千早茜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本作のトピックは「女」であることに対する嫌悪感なのだろうと思う。著者は何度も向き合い、絶望してきたのだろう。男性には書くことのできない女性であることのやるせなさの表現が経験してないとかけないほどの解像度であった。初めて生理が来たときの恐怖、生理を止める方法はなく近所の店に買いに行くこともできない絶望感。
急いでティッシュで対処する生々しい表現。
体の変化だけではなく、幼少期から感じ続ける男性と女性の違いの歪み。
島という狭い世界だけではなく、東京に出てきても感じなければならないその差別に大逆転劇を持ち込むのではなく「逃げるってことは自分じゃない人間の見方を拒絶しているようで受け入れてしまっている。逃げて選んだものは選ばされたものだから」
という強い意志で抵抗しようとする姿は男性と異なる女性特有の我慢強さを象徴しているようだった。
恵まれていないかつ、恵まれていないことに気づいてしまう人が一番いい小説を書く、そういう人の文章は響くということを改めて感じさせられた -
Posted by ブクログ
ひとつの物語を2人の作家さんが順番に書き進めていって徐々に物語を作っていく感じの構成でした。
カップルの出会いから付き合ってを描いているのですが、このカップルがずーっと喧嘩してる。笑
しかもその喧嘩のテンポが良くてどんどん読んでしまう、なんかクセになる1冊です( ^∀^)
彼女視点から描かれる彼氏は頼りなくてアホで気が利かない、めちゃくちゃイライラするどうしようもない奴やけど、
彼氏視点から描かれると、彼はただの言葉足らずなだけで不器用ながらも本当はめちゃくちゃ彼女のためにって考えて行動してて、でも全く伝わってなくて、なんだか憎めない奴。
「そんな男何がいいの?時間の無駄やから別れた方がいい!」って言われるような彼氏と付き合ってた時の事を思い出して、
その頃の自分にイライラした(´-ω-`)笑
最後の、千早茜さんと尾崎世界観さんの対談も面白かった!
-
Posted by ブクログ
1番最初の話がいきなり浮気からはじまり、とっつきにくく、飲み込みにくさを感じた。わたしにはこの本は向いてないのかもしれないと思ったけど、読み進めていくうちに物語の中にストンとはまりこんでいた。
自分とは似ても似つかない考えや行動の登場人物たちに、気がつけば惹きつけられて、気持ちが寄せられていた。
物語の中で揺らぐ情動が根ざすのは、だれもが抱えている普遍的な孤独や悲しみや苦しみだ。正しいかどうかでは測れない。感情が導き出す道は不合理で複雑で、幸せなんて一口に語れる出口はない。
読み終わった後も物語の余韻が悲しく残っている。人生がもっと単純で明快だったら良かったのに。 -
Posted by ブクログ
最初ピンとこない感じだったのに、途中からめっちゃ引き込まれて一気に読んでしまった。
あれこれ理由をこじつけて、自分を納得させようと頑張って、それでもうまくコントロールできない現実から逃げたくなる。
そんな人達が主人公の連作短編集。
ふんわり甘くて心地いいお菓子で、一瞬見たくない現実から逃れられても、容赦のない現実から目を背け続けることはできない。
嗜好品をはけ口として消費するのではなく、ちゃんと楽しめるように、この主人公たちのように、向き合いたくない現実に立ち向かいたいと思った。
特に、ネイリストの主人公が発したセリフがお気に入り。
「自分を卑下しても、自分が好きになったものを否定しちゃダメだ。」
なんて胸が掴まれるセリフだろう。
再就職で悩んでる自分にものすごく響いた。
そしてその短編の締めの一言がまた素晴らしい。
「いつか、あなたの人生を薔薇色に染めるのはあたし」
かっっっこいい! -
Posted by ブクログ
⬛︎ ほんわかだと思ったら、違いました
千早さんの小説を読みたい。でも重たい話はちょっと避けたい……(わがまま)そんな気分で本屋をうろうろしていて目に留まったのが本書でした。
