あらすじ
女子校の臨時教員・萩原は美術準備室で見つけた少女の絵に惹かれる。それは彼の恩師の娘・小波がモデルだった。やがて萩原は、小波と父親の秘密を知ってしまう……。(「アカイツタ」)
大手家電メーカーに勤める耀は、年上の澪と同棲していた。その言動に不安を抱いた耀が彼女を尾行すると、そこには意外な人物がいた……。(「イヌガン」)
過去を背負った女と、囚われる男たち。2つの物語が繋がるとき隠された真実が浮かび上がる。
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非常に面白かったです。2つのお話で構成されていて、2章に行った時、あんまり1章と関連性は、ないのかなと思ったけど、ラストが近くなるごとに、色々な考察や、想像が出来てとても楽しむことが出来ました。終わり方が、ハッピーエンドしか読んだことの無い私からすると、ハッピーなのかな?という感じでした。言葉ずかいがとても好みで、語彙力上がりそうだなと思いました。
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強さと弱さ、野生と抑制、絶望と生命力。正反対の性質が共存する者は、生々しくも美しい。
支配欲に満ちた父親に育てられた小波は、意志を持たない。自我を持たない人間は、何も求めてこない。また側にいる者の欲求を、自分のものだと錯覚している。だからなのか、小波と関わった男性は、彼女に強く惹かれ、取り込まれ、そして破滅していく。
自己主張は少なからず、加害性を帯びる。小波のように強固な人格形成をされていなくとも、繊細な心を持つが故に、大切な人といる時には我を持たないという選択を、無意識的にしている人は案外多いと思う。
しかしたとえ望んだとしても、人間は本当の人形にはなれない。常に小波の腹の底には、理不尽に傷つけられたことに対する怒りがある。だから敵意を持つ者には敏感に反応して、躊躇なく潰す。また深い絶望を味わっているから、痛みや恐怖をほとんど感じない。
「マカロンも果物のケーキも…ぺたんこの靴も本当はどうだっていい。耀に似合うものが好きなの。幸せのイメージに近づいていく気がして。」小波は最終的に、彼女から決して何も奪おうとしない耀と、「理解し合えなくても一緒にいること」に希望を見出す。人の心には、決して他人が無闇に暴いてはならない、神聖な領域が存在している。
人は変化する。よって、「あなたを信じている」と言うことは、実は暴力に近い。誰かを愛することは、祈りを捧げることと殆ど同義だ。
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気持ちの悪い物語である。
この物語で悪者を見つけるのは難しい。
誰もが加害側であって、誰もが被害側である。
“洗礼者ヨハネの首を持つサロメ”がモチーフのひとつになっているようだが、主人公は果たしてサロメだったのか、ならばヨハネは誰で、ヘロデは誰だったのか。
どうやらこの物語では誰もが各々の物語、神話から抜け出せずに、ツタに絡まりようにしてもがきながら生きている。
その物語、願望を各々が好きなように小波と澪、二人の解離した対象に体良く投影させる。
そして、小波も澪はただ投影されるだけであるけれど、その分裂した未熟な自我は他者を暗に操作させる。
第一部はどこか北米のハードボイルド小説のようでいて、後半は恋愛小説のようでいて、文体までも解離しているようだ。
物語の最後、これは救済なのか死なのか、複数回読み返しても答えが出ない。
ある時は救いであるように思うし、ある時は受難の再生産にも思える。
従って、最後の最後まで、投影がやまない。
気持ちの悪い物語だ。
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不穏。ただならぬ雰囲気に目が離せない。好きではないジャンルなのに、その世界に留まっていたいと思ってしまった。「好き」という二文字に込められる妖しく切ない想い。きっとこの物語のことは忘れないだろう。
あらすじ(背表紙より)
女子校の臨時教員・萩原は美術準備室で見つけた少女の絵に惹かれる。それは彼の恩師の娘・小波がモデルだった。やがて萩原は、小波と父親の秘密を知ってしまう…。(「アカイツタ」)大手家電メーカーに勤める耀は、年上の澪と同棲していた。その言動に不安を抱いた耀が彼女を尾行すると、そこには意外な人物がいた…。(「イヌガン」)過去を背負った女と、囚われる男たち。2つの物語が繋がるとき、隠された真実が浮かび上がる。
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美術家を惹きつけるファム・ファタル小説は、時として女性本人の人格や意思が抜け落ちたまま描写されたり、欲望の鏡扱いされがちだけれども(最近も、そちらに振り切った作品を読んだなと思い出した)、女性性を持つ人の痛々しいほどの葛藤にもフォーカスして描いていたのが、さすが千早茜さんとなった。
すっきり解決、と言えるものはひとつも無く、情念、欲望、本質的な孤独に傷付ききった登場人物たちが、暗い夜の庭に取り残されるばかりの物語。
