千早茜のレビュー一覧

  • 人形たちの白昼夢
     美しさを究極にまで言語化すると、この小説みたいな感じになるんだろうなと思う。美しさと絶望は、少し似ている。
     また作中には、美しいものを愛する者たちが多く登場する。「美しさを愛する」と言えば聞こえは良いけれど、それは、そうではない世界が受け入れられない潔癖さをも意味する。決して生き物として強いとは...続きを読む
  • あとかた
    2013年に島清恋愛文学賞を受賞した作品です。
    この賞は芥川賞や直木賞に比べると、あまりメジャーではないですが恋愛小説から選ばれる賞で、有名な方々が受賞されてます。
    六つの短編集ですが、連作形式なので前作に登場した人物が次の話の担い手になってます。
    好きな人になかなか本心をさらけ出せない、自身をみせ...続きを読む
  • 神様の暇つぶし
    経験したことが無いのに知っている、という感情に終始浸っていた
    私が感じたこの感情は何に対する感情なのか、恋なのか親しい人を喪うものか、考えた時にこれは生きる、という事に対する感情のではないかと思った。

    一文一文が美しく廃退的な雰囲気と明るく前向きな雰囲気が混ざり合い独特のコントラストに満ちていた。...続きを読む
  • からまる
    絡まり合っている人間関係も、それぞれが悩みや葛藤を抱えつつも良い感じにするっと解けておさまるところに落ち着くので最後に、良かったねと言いたくなるお話でした。千早さんの本は毎回引き込まれます。
  • 西洋菓子店プティ・フール
    スイーツ小説は増えてきたけれど、最近読んだもののなかでは個人的にはかなり上位にランクイン。専門的すぎるのに思わず調べずにはいられない用語が多くてもお話をひきたてる大事なアイテムなのかも。おんなじ人物でもこうまで違った見方になるのかというのが連作短編の醍醐味。それが遺憾なく発揮されていて。特にネイリス...続きを読む
  • 正しい女たち
     絡め取られていくような因果の残忍性は、女たちの復讐のようにも思える。忘れられないような人生の一片が、そのときは輝いて見えて、儚くて、永遠のものにしたいようにも思えていても、時が経ち、幸福が普遍のものとなれば色褪せ朽ちていく。とどめ置くことはできないのだ、という事実が短編を読み重ねるのにあわせて、し...続きを読む
  • 神様の暇つぶし
    生々しく五感にヒリヒリ訴えかけてきた。
    美醜や魅力は姿型に無関係なんだと改めて思った。
    性的に惹きつけられるのってなんなんだろう。
    好き嫌いの好みの問題でもなく理性では抗えないもの。
    命、魂で感じるもの。
    全さんの圧倒的な魂の写真が見えるようだった。
  • 正しい女たち
    千早さんの文章は、文学的だけど硬くはなく、読み始めると話の中に吸い込まれてつい読み耽ってしまいます。立場の違う主人公たちの、心の動きを言葉にするのがとても上手いなと思います。
    個人的には「海辺の先生」と「幸福な離婚」が好きです。
  • クローゼット(新潮文庫)
    服が好きっていう先入観は当然あるけど、その中でも個人的に焦点が当たらない世界を描き出してくれて、世界が広がりました。
    服好きは必読だと思いました。他作もですが、時間、の描写が多いように思えます。服の歴史、人の感覚、時の経過、成長、などが詰め込まれていて素晴らしい作品でした。
  • 犬も食わない(新潮文庫)
    "いい男は過去の女の努力の賜物"
    こうやって言葉にされると心に刺さる。
    ふたりの作家さんの共同で作られた作品を読むのが初めてで、不思議な感覚だったし、主人公たちが付き合ったシーンが描かれてなかったり、各々の捉え方とか感じ方とかあって、言葉にするって本当に大切なんだなと思った。
  • 神様の暇つぶし
    父が死んでひとりぼっちになり、停滞していた藤子の時間を動かしてくれたのは、近所の写真館の息子で30歳ぐらい年上のカメラマンの全さんとの出会いでした、なんて。しかも年上の余裕と、危なっかしさをあわせもっていたら恋に落ちてしまいますよね。残された藤子の方が辛いかもしれないけど、全さんが最後に「死期が近づ...続きを読む
  • 男ともだち
    男女間の友情は成立するのか。これには賛否両論ありますが、私はあるんじゃないかなと思います。お互い大切な存在だけど、そこに男女の好きという感情がなければ成立するんじゃないかと。
    この本に出てくるハセオは、一般的に見ればクズだと見られるけど、私は好きですね。生き方に芯があるので、魅力的でした。
    千早さん...続きを読む
  • さんかく
    むっちゃくちゃすきなはなし!!!2023年ベストブックかも。三角関係のさんかくなのだろうな。研究者の彼女と、料理のうまい高村さんと、ぼく。彼女目線、高村さん目線、僕目線、全てがうまく噛み合っていて、ジレンマも全てが理解できて、そしてご飯がいつも美味しそうで。これこそ求めていたもの!という感じがする。...続きを読む
  • 男ともだち
    ハセオがすっごく好きでした。
    恋に落ちました。

    自分の仕事を応援してくれて、
    自分の選択を信じてくれる。
    自分以上に自分を信じてくれるハセオの存在が尊い。。。

    これは、もはや、愛!!ではないの?!

    世界の終わりに一緒にいよ、なんて…。

    私の妄想では、カンナが走り抜けた先にハセオが待っててくれ...続きを読む
  • 神様の暇つぶし
    【2023年141冊目】
    読み始めてすぐに、「あー、これは好きなタイプの作品ですね」って思ったんですけど、案の定非常に良かった。ところどころで死を匂わせてくるのもずるかったですね。勝手に先を想像して、勝手に泣いてました。

    年の差で「えー」って思うかもしれませんが、年の差に囚われるのはもったいないな...続きを読む
  • ひきなみ
    松戸葉がそうであったように、桐生真以に憧れる気持ちが読み進めるごとに強くなります。世間が求める"枠組み"や"偏見"に惑わされず、まっすぐ自分の生きる道を見つめる目は、きっと美しいに違いありません。 そんな桐生真以も、生まれながらにしてそのような目を備えていた訳ではないのです。 大好きな一冊です。
  • からまる
    人間の心の底にある諦め、脆さ、
    言い出せない想い、

    わたしもこんな風に感じる‥
    こんな風に想うのは自分だけじゃ無い、私だって分かり合えるかも
    だからこそ、君は1人じゃ無い!

    気づいて!
    そう、気づいてくれる人はいる
    からまった糸のように、人々の関係がありました

    ☆まいまい
    一人暮らしの男...続きを読む
  • 魚神
    千早茜さん、5冊目でした
    没入感あり、美しくて儚い遊郭の世界。
    夢を見ない島の人々。
    悲哀感、暴力もありながらも、わたしはこの浮遊感に浸りました。
    スケキヨ,白亜、好き
    深い愛、嫌われるくらいなら、、そうか
    好みの一冊でした!
  • わるい食べもの
    初めて千早茜さんの本を手に取りました。
    タイトルとカバーの絵に惹かれたということと、息子の名前と同じ漢字だったから気になってしまった(笑)
    結果、めちゃくちゃよかった。
    とても好きな感じで読んでいて嬉しくなりました。
    ちょっと共感できる部分とか、普段気づかない無意識の部分を言葉にしてもらえたところが...続きを読む
  • 人形たちの白昼夢
    美しいものはなぜ哀しいのか
    全ての話が美しく刹那的でほんのりと哀しい顔を持っていた。
    静かで優しい夜のようなお話。寝る前に優しい灯りの中で読むのがぴったり