千早茜のレビュー一覧

  • 眠りの庭

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     強さと弱さ、野生と抑制、絶望と生命力。正反対の性質が共存する者は、生々しくも美しい。
     支配欲に満ちた父親に育てられた小波は、意志を持たない。自我を持たない人間は、何も求めてこない。また側にいる者の欲求を、自分のものだと錯覚している。だからなのか、小波と関わった男性は、彼女に強く惹かれ、取り込まれ、そして破滅していく。
     自己主張は少なからず、加害性を帯びる。小波のように強固な人格形成をされていなくとも、繊細な心を持つが故に、大切な人といる時には我を持たないという選択を、無意識的にしている人は案外多いと思う。
     しかしたとえ望んだとしても、人間は本当の人形にはなれない。常に小波の腹の底には、理不尽に傷つけられたことに対する怒りがある。だから敵意を持つ者には敏感に反応して、躊躇なく潰す。また深い絶望を味わっているから、痛みや恐怖をほとんど感じない。
     「マカロンも果物のケーキも…ぺたんこの靴も本当はどうだっていい。耀に似合うものが好きなの。幸せのイメージに近づいていく気がして。」小波は最終的に、彼女から決して何も奪おうとしない耀と、「理解し合えなくても一緒にいること」に希望を見出す。人の心には、決して他人が無闇に暴いてはならない、神聖な領域が存在している。
     人は変化する。よって、「あなたを信じている」と言うことは、実は暴力に近い。誰かを愛することは、祈りを捧げることと殆ど同義だ。

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    2024年04月15日
  • 本をめぐる物語 小説よ、永遠に

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    加藤さんの「青と赤の物語」と千早さんの「あかがね色の本」が好きでした。

    何度も出てくるテーマ、
    「物語がなくなったら?」。
    自然といつも以上に大事に読みましたとさ。笑

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    2024年03月06日
  • 桜の首飾り

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    千早さんテイスト満載な一冊でした。
    艶めかしくダークで、とても純粋で正直な登場人物がたくさん。

    ”危ないって思うまでは目を奪われることを恐れなくていい。『異形のものに神宿る』と申しますでしょう。何が良くて何が正しいかなんて一概に言えません。昔の人は今よりずっと大らかでしたよ。”

    ”露悪的に見えても遠回りしているように見えても、それは完成するために欠かせない工程なのです”

    ”無理して自分を納得させなくていい。生涯、自分の幽霊を見るような生き方はしなくていい”

    私は桜が好きだろうか??
    桜の思い出はいくつかある。
    でも、その桜の光景ではなく、思い出すのは誰と一緒だったかだけだったりする。

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    2024年02月29日
  • こりずに わるい食べもの

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    面白い。共感できる箇所がいっぱい。
    「焼いてから」野菜は焼くと、今までの概念が変わるくらい、味が濃くなって、別物。
    パフェも食べたくなるけど、今は冬。寒い。

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    2024年02月24日
  • こりずに わるい食べもの

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    ネタバレ

    千早さんの5感表現は、耳触りの良さも分かりやすさもハッとする感じも全部ある。子供心は同じ景色を2倍豊かにするなあと、しみじみ。

    ・ささやかな個人の幸せやこだわりを理解し、共有できるかどうか。円満な恋愛も日常もそれなくしては成り立たない。

    ・食べさせてくれる。食べものを与えてくれる。それはきっと、ここで生きていていいんだよという、根源的な許しなのだと思う。

    ・「だって、朝ごはんって特別な食事だよ。恋人とか一緒に住んでいる人じゃないと食べないじゃない」

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    2024年02月13日
  • 人形たちの白昼夢

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     美しさを究極にまで言語化すると、この小説みたいな感じになるんだろうなと思う。美しさと絶望は、少し似ている。
     また作中には、美しいものを愛する者たちが多く登場する。「美しさを愛する」と言えば聞こえは良いけれど、それは、そうではない世界が受け入れられない潔癖さをも意味する。決して生き物として強いとはいえない。生きづらいだろうな、と思う。
     けれど、確固とした世界観や美意識を持つ者は、図太さはなくとも、したたかだ。したたかで、どうしようもなく魅力的だ。
     
     

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    2024年01月06日
  • からまる

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    絡まり合っている人間関係も、それぞれが悩みや葛藤を抱えつつも良い感じにするっと解けておさまるところに落ち着くので最後に、良かったねと言いたくなるお話でした。千早さんの本は毎回引き込まれます。

