千早茜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ジェンダーレスが多く語られる現代において色んな視点を持たせてくれる作品。それぞれに辛い過去や傷を持つ芳と纏子。章ごとに一人称が入れ替わる構成はまるで縦糸と横糸のように長い時間をかけて繊細に折り重なり合い、晶という人物の存在によって最後に見事な一枚のピースになる。傷を治すことや痛みを克服することばかりに囚われるのではなく、それらと上手く丁寧に向き合いながら生きて行く大切さを学んだ。
洋服の歴史やトレンド、補修士の仕事など膨大であったであろうリサーチに裏付けされた情報はアパレル業界に長くいた自分にとって読んでいて楽しかったし、知らない人にとっても面白く学べる内容となってる。
心情や色やカタチをピタリと寸分の狂いもなく言い表す千早さんの言葉はただただ美しかった。 -
Posted by ブクログ
大好きな千早茜さんのわるたべシリーズ。今回も美味しそうな食べ物にまつわるエッセイを堪能させてもらった。
わたしが千早茜さんを好きなのは、品があって想像力を掻き立てられる控えめ且つ力強い文章や、美味しそうな食べ物の描写など、作家としての筆力ももちろんなのだけど、彼女と自分の類似点があまりに多くて、気持ちがわかるなーと思う部分が多いからだ。
繊細で(神経質とも言える)、こだわりが強くて、いつもうっすら体調が悪くて、人と関わることが苦手で内向的で‥。エッセイを読んでいると「わたし以外にもこういう人いたんだ!」と嬉しくなるくらい。
ひとつ大きく違うのは、わたしは食べることが好きだけど、千早さんのように食べ物を美味しくいただくための努力をするのが苦手なところ。だから千早さんのエッセイを読んでいると、わたしもこんなご飯作りたい!とか、こういう生活したい!と思わせてくれる。
デパ地下で買う有名なお店の美味しいもの、初めて食べる国の料理、自分に合わないけど好きになりたい食べ物。千早さんの食べ物フィルターを通して見た世界は、本当に魅力的なのだ。 -
Posted by ブクログ
まるで私のために書かれたのかというくらい、私には刺さる内容だった。
私はお洋服が大好きだ。でもそれに気がついたのは、今のアパレル系の会社に入社してから。
それでも思い返してみると、幼少期からお洋服好きの片鱗は表れていて、確かに今もファッション系の展示には積極的に足を運んでいる。
本作にはたくさんの有名デザイナーの服や、服装の変遷、素材や修理方法が登場する。私自身も学芸員の資格をもっていることから、展示の方法や収蔵庫の様子がありありと想像できたことと、今まで見てきた展示や図録などの知識が全て繋がった快感のようなものが、この本のページをめくる手を加速させた。
この本には挿絵も、勿論生地見本も、何もないが、その分出てくる生地やスタイルをリアルに想像できると、読んでいてより楽しくなった。
参考までに私が繋がった!と思った展示と本もメモしておく。
・「きらめく時代のドレスたち―西洋服飾コレクションより―」(共立女子大学博物館)
・「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」(三菱一号館美術館)
・「受け継がれし明治のドレス」(明治神宮ミュージアム)
・『歴史を拓いた明治のドレス』(ジー・ビー)
・『写真でたどる 美しいドレス図鑑』(河出書房新社)
・『名画のプリンセス 拡大でみる60の衣生活事典』(創元社)
・『名画のドレス 拡大でみる60の服飾小辞典』(創元社)
本筋に関しては、お洋服を補修するように、目立たないけど確実に、過去に向き合い傷を治そうとする芳、纏子、晶の3人の描写が丁寧で良かった。
あとは亀の入れ墨の男の正体に驚かされたし、未だに少しモヤモヤしている。 -
Posted by ブクログ
犬という生きものは、いったいなんなのだろう。
絶対に裏切らない愛情をくれて、深い信頼関係を築ける存在。
それでいてあくまでも獣であり野生を宿す生きもの。
虎と名付けられた大型犬と暮らした主人公まどかは「あれが、あれこそが愛だったと確信している。虎は、私が所有した唯一の愛だった」「大人になったいまでも、虎以上に信じられた存在はいない」と、語る。
千早茜さんの文章は、自分がその場にいるかのような体験をくれる。
その文章で描く犬たちの姿が、鮮烈なアフリカの情景の中で生き生きと躍動する。
犬好きの私にとってはたまらなく魅力的だった。
物語は子どもの頃のアフリカでの日々と、32歳の現在の日々が交互に描かれる。
子どもの頃の虎との日々と苦しい別れが、今の恋人との関係性を形づくっていることが生々しく伝わった。
何かドラマチックな展開があるわけではないけれど、犬のこと、愛のこと、信頼、幸せ、罪、そして罰……読み終えたあとも考え続けてしまう作品だった。 -
Posted by ブクログ
気に入った服を長く着続けたかったらどうする?
乱暴に扱うかい。
靴だって服だって、自分の身体に馴染むまで
手入れをしながら大切に使うだろう。
人との関係だって同じさ、
丁寧に扱えば長持ちする関係を築ける。
まずは相手をよく見ることだよ
『クローゼット』 / 千早茜
---
十八世紀のコルセットやレース、
バレンシアガのコートにディオールのドレスまで、
約一万点が眠る服飾美術館。
ここの洋服補修士の纏子は、
幼い頃の事件で男性恐怖症を抱えている。
一方、デパート店員の芳も、
男だけど女性服が好きというだけで傷ついた過去があった。
デパートでの展示を機に出会った纏子と芳。
でも二人を繋ぐ糸は遠い記憶の中にもあって.......
洋服と、心の傷みに寄り添う物語。
---
職人気質な登場人物たちがとってもかっこいい
美術館を通して、洋服で人と人がつながっていくのも素敵
洋服も安さや流行りではなくて、
この先ずっと手入れしてきていきたいかどうか考えて、
ちゃんと見極めて手に入れたいな、と思えた。
#千早茜 さん #クローゼット #新潮文庫
#読書感想文 #読書記録