あらすじ
十八世紀のコルセットやレース、バレンシアガのコートにディオールのドレスまで、約一万点が眠る服飾美術館。ここの洋服補修士の纏子は、幼い頃の事件で男性恐怖症を抱えている。一方、デパート店員の芳も、男だけど女性服が好きというだけで傷ついた過去があった。デパートでの展示を機に出会った纏子と芳。でも二人を繫ぐ糸は遠い記憶の中にもあって……。洋服と、心の傷みに寄り添う物語。(対談・筒井直子、解説・谷崎由依)
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クローゼットをきっかけに繋がるお話。
透明感があって、静けさを感じた。
繊細に綴られてゆく物語の中で、華やかで煌びやかな服がとても美しかった。
服にはそれぞれ過去があって、物語がある。着ていた人の人生が服に染み付いていることが心に残った。
自分の好きな服を追求すると、自信がつくのだと感じた。
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大切なものをしまい込んで閉じていたクローゼットの扉を、そっと開いて光ある世界を覗いていく。
その光があたたかくて、ほっこりした気持ちになる。そんな読後感。
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装丁も可愛くて読む前から好みな予感はしてたけど予想的中!どんどん引き込まれて何も突っかかってくるものがなかった。もちろん知らないファッション用語が出てきて調べたりはしたけれど、ストーリーも登場人物たちの心理描写もすんなり入ってきた。
そして舞台のモデルとなったという京都服飾文化研究財団への興味が沸々と。当該財団の筒井さんと千早さんの対談の中での筒井さんの印象的だったセリフ“美しい創作物が人の正気を保つ”。先般六本木の森美術館で行われたルイーズ・ブルジョワ展の中でも“芸術は正気を保証する”というフレーズが出てきたのが重なった。
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夢のような感じがした。私もクローゼットの中で小さい頃遊んでいた記憶があって、服も好きで刺繍とかレースとか美しくてすき。
そんな話は置いといて、お話としては幼い頃に受けた事によって男性が苦手な纏子、男性ではあるが女性服を着ることを好む芳。
お互い辛い過去を持ちつつ、芳はデパートのカフェ店員、纏子は補修士という全く違う職業の関わりのなかった2人がデパートの展示、美術館を通して関わりを持つ。そしてお互いに1歩踏み出せるようになっていく。本当になんか最後の展開が結構急だったけどなんとかなってよかった。
ちょこちょこあんまり服の専門用語に得意ではなくて調べたりもしたから少し読みずらかったけど、私は結構すき。想像するだけで楽しくなる。長い歴史を経て補修してまた美しく見せるのもすごい。服に対する関心欲は深まった。
千早茜さんの世界観は魔法にかけられた感じの感覚がする。
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やっぱり千早茜ワールド好きだなぁ。
そしてこの人は絶対に長編がいい。
というか好き。
ときどき間に短編集を挟むと わたし この人の何がそんなにいいと思ったんだろ?とわからなくなる作品にもたびたび当たるけど 長編はほぼどれも好きだなぁ。
短編の方がフォトジェニックというか 幻想的というか 上手くいえないけど 何か更なるフィルターが強くかかるような。そこがたぶんわたしはなかなか馴染めないのだろうなぁ。
千早茜を初めて読んだ時 わたしが今までずーっと心で感じながら 上手く言語化できなかったモノが 言語化されてる〜 同じようなこと感じてた人がいたんだ〜 と感激したことを この人の本を読むたびに思い出す。
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友人に貸してもらった短編集の描写が美しくて無二の世界観を書く人なんだなと思い、2冊目の千早茜さん
やはり描写が美しい 服だけでなく、空間の描写も美しくてシンとした空気を肌に感じる
目に性差はないでしょ、という言葉が好き
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そこで終わるのか!ってなるけどそこで終わるのが正解な感じ。とにかく言葉が綺麗だし、専門用語が出ると知識を得た気になる。ブルーピリオドのなんでも持ってるやつが美術に来るなよみたいな高木が良かった。読んでる途中で芳はなんでも似合うだろうからいいなあと思ったので……図星というか……
Posted by ブクログ
好きなものと真摯に向き合い、好きを極めている人達が描かれた作品だった。表現がとても美しく、好きなことにのめり込んでいる登場人物達がどこか羨ましいと感じた。
男性の体を持ちながら女性の服を身につけたい芳と男性が怖くて息苦しさを感じる纏子。どちらも性別という違いに囚われ、悩み、苦しみながら自分と向き合っていた。
私がのめり込める好きなもの何か?私が今悩んでいる自分の性のあり方はどこにあるのか?自分と向き合う時間をくれた。