そう書くと、どうにも救いが無いように思えるけれども(実際そうだけれども)、その暗がりの芳醇さに、ついつい惹き込まれてしまった
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前半の「アカイツタ」と後半の「イヌガン」。後半を読み始めた時は別の話なのかな?と思ったけど、10年後のお話でした。今まで読んだ千早さんの中では1番の耽美さや幻想が漂う作品でした。
明確な解釈が記されているわけではなく、読者に委ねられているお話です。
私的には結末がちゃんとしていて、なるほどねーそうきたか。でもこういうのもありだよなぁと想像するのが好きなので、千早さんの決めた結末を知りたいなーと思いました。
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千早茜さんの著作を読むのは2作目だけれども、文章から漂う湿度と香りがとても濃厚だなと思います
ファムファタール的なヒロイン 小波をめぐる男たちの話
読む人によって受け取る印象は変わりそうな気もしますが、
破滅に向かう怖さもある前半を受けたからこそ、
より静かに丁寧に男女の、人間の関係について描かれた後半が心に沁み入るように感じられました
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アカイツタとイヌガン
別々のお話のようで深く絡みついている一冊
理解できないような闇や薄暗さがある
深い闇に興味をそそられ
のめり込んでしまう感じ
久しぶりに味わった
嫌いじゃないんだなこの感覚
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難しかったとか複雑だったとか、そういう言葉では表せられないような神秘的な作品だった。
アカイツタとイヌガンの2部が折り重なってひとつの物語となることがすごく印象的だった。ただ、わからなかった、、、
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むせ返るような「女」の匂いが色濃く漂う二編。
由緒正しい女学院と少女たちと美術教師…幻想的で湿度の高い不穏な雰囲気に吸い込まれるようだった。
読み終わっても、何かふと遠い目をして考え込むような囚われ方をしてしまう。なんだか言葉にできない業の深さを感じた。
嫌悪しているのに、抗えない。そんな一冊だった。
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面白かったです。
昏く、でも鮮やかな赤も感じる世界でした。
近すぎる父と娘、そして娘の小波と奪い合う人たち。
「アカイツタ」では堕ちていく人たちに魅せられて、澱んだ息苦しい空気でした。
「イヌガン」では小波は澪という新しい名前で新しい人生を選んでいきます。小波の気持ちわかる…となったので、耀と幸せになれたらいいなと思いました。
わたしの「好き」はどんな「好き」だろう?改めて考えてみると難しいです。
「人はわかり合えない」、というのは真理だと思うので、わたしも毎日そこから始めます。
冒頭の独白は多分、土の中の真壁教授のものなのでしょう。凄絶で綺麗。
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連鎖する殺人とか、
何かを犯さないと何かを清算できないとか、
塗りつぶすことで見えなくする、みたいな。
その人の生きてきた何もかもが、
自らが罪と思っているせいで罪で、
その人がその罪を負い続けなきゃいけないと考えてとても辛いと思った時には、過去にその罪から逃れようとして自分に課した鎖がまとわりついてきて
躓かせて、
自分の罪を再び省みざるおえなくなる状態に振り返って安堵する。
自分のせいじゃなくて、共犯者、傷の舐め合いをした存在が居るから逃れられない。私だけのせいじゃないと思い続ける。
小波は逃げたいけど逃げられない自分に酔っているし、そうならざるを得なくなった自分の状況を自分で哀れんでいる。
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“共犯者にしたかったの あなたを_”
千早茜さんの耽美な世界
今宵も堪能いたしました♡
むせ返るような“女”の匂いが色濃く漂い
哀しき過去を背負った女と
彼女に囚われた男たちの
妖しくも美しい短編が描かれている
それはまるで…妖しくもその美しさに魅了され
あえて囚われることを望んだ蝶のようでもあり…
深緑の蔦(つた)の中に映える真紅に心奪われ
その蔦に絡めとられたい…と思わせるような
耽美な世界観だった
ふたつの物語が繋がったとき
隠された真実が明らかになる
幻想的で不穏な空気が常に流れているのに
不思議とこの世界にとどまっていたい…
ああ…好き…… 抗えない!!と思ってしまう…笑
そんな気持ちを読者に抱かせるのは
やはり千早茜さんだからこそ♡
きっとそう感じるのは 私だけではないはず!!
