恩田陸のレビュー一覧
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6月初めに、夏流(かなし)という名前の土地に転校してきたミチルは、全身緑色の「みどりおとこ」に出会い、夏のお城夏流城(かなしろ)での林間学校に参加する。
主人公が中学生の、淋しくて悲しいひと夏の物語。
「七月に流れる花」は少女の視点で、「八月は冷たい城」は少年の視点で描かれていて、「七月」を読んでから「八月」を読むので、物語に入りやすく、より鮮やかなものに感じられる。
物事の裏と表が透けて見えるような感じがして、面白かった。
彼らが夏の城に呼ばれた理由が謎に満ちていて、真実がわかるとほっとする反面、近い将来起こってもおかしくないような出来事だと思うと怖くなってくる。
悲しいおとぎ話のようだ -
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2023.1.28-2.9
久しぶりに恩田陸を読んで、久しぶりに恩田陸を満喫したー!と感じました。道中のワクワクと終いにかけての転がり方、なつかしいこの恩田陸感。
今回のラストは肩透かしではなかったけど、若干複雑になりすぎたかな、というのが初見の感想。ちょっと理解が及んでいない所がある気がするので、ラストだけ読み返す予定。
少しだけあったエピローグはきちんと不気味で良かった。
現実と非現実の融合。この世の中のどこかにあるかもしれない、陸続きの世界。そういうものに対する畏れと憧憬。
目に見えるもの、自分が見たものしか信じない人は多い。この世に氾濫する情報の波に飲み込まれないためにもそれはある -
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登場人物である毬子、芳野、真魚子、そして物語の核となる香澄の4人の視点から物語は展開して行く。
恩田女史が描く女高生達は、常に可愛い少女ではなく、大人びた美しさを擁した女性たちだ。
今回の4人の女高生たちもこの例に洩れず、女高生とは言い難いほどの神秘性を与えられている。
物語の前半は、同級生や下級生たちから憧憬ともいえる視線を集める美しい少女4人の関係が綴られる。
その彼女たちの舞台となっている背景が美しく、緑豊かな欧風の牧歌的な川べりの風景が思い浮かんだ。
そんな環境の中で、女高生らしい4人の交友関係に、徐々にではあるが違和感が生まれてくる。
少女たちが抱く違和感は、香澄の母親の死が殺人なの -
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同じ高校から同じ大学に進んだ3人の男女それぞれの学生生活。
高校時代は仲良しトリオだったのに、いつの間にか疎遠になっている。決定的な何かが起きたわけでもなく、ただ何となく。というのが、いかにもありそうな話。
