千早茜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この物語の流れる時間はとてもゆっくり.急いではいけない,そう語りかけてくる.そして丁寧に読み進める行為はとても心地いい.いつまでも読んでいたい.日常のふとした出会い,幻想的であり現実的,そして希望であったり哀愁であったり,いろんな色を醸し出す作品でした.
以下あらすじ(巻末より)
烈しくも切ない、桜と人生をめぐる7つの物語
あたたかい桜、冷たく微笑む桜、烈しく乱れ散る桜……
桜の季節に、人と人の心が繋がる一瞬を鮮やかに切り取った、感動の短編集。ステージママを嫌う子役の女の子(「初花」)、謎多き愛人をめぐる二人の男(「花荒れ」)、 見知らぬ女性から「青い桜の刺青の標本を探して」と頼まれる大学資料 -
Posted by ブクログ
千早さんらしい作品だった。
17世紀から現代まで、1万点以上の服を保管している服飾美術館が舞台の小説。ダブル主人公の芳と纏子の視点から交互に物語は語られる。
幼い頃から女性の服が好きで、それが理由で周囲からの拒絶を経験した芳と、男性恐怖症の纏子はそれぞれ心に傷がある。服が好きな芳、学芸員の晶、洋服補修士の纏子は、服を通じてどんどんお互いの過去や傷を克服していく。
洋服補修士の作業の描写がとても詳細に記されていて、その仕事の緻密さや困難さを垣間見ることができた。初めは心を閉ざした登場人物の多さが少し嫌だったけど、纏子がどんどん変わっていく様子はとても応援したくなったし、変わることができて良かった -
Posted by ブクログ
ネタバレ身体というより、性についての本だな、と思った。けれど、身体と性は切っても切れないのでこのテーマでは必然なのかなとも。
有名な作家さんや、多方面で活躍している方も多く、違う本を読んでみたいなと作家探しにもぴったりだった。しかもパーソナルをかなりあけすけに書いている。
特に読みやすかったのは、児玉雨子さん、藤原真里菜さん、村田沙耶香さん。
性に向き合うことの肯定、女特有の被害、悪意、妊娠への恐怖、女らしさとは、無意識に舐められる事、など、これは男性に読んでもらいたいなと思いつつ、自分でもびっくりする新鮮な価値観もあった為、同性とか関係なく、みんな他人は違う事と考えて、違う事を抱えて生きている -
Posted by ブクログ
傷って何なんだろうなあ。
傷にまつわる短編。男女の話も多くちょっと中盤まではイメージと違った。
千早さんらしいといえばらしいのか。全体的に不穏。
傷の話なのに、紙がものすごく滑らかなのが不釣り合いで、そこに一番ざわめいた。
見えない傷と見える傷。
どっちもしんどいな。
今度手術があるから尚更思う。
やっぱり傷ができるのが嫌なんだろうな。
「からたちの」が心に残った。
手術の傷は不条理な傷になるだろうか。
でも、その後の「慈雨」で、「傷なくして生きていくことは不可能だとわかっていても、祈ってしまう気持ちを私は知っている。」
とあって、なんかそうだよなと。
しゃあないな、と思えた。
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赤く滲んだ私の傷はヒステリーなものばかりではない。そこに至るヒストリーが私が私である証なのだから。
千早茜さんの『グリフィスの傷』の概要と感想になります。その前に、本作は傷をテーマにした短編集ですが痛々しい描写が苦手な方はご注意下さい。
では改めて概要です。
2編の書き下ろしを含む10編の「傷」は、当人しか知らない物語があるものです。時には恨み、妬み、哀れみ、悔やむ。様々な傷は負った時の痛みを忘れても、見えない傷は忘れずに残るもの。あなたの傷には、どんな物語が残っていますか?
感想です。
千早茜さんのように生々しさが伝わってくる描写が上手い方が、「傷」を題材にしちゃダメですよ。読み進める