あらすじ
思春期の出来事を機に真以に心を寄せる葉だったが、真以は脱獄犯の男と共に逃亡、姿を消してしまう。20年後、ネット上で真以を見つけた葉はたまらず会いに行くが――。現代を生きるすべての女性に贈る物語
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Posted by ブクログ
閉鎖的な島へ転校した都会の女の子。
そこで孤高を貫く女の子と出会い、惹かれる。
あらすじを知らずに読みだしたので
このままよくある青春小説のように終わるのかと
思ったら、島へ逃げてきた脱獄犯によって
2人の運命が大きく変わる。
ここから面白くて、一気に読めた。
世間からの偏見、ハラスメント、いろんな要素があり
考えさせられることがあった。
最後、葉がハラスメントに立ち向かっていけそうな
終わり方で良かった。
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千早茜さん「ひきなみ」読んだ。女が女であることは変えられないしそれが理由で差別されてきた辛さ、苦しさが描かれていて切なかった。女っていう括りで見られて、島ならではの気持ち悪い一体感、古さが描くのが上手いなと思った…だからこそ逃げたかった真以、それでも、唯一真以の本質を見てくれてた葉は救いだったんだな思った。(お互いに)葉も、陸の章で真以とはまた別な女である苦しさをセクハラ、パワハラで感じ真以の過去を知るにつれ、真以の本当の気持ちを知ることが出来たんだなと思った。再会できてよかった。てかほんと梶原クソ!長野くん軽率に好きになっちゃう、私だったら「撮っててくれてありがとう!よし、ネットに流そう!」って言ってスカッとジャパンしちゃう。でもそうしなかったのは、そうした所で解決したことにならないっていう冷静さを葉が持ってたからなんだなと思った。最後ちゃんと言えてかっこよかった!
葉の近くには、しょーもない父にすがる母親と、過去の栄光に縋る父とか、ふるーいしょーもないしきたりのある島とか、パワハラ上司とかいたけど、でも長野くんとか、真以がいてくれて良かった。救われた。
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他の読者さんからのおすすめで、本のタイトルと表紙の写真が美しく手に取った本。
真以と葉、2人の小学生時代から話は始まる。
読み始めたら止まらなくなって一気に読んだ。
読み進めたいけど終わらないでほしいと思いながら読んでいたら、後半は2人が大人になってからの物語で更に止まらない。
葉と真以の関係性はどこか恋人同士のようで、頼れる両親のいない2人は絆を深める。真以の、どこか掴めなくて不器用ででも優しくて頼もしいところは女性の私でもかっこいいと思った。
2人の物語の中にフェミニズムの概念が散りばめられている。小さなコミュニティでのいじめや差別、上司からの女性に対する嫌がらせ、そんな中を必死にもがく葉と真以。
個人的には後半が特に好き、読み終わった後も少しぼーっと余韻に浸っていたくなるような本。
著者の他の作品もぜひ読んでみたい。
Posted by ブクログ
『透明な夜の香り』で千早茜さんを知って手に取った一冊。
自分自身も地方の出身なので、田舎特有のあの感じはとても身近に感じられた。
葉にとって真以は眩しく、また、真以にとって葉は眩しかったんだろうなと思う。葉が自身の心の内と向き合って、言語化していく様がとても美しかったし、芯のある強さを感じた。
全体を通して葉の心情はたくさんの言葉と情景でもって描かれているけれど、その他の部分として、真以視点や平蔵さん、葉の両親の感情を千早さんの紡ぐ言葉で感じたいなと思った。
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恥ずかしながら「ひきなみ」という言葉を知らずに読んだのですが、この言葉の綺麗なところは、「引いていった波」ではなくて「船/私が引いた波」だというところだと思った。
周りの流れに揉まれてもがく少女期は、船の下で唸る激しい波と光しか見えず、大人になるとその果てのまっすぐ現在地につながる軌跡が見える。その物語の構図と波の情景の重なりが見事だった。
葉と真以の物語は、いい意味でとてもシステマチックというか、千早茜さんの伝えたいこと=骨組みにあまりに綺麗に肉付けされていて、構成としても感嘆させられる。
千早茜さんの作品において、物語の核となるものを通して描かれていく人生の軌跡、そのさなかの揺らぎ、その行く末、その描写がほんとうに繊細で強くて好きだ。
『しろがねの葉』を拝読して以来、千早茜さんの作品を読むと、聞かれてもいない国語の試験の設問にたくさん記述したくなってしまう。それくらいいろんなものが詰まっていて素敵だ。また他の作品も読みたいなぁ… まずはこの本の再読からかな。
