千早茜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
恋愛なんて似合わないと一歩引いてる女子大生・藤子が30歳年上の写真家の男性・全と出会うお話。
肉感が強い文章が作中の夏という季節感と相まって湿度高く生々しい。
描写がビビッドすぎて苦しく感じる部分もあった。
もっと暑い時期に読みたかったような気もするけど、そしたらより生々しさは増したかもしれない。
食欲旺盛な藤子の食事シーンがムシャムシャ食べてて気持ちよくて、生きてるー!って感じ。
全さんは高い場所から下を見たときのように吸い寄せられるような魅力がある。
全という名前にも何か意味を求めたくなるような人。
生と死、ふたつの命の対比が美しい。 -
Posted by ブクログ
夏に読むと、もっと良かったかもしれないなとどうにもならない事を思った。
みずみずしい桃の描写が印象的で、水分を含んだ果実の輝きとグロテスクなほどの生々しさがひと夏の恋を象徴しているようだった。
描かれているのは紛れもなく藤子の恋で、でも私の知っているどの恋とも違っていて、私は本当の恋をもしかして知らないんじゃないの?とまで思わされる、嵐のような感情。幸せな結末を迎えるわけではないのだけど、ここまで溺れられることがむしろ羨ましい。
「みんな自分の恋愛だけがきれいなんだよ」
恋は結局、ふたりでするものであっても、わたしとあなた、それぞれの物語でしかなく、それこそ神様の暇つぶし…。
ズブズブに沈 -
Posted by ブクログ
p.27 言った。「猪だってでるしね」
「ここはまだ敷地内ですか」
「そうだね。凍死されると迷惑だから迎えにきた。下の住宅街をでなければ見失わないよ。
よほどの豪雨でない限り」
「それも、匂いで、ですか」
返事はなかった。薄く微笑んだ気配が伝わってくる。明らかに人の常識を超えたことなのに、なぜだか納得している自分がいた。
なぜ逃げたんだろう、と思う。この人はすべてを見透かしているのに。
ひどい言葉を浴びせられたことは無数にある。でも、この人の言葉が一番遠慮がない。なのに、攻撃されている感じはない。
俺はきっと、俺から、逃げたい。
「方向音痴みたいだけど、覚えてね。ここは果園の外れ。育てている -
Posted by ブクログ
いつも、千早さんの描く繊細でたくさん傷をもち複雑だけれど懸命にいくている登場人物にいつも惹かれてしまいます。
今回は、一部が
小学六年生という多感でどんどん心も身体も変わっていく
葉と真以が狭くて古い慣習の島の中で、いろいろな偏見や差別に
もがきながらも、二人寄り添って過ごしていく姿をうつしています。
悲しみや怒り戸惑い不安が手に取るように書かれていて
あっという間に引き込まれてしまいました。
第二部は
事件に巻き込まれて別れ別れになった二人が、大人になって
また再会した時、またお互いを思う力に後押しされながら、子どもの頃の傷を少しずつ再生して
成長していく姿に
まだ彼女たちの姿を見ていたい