あらすじ
思春期の出来事を機に真以に心を寄せる葉だったが、真以は脱獄犯の男と共に逃亡、姿を消してしまう。20年後、ネット上で真以を見つけた葉はたまらず会いに行くが――。現代を生きるすべての女性に贈る物語
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Posted by ブクログ
またまたまたまた、千早茜さん。
父親が精神を病んでいるため、瀬戸内海の小さな島に住む祖父母に預けられることになった葉。古い慣習や厳しい祖父になじめなかった葉は、毅然として島の人たちになじもうとしない、真以に憧れ、仲良くなる。でも真以は自分に心を開いているように見えない。でもだんだんと距離が近づき、二人だけの秘密も共有するようになる。
せっかく近づけたと思ったのに、ある日、真以は何も言わずに島から逃げ出してしまう。真以を連れて行ったのは大人の男(逃亡犯)で、マスコミの格好の餌食となる。責任を感じ、葉は傷つく。
後半は大人になった葉の物語。大手企業で総合職として働く葉は、傷を抱えたまま一生懸命に生きてきたのだろうと想像できる。そして会社ではセクハラ上司に目の敵にされ、同僚には見て見ぬふりをされ、自分に自信を失っていく。そしていつも、心の隅に真以との記憶を抱えている。
千早茜さんは、女性の生きづらさを描いた作品が多いけど、この小説ではそもそもなぜ女性が生きづらい世の中なのか、その根底にあるものを描き出している。
昔、GHQの軍人を相手にする女性が住む島があった。女郎屋が並ぶ島があった。女を買う男たちは責められないのに、性を売る女性は忌み嫌われ、差別される。風俗に通う男性は何も言われないのに、風俗で働く女性は差別され、その子どもまでも後ろ指をさされる。
大手企業の総合職で働く女性は男性に敬遠され、扱いづらいと言われる。
みんな女から生まれてきたのに。
最後は少し、救いがあって、良かった。
Posted by ブクログ
千早茜さん「ひきなみ」読んだ。女が女であることは変えられないしそれが理由で差別されてきた辛さ、苦しさが描かれていて切なかった。女っていう括りで見られて、島ならではの気持ち悪い一体感、古さが描くのが上手いなと思った…だからこそ逃げたかった真以、それでも、唯一真以の本質を見てくれてた葉は救いだったんだな思った。(お互いに)葉も、陸の章で真以とはまた別な女である苦しさをセクハラ、パワハラで感じ真以の過去を知るにつれ、真以の本当の気持ちを知ることが出来たんだなと思った。再会できてよかった。てかほんと梶原クソ!長野くん軽率に好きになっちゃう、私だったら「撮っててくれてありがとう!よし、ネットに流そう!」って言ってスカッとジャパンしちゃう。でもそうしなかったのは、そうした所で解決したことにならないっていう冷静さを葉が持ってたからなんだなと思った。最後ちゃんと言えてかっこよかった!
葉の近くには、しょーもない父にすがる母親と、過去の栄光に縋る父とか、ふるーいしょーもないしきたりのある島とか、パワハラ上司とかいたけど、でも長野くんとか、真以がいてくれて良かった。救われた。
Posted by ブクログ
『透明な夜の香り』で千早茜さんを知って手に取った一冊。
自分自身も地方の出身なので、田舎特有のあの感じはとても身近に感じられた。
葉にとって真以は眩しく、また、真以にとって葉は眩しかったんだろうなと思う。葉が自身の心の内と向き合って、言語化していく様がとても美しかったし、芯のある強さを感じた。
全体を通して葉の心情はたくさんの言葉と情景でもって描かれているけれど、その他の部分として、真以視点や平蔵さん、葉の両親の感情を千早さんの紡ぐ言葉で感じたいなと思った。
Posted by ブクログ
都会から島へ連れてこられ、田舎特有の閉鎖的な人間関係の洗礼を浴びる主人公の葉。「女らしさ」も「男らしさ」も「周りの目」も気にせず、孤高に生きる真衣は、葉にとって強過ぎるくらいの、鮮烈な光を与えてしまった。二人の少女は、自身が「女」であることによって、大人たちに振り回され続ける。そんな二人の少女が、もがきながらも自身の生き方を全うするその後ろ姿が、とても印象的な一冊だった。
Posted by ブクログ
狭い島で蔓延っている女性差別と、あと主人公が社会人になってから受けるパワハラの描写がややキツいので、苦手な方には注意が必要そうな作品ですが、でもそこを読み切れば、とても良いシスターフッド作品です。
出来ることならその後の彼女たちをもっと見ていたい……という気持ちにさせられました。
家族とも恋人ともちょっと違う、葉と真以の二人なりの関係性がとても好きです。
Posted by ブクログ
女性だから、という理由で下座で、食べ物や飲み物を運んだりしなくちゃいけないような、そういう「島」的価値観、読んでてうんざりする。
そしてそれは島を出ても、現代にもあって絶望してしまう。
職場の飲み会なんかで女性陣が甲斐甲斐しく大皿からおかずを取り分けたり、総合職に女性が一人だったり、セクハラ・マタハラを逆手に取った女性へのハラスメントがあったり、、、と。
それが、本書には痛々しいほどに書いてあって辛い。
私は女で、女であることが理由で何かを脅かされたことは今のとこない。
あるいは、女だからやらないといけない、やるのが当たり前、とされてきたことであっても、それに自身が納得できないことはしなかったし、これからもするつもりもない。
そうしてると、性別で振られた役割の価値を重視する人達との社会的繋がりが、結果的にめちゃくちゃ希薄になってた。
さらには、自分の鈍感さもある。
幸福だと思う。
女性であること、で片付けられてきたことを受け取らざるを得なかった女性達を思うと辛いけど、それが実感を伴わなかったな。
それぞれの引き波があって、それはでも、いつか溶けて、海でひとつになる。
だから葉と真以の引き波も、時を経て混じり合うことができたのかな。
読後は少し未来を感じられるけど、重い話しだったな。