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あまりにもよかった。葉が真以に裏切られたと思う気持ちや会社の話が苦しくて苦しくて、体が痛くなった。そして、葉の優しさがあったかくて甘酸っぱくて心がきらめいてしまう。私も真以に助けてほしい、と思ってしまうほど猫のような真以に縋りたくなる気持ちになった。どんどん葉の気持ちにリンクしていく。
「女」というくくりでの嘲笑や理不尽は憎い。母の実家に行くと女の人たちだけが台所を出入りして料理を準備することはたしかにある。昔はそれでよかったのかもしれない。仕事は男、家事育児は女。そして女の人を支える家族も多かったのでは。核家族化したことで女の人が育児や家事に加えて社会に出ることも求められるようになって、色々おかしくなってる気がする。でも女の人の社会進出はいいことだと思うし、それも同時に男の人も家事育児に参加する必要が出てきたと思う。男社会でできてきた会社はそういう空気があるのも正直時代遅れと言いたいけど実際まだまだそういう風潮はある。女らしさがあるなら男らしさもあるし、男の人にしかわからない苦悩もあると思う。生理があるのは女の人だけだし、子どもを産めるのも女の人。男の人は筋肉量が多くて力が強い。なんか女男のくくりがあるのは当たり前だしそれでいいと思うけど、お互い人として思いやれたらいいのにね。生きづらいね。
部長に言い返した時みんなが初めて助けてくれて救われた。
Posted by ブクログ
その時の風景や登場人物の表情等
作者の表現力にとても惹き込まれる。
難しい年頃の主人公と
それを取り巻く
容易く想像してとれるその年代特有の葛藤と
非日常な事件との歪なコントラストが美しい
Posted by ブクログ
いつも、千早さんの描く繊細でたくさん傷をもち複雑だけれど懸命にいくている登場人物にいつも惹かれてしまいます。
今回は、一部が
小学六年生という多感でどんどん心も身体も変わっていく
葉と真以が狭くて古い慣習の島の中で、いろいろな偏見や差別に
もがきながらも、二人寄り添って過ごしていく姿をうつしています。
悲しみや怒り戸惑い不安が手に取るように書かれていて
あっという間に引き込まれてしまいました。
第二部は
事件に巻き込まれて別れ別れになった二人が、大人になって
また再会した時、またお互いを思う力に後押しされながら、子どもの頃の傷を少しずつ再生して
成長していく姿に
まだ彼女たちの姿を見ていたい気持ちで読み終えました。
素敵なお話で、大事な本となりそうです。
Posted by ブクログ
都会から島へ連れてこられ、田舎特有の閉鎖的な人間関係の洗礼を浴びる主人公の葉。「女らしさ」も「男らしさ」も「周りの目」も気にせず、孤高に生きる真衣は、葉にとって強過ぎるくらいの、鮮烈な光を与えてしまった。二人の少女は、自身が「女」であることによって、大人たちに振り回され続ける。そんな二人の少女が、もがきながらも自身の生き方を全うするその後ろ姿が、とても印象的な一冊だった。
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千早さんの作品デビューは「わるいたべもの」だったから、小説を読むのはある意味初めてだった。きれいな文で読みやすく、「中学生」というところからにている部分も多かった。大人の世界の闇と子供の心を繊細に描かれていて、きれいな作品。
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真以が私の身近にもいた。
疾風の如く、その時、助ける動きに全力をかける
あと先じゃないだ
作家さんや編集者が本のタイトルを決める時
どうしているだろう。
このタイトルと内容はとてもよかった。
Posted by ブクログ
狭い島で蔓延っている女性差別と、あと主人公が社会人になってから受けるパワハラの描写がややキツいので、苦手な方には注意が必要そうな作品ですが、でもそこを読み切れば、とても良いシスターフッド作品です。
出来ることならその後の彼女たちをもっと見ていたい……という気持ちにさせられました。
家族とも恋人ともちょっと違う、葉と真以の二人なりの関係性がとても好きです。
Posted by ブクログ
今はわからないけど、リアルな島のコミュニティの話なのかなと思った
人間の嫌なこと部分も細かく描写されてて、飲み込まれた
島にいってみたくなった
Posted by ブクログ
真衣も葉も別の意味合いで芯のある美しい女性だと思った。
千早茜さんの文章はきれいで優しく心が落ち着く。