Posted by ブクログ
薄い微笑みを誰かに見せたくなる気持ちが分かるというか、人間はどんな場所に辿り着いても、悲しみや孤独は消えないのだろうかという、一種の諦観めいたものを抱えながらも誰かを求めたくなる、そんな矛盾した存在に愛しさと苛立ちがない交ぜになることくらい分かっていたのにね、何なんだろう、このもどかしさは。
物語があるようで無いような心境を抱いたのは、その登場人物のことをどうこう考えるのではなく、そこから自分の人生と重なるものを抜き出して、自分とどう向き合うのかを教えてくれるようでもあり、あくまで他人じゃないのよということを強く実感させられたのは、物語に登場する『ファム・ファタール』という言葉も同様であり、彼女をどう捉えているのかは周りの人間であって、その胸の内は本人にしか分からないはずなのに、『運命の女』なんて勝手に決め付けて笑わせんじゃないよ。
と極論で言えば、そうとも捉えられる感覚も含ませたことに、果たして人間とは奥深く複雑な存在なのか、鬱陶しくて厄介な存在なのか、そんなことを考えさせられたことで、物語自体の好き嫌いはともかくとして、今回の千早茜さんの作品は、人間の内に秘めた部分を抉ってくる印象が強く、こうした姿勢が時に文学として変貌するのではと感じたのは、強ちそれが夢物語では無いことを渋々認めざるを得ない、人間の一つの本質に迫っているようにも思われたからだ。
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なんだかよくわからないけれど、とても切なくてさみしくなった。
理解しあえなくても一緒にいられるなら
今を信じられるのなら
✳︎
「僕がいるよ」
そう言うと、澪は暗闇で笑った。
「ずっと、何があっても?」
✳︎
「共犯者にしたかったからなの」
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千早さんの作品は、色彩描写、風景描写、感覚描写が丁寧で美しい。
ファム・ファタールを彷彿とさせる女に魅入られ、絡め取られていく男たち。
空っぽな女は怖い。
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最後まで読んだら、その続きには希望があるようにみえるけど、最初に戻って読み返してみると、やっぱり絶望しかないのかもしれないと思って怖くなった。
耀が重なる。
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愛されたら、受け入れるしかない。共犯者にしたかったの、あなたを-。
『あやかし草子』に続いての千早茜san。
「つめたい土の中にいる。」から始まる、2つの物語。過去を背負った哀しき女と、彼女に囚われていく男たち。
1話目「アカイツタ」は、女子校の臨時職員となった萩原、暗い目でこちらを見つめる少女の絵、絵を描いた生徒の謎の死、真壁教授、娘の小波(さなみ)。
2話目「イヌガン」は、家電メーカーに勤める耀(よう)、同棲する年上の彼女の澪(みお)、少しずつの不安。
主人公が変わったので完全に違う話かと思っていたら、海が近い、澪の名字・・・?などと気になりつつ、紅い蔦が生い茂る「建物」の前で、すべてが繋がりました。
また、耀が澪との出会いの頃として語られた言葉に胸をつかれました。
”信じるのって相手に失礼じゃない?”
