千早茜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「私の食生活、つまらなくない?」って落ち込むくらい面白かった。食べ物ってこんなふうに表現できるんだ。びっくりした。
1番驚いたのは、「果物を狩るけもの」に出てくる文章。果物について書かれていることを忘れるくらい、甘美な表現だった。うっかりスーパーで果物を見る目が変わってしまいそう。果物は、剥くのがめんどくさくてあまり食べないけど、久々に味わいたいなと思った。
何かを考えたり、感じたりした時に、もっとぴったりな言葉で表現したいといつも思う。この本を読んで、その気持ちに拍車がかかった。言葉の引き出しをもっと増やしたい。色んな体験を残したい。 -
Posted by ブクログ
千早さんの紡ぐ世界はやはり繊細で、儚くて、胸がきゅうっと締め付けられるような切なさを覚える。
銀の山を舞台に、間歩で生きる男たちと、それらにどうしようもなく惹かれながらも、女であるために同じようには生きられないウメ。
どの人物もぶっきらぼうながらも愛に溢れていて、とても魅力的だった。
長く生きられないと知りながらも、間歩に入り銀を求め続ける銀堀たち。
夫が死ぬたびに他の銀堀のもとに嫁ぎ、男が生まれればまた間歩へと送り込む女たち。
銀の山で命を繋いでいく覚悟や強さが物悲しい。
子猿のようだったウメも立派にその環の一端となったことが、嬉しいような、切ないような。
千早さんは色や香りの表現が美しいので、映像化されたら是非見てみたい。 -
Posted by ブクログ
大きな事件が起きるわけではないのに展開が気になって一気に読んでしまった。
ハセオみたいな男友達が欲しい人生だったけど、こんな尊い関係性は現実にはないでしょ、、とどこか俯瞰してる私はやっぱり男女の友情は成立しない派。
2人くっつくのかなぁと思いきや(そんな展開を少し期待しながら読んでしまった)最後まで性愛には至らず、でも余韻が心地よい終わり方だった。
9/20追記>>
読み返すほどに味わい深い作品だなと!
男女の友情成立しない派なことに変わりはないけど、主人公とハセオの関係性の深みや物語全体の色っぽさが2回目読んでからの方が伝わってきて、結果かなり好きな作品となりました。
主人公がイラストレーターとしての自分に悩み、冷えきった恋人との関係や不倫関係という浅くもなかなか抜けられない沼で藻掻いている様子が二回目読んでからのほうが共感できたし、だからこそハセオが本当に魅力的で、頭に成田凌を浮かべて読んだら尚解像度が上がりました。映画もたのしみ。 -
Posted by ブクログ
『その男の周りだけ青い夜の気配がただよっているように見えた』
この一文だけで前作の感動が蘇った。
五感に訴える文章と繊細な感情描写が狂おしいほど好きなシリーズだ。
タイトルにも入っている「月」。
序盤で月に関する謎めいた描写が連続していることから、月に着目して読み始めた。
今回の主人公・満はカッとなりやすい性格であること以外情報が少なく、月との関連性も不明で序盤は感情移入が難しかった。
だが依頼客のエピソードを通してパズルのピースが少しずつ揃い始め、次第に生い立ちとそこに隠された悲劇がうっすらと予見できてくる。
絵が出来上がった時には、とっつきにくかった彼の行動原理が腑に落ちた。
人間の意識に刻まれた傷の描き方も素晴らしい。
余韻を残した終わり方も味わい深かった。 -
Posted by ブクログ
大事なことをたくさん受け取った気がする。
印象に残ったシーン。担任の先生の言葉、そのあと2人が仲良くなるシーン、中学生の葉と真以、再会してお店をみて回るところ。
閉鎖的な環境を通して描かれるしんどさ。あまりにも美しい場所だから、人々の差別的な感情の醜くさが際立ったし、向けられる者を痛々しく感じてしまった。
葉のまわりの大人は皆勝手に思えたけど、祖母のことは嫌いにはなりきれなかった。この人も、女性だからか、島で生きていくために身についた考えと葉に向ける感情とに、少しの葛藤を感じる。
“脱獄犯”ほどの異質さを頼らないと逃げられなかった真以。
大義名分がないと、自分に乗せられた“女”から逃げられないなんてしんどすぎる。
大人になってからの葉の物語も、だいぶ苦しかった。この苦しさが物語の核だとも思う。読み終わったら、心がすーっと静かになって、自分の中の揺らぎみたいなものに、少し軸ができる気がした。
文庫の桜木紫乃さんの解説も、すごく染みた。