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千早さんの表現は五勘が鋭い、
本当にその通りだなと思った。
千早さんの小説からは匂いがする。
その香りと共にお話を楽しめるなんて
とっても贅沢。
それから主人公が弱くても芯は強い。
ただ力のない人ではなく、
懸命に生きようとする過程で
足元に何かが引っかかっている
その強さがとっても素敵だと思いました。
このお話には私の好きなそんな千早さんが
たくさん詰まっていました。
Posted by ブクログ
服が好きという共通点で繋がった人たちのお話。服は鎧。見せたい自分を作ってるし、守ってくれる。見せたい自分を見せることも、そこから一歩踏み出すことも、人生を輝かせる要素になる。服のディテールを表す文章が美しくて、それも好きポイント。物語そのものも面白いけど、この本を読んでいると服やファッションについての世界観をついつい想像してしまうのが、引き込まれてしまう一因なのかも。
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洋服補修士の仕事内容が、ただ直すだけではなく当時の姿を再現することにあるというのが興味深かった。服の歴史や美術品としての説明がところどころに出てきて、千早茜さんらしい五感に訴えてくるような表現力のおかげでこの美術館が本当にあって行けたらいいのに、と思った。
晶さんの台詞の多くに納得感があって、特に「あなたの身体に触れていいのはあなたが選んだものだけ」という台詞がとても好き。
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十八世紀のコルセットやレース
バレンシアガのコートにディオールのドレスまで、約一万点が眠る服飾美術館。
ここの洋服補修士の纏子(まきこ)は、幼い頃の事件で男性恐怖症を抱えている。
一方、デパート店員の芳も、男だけど女性服が好きというだけで傷ついた過去があった。
デパートでの展示を機に会った纏子と芳。
でも2人を繋ぐ糸は遠い記憶の中にあって…….。
洋服と、心の痛みに寄り添う物語。
☆☆裏表紙より☆☆
千早茜の世界。
幻想的でちょっとだけ秘密の閉じられた場所。
そんな魅惑的な世界に、どっぷり浸れる小説。
「透明な夜の香り」の世界観も魅力的だった。
千早茜ファンには、たまらない一冊。
Posted by ブクログ
服飾美術館を舞台に補修士の纏子と、服が大好きな芳の二視点で構成。様々な洋服の歴史やエピソードが面白かった。それぞれが生きづらさを抱えているけど、繊細さや真っ直ぐさが武器になる場所があってよかったと思いました。
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文庫本の最後に対談が載っていて、「京都服飾文化財団(KCI)」と言うものが日本に存在する事を知った。著者の千早さんは最初にイギリスの美術館へ行ったのがきっかけで日本のKCIを知ったそうですが。
この物語で私が好きなのは芳が洋服を丁寧に扱っているシーン。脱いだコートにブラシがけをしたり、かわいい格好をしたデパートの女の子の靴が手入れされていない事を残念に思ったり…
好きなモノに情熱をかけられるって、仕事としている纏子や晶だけではなく、そういった日常の中でも出来るんだなと思った。
男性が当たり前の様にスカートを履ける時代が、そのうち来るのかもしれないな。
Posted by ブクログ
服って自分に合うか自分が着れるものかでしか考えたことなかったけど
自分が着たいものを自由に着るって素敵なことなのかもしれない
いつの時代も性から逸脱すると忌み嫌われる
それは根強く残る負の連鎖なのかもしれない
それらを解放させるものの一つの手段として服があるとしたら
服には無限の可能性があるんだなと思った
Posted by ブクログ
十七世紀から現代までの、一万点以上もの大量の服たちが眠っている服飾美術館で、洋服補修士として働く纏子は、一般の人たちが見ることはできない閉じられた場所で、繊細な衣服と日々向かい合っている。
纏子は幼い頃の事件によって、男性恐怖症を抱えている。
デパートでの展示をきっかけに店員の芳と知り合うのだが、男性だけど女性服が好きな芳も幼い頃他人に傷つけられた過去がある。
館長の青柳さんにもらった名刺がきっかけで、真四角の白い建物『青柳服飾美術館』を訪れた芳はそこでボランティアとして働き始め、纏子や学芸員の晶たちと関わりを持つうちに、纏子と芳が繋がっていたであろう遠い昔の記憶がだんだんと明らかになっていく。
洋服と同じように、傷ついた心も修復するような優しい物語だった。
ファッションは二十年以上経つと『時代』になるそうです。
コルセットのような補正下着で身体を変化させて洋服を身につけていたり、昔は靴の左右がなかったなんてはじめて知りました。
男性がレースやフリルのついた服を着ていた時代もあって、服に対する固定観念は無くすべきなのだなと思います。
ファッションの歴史に触れ、その時代を垣間見ることができて、とても楽しかったです。
Posted by ブクログ