彼女はよく闘いました。夾竹桃(きょうちくとう)が見える庭で、少しでも眠れますように。
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色の描写がすごい。"色んな色の絵の具がのってるパレット"が、この物語を読み出してすぐ頭に浮かんだイメージ。前に読んだ『透明な夜の香り』も色がいっぱい出てきたけど、香り、嗅覚の話だったからこっちは視覚の話?なんて思った。
女子校と若い男性教師が出てくるから爽やかな恋愛かもと思う反面、それはないだろうと思ったら、やっぱりドロドロとイヤミスな感じ。私はどっちかというとドロドロ、イヤミスは苦手なんだけど、この作品はすんなりと読めたし、面白かった。終始謎めいてて真相はどうなの?と考えながら読んだ。最後に全部繋がった時、ただ切ない、可哀想としか思えなかった。幸せになってほしいけど、そうはならないかも…。
真壁小波から出てるミステリアスな雰囲気が、周りの人間を惑わすのか?みんな破滅してる気が…。真壁小波は別に何も悪くはないと思うんだけどな。
千早茜さんの作品は数冊読んだけど、正直私はあまりハマらなかった。でも『眠りの庭』は面白く読めた。
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「人との関係に理解とか必要ないって思ってるんですか?」
「うーん、無理なこともあるんじゃない?違う場所で育った、違う人間なんだから。それなら、最初から分かり合えるなんてものを望まない方が上手くいくこともあるのかなって思うの。」
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ひと言で表せば、気味の悪い話だった。
「アカイツタ」と「イヌガン」に2作から成る短編集かと思っていたら、2作が複雑に絡み合って、人の心の奥にある複雑な感情も絡み合っていて、作品全体に「アカイツタ」をまとっているような雰囲気。
産休の代理教師として、敬虔なカトリック系の女子高の美術教師として着任した萩原は、ツタの絡まる校舎の中に謎の少女の影を見かける。
そして、美術室には萩原が見かけたと思われる少女の肖像画が置かれていた。
現在の美術部員に聞くと、その作品を書いた生徒は入水自殺を図ったと言う。
返す宛のなくなった肖像画に陶酔していく萩原。
そんな時、卒業生である小波が現れ、その絵を引き取りたいと言う。その小波そこが肖像画のモデルであったことから、萩原は小波自身に魅入られていく。
萩原と小波に共通する子供の頃の親からの虐待の記憶。
その記憶をかき回そうとする小波の父であり、萩原の恩師である真壁。
歪んだ愛が描かれ、少しホラー的な要素もあるが、美術的な表現で、作中にも出て来るが、何だか原田マハの「サロメ」を読んでいるような感覚にもなる。
一転、「イヌガン」では幸せそうなカップルの日常が描かれる。
最初は全く関係のない2編と思わるが、物語が進むに連れ、「アカイツタ」の後日譚と明かされていく。
歪んだ愛情を描いた作品であり、決して気分のいい内容ではないが、他の方のレビューにもあるように耽美な雰囲気が全編を包んでおり、何とも言えない独特な読後感。
この作者さんの作品は何作か読んでいるが、それぞれ読後感が違っており、捉えどころがない作家さんだと思う。
Posted by ブクログ
「アカイツタ」と「イヌガン」という2つのお話かと思っていたら、つながっていて驚いたが、「さなみ」という少女を中心に彼女を愛する男の話が前者で、彼女がおとなになった「澪」をめぐるお話が後者。なんというか、深いところはよくわからなかった。
Posted by ブクログ
普段読まないようなジャンルの本で軽く精神的に打ちのめされました。誰にもひた隠しにする秘密はすくなからずあってそれを無理に暴こうとしてはならないこと、人はわかりあうことなんてできないことを改めて痛感しました。
Posted by ブクログ
過去を背負う魔性の女と、彼女に魅了される男たちの逆らえない運命の顛末。孤独と共感が同居する男と女を描く幻想的恋愛小説。
ファム・ファタール(運命の女)ものの千早茜版。古今東西、いろんな作品が小説や映画で発表されたが、結末に悲劇は避けられない。それでも、男にとって一度は堕ちてみたい世界がそこにはある。