千早茜のレビュー一覧
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『いい?人の心は無理に暴いてはいけないのよ』。
憲法第19条によって私たちの”内心の自由”は保証されています。言葉に出せば罰せられるような内容であっても心の中で思うこと、考えることは自由です。人はそこに何ものにも縛られない心の安らぎを見ることができます。そもそも現代の科学技術をもってしても人の”内心”を見ることはできません。法によって守られ、さらに技術的にも突破することができない人の”内心”。
しかし、自分自身のことを考えればそれで良いとしても他人のことを思うと逆に知りたくなってくるものです。例えば『なにを考えている?』と訊いたとしてもその答えが必ずしも本心かどうかは分かりません。そこに -
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実にすばらしい。
表紙の絵はまいまいの子だろうか。
音を立てずにそっとやってきて、そっと去っていく、危うい関係からスタートする。
男女の関係には体の関係は重要な意味を持つ。
その時、何を感じてきたか。
天窓から見える空、雨音。
そう、空から感じるものがあるし、何より空はつながっている。どこまでも。
失ってしまったのかもしれない、もう取り返しがつかないかもしれない、そういう危うさ。
その危うさの方向が、「普段は自分の交友関係からはずれている、行きずりの誰か」(あとがきより)によって変えられていく。それが「からまる」なのだけれども。
ひとは一人では生きていけない。
行きずりの誰かであっても -
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桜にまつわる7つの短編物語。ここで千早茜さんの書く物語は多くの人が求める涙と感動という類なものではなくて、むしろ世の中で生きにくさを感じているような人々に焦点をあててその心の中のありのままを、桜のモチーフに重ね合わせて書き上げているような印象がしました。
昼間の桜と夜の桜、青い空の下で穏やかに咲く桜と雨にうたれて冷たく花弁を散らしながら咲く桜は皆印象が違いますが、そんな違いをより繊細に感じ分けて書いているような気がしました。桜の季節に読めて(終わりに近かったですが)とても良かったです。どこか妙で現実離れしているようだけどじわじわと心に染みてくるこういうお話を、私はもっと読みたいのだな、と改めて -
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気持ちの悪い物語である。
この物語で悪者を見つけるのは難しい。
誰もが加害側であって、誰もが被害側である。
“洗礼者ヨハネの首を持つサロメ”がモチーフのひとつになっているようだが、主人公は果たしてサロメだったのか、ならばヨハネは誰で、ヘロデは誰だったのか。
どうやらこの物語では誰もが各々の物語、神話から抜け出せずに、ツタに絡まりようにしてもがきながら生きている。
その物語、願望を各々が好きなように小波と澪、二人の解離した対象に体良く投影させる。
そして、小波も澪はただ投影されるだけであるけれど、その分裂した未熟な自我は他者を暗に操作させる。
第一部はどこか北米のハードボイルド小説 -
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再読。
前回感想を書いたところが年月が経ち、結婚し家庭をもって、「胃があう」人との暮らしの楽しさを知った。
でもたまに1人、ふらりと自由を謳歌する時間も大切に。2人以上の食事があるからこそ、自由な食事の時間はさらに輝く。
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独身で一人暮らしの社会人。
これまでの人生の中で、今がもっとも自由だな、と感じる。
その理由は、なるほど、食の自由を謳歌しているからだとこの本を読んでしみじみと実感した。
私も生粋の食いしん坊である。
本の中に、物事がうまく進まない時に暴飲暴食に奔るエピソードがあったが、強く共感した -
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とても好きなお話でした。
千早茜さんの幻想小説は久々だと思うのだけどもう…大好き。
物語の中心となる一族の、不老不死となった初めの人物を描く「シラ」から惹き付けられました。昔話や神話みたいでした。愛した人を探し続ける何百年…そしてラストに泣きそうになりました(職場の休み時間だったので堪えた)
その次の「はばたき」からは一族の末裔・御先の物語でした。不老不死で、強大な治癒力を持つ、人ではないもの。「肉体は若いままであっても、心は老いる」という言葉通り、人形のような外見ですが老成しています。
御先と、同じ能力を持つ四のやり取りに笑いました。四のツッコミが。。
御先も四も、周りが先に消えていく…とい -
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購入済み
感覚的な作品
とても読後感の良い作品でした。絵画をみてるようなそんな気分になれる、読んでいるといろんな風景が想像できます。で読み終わったら好きな人に会いに行きたくなる(笑)そんな気持ちにさせてくれる本です。オススメ!