最初の文章を見た時これは女の子の話なんだと思った自分はまだまだ固定概念に縛られているんだと少しショックだった。
読んでいくうちに作品に入り込んでしまうように登場人物に感情移入をしてしまう。
そして、自分もハッとさせられる言葉の数々。
Posted by ブクログ
最初は表紙に惹かれて手に取った。
読んでみると登場人物やその細かな作業の描写、心理描写の全てが繊細だった。
歴史の海の中でなんとかもがき続け、次の時代に引き継ごうとする補修士と学芸員の姿が美しかった。
服は人類にとって最も身近なものであり、今ではなくてはならないものなので、もう少し興味を持ってみようと思った。
ファッション雑誌や昔の衣服について調べてみよう。
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服飾美術館に勤める補修士の纏子と、そこにアルバイト(ボランティア)に来るようになった芳の話。二人に接点はないように見えたが、幼いころに芳は纏子に助けてもらったことがあり……という内容。
纏子の男性恐怖症のトラウマが芳とのやりとりで少しずつほぐれていくのはよかったなと思う。そこに服が絡まってくるのもよかった。ただ、最後に倉庫に閉じ込められるのと、そこから自分を加害した男が判明するところの流れが性急なようにも感じた。
既読している千早茜の二作の方が面白かったかな。
Posted by ブクログ
まるで読む美術館。洋服を通して、その時代と、生きた人々の価値観を知るのが面白い。好きな服を着ればいい、と言っても服と他人の視線は切り離せないものだと思う。
「気に入った服を長く着続けたかったらどうする?人との関係だって同じさ」印象的な言葉だった。
ガラスの靴は物理的に不可能だという話が興味深かったけれど、冒頭に戻ってみれば「クローゼットから一歩でると、現実の自分がいて、ガラスの靴は粉々になった」とあって、繋がりに気付いた。童話のなかのお姫様に憧れても、理想と現実は違う。けれど、理想に近付くために人は努力する。綺麗なドレスを着るために、身体の形を変える。そうやってお洒落をする人は、童話のなかのお姫様よりも気高く美しいと思う。服に染みついた人の姿が、愛おしいと思った。
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洋服と人間関係が同時に楽しめる一冊
お気に入りの服を丁寧に扱うのと大事にしたいと思う人への接し方は同じなんだということが分かりとても素敵だった
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読み始めたら止まらなくて一気に読み進めてしまったんだけど、終わり方が唐突でちょっと拍子抜けしちゃった… 纏子、芳、晶。それぞれのこれから先の人生をもっと読みたいなと思った。
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最後に一気に話が驚きの急展開。そこからあっという間に終わってびっくりした笑
補修士という仕事を初めて知ったし、仕事の内容や研究施設なんかも実在のモデルがあるみたいで面白い設定だったけど、もっと晶の過去とか掘り下げて欲しかったかも。
Posted by ブクログ
18世紀のコルセットや美しいレース、1955年のバレンシアガのコートから1958年のディオールにいた頃のイヴ・サンローランのワンピースまで、1万点以上が眠る服飾美術館
この美術館で洋服補修士として働く纏子(まきこ)は辛い過去の経験から男性恐怖症を抱えている。
デパートでフリーターとして働く芳(かおる)は長身でイケメン、幼い頃から洋服が好きできれいな女性の服も着こなす
そんな洋服を愛する二人は、デパートの展示会で出会い、傷んだ洋服を丁寧に少しずつ補修していくように心を埋めあっていく…
この美術館のモデルとなった服飾の研究財団を著者がかなり取材されたらしく、とにかく洋服の世界を存分に堪能できる作品
美しい洋服の世界と登場人物たちの辛い過去が交差する内容もとても良かった!
ただ少しラストは強引な気が…笑っ
「あなたの身体に触れていいのは、あなたが選んだものだけ…」
この言葉がこの作品の全てだと思う
美しい装丁にも魅了された
Posted by ブクログ
題名通り洋服の話でした。洋服という言葉だけでは表せないくらいたくさんの服達が出てきて、知らないものが多かったので調べて、「こんな服なのか」、「見たことあるけど、こんな名前がついていたのか」と思いながら読みました。当たり前かもしれませんが、レースや刺繍などの装飾にも一つ一つちゃんと名前と歴史があるのだなと知ることができ、その世界に浸れて面白かったです。登場人物の心の内側にもきちんと触れて関係性を成り立たせているので、登場人物達のストーリーと、読み手の服への興味を上手く掻き立てることがバランスよく両立させられていると感じました。Googleで調べただけでは登場してきた服の魅力が僅かしか感じられなかったので、映像化してもらって服達を見てみたいですね。
千早茜さん3作目。
文章がするする入ってきて、登場人物や建物、シーンが思い描くことができるので、その世界に入り込めます。