あらすじ
実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕(むしば)まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。昏(くら)い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。
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恋愛の幸せなところじゃなくて、もっと暗くて難しくて嫌なところをこれでもかっていうくらい突きつけられる。表面上はなんてことない幸せを装ってる人も、みんなこういう気持ちを抱えているのかな。
人間は難しいし、特に恋愛がやっぱり難しすぎる。
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作者読み3作品めだけどやっぱり、言葉選びが本当に良い、素敵。あと、キャラクターも。
物語の中で関連しあった人達の作品集だったけど、最後まで黒崎が謎だったなあ。詳しく語らない方が美しいんだろうけど、過去や考え方、その時思ってたこと、知りたかったなあ全部の物語は違う人達の話だったけど、人がなにか遺したい、と思う気持ちっていうのがメインにあったのかな?子供だって、妻だって所詮他人って考え方、薄情でもあるし気楽な考え方だなと思った。
「ゆびわ」の話、最後は本当のさようならってことなのかな、明美が泣きじゃくってた描写すごく切なくて良かった
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ゆらゆら揺れ動く夜の空気みたいな、耽美的な恋愛小説。島清恋愛文学賞受賞作。
古今東西、多くの作家が「恋愛」という普遍的な情熱をテーマにした文学作品を残してきた。熱に浮かされるような感覚、利口に生きられない歓び、嫉妬するのに敢えて装う平静、相手と共有できる非日常の世界、愛する者に振り向いてもらえない地獄の苦しみ、世界を呪いたくなる惨苦、やがて訪れる静けさ、深い虚無感。
しかし現代の恋愛小説において、そのようなロマンティシズムは見受けられない。「恋愛」は本来もっているはずの性質を失い始めている。現代人の空虚は奥が深い。誰もが孤独を恐れつつ、人に傷つかない孤独な安全地帯に潜り込む。「かたち」あるものを求め、「かたち」が無ければ人間関係は成立しないと思い込む。そして「かたち」の中で他の誰とも想いを共有しにくくなったままに、慎ましく、淡々と、けれど元気を装い必死に生きる。
だからこそ本作で、「日々、同じかたちを保つため」結婚しようとしていた女が、密かに関わった別の男の中で、「かたちからゆるゆると滲みだしてしまう」姿にはっとする。愛してもいない、後腐れのない関係の男からの愛を、心底求めている自分に気付き涙する姿に、胸を打たれる。「だって、たとえ明日、世界が終わるとしても魚も人もきっと恋をするもの。惹かれた相手と一秒でも長く一緒にいたいと願うはずだよ。それは何かを遺したいからじゃなくて、生き物として当たり前の想いだから。」という言葉に救われる。
生きていれば、恋をする。恋をすれば当然苦しい。ならばいっそ苦しみ抜けば良い。生きているというのはそういうことだから。現代の冷たい世の中を俯瞰しつつ、その中で浮き彫りになった生きものとしての生の感情を、味わえる。
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2013年に島清恋愛文学賞を受賞した作品です。
この賞は芥川賞や直木賞に比べると、あまりメジャーではないですが恋愛小説から選ばれる賞で、有名な方々が受賞されてます。
六つの短編集ですが、連作形式なので前作に登場した人物が次の話の担い手になってます。
好きな人になかなか本心をさらけ出せない、自身をみせてしまうと嫌われてしまうかも、という気持ちはわかるなぁと思いながら、色んな形の恋愛を表現できる千早さんの文章は素敵だなと思いました。
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半分くらいから一気に読んだ。この人の書く文章好きだなー!
