赤い月の香り
    「透明な夜の香り」続編。
    朝倉満は調理場でバイトしている。そこへ尋常ならざる嗅覚を持つ小川朔と新城が居合わせ、朝倉に仕事を持ちかける。
    「君から強い怒りの残り香がした」
    女性が苦手な朝倉だが、朔の香り、朔と同じ香りを纏う若宮一香に興味を持つ。
    そして朝倉は赤と月と暴力に神経過敏になる。
    過去、暴力に...続きを読む
  • 西洋菓子店プティ・フール
    ”自分で得てきた知識や経験はちゃんと使え。それがいつかお前の味になる。”

    ”この人と具体的にどうしたいのか考えたこともないのだから、何も進まなくて当然だ。”

    ”腕を磨こう。好きな人のとっておきの甘い笑顔を見るために。たとえ、明日になれば消える一瞬の歓びだとしても”

    ”じいちゃんは作業中にメモを...続きを読む
  • 赤い月の香り
    健康診断には何故嗅覚の検査が無いのか?疑問だった。嗅覚が最も主観が入る感覚だからだ。
    「雨が降り始めた時のアスファルトの匂い」で、同じ匂いにたどり着くことは恐らく無理なんだろう。

    絶対音感という言葉を初めて聞いた時に、なんて生きにくい人生なのかと思ったが、小川朔の人生も同じくらい生きづらいだろう。
  • 透明な夜の香り
    香りにまつわるお話。
    調香師が登場する小説は珍しく感じ、それと同時に香りは私たち一人一人の人生に実は大きく関わっているのだと思った。
    朔さんはどんな香りでも作ることができて、
    その能力は逆にいうとどんな香りも嗅ぎ分けることのできる天才脳をもつ。
    それゆえに、孤独もあるんだなと。
    天才的な能力を持つ傍...続きを読む
  • しろがねの葉
    ウメは一体どうなってしまうのか
    先が気になり一気読み
    風景やそれぞれの登場人物の描写が丁寧で物語に入りこみやすかった
    ウメは決して幸せな人生 思うような人生ではなかったかもしれないけど
    喜兵衛やヨキ 隼人 おとよ 龍
    多くの人に守られ、愛にあふれる人生だったんだなぁと感じた
  • 赤い月の香り
    物語に飲まれてしまった…
    千早さんの繊細で嗅覚をくすぐるような表現が儚くもずっしりと重い余韻となって心にとどまっている。
  • マリエ
    大好きな千早さんの、1.2を争う大好きな本となった。

    ”古い作品に触れたら、感じたことを話すのはいいことです。
    友人でも家族でも誰でもいい。
    そしたら古いだけの物語にも血が通う”

    ”彼との食事は鮮やかで生き生きしている”

    ”私がパートナーに望むのは世界を共有することなのかもしれない。
    色や匂い...続きを読む
  • しろがねの葉
    子として、女として、銀山で生きる者として懸命に生き抜くウメの姿が心に焼き付いている。育ての親喜兵衛の存在が希望なのか、はたまた呪縛のようにウメを離さないのも切ない。石見の風景が千早さんの繊細な描写で目の前に広がるようでした。
  • 透明な夜の香り
    読みたい欲求が止まらない作品だった。
    少し引きこもっていた一香が調香師である朔の元で働くようになり徐々に気力を取り戻していく。香りに匂いにそして臭いに敏感な世界で生きていくのは想像を超える生活なのだと感じる。臭いに嫌悪に似たものを感じることがあるのは誰しも感じたことがあると思う。匂いは記憶の中に永遠...続きを読む
  • しろがねの葉
    石見銀山が舞台となり、そこで壮絶な人生をおくるウメとウメを取り巻く男たち。
    女であるウメの葛藤。
    黒い血を吐き、死んでいく男たち。
    とても心を揺さぶられた。
    この本を読んだきっかけは、6年ほど前だろうか。
    石見銀山に行った。
    その時はたいした知識もなく、なんとなく見ていただけ。
    今行ったなら、感じ方...続きを読む
  • しろがねの葉
    『ひきなみ 』からの千早茜さん。
    こんなにダイナミックな展開の物語を描く人だとは思わなかった。『ひきなみ 』で、桜木紫乃さんが帯を書いていたことも納得。
    気性の激しいウメという女、石見銀山で銀を掘る男たちと、そこに暮らす人々。広がる街、そして闇を深めていく間歩。その不穏な闇。暗闇でものを見ることに長...続きを読む
  • 神様の暇つぶし
    読み終わってすぐに『どうして装丁が"りんご"なのだろう』と不思議に思った。
    物語の鍵になるのは、同じ果物でもりんごではなく桃なのに、何故?と。

    神様とりんごといえば連想されるのは禁断の果実。
    食べることを禁じられていたのに、口にしてしまったアダムとイブ。その結果、ふたりは知恵をつけ、神によりエデン...続きを読む
  • しろがねの葉
    石見銀山で行きた一人の女の生涯を描いた作品。
    はじめは難しい言葉が多く読みにくさを感じたが、慣れて来るとさすが千早茜さん。
    読み始めると止まらなかった。
  • しろがねの葉
    直木賞受賞。
    戦国末期に石見銀山の山師に拾われたウメの半生。しろがねの葉ちは銀を含む土地だと白く光るといわれる羊歯?のこと。
    夜目が効く娘という設定で何か超人的な活躍をする話なのかと思わせるが、そういうたん短絡的な話ではなかった。
    銀山に生きるしかない男たちと女たちの過酷な生活とそこに育まれる愛情、...続きを読む
  • ひきなみ
    『私はそれについて、否定も肯定もしない。
    その人の見ている世界は、私の見ている世界とは関係ないから。』
    ...望みを持って逃げた先にも、逃げた後の生活はやがて現実となって纏わりついてくる。

    全てを捨てて逃げても、得られたものより代償が大きかった時にこそ、この言葉を思い出したい。
    他人は何も変えられ...続きを読む
  • 赤い月の香り
    一作目の雰囲気がすごく好きだったので、二作目への不安を抱えつつ読んだものの、すぐにひきこまれた。
    主人公が感情的な面がある分、幻想的になりすぎない良さもあると感じた。
    変わらず美しい文章で、庭園の季節の移り変わりや、立ち上るような香りを楽しむことができた。
    一香ちゃんもその後の姿を見せてくれて嬉しか...続きを読む
  • 神様の暇つぶし
    千早茜さんの作品の中で初めて読んだ作品。
    純愛ではあるのだろうが、歪な愛の形。好きとはなんなのだろう、と考えさせられた。そもそも動物に好きという感情はあるのだろうか、本能で、惹かれ合う、本来は人間もそうではないのだろうか。
    一夏を共に過ごして、季節が過ぎるのと同じように去っていった全さん。冷静に考え...続きを読む