千早茜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今まで読んだ本の中で、これはすごく余韻が残る作品だった。
どの冒頭の描写も独特な雰囲気から展開される10の傷をテーマにした短編からなる。
その中で特に印象に残ったのが、あおたんと指の記憶で、他の話があるから、特にこの2つの物語が際だっていた話だった。
あおたんは、不幸な生い立ちから容姿を捨てて、亡くなったおっちゃんを心の支えに健気に生きていく主人公の生き様が凄く心に刺さった。
もう一つ、指の記憶は、この話が一番生々しく心理的に嫌な描写があるが、主人公ではないが、嫌われ者の千田さんの生き様が心情的に心に残った作品だった。
ぜひ他の人にも読んでほしいと思った1作です。 -
Posted by ブクログ
凄かった。エッセイというものをほぼ読んだことがなかった私にとって強烈な読書体験だった。
ほんタメというYouTubeチャンネルで紹介されており興味を持って読んでみた。これは、映像化はきっと難しい、本という媒体のみを通して伝えられる感覚だと思った。
共感できる部分も多く、一方で共感できなかったあの子の振る舞いはこんな感覚にルーツがあったのではと思い至るところもあって、強烈に胸に響いた。私の感じたもやもやを言語化してもらったようで嬉しさもあった。自身も女性性を元とした経験はポジティブ面、ネガティブ面ともにあり、同じような経験をした作家がそれをどう捉えるかを聞けたことが嬉しかった。
性に関する体験をもとに感情が描かれていて、一読するだけでは飲み込みきれなかった部分もあった。一作ずつ丁寧に読みといていきたい。 -
Posted by ブクログ
祖母に預けられ瀬戸内の島で暮らすことになった小学生の女の子、葉と、その島で血を理由に差別されてしまっていた女の子、真以の話。
物語は小学生の頃の2人と、大人になった2人という2つの時系列で語られる。
初めの時系列では、大人に翻弄されながらも子供らしく純粋に生きる時間や人間関係が綺麗な言葉で描写される。
「約束するのは信じていないみたいだから」
「海を見慣れるように、一人でいることにも慣れるんだ」
「戻るという言葉がしっくりくることに気がついた。でも、喜ぶことも悲しむこともできない」
「凪いだ海のような起伏のない時間は、胸を騒がせることもなくゆるゆると過ぎていって、それはそれで楽でもあった」
思い出は美化される。頭の中で勝手に相手の気持ちを推測して、物語を作ってしまう。いつしかその物語は聖書化してしまい、崇拝してしまう。
こういう経験はあるけれど、この本は、世界が自分が理解してる通りといえるほどわかりやすくなくて、わからなくてもいいと言ってくれるような小説だった。
「口下手だったあの子が私に伝えたいことがあったのではないかと思いたいのだ。勝手に自分に都合のいい解釈をしようとしている」
「向かいに座る真以を見る。目の前にいることが、うまく、信じられない。強い記憶はいつしか自分の中で物語のようになっていたのだと気づかされる。」
同時に、理解したつもりになっている他人も世の中には沢山いる。「理解されたはず、こうあってほしいと思われている自分」を押し付けられて苦しむ葉。
でも、そんなことは切り離して、自分の生きたいように生きればいいと。
あくまで、否定するでもなく、従属するでもなく、切り離して。
「人の目を変えるのは難しい。みんな、見たいように見る。」「その人の見ている世界はわたしの世界とは関係ないから」
「葉が島にきて、私の周りにもきれいなものがいっぱいあったんだって知った。葉はわたしのことも、母のことも、そのままの姿を見てくれた。見ようとしてくれた。」
ありのままの葉でいればいい。そうあって欲しい。ひきなみのように後ろに見える、自分という人間を純粋に生きればいい。そういう意味を込めて真以が言う。
「葉は葉のやり方で、生きて」 -
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シンデレラや白雪姫などの童話を現代の人間にしたらどんな残酷で苦しい世界なのか。
かといって無理にグリム童話っぽくするわけではなく、まるで振り返ったらシンデレラみたいねっていう皮肉に落ち着くような甘美だけど残酷な物語。
個人的にはヘンゼルとグレーテル、白雪姫が好きです。
純粋無垢な子供たちが邪悪な大人に騙されて…でも最後にはヘンゼルとグレーテルは悪い魔女を倒して。現代でそれが一体何とされるのか。
白雪姫も、毒林檎を食べてしまう白雪姫は実は黒い笑みを浮かべる恐ろしい女だったかもしれないと思えるようなゾクッと感。
だけどもどこか現代女性のひとつの考え方として腑に落ちるような言葉の使い方がさすが千早茜先生だと思います。その言葉遣いが好きでどの作品も大ファンなんです。
短編は久しぶりに読みましたが、もっといろんな童話で見てみたいし、この長さの話だからこそ想像を膨らまさせられる毒々しさでした。 -
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千早さんの本はいつも読むと安心をくれる。
満月の夜に爽やかな風に吹かれているような気分になる。
登場人物の羽野に自分を重ねた。人との距離感が冷たく、羽野は植物を愛する。私は、人との関係が煩わしく本を愛する。本はいつも静かにしているが、開けばいつでも同じように口をひらいてくれる。
植物と本。ものは違えど、静かにいつもそこにいてくれる彼らを愛することにそこまで差はないのではないかと思う。
羽野が語った昔の使用人と2人だけの夜が居心地が良かったという話に心から共感した。お互い干渉しすぎず、頼りすぎず、でも空間は共有する。そんな居心地の良い関係を望むのは贅沢なのか?
私は交際をしても、冷たいとかもっと頼って欲しかったと言われて相手が去っていってしまう。
羽野がもしこの世のどこかに居るのであれば、良い関係が築けるのだろうか…
やはり、お互いの庭を見せることができず別れが訪れてしまうだろうか… -
Posted by ブクログ
第1部 葉は祖父母の住む島に預けられた。7月までの間という。父の具合が悪いそうだからだが、葉には父の機嫌が悪いだけにしか見えない。お母さんはお父さんだけが大事で、私を見てくれないと葉は思っている。
島で真衣と仲良くなった。といっても、真衣はふとどこかに行ってしまう。真衣の家も父母がいない。真衣は別荘の管理人の祖父を手伝っている。けど自分のことは語らない。
夏休みになっても母は迎えに来ない。初潮を迎えた日、葉は真衣と本土に渡る。
クリスマスに母は来たけど帰っていき、中学は島にはなかったので高速船で通うことになった。
第2部 父は若い女に走り、母と葉は捨てられた。祖父母の姓になっている。広報誌の仕事で、たまたま過去回を洗っていたら真衣を見つけた。
真衣は神社の参道でアクセサリーを売っていた。葉が行った時はもうほぼ売り切れている。ランチをすることに。真衣は相変わらず自分のことを語らない。
社内で葉は部長のターゲットにされている。月経で具合が悪い時にやられて吐いてしまった。早退する。次の日も出勤できなかった。