読み終えたらなんだか温かい気持ちになった。水草くんのおかげだな。
積んでる他の作品もすぐ読みたい。
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倫理観や社会性が欠如してる感じは千早先生っぽかった。
主人公の内面がメインで描かれるので、己の欲との向き合い方がダイレクトに表現される分、欲への向き合い方は(自分の欲が何かを自覚してるかどうかも含めて)人それぞれだなーと感じた。
千早先生の作品は淡々と日々が進んでいく印象があるが、この作品は割と感情の波が激しい作品だった気がする。
私は登場人物の中なら水草くんが好き。
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自死したある男の周りの人間たちの話。当人目線が出てこない点では桐島部活やめるってよに通ずる部分がある。
ところどころいわゆる「イタい」「クサい」と表現したくなるような部分があって、薄めで読み流した部分もあったが、基本的には読みやすい文体のためスラスラ読めたし、夢中になって読んだ。
ほのかに女性がミステリアスで神格化されているきらいがあり、作者のwikiに村上春樹が好きというのを読んで少し納得した。
それぞれのストーリーをもっと長く読みたいと思った。もっとどろっとした感情の流れを長く読みたかった。
最初の話、自死した男と関係を持っていた女性の話が一番心に残った。登場人物のセリフの背景や心情を心から理解できたわけではないけれど、なんとなく共感する部分が多かった。「あなたもわたしも信じるものがない」みたいなセリフが一番胸に刺さった。信じるものがないと生きづらいし選択が難しい。
なんと呼べばいいかわからない感情、誰に伝えることもないから間違っていようが正しかろうがどちらでもいいけれど、あの時互いに必要としていたことは事実。その頃に灯された、消えない炎が今でも私のなかを満たす。素晴らしい表現だと思った。
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実体のない愛を形に遺そうと互いに傷付け合った__
ひとつ話を読み終える度、息継ぎをするかのように空気を吸い込みたくなる。人を愛することで、孤独や失望の渦に飲まれる息苦しさがあった。
連鎖短編集なので、登場人物たちが交錯していくのも面白かった!
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なんだろう、言葉にできないなにかが心に残ってる。
生きることってなんとなくつらい、でも少し希望を感じられるというか。それでも人生は続いていくんだな、と。
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恋愛連作短編集ではあるけれども、どのお話も孤独の匂いが濃く、登場人物それぞれが、自分という個の在り方について真剣に向き合っているのが伝わってくる。
恋愛を含めた、生き方そのものの話。
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人と交流して、自分の存在価値を見出す。その行為がツラい。納得出来ない行動が多々あるが、人に依存する過程でやむなし、と思えてしまった。こういうループに入ると辛すぎる。
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恋愛とは、他人には説明のつかないもの。
だけど誰かに伝えなくても、確実に自分の中に鮮やかな炎として残る。
この物語は連作短編という形式でなければ、八方塞がりで息苦しくなってしまいそうです。
孤独の渦に巻きこまれ、登場人物それぞれが寂しさだけをを漂わせているように見えるけれど、実はとても美しい物語なのだと思います。
終盤、少しの光が射してきてほっとします。
誰かを好きになることは、こんなにも尊いことなのだと気づかせてくれるような、今までに読んだことのない恋愛の世界に浸れるような、連作短編集でした。
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雰囲気がいい。さみしくて、とてもよかった。結婚した相手も、すきな男も、自分が産んだ子どもも、どんなに愛してる存在だとしても、なに考えてるかわからない。前向きなお話もあったけど、人は死ぬまでずっとひとりだなって思った。「生々しいのは嫌だよね」からの台詞、ちょっとどきりとした。読み終わったあとも黒崎についてぼんやりと考えてしまう。所詮は他人って、つめたいけど事実なんだろうな。
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自分としては「ねいろ」の最後の水草くんの言葉が印象的だった。
心のどこかでは望んでいるはずなのに、言葉としてカタチとして表せず自分の中にしまい込むようにする。
心の声を代弁してくれる人に出会えたらそりゃいいだろうなぁ。
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「ほむら」「てがた」「ゆびわ」「やけど」「うろこ」「ねいろ」
6篇の短篇集。
はっきりと連作短篇を打ち出してはいないけれど、読んでいくと物語同士が繋がっていることが分かってくる。
人と人の関わりの物語なのに、そこはかとなく孤独の匂いが漂う。「一緒にいてもひとり」という言葉が読みながら頭に浮かんだ。