甘いお菓子が登場する、ほんわかした物語かな?と思って手に取りましたが、実際はどっしりとした人間ドラマを描いたお仕事小説。いい意味で裏切られました。
主人公・亜樹は、有名パティシエールを退職し、将来的に店を継ぐことを見据えて祖父の営む洋菓子店に戻ります。
この祖父がとても魅力的。
昔ながらの頑固で職人気質な人物ながら、根は深く優しく、しかも人を見る目が鋭い。静かにかっこいいおじいちゃんでした。
亜樹もまた、幼少期から祖父の背中を見て育ち、両親の反対を押し切ってパティシエの道へ進んだ女性。
一本筋が通っていてかっこいいけれど、どこか不器用で、冷たく誤解されやすいタイプにも映ります。
同じ“お菓子”でも、ふたりが作るものはまったく異なる個性を持っていて、その違いが文章からしっかり伝わってくるのが面白かったです。
祖父のお菓子は、毎日食べても飽きない安心と安定の味。味の想像がつく(もちろん褒め言葉)。ほっとする、王道の洋菓子という印象。
一方、亜樹のお菓子は創作性にあふれ、一口ごとに新しい発見があるような世界。
ただ、使われるワードが難しくて正直あまり想像できない……笑。
でも、私はお酒やスパイスの効いたお菓子が大好きなので、「きっと絶対おいしい」という確信だけはありました。
終盤は恋人・祐介との関係が中心になりますが、仕事をバリバリしている女性にありがちな
「圧倒的な会話不足」の気配を感じて、かなりやきもき……笑。
亜樹はきっと“仕事命”。
それ以外を大事にしたくないわけではないけれど、どうしても優先順位が偏ってしまう人なのだろうな、と感じました。
だからこそ祐介には、もう少し自信を持って
彼女をリードしてほしい……なんて思ってしまったり。
三角関係めいた恋の展開も、王道ながら切なかったです。
澄孝くんの一途さには、こちらまでしんみり。
(個人的には、亜樹×澄孝コンビの会話の相性の良さがかなり気になりつつ……
同じ方向を向きすぎた二人は、逆にうまくいかないものなのかもしれない、
などと勝手に邪推してしまいました。)
-
Posted by ブクログ
ネタバレなんともどろりとした終末を迎えるお話たちでした。
あとがきにて、子どもの頃に民話や昔話、童話に対してどのように思われていたか、凄く独特な感性でどこか共感できる内容が綴られており、千早さんの頭の中を覗いてみたくなりました。
童話を現代に置き換えたとして、全く予想しなかった舞台や観点で感動しました…なんて引き出しの多さ…。
ディズニー仕様ではない、リアルな童話と向き合うと、ここまでどろどろしたものを飲み込まされるんだ…という気持ちです。
本当に幸せになれたのは…?
そもそも不幸な人はいるのか…?
甲乙つけ難いのですが、白雪姫がお気に入りです! -
Posted by ブクログ
仕事と恋と食べること。
三角関係未満の3人の男女の物語。
恋に振り回されず自分のペースで暮らしたい夕香。
そんな夕香のもとへ、以前の勤務先で知り合った正和がルームシェアで同居することに。
食の好みが合う2人は、知らず知らずのうちに距離を縮めていくのだが、正和には研究が第一優先の華という恋人がいて・・・
等身大の揺れ動く3人それぞれの想いが、繊細で丁寧に描かれていて、とても良かった。
千早茜さんは季節や風景の描写に、色彩や湿度を加えるのがとても長けていると思う。今回は、更に様々な食事のメニューが加わるので、どれもこれも美味しそうで堪らない。そして何度もお酒がのみたくなった。
毎回、章ごとに描き出される西淑さんの
やさしい温度を感じる装画も素敵だった。
ぶどうパンだけは、ちょっと愛嬌ありすぎたけど、
それも込みで好きだなぁ。
以下、目次のメニュー表 笑
塩むすび
人参
ミックスサンド
丸キャベツ
パクチーとひつじ
フライドチキン
鰯の梅煮
蒸しトウモロコシ
いちごパフェ
中華粥
三色弁当
ぶどうパン
鯖寿司
元旦モーニング
豚汁
天麩羅
手巻き
バインセオ
3人の選んだ道もさることながら、美味しいものを
同じ体温で共感できる大切さをひしひしと感じる。
作る側にとっては、食べてくれる人がいることの喜びを教えてくれる作品だった。
さ〜て、今夜は何作ろうかな♪