千早茜のレビュー一覧

  • ひきなみ
    「どんなに苦しい今でも、生きづらいなんていう言葉で片付けるのはよそうと思った。」
    桜木紫乃さんの帯の言葉が染みる。
    そこから逃げていいんだよ、と言っていた桜木さん。でも逃げることができない人もいたのだ。
    真以につながる女性の歴史は重い。葉も自分の置かれた環境から抜け出すことができない。
    でも、二人な...続きを読む
  • 魚神
    痺れるような、酔うような、幻想の島に囚われるような感覚の物語。
    静かな夜中に読むのがいい。
    姉弟のように育った2人が隣の家の屋根によじ登り月をみる場面。凛と冴えた月が2人を待つ。夜の湿度を帯びた空気の中にほんわりと漂うスケキヨの寝床のにおい。
    月を想像しながら読んだり、人の匂い、柑橘や香のかおりがし...続きを読む
  • からまる
    連作短編集。「男ともだち」を読んだ時にも思ったけど、堕ちそうで堕ちない、絶妙な揺れ具合を描くのがとても上手だと思った。
    連作だから特に、一人一人の人物がそれぞれの章の中でそれぞれ違った立場で描かれているのだけど、どれだけ気ままで奔放で危うく見える人でも、ちゃんと地に足をつけて悩んだり考えたりしながら...続きを読む
  • ひきなみ

    一歩ずつ、自分らしく

    「ひきなみ」という言葉は本文中に出てくる。船が通った跡の波のことだと。そして、それは道みたいだと。
    何だか背中を押される感じであった。もし、人生において行く手を阻まれ道を塞がれても、今いる場所にいたくないのなら自分のやり方でいいから勇気を出して一歩踏み出してみてと。
    そうして一歩一歩進んで、ふと...続きを読む
  • 透明な夜の香り

    とても良い

    小説が苦手で片手ぐらいの数しか小説を読んでこなかったのですが、姉に勧められこちらを選び読みました。活字が苦手で途中でやめてしまう私ですが、読み進めるうちにすっと情景が浮かんであっという間に読み終わっていました。なんだか小説の良さをこちらの本で教えてもらった気がします。
  • 人形たちの白昼夢
    幻想的で冷たく美しい12のお話と、岡上淑子さんのコラージュ…うっとりする本でした。
    自動機械人形のお話は連作のようでした。悲しい。
    「スヴニール」の料理や「ワンフォーミー・ワンフォーユー」のお茶の描写はさすがでした。とても美味しそう。
    淡々と、静かな色彩でした。いくつもの青と、赤とマンダリンと。
  • 桜の首飾り
    桜にまつわる7つの短編物語。ここで千早茜さんの書く物語は多くの人が求める涙と感動という類なものではなくて、むしろ世の中で生きにくさを感じているような人々に焦点をあててその心の中のありのままを、桜のモチーフに重ね合わせて書き上げているような印象がしました。
    昼間の桜と夜の桜、青い空の下で穏やかに咲く桜...続きを読む
  • からまる
    男に寄っかかって生きてる女ってほんまに馬鹿らしいよなーと、田村を見て思った。何をもって武生を「ものにできた」と思えたのか…(笑)まあ、好きな女がいるのに酔った勢いで部屋に田村を連れ込んだ武生もどうかと思うけど。

    とりあえずみんな、最後に落ち着くとこに落ち着けて良かったんちゃう?
  • 夜に啼く鳥は
    100年単位で長生きなんてしたくねえ!

    美夜子が何を思って死を選んだのか、幼い御先と美夜子の生活はどんなものだったのか、前日譚を読みたい。

    四もかわいそうな生い立ちっぽくて、御先と出会えて良かったねって思う。
  • 桜の首飾り
    何の繋がりも無い短編集かと思いきや、最初の章で出てくる桜が有名な美術館が登場するので、もしかしたら同じ街の出来事なのかもしれない…

    「エリクシール」、死別した奥さんと同じ格好を今の奥さんにさせる描写があって、めちゃくちゃ胸糞悪かった…
  • 魚神
    夢中で読んじゃった…

    千早さんさあ…「求め合ってるのに素直になれない男女」めっちゃ出すやん……何なん、サディストなん?
    ほんであんなにも食べ物の描写が素敵なのに、今回全然出てこなかった。

    蓮沼、実写化するなら伊勢谷友介がいい。スケキヨは吉沢亮で。
  • 人形たちの白昼夢
    「青」「人形」がキーワード。あとは「金色」ときどき「赤」。

    帯に書いてある通り、「ここではないどこか」の物語。
    ありえない。けどありえそうな 現実のようなファンタジーでした。

    全ての物語が繋がっているようで繋がっていない。繋がっていないようで繋がっている。
  • 透明な夜の香り

    香り

    調香師のオリジナル香水。細かい香りの表現を読みながら、自分の中で想像しながら読むのが楽しい。登場人物の性格も個性的で最後まで飽きない
  • 夜に啼く鳥は
    なんとなく本屋でタイトルと表紙の雰囲気に惹かれて購入。ジャケ買いの割には非常に当たりでした。

    不老不死を描く物語。
    静かなんだけど激しい感情があって引き込まれた。
    買ってよかったと思えた作品。
  • からまる
    点と点が最後にひとつの線になるような、絡まり合ってはいるけれど、とても綺麗に繋がりました。そして最後に思わず泣いてしまいました。千早さんが書かれた私にとっての大切な本がまた増えました。
  • 眠りの庭
    気持ちの悪い物語である。

    この物語で悪者を見つけるのは難しい。

    誰もが加害側であって、誰もが被害側である。

    “洗礼者ヨハネの首を持つサロメ”がモチーフのひとつになっているようだが、主人公は果たしてサロメだったのか、ならばヨハネは誰で、ヘロデは誰だったのか。

    どうやらこの物語では誰もが各々の物...続きを読む
  • わるい食べもの
    再読。
    前回感想を書いたところが年月が経ち、結婚し家庭をもって、「胃があう」人との暮らしの楽しさを知った。
    でもたまに1人、ふらりと自由を謳歌する時間も大切に。2人以上の食事があるからこそ、自由な食事の時間はさらに輝く。

    --------------------------------------...続きを読む
  • 人形たちの白昼夢
    12の短い物語には人形と青いリボンが必ず登場するけれど、時も、場所も、人も違っていて、様々な人としての残酷さとか尊厳とか、人生の悲しみや面白味などを浮かび上がらせてきます。青のリボンと対象的に血の色である赤も印象に残ります。どの物語も余韻が残ります。焼け野原になってしまった残骸の中からキラリと光る透...続きを読む
  • 人形たちの白昼夢
    美しく、力強く、儚い物語。

    美しい文章に溺れる体験ができる。

    ショートストーリーだが、それぞれの物語で人形、青い眼といった共通のモチーフがあらわれる。

    人形はまさに人の形をしている。
    そこに人間はさまざま感情を投影したり、同一視したり、時には攻撃性を向ける。

    この物語の人間たちはどこか失感情...続きを読む
  • 神様の暇つぶし

    全さんの生き方にも

    藤子の生き方、全さんの生き方、両者とも不器用としか言えない。でも、その不器用が、感動を生む。
    作者の淡々とした文章が、不器用な二人を上手く描いています。
    一応、恋愛ものでしょうが、同じ人生が見方によって変わることが解ります。今年(2020年)38冊目でようやく初めての星五つです。