千早茜のレビュー一覧
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ネタバレ天才調香師 小川朔、香りシリーズの2作目
今回は赤い月に囚われた男の子が洋館で働くことになり、様々な悩みや欲望を持った客が朔の元に現れる。今作では加害された人、加害した人、加害していた人達の記憶を象徴する香りが多い。ただ、嗅覚と記憶は密接に関係しているからと言って、同じ香りでも同じ記憶を共有できる訳ではない。そして加害を愛として執着する人間もいるようだ。
1作目後半で一香は朔の仕事部屋に並ぶ香料瓶になりたいと願望を意識する。ガラス瓶に閉じ込められて朔の目に晒されたいという欲望を。
2作目で朔さんは一香を想って香料瓶に洋館の庭の香りを詰め、一香の書いたラベルを貼り付け並べて、きっと眺めている。部分的に一香の願いは叶えられていることに気づいた時、彼女はどう動くんだろうか。
今作も五感を刺激するお話だった。 -
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千早さんの表現の細かさとリアルさ。例えば、2人が微妙な空気感になった時の「全さんだけが私をみなかった」。この時の空気感がものすごくリアルになる言葉で凄みを感じる。
私もどちらかというと細かい日々のシーンや人の目線、発言、動きに敏感であり、相手のこころがわかるほうで、この感覚を文章にしてくれている初めての感覚。
拒絶されても挑戦しようと思える瞬間があった。
私もかなり積極的な方だが、しかし相手の思いがこちらに向いてると確信があるときだけ。Fujikoはその確信もないまま、でも真っ直ぐに体当たりしていた。物語の生の短さの描写も相待って、拒絶されようが挑戦することの大事さを学んだ。 -
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「人は自分の恋愛だけが美しい」
恋愛話をしてくる友達が、時には私が、人からされたアドバイスを聞けない理由がこの一言に凝縮されていると思った。「自分の恋愛」という所謂きれいで神聖な領域に、自分なりの哲学がある領域に、"何も知らない他人"から土足で踏み込まれることの不快感。
みんな自分が悲劇のヒロインでありたいのかもなぁ、と妙に納得させられた。
情景が目に浮かびやすい、想像力を掻き立てる文章が素晴らしかった。特に後半は生々しすぎて通勤中に読むのが恥ずかしく感じるくらいで、家でこっそりと続きを読もうとした。それくらいはっきりと情景が描かれている。生々しいシーンは得意ではないが、総合してもとても面白く読めた。
藤子に対する全さんの想いに関する表現は控えめで、メタ視点があるからこそ多少汲み取れたものの、少しわかりにくかった。 -
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香りをテーマにした物語だけど、文章からは色もよく感じ取れた。前半、とても静かな本だなと思っていたらちょうど中盤でガラッと雰囲気が変わり、本から香りと色が湧き立つように感じた。朔の紺色の声が本全体に静かに漂っていて、洋館での生活や出来事の香りと色がぽつぽつと浮き上がってくるようだった。朔の孤独と主人公の後悔が、決して忘れることのできないもので終わらずに静かに終われていく様が美しく、固い蕾が開くような変化だと思った。
変化は恐ろしく、変わらずにいることはとても心地よいぬるま湯だけれど、停滞を破るきっかけを掴んで少しずつ変わって生きていく。
2人を見守る周りの人達も温かく癒された。 -
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ネタバレ始めは自分の生活を一変させた全さんが自分を弄ぶ『神様の暇つぶし』なのだと考えていたが、その時しかない若い時の藤子が自分の生活を変えさせるための『神様の暇つぶし』に全さんが弄ばれたとも捉える事が出来、読む時によって題名の解釈が変化するのも大変興味深い。また重要人物である里見が同性愛者であったことや、途中で白血病で亡くなってしまうという展開に衝撃を受けた。藤子と同じように理解されない恋を歩み、孤独であるという点での共通点があった人物が亡くなってしまったのも、菜月から電話がかかってくるのも、藤子が自分の過去を懐古する契機になっているように感じられ面白い。また初めに出てきた藤子を追う記者?みたいな人はあまり主要人物としては出てこないが、最後のオチを作るのにいい役をしている。全員が全員いなければ物語を進めることが出来ない。素晴らしい作品だと思った。また「記憶を濾過する」「自分の物語」などの表現が好きだ。
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読み終わるのが惜しいと思えるほど、良い本でした。
料理名を冠した全18章。各章のタイトルの下には小さなアイコンが添えられていて、それを見ると、3人のうち誰が主人公の章なのかが分かるようになっています。たとえば、鞄のアイコンは正和を示します。
夕香:30代後半。会社を辞めて独立し、現在は京都の町家でデザイナーとして暮らしている。手際よく出汁を引いて美味しい料理をつくり、きちんとした生活を送っている。
正和:30歳過ぎ。かつて夕香の職場でアルバイトをしていた。現在は営業職に就いており、夕香とは生活スタイルや食の好みが合うことから、彼女の暮らす京町家で同居することになる。
華:28歳。正和の恋人。生物の研究一筋の大学院生で、突然入る解剖のため、しょっちゅうデートをキャンセルしている。生活面は少しだらしなく、あまり自分を表に出さない性格。
夕香と正和には、互いに少しばかり下心があるものの、あくまで同居人という関係です。ところが、2人が同居していることを知った華は、激しく心を乱されていきます……。
タイトルの『さんかく』は三角関係の事でしょうが、物語中にたびたび登場するおむすびのようでもあります。なにしろ、最初の章のタイトルが「塩むすび」ですからね。
私はもともと恋愛ものがあまり得意ではありませんし、意識高げな食べ物談義も苦手です。でも、千早さんの手にかかると、なぜか良いのです。理由は良く分かりませんが、なんだか波長が合うのです。