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    2023年12月09日
  • からまる

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    ネタバレ

    人間の心の底にある諦め、脆さ、
    言い出せない想い、
    ⁡
    わたしもこんな風に感じる‥
    こんな風に想うのは自分だけじゃ無い、私だって分かり合えるかも
    だからこそ、君は1人じゃ無い!
    ⁡
    気づいて!
    そう、気づいてくれる人はいる
    からまった糸のように、人々の関係がありました
    ⁡
    ☆まいまい
    一人暮らしの男の家に猫のようにふらっと現れて、横にいる女性 カタツムリ
    ⁡
    この男性の姉の子供は金魚を殺してしまう
    ☆ゆらゆらと クラゲ
    この男性武夫と一夜を共にした田村
    田村の友人の華奈子は女性が好き
    ⁡
    孤独はあたしの背骨を掴んでがくがくと揺らす。お前は独りだよ。誰にも必要とされず、何も残せず、たった一人で朽ちていくんだよ、
    ⁡
    たまらなく寂しくなった。世界であたし1人しかいないみたいだった。誰にもあたしの声は届かない。誰もあたしなんか知らない。いても、いなくても同じ.
    嫉妬 どろどろしたものが燃え上がったり、腐ったりして‥
    ⁡
    武夫 女医を連れて係長と魚釣り
    終電間近の車両、女の子は華奈子?
    ⁡
    ☆からまる イソメ
    ⁡
    「ちゃんと肝心な人に感情を向けなきゃ駄目だ。怒りで誤魔化すのじゃなくて、ちゃんと寂しいってことを伝えなきゃ駄目だ」
    「肝心なものをみないふりをしていた。本当は傷つけあってもいいから、絡まり合わなきゃいけなかったのに、1人きりでこんがらがっていたのかもしれない
    ⁡
    係長 奥様が不倫
    筒井武夫くん、係長と釣り
    ⁡
    ☆あししげく 
    篠田蒼と お母さんの19歳の過去
    衝撃的なお話
    ⁡
    ☆ほしつぶ 
    あおとくんの惨めな気持ち、けむりみたいに消えてしまいたい、苦しさが伝わってくる
    ⁡
    傷ついたということはわずがでも期待したということだ。先を望んでいたということだ、それが恥ずかしかった
    ⁡
    最後まで良かったな

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    2023年11月06日
  • 人形たちの白昼夢

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    美しいものはなぜ哀しいのか
    全ての話が美しく刹那的でほんのりと哀しい顔を持っていた。
    静かで優しい夜のようなお話。寝る前に優しい灯りの中で読むのがぴったり

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    2023年10月30日
  • 人形たちの白昼夢

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    全ての編が全く異なるお話で楽しめた
    どの短編もとても壮大な物語の中のたった一部分のような気がしてこの短編の超長編作品を読みたい
    千早さんはなぜこんな想像もつかない世界を言葉に表せるのだろう
    中でもお気に入りは『ビースト』というもののけ姫を凝縮したようなお話
    何度でも読み返したい

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    2023年09月25日
  • 人形たちの白昼夢

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    どうしてこの本を手に取ったのかはもう思い出せないのですが(この本が先だったのか、透明な夜の香りが先だったのか)私が「物視点萌え」を拗らせた原因になった本です。

    1話数ページの短編集。こことは違う世界かもしれない、不思議で美しく独特な輪郭の短編集。

    好きなのは「スヴニール」「ビースト」「ワンフォーミー・ワンフォーユー」、中でも一番刺さったのは「ワンフォーミー・ワンフォーユー」。
    冒頭に書いたように、この話は物視点、ティーポットが持ち主の少女と出会ってからのお話です。愛する日常、過ぎていく時間の先にある別れ。恋でもしているような(実際に持ち主を愛しているのでしょうが)ティーポットの焦がれるような祈りが胸に刺さります。きっとこういう感情を萌えというのでしょう。

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    2023年09月24日
  • 夜に啼く鳥は

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    始まりは、日本昔ばなしみたいだなぁと思った。
    残酷な話であっても、淡々と進んでいく感じに既視感があった。

    そこから時代は現代へ移り、シラの末裔、御先が主人公へと変わる。
    水が流れるように描かれる世界に、息を呑んだ。
    蟲たちの輝きや、御先の肌の白さ、四が流した血の色…そして真っ赤に咲き誇る躑躅。

    冷静で淡白で、涼やかに生きているように見える御先。でも、本当はその皮膚の下に静かに燃える想いを持っていたのではないだろうか。

    私は雅親の真っ直ぐさ、盲目さ、愚かさが愛おしい。それは限りある命を持つ人間だからこその愚かさだと思うから…

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    2023年07月28日
  • からまる

    匿名

    購入済み

    深い余韻を残す

    登場人物が少しずつオーバーラップしつつも語り手が変わっていくタイプの連作短編集。そういう本はいくつか読んだことがあるけれど、その中でも作者はこの形式をうまく扱っていると思った。各主人公が置かれているシチュエーションの幅広さも手伝ってか、読み進めていくごとに作品全体の奥行きが深まっていくようだった。

    序盤はいまいちハマれなかったが、途中から好きな雰囲気の作品が出てきて印象が変わった。登場人物にもその関係性にも好感を持った。

    美しい動植物が暗喩に使われている小説は世の中にたくさんあるけれど、この短編集は若干グロい生き物がその役割を果たしているのが斬新で、なおかつ雰囲気に合っていてよかった。

