千早茜のレビュー一覧
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『その男の周りだけ青い夜の気配がただよっているように見えた』
この一文だけで前作の感動が蘇った。
五感に訴える文章と繊細な感情描写が狂おしいほど好きなシリーズだ。
タイトルにも入っている「月」。
序盤で月に関する謎めいた描写が連続していることから、月に着目して読み始めた。
今回の主人公・満はカッとなりやすい性格であること以外情報が少なく、月との関連性も不明で序盤は感情移入が難しかった。
だが依頼客のエピソードを通してパズルのピースが少しずつ揃い始め、次第に生い立ちとそこに隠された悲劇がうっすらと予見できてくる。
絵が出来上がった時には、とっつきにくかった彼の行動原理が腑に落ちた。
人 -
Posted by ブクログ
大事なことをたくさん受け取った気がする。
印象に残ったシーン。担任の先生の言葉、そのあと2人が仲良くなるシーン、中学生の葉と真以、再会してお店をみて回るところ。
閉鎖的な環境を通して描かれるしんどさ。あまりにも美しい場所だから、人々の差別的な感情の醜くさが際立ったし、向けられる者を痛々しく感じてしまった。
葉のまわりの大人は皆勝手に思えたけど、祖母のことは嫌いにはなりきれなかった。この人も、女性だからか、島で生きていくために身についた考えと葉に向ける感情とに、少しの葛藤を感じる。
“脱獄犯”ほどの異質さを頼らないと逃げられなかった真以。
大義名分がないと、自分に乗せられた“女”から逃げられ -
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ジェンダーレスが多く語られる現代において色んな視点を持たせてくれる作品。それぞれに辛い過去や傷を持つ芳と纏子。章ごとに一人称が入れ替わる構成はまるで縦糸と横糸のように長い時間をかけて繊細に折り重なり合い、晶という人物の存在によって最後に見事な一枚のピースになる。傷を治すことや痛みを克服することばかりに囚われるのではなく、それらと上手く丁寧に向き合いながら生きて行く大切さを学んだ。
洋服の歴史やトレンド、補修士の仕事など膨大であったであろうリサーチに裏付けされた情報はアパレル業界に長くいた自分にとって読んでいて楽しかったし、知らない人にとっても面白く学べる内容となってる。
心情や色やカタチをピタ -
Posted by ブクログ
大好きな千早茜さんのわるたべシリーズ。今回も美味しそうな食べ物にまつわるエッセイを堪能させてもらった。
わたしが千早茜さんを好きなのは、品があって想像力を掻き立てられる控えめ且つ力強い文章や、美味しそうな食べ物の描写など、作家としての筆力ももちろんなのだけど、彼女と自分の類似点があまりに多くて、気持ちがわかるなーと思う部分が多いからだ。
繊細で(神経質とも言える)、こだわりが強くて、いつもうっすら体調が悪くて、人と関わることが苦手で内向的で‥。エッセイを読んでいると「わたし以外にもこういう人いたんだ!」と嬉しくなるくらい。
ひとつ大きく違うのは、わたしは食べることが好きだけど、千早さんの -
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まるで私のために書かれたのかというくらい、私には刺さる内容だった。
私はお洋服が大好きだ。でもそれに気がついたのは、今のアパレル系の会社に入社してから。
それでも思い返してみると、幼少期からお洋服好きの片鱗は表れていて、確かに今もファッション系の展示には積極的に足を運んでいる。
本作にはたくさんの有名デザイナーの服や、服装の変遷、素材や修理方法が登場する。私自身も学芸員の資格をもっていることから、展示の方法や収蔵庫の様子がありありと想像できたことと、今まで見てきた展示や図録などの知識が全て繋がった快感のようなものが、この本のページをめくる手を加速させた。
この本には挿絵も、勿論生地見本も -
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犬という生きものは、いったいなんなのだろう。
絶対に裏切らない愛情をくれて、深い信頼関係を築ける存在。
それでいてあくまでも獣であり野生を宿す生きもの。
虎と名付けられた大型犬と暮らした主人公まどかは「あれが、あれこそが愛だったと確信している。虎は、私が所有した唯一の愛だった」「大人になったいまでも、虎以上に信じられた存在はいない」と、語る。
千早茜さんの文章は、自分がその場にいるかのような体験をくれる。
その文章で描く犬たちの姿が、鮮烈なアフリカの情景の中で生き生きと躍動する。
犬好きの私にとってはたまらなく魅力的だった。
物語は子どもの頃のアフリカでの日々と、32歳の現在の日々が交互