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自由のない家族関係を嫌う美里は、一回り年上の恋人と彼の息子が住む家に転がりこむ。お互いに深く干渉しない気ままな生活を楽しむ美里だったが、突然の恋人の失踪でそれは破られた。崩壊寸前の疑似家族は恢復するのか? 血の繋がりを憎むのに、それを諦めきれない三人。「家族という概念は放浪の旅に似ている。人はまるで終わりのない旅のように、いつまでも本当に安らげる自分の居場所を探していく」――千早茜
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Posted by ブクログ
さびしい三人の、家族のお話。大学生のまりもくん、佐藤さんの彼女のミリさん、佐藤さん。 家族観みたいなものがとても近く感じられて、すごく救われた気がした。あとがきのラストの一文で泣き崩れたよ…
デビュー2年ほどで書きはじめた作品らしい。 最終章でズルズルと引き込まれた。 オークションで無理して手に入れた甲斐があった。 (増版しなさい講談社!)
森閑とした気味の悪さの物語。 登場人物それぞれの家族が錘のように、被さってしまう。 あとがきにあるように、この物語は不健康かもしれない。 こういったひとたちにとって、家族という存在や、子どもを産むという行為はまるで枷や呪いのようなのだ。 そして、こういうひとはどんなに楽しそうに仕向けられても...続きを読む、どこか世界や他人が不穏であると感じてしまう。 P.124『「なんか嘘くさいじゃない。あの夢みたいな場所も、あそこに連れて行けば喜ぶと思っている親も。きらきらしているのは表面だけで、中は空っぽな気がする。」』 P.128『「従業員も客もみんな笑っていて、何もかも楽しむだけに作られていて、遊び続けなくてはいけないような気分にさせられる場所だと思った。(・・・)心から楽しめる人もいるのだろうけど、私は小さい頃からそうじゃなかったな。怖いし、なんか、すごくさ みしかった。」』 こうした恐怖心やさみしさは深く、自他を知らず知らず傷つけてしまう。 他者との距離感をどうしても掴みにくくなってしまうのだろう。 美里はこれに加えて女性性という枷も加わり、出産した友人の姿を薄気味悪くとってしまう。 出産直後の原初的没頭の姿も気味が悪いのだろう。 まりも君も知らず知らず他者を傷つる。 p.144『嘘をついても本当のことを言っても怒られてしまった。おまけに怒らせただけでなく傷つけてしまった。』 この物語は家族という呪いの物語であって、その呪いは「家」という家族の器に湖のように溜められ、その湖は深く一度沈むと浮き上がれないように、のしかかる。 物語後半のあおの湖はこうした家族という繋がり、ひととひとの境界という暴力的な側面の象徴なのかもしれない。 あおの湖の逸話は大黒柱としての男性によって作られたものであるのも暴力的で気味が悪い。 しかし、本当に気味が悪いのはまりもの母親(?)である香穂子だ。 空虚で中身のない、まるで気配だけの存在のようだ。 P.98『「気配はあるけど、顔は見えない」』 しかし、その気配は生々しい。 森閑とした、気味の悪さが漂う物語。
面白かったです。 どこかに欠落を抱えた3人が、なんだか近しく思えました。 「家族だから」を押し付けられるのが嫌いで、かといって自分で新たに獲得しようとも思わないのでわたしもずっと独りで生きていくんだろうな…とぼんやり思っているのです。なので、佐藤さんやまりも君の気持ちは少し解ります。 でも、さびしい...続きを読む、のかな。わたしも心の底ではさびしいのかな?と思います。そこはよくわかりません。 3人は新しい形を作っていくんだろうなと思います。なんだか、ほっとしました。
登場人物3人、それぞれ種類の違う寂しさを抱えており、寂しさに対して向き合ったり、気づかなかったり、スルーしたりしている姿が印象的。何物にも執着しない生き方は羨ましいけど、その代償として寂しさが付きまとってしまうのかな。寂しいって感情は厄介
血は繋がらないが同居する三人。自由だけを求める美里、他人に興味がないまりも、自分勝手な観念を持つ聡平。崩壊寸前の疑似家族の行き先を描く新家族小説。 千早茜さん初読み。静かな海のような文体ながら、その底は暗くて深い。家族とは何かを問う物語だが、登場する三人各々の考えていることは、私たちの心の奥底に隠し...続きを読むている感情に近いものがある。それを剥き出しの刃にせず、羽毛のような感触で痛いところを突いてくる巧さ。これからも追っかけていきたい作家さんです。
不健康ないびつな物語だけど、千早さんの文章が綺麗なせいかどこか現実味がなく、幻のような感覚で読める。 近くに見えるのに遠いみたいな。 いびつな形で暮らしてきた家族の再生物語と言えば軽いけど、それぞれの抱えてる物は重く暗く、冷静に考えると結構なものだ。 だけど、各々が自分と向き合い相手を見て求め気持...続きを読むちにケリをつけていく様はどこかカッコいい。
人から執着されたり踏み込まれるのを嫌がり愛情に飢えていて感情的で時には暴力も振う不安定なみりさんが全然好きになれなくて、なんでこんなキャラ設定にしたのだろうと思いながら読み進めると聡平さんを連れ戻すためだったのかと腑に落ちた。彼女には爆発的なパワーがある。 まりも君が幸せになれますように。
家族として暮らす30代のちや、40代後半の佐藤さん、20代のまりもくん。 それぞれの視点で描かれた3部構成。 家族とは何?を作者千早さんが描いた。暗い雰囲気だけど嫌いじゃない、不思議な作品だった。
血の繋がりもあやふやな形の同居で、”普通”の形でないことにさみしさがあったようですが、寄り集まればそれもまた1つの家族の形を見ることができるものでした。
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