「ほむら」と「てがた」で色濃く登場し、他の物語でもうっすら存在を示すある男が、得体が知れなくて印象に残った。
飄々としていて、人や物事に対する執着が薄く、それなのに時々執念深いようなやや暴力的な姿を見せたりする。
その男が選んだ道のあとに残された「てがた」。男は一体、どのようなことを考えてその道を選んだのか。
タイトルの「あとかた」という言葉。「あとかたもなく」という表現の仕方もあるように、現実的な形として存在の証は残っていても、その人自身の存在感が透明に近くて、いなくなったあと「あとかたもない」ように感じてしまうこともある。
傷痕のように、見える形で残った「あとかた」も、気持ちのなかではだんだん薄れて、消えていってしまったりする。
全篇通じて、あとかたが残っているのにあとかたもないような、不思議な透明さが漂う小説だった。
今、自分のなかに見えないかたちで残る望まない「あとかた」も、そのうち消えていくのだろうか、と考えながら読み終えた。
Posted by ブクログ
暗い海を見ていると引き込まれてしまいそうになる様に、「死」や「ネガティブな感情」は常にすぐ傍にあって、気付かないうちに飲み込まれてしまう…そんな人々を描いた短編集でした。
最後の作品に出てきた水草くんが発する「生への肯定感」が唯一の救いかな、と思いました。
Posted by ブクログ
「私は安らぐ場所に違いない。厳しい現実から逃げられる場所なのだろう。でも非現実、虚構だ。一時の快楽と幸福を与えはするけど現実には何も生み出さない。」
実体のないこの関係性が、この物語が私は好きです
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千早さんの本、一つ目の章が心に刺さることが多いなと思います。
今作の「ほむら」は、結婚を控える主人公の女性と、どこか現実味のない年上の男性とのお話。変わらないために結婚することを決断した配偶者と、結婚しても変わるのだからと前向きにならない主人公。「変わらない」に執着するから生まれる現実味のない関係って身に覚えがあるなあ。
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主人公(視点)が変わりつつ、全ての短編の登場人物に繋がりがある連作の短編集でした。私はこのタイプの作品が好きみたい。初めの章に出てくる男性が全編通してのキーパーソンなんだけど、その男性の視点の章が無いのがすごく良い。想像を掻き立てられます。詳しい説明がない分、ミステリアスで結局1番印象的な登場人物なのかも。「ほむら」が1番好きかなー。
Posted by ブクログ
この著者さんを読むのは2作目。
前回読んだ高レビューの本は私には全く響かなくてレビューすら書かなかったけれど、この本は好き本だった。
読んでよかった。
ふくらはぎまで、生ぬるいヌルヌルした水でがんじがらめにされてるような登場人物たち。
でも空からはたしかに微かに光が降りていて。
将来をどうしていくのかは日々の選択で変わってくるよね
光を見つけることが出来る環境とか自身のモチベーションとか偶然や必然の出会いとか。
みんながみんな、光を見つけられるわけでもない。
いろいろ私の人生も振り返ってしまいました。
オムニバス形式で、いろんな人の人生が絡んでるストーリーです。
1人の自死を選んだ男性から派生する人々のその後。
光が見える最後の2作品が私は好きでした
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各章ごとに主人公は変わるけれど、登場人物が連鎖していく連作短編小説。内容は不倫とか、昼ドラみたいなちょっとドロドロ系っぽいけど、案外スラスラ読み進められた。
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ゆらゆらと掴みどころがなく得体の知れないモテオジリーマンが突然自殺するシーンがあって、ちょっと想像がつかなかったね。社会に疲弊しきって自殺するようなオジサンってもうちょっとこう、かっこよさとはあんまりかけ離れたイメージあるけど、この物語の中の彼はなんかめちゃくちゃモテてましたよ。そういうもんなの?知らんけど。
いくつかの短編から成る本書でしたが、その自殺オジをはじめとして短編同士に共通して現れるキャラが何人かいて、そうやって話を跨いで登場する人達は何故かみんな揃って現実離れした性格でした(すれ違う男がみな振り返るほどの美少女が元同級生の高学歴男子大学生の家に居候しててセフレとか連れ込んでるけど、何故か家主の彼とはセックスしてなくて変にピュアなやり取りするくだりはラノベぽかった、作者女性なのに)。
全体的に読みやすい文章で、舞台となってる場所の地名が明言されてないから日本のどこにでもある小都市内の出来事として想像が容易く(それこそ作者出身の江別ぽさもあるし)、感情移入しやすいつくりになってるのは上手いと思いました。自分は固有名詞ゴリ押ししてる方が好きだけどね、そういえば最近知ったんだけど舞城作品によく出てくる福井県の西暁って地名、実在しないんだって。マジかよ。
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【かたち】にとらわれた登場人物が葛藤していく連作短編集。
それぞれが思う生き方や考え方の【かたち】があって、その【かたち】にはまることの安心感や、はまらないことでの虚無感が痛々しく描かれていました。人間の内面を上手に描く千早さん、さすがです!