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    2023年05月28日
  • からまる

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    ゆるく、時に濃厚にからまった連作短編集。

    光や水、生き物の表現がとても好き。
    登場人物も静かな人たちが多くて、なんか好き。
    静かで少し投げやりだけど、
    たまに熱くなったり、人とつながったり。

    『ほしつぶ』と『ひかりを』が特に心に残っていて、
    その両方に出てくるとある登場人物が良かった。

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    2023年04月26日
  • 桜の首飾り

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    念願通り、桜を眺めながら読みました。
    どのお話もひらひらと美しかった。

    ひとつ選ぶとしたら、春の狐憑きが好きかなー。

    以前、ある桜好きの人が、
    桜はあんまり縁起の良いものでは無いと思う
    と言っていたけれど
    私は桜には不思議な良い力があると思ってる。

    花荒れ、でも描かれていたけれど
    何度でも、幸福な夢のような日々が咲くことを期待させてくれる
    そんな力を持っていると思う。

    春の物思いのお供に。星5⭐️

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    2023年04月03日
  • 女ともだち

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    「女ともだち」がテーマの短編小説アンソロジー

    既に出尽くした感のあるテーマですが、昨今のSNSを取り入れた短編は8篇全て新鮮で面白かったです。

    なんでも真似して来る女性を描いた村山由佳さんの「COPY」
    女性あるあるです。
    そしてそこに惹きつけておきながらのラストの急展開にはドキっとします。

    坂井希久子さんの「ト・モ・ダ・チ」はイヤミスを連想させるどろどろした話で、もはやホラーの様にも思えて怖かった。

    千早 茜さんの「卵の殻」は繊細な女性心理が描かれていて女性の執着がただただ恐ろしい。
    「サバサバした女なんていないよ」のセリフが印象に残ります。

    子供時代の競争意識、嫉妬心を描いた大崎 梢さんの「水底の星」
    大人になってからの友人作り、在り方を繊細に描いた額賀 澪さんの「こっちを向いて」読み終えてタイトルを見るとなるほどと思えます。

    柔らかい気持ちになれた阿川 佐和子さんの「ブータンの歌」
    情景が絶えず浮かび、二人の女性の微妙でありながらイイ感じの距離感を感じた嶋津 輝さんの「ラインのふたり」
    ややこしい人間関係ながら、こういうのも有りなのかと妙に女同士のリアルを感じた森 絵都さんの「獣の夜」タイトルがナイスマッチです。

    怖さあり、優しさあり、嫉妬、憎悪、女ともだちには様々な感情が蠢いている事を改めて実感すると共に、親友、本当の意味で真友に出会うのは伴侶を見つけるより大変かも知れないと思った短編集。

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    2023年02月11日
  • からまる

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    真骨頂 千早茜さんは最近好きになった作家で、どの作品もすごく好きなのだけどこの連作短編集も「ああ…」という、感嘆の声しか出てこないほどに好き。
    ひとつ一つの物語に感じる儚さとか切なさとか、それでいて切実ななにか。決して「心温まる」わけではない物語でも、どこか心に引っかかって忘れられない。
    感情をちょうどよく波立たせてくれるような感じがあって、私はとても、好きです。

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    2025年12月18日
  • 男ともだち

    n

    大事な人

    葵の友達が、大事なお兄ちゃん(と呼んでる人)と一線超えて お兄ちゃんを失ってしまう。
    大事な男ともだちとは、一線超えないから継続出来るものだと思う。
    色々な事に共感でき、一緒にいたら楽で楽しい。お互いを心から応援出来る大事な1対1の異性。
    男女間は肉体関係が出来ると、何かしらの名前を付けないといけなくなってしまう。そうすると 大事な友情のバランスが壊れてしまう。
    『見守り続ける』事が、この主人公達が選んだ男女間の特別な友情継続の秘訣なのかと思った。

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    2022年07月03日
  • 桜の首飾り

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    桜モチーフの短編が七つ入った1冊。
    千早茜作品は幻想入り交ざるような思いと生活がとても好きで、本作もその行き来が心地よかったです。儚さ、日本の風景、身近な桜の様々な要素が人々の記憶や一瞬の風景に結びついて、描かれていきます。
    決して答えを出してくれるわけではない物語。読み手によって色を変えるような短編は淡さも感じますが、心地よい余韻とともに残る感覚がありました。

    どの短編も正直好みですが、「春の狐憑き」「白い破片」「初花」「樺の秘色」が特に好きでした。
    何度でも読みたくなります。

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    2022年04月21日
  • あやかし草子

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     飾り立てない柔らかで分かりやすい古文調の文体なのに、切なさがとても伝わる作品。収録された中では「ムジナ和尚」と「天つ姫」が特に好きである。
     2作とも端的に言えば、妖と人間が異なるいきものであるということが書かれている。理が違い、掟が違い、共に長く生きることはできない。けれども心を通わせあうことはできる。奇しくも「涙」が要となるこの2話が2つの世界の狭間で揺れるいきものの感情を最も丁寧に書いていたと思う。

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    2021年10月30日