けど部長のセリフは毎回生々しく、自分も会社勤めの女性なので読んでていらっとしてしまいました笑
Posted by ブクログ
なんだか広島旅行を思い出すなと思いながら第一部を読んでいたら、本当に広島が出てきてびっくり。なんとなく漂う気配でわかるものなんだな。
島という狭いコミュニティのなかで、お互いに"異質"だったからこそ引き合った少女2人。葉はこの頃の繊細な感性を内面に抱えたまま大人になり、職場でのハラスメントに苦しみながら、真衣と再会することに。
時を超えて静かな再会だったが、第二部では真衣とお兄さんとの間にあった出来事や、葉の職場でのその後が描かれていないのがよかった。
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文章から場面の絵を想像するのに
抵抗がぜんぜんなくスルスル読めた。
人の心の窮屈さを書くのが
とっても上手なんだろうなって思った。
女性とは、男性とは、そういうカテゴリーじゃなく。人として、自分らしくっていうのを大切にしようと思えた。
途中の長崎弁にびっくりした。
Posted by ブクログ
窮屈さ、大人や子供、時代、男や女、血筋
それぞれの思いが、自分に重なり感情が動かされた
自分と葉が似ていると思った。
だからこそただ真っ直ぐ生きる真以に私も憧れた
Posted by ブクログ
第一部、幼少期を過ごした田舎の島。第二部、大企業の販売促進部。
男尊女卑の社会の描写が息が詰まりそうなほど苦しくて、葉の胃痛がキリキリと伝わってくる。
”闘えなんて、誰かに言うのも暴力だよ。闘わなくていい。女性の代表になんてならなくていい。どうにかしようと思わなくていい。自分を変えようとしなくていいよ、間違っているのは相手なんだから。”p276
幼い頃友人だったふたりが、ちゃんと再会できて、ちゃんと手を取り合えてよかった。
ラストのパンを食べるシーンが雄々しくて素敵。
偏見とも悪意とも、闘わなくていい。ただ、生きる。
あと木村先生の言葉が沁みた。
聞きづらいと思うことは、相手が話してくれるまで聞かない方がいい。
その聞かれたくないことは、たまに聞いて欲しいことになるから、その時に聞いてあげればいい。
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女性ジェンダーの苦しみが、寄せ続ける波や潮のように、じっとり重くのしかかる話。この方の書くジェンダー問題は、本当に苦しい。主人公は、瀬戸内の小さな島の一つに住む祖父母のもとに引き取られた小学高高学年の女の子。そして唯一の友になるのが、橋がつなぐ隣の島に住む、やはり祖父に引き取られている同い年の女の子。
古い価値観のままの、狭い島。寄り合いでは男が上座に座り、女は下座で立ち働く。男は大声で威嚇し、女は男の世話をする。大人の振る舞いを鏡に映したような子供の世界と嫌がらせ。ああ苦しい。私だったら…きっと立ち向かいたくなる。いや、どうかな、いざとなったら立ち向かえないのかな。
第1部「海」は島で過ごす子供時代。最後にある大事件が起こり、主人公の友は島から逃げ出し、生き別れとなる。第2部「陸」は、大人になった主人公、大企業に勤めるも、そこには女性蔑視でハラスメント万歳の嫌な上司がいる。女が虐げられるのは、狭い島だけではなかった。場所も時代も飛び越えて、まとわりつくジェンダー問題。
男は女に心配されることにあまりにも慣れている、というような主人公の独白にはドキッとする。このアンバランスは、永遠に変わることはない気がする。主人公たちが小学校で、沖縄出身の同世代の4人組を真似して歌って踊るというシーンに、この子たち、私と同世代だなぁとなった。私の生きている時代と世界、なんだかんだ言っても、こんななんだなぁと思う。
希望のある終わり方にも関わらず、明日の仕事はじめを前に薄いモヤモヤが晴れない。
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五島への一人旅、道中のフェリーの上で読んだ。
ひきなみという現象を、フェリーの上から見ながら読んだ。
千早茜さんの作品は初めて。もっとたくさん読もうと思った。
五島市の本処てるてるさんにお渡しして、代わりに飛族をすすめてもらい購入した。
Posted by ブクログ
離島の閉鎖社会や、戦前から現代まで根強く残る性産業差別が物語の根底にある
なので、つい『女性であることとは…』とばかり考えながら読み進めがちだった
でもラスト付近の『理不尽な暴力や無理解には、人として生き続けることで対抗する』という、闘いとも逃亡とも違う選択には深く納得した
性別関係なく、あらゆる暴力と対峙するための、しなやかで誇り高い在り方だと感じた
その様を白い航行跡『ひきなみ』に見立てるセンス、さすが…!