気持ちが救われた気がする
色んなものを抱え込んでいるせいか、読み易く、共感しながら一気に読んでしまいました。
主人公の言葉で、自分の気持ちを整理していくような、肯定したり、考えたり。
男ともだちを読んで、気になって読んでみたら、こっちも私にはよかったです。
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千早茜さんの文章が好きでちょこちょこ読んでいるのですが、2冊に1冊くらいの割合で現れる、貞操観念ゆるゆるで浮気相手に呼ばれたらすぐ会いに行っちゃう、だけど本命はキープしてます的な女性がすごく苦手です。今回も2人現れました…
1話目でうわぁ…と思いましたが、登場人物が少しずつ繋がっている連作短篇が割と好きなのでなんとか最後まで読めました。
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哲学的な言葉がグサグサ刺さった
ーーー
「その時に思った。この男の名をあまり呼びなくはない、と。呼んだが最後、心に居ついてしまうような気がしたから。」
「待ち合わせ場所に向かう夜の闇は肌に柔らかかった。」
「留められないものを留めようとするから無理が生じる。それをやっと受け止められるようになったというのに。」
「望まれなかったから何もしませんでしたってのは、痛覚ないって言うから殴りました、と同じだ。」
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きっとハマる人にはハマるんだろうなぁ。微かなリンクが気になって一気読みしたが、最後の『ねいろ』と大学生の2人だけにちょっと救われた感じ。スッキリしない。特に不倫専業主婦が大嫌い。身勝手すぎて、傷ついた気になるなとムカつく。それにしても、全員美人すぎ。
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ひりひりとした6つの短編連作集。誰もが傷を負い、その痕跡が誰かを通して浮き立ってくる感じ。『さんかく』でも思ったけど、千早茜さんは語り手の転換がお上手だと思う。
Posted by ブクログ
短編集をあまり読み慣れていないが、連作集だったので世界観に没入しやすかった。各話主人公が異なり、視点が変わるので各々の思考・嗜好を味わえるのは短編の面白さだと思う。
性別・年齢・学歴が様々な人物たちの価値観の癖を理解できるくらいには、自分は大人になった気がする。ひとつ目の「ほむら」は難しかったので、まだまだガキだなとは思いつつ。
学生時代に、「大学4年の卒業前に自分が死んだら葬儀の参列者は最多になるに違いない」と思ったけど、死んだらそこでみんなの記憶が止まり忘れ去られるだけなので、生き続けた方が「あとかた」は残せるんだろう。良くも悪くも
Posted by ブクログ
千早茜さんが好きで、過去作品をを読むべく手に取った1冊。
10年前の作品なのか…
湿気の多い雨の季節のような、
肌にじとっとまとわりつく湿っぽさが凄まじい。
テーマもテーマなので、これは好き嫌いが分かれるかもしれない。
短編集だけど登場人物が繋がっているので、
様々な人の視点から他の場面の事実が描かれ、
そういうことだったのかと後から気付く。
人って本当に都合が良い。
とにかくさらっと読めてしまう。扱う内容的にこの軽さがちょうど良い。
そして表現の繊細さはやはり秀逸。
食事の描写も、エッセイを読んだ後なのでなおのこと注目してしまった。
何気なく登場する花の花言葉が意味を持っていたり、とにかく細かい。
エッセイを読んだ後だからこそ、この著者はきっとここまで…と思って読んだけど、まさにその通り。
他作品もぜひ読みたい。