Posted by ブクログ
女の子なのに。子供なのに。
あいつの子供だから。これだから女は。
勝手に偏見を持たれて、勝手にいなげな子(変な子)と噂され仲間外れにされる。
みんなとは違うから。みんなと違うってなんだろう。
違うってことが当たり前であるはずなのに、人は自分の常識とちょっとズレた人を見れば「変な人」と距離を置く。
他人は分かり合えるはずがないと子供ながらに理解し、
船が通った跡、「ひきなみ」のように自分たちで自分の生きる道を作って進んでいかなければならない境遇にある
真以と葉はとても強い子だし、私にはカッコよくさえ見えた
「なんで」という言葉についてすごい考えさせられた。
なんでって口にしてる時点でそれは自分の“理想”であって、
相手に言う時は、その理想を押し付けていて、
自分に言う時は、他人と比較していて
自分の当たり前が当たり前じゃない時に使ってしまう言葉だなぁと。
彼女たちは、なんで自分たちはこうなんだろうと考える描写がいくつかあったけど、
その境遇があったからこそ2人がお互いに理解し合えて助け合えたんだと思う。
Posted by ブクログ
こんなにも男尊女卑な世界がまだあるのだろうか。
男女平等を謳っていてもそもそも体の作りや体力も違ったり全く平等にはできないからいつまで経っても正解はない問題。
ずっと働きたいとは思うけど、結婚して子供が産まれてってなったら、きっと男性にフルタイムで働いてもらって、自分は出世は考えすぎずに時短で働く方が合理的だしうまく生きれるだろうなぁと感じてしまった。
Posted by ブクログ
女性だから、という理由で下座で、食べ物や飲み物を運んだりしなくちゃいけないような、そういう「島」的価値観、読んでてうんざりする。
そしてそれは島を出ても、現代にもあって絶望してしまう。
職場の飲み会なんかで女性陣が甲斐甲斐しく大皿からおかずを取り分けたり、総合職に女性が一人だったり、セクハラ・マタハラを逆手に取った女性へのハラスメントがあったり、、、と。
それが、本書には痛々しいほどに書いてあって辛い。
私は女で、女であることが理由で何かを脅かされたことは今のとこない。
あるいは、女だからやらないといけない、やるのが当たり前、とされてきたことであっても、それに自身が納得できないことはしなかったし、これからもするつもりもない。
そうしてると、性別で振られた役割の価値を重視する人達との社会的繋がりが、結果的にめちゃくちゃ希薄になってた。
さらには、自分の鈍感さもある。
幸福だと思う。
女性であること、で片付けられてきたことを受け取らざるを得なかった女性達を思うと辛いけど、それが実感を伴わなかったな。
それぞれの引き波があって、それはでも、いつか溶けて、海でひとつになる。
だから葉と真以の引き波も、時を経て混じり合うことができたのかな。
読後は少し未来を感じられるけど、重い話しだったな。
Posted by ブクログ
「透明な夜の香り」が好きだった千早茜さん。
文庫新刊が発売されたので手に取った。
親の都合で東京から瀬戸内の小島で暮らす祖父母の家に預けられた葉。閉鎖的で男尊女卑の考えが根強く残る島で出会ったのは祖父と暮らす真以。
2人の少女時代から大人になるまでの物語。
第一部「海」では2人の少女時代、第二部「陸」(おか)では2人の別れから20年後の話が書かれている。他作品でも書かれているが、島ってどうしてこんなに生きにくい場所なんだろうか。
自分のプライバシーまで島民全員に知られるなんて恐ろしすぎる。
自分ではどうしようもない家族のことまでネタにされ蔑まれるのは辛い。
血縁からは逃げたくても逃げられない。
社会人になってからは、葉が男性の上司から執拗に嫌がらせをされる描写も辛く、息苦しい。
でも真以の存在によって葉は自分がどのように生きたらいいのかを見出すことができた。
真以もありのままの自分を受け入れることができた。
この先もこの2人には手を取り合って生きていってほしいと願った。
✎︎____________
約束するのは信じていないみたいだから(p.35)
私はきっと、本当は、すごく諦めが悪い。諦めが悪いから、先まわりして期待を壊して、頭で整理しようとするのだ。仕方ないのだと、諦めるしかないのだと、言葉で自分に言い聞かさなくては、心を保っていられないから。(p.186)
「しんど」とか「つら」とか言える人はいい。それだけ尊重されているっていうことだ。余裕があるということだ。(p.221)
笑う奴は、笑えないことが起きているって認めたくないんですよ(p.222)
幸せのことを考えるのは不幸なとき。現状を変えたいけど、どうにもならないとき。(p.233)
人の目を変えるのは難しい。みんな、見たいように見る。(p.274)
逃げるってことは、自分じゃない人間の見方を拒絶しているようで、受け入れてしまっている。逃げて選んだものは選ばせられたものだから(p.274)
闘えなんて、誰かに言うのも暴力だよ。聞かなくていい。女性の代表になんてならなくていい。どうにかしようと思わなくていい。自分を変えようとしなくていいよ、間違っているのは相手なんだから(p.276)
海を駆けられるなら、通ったところすべてが道になる。島はどこへでも行ける場所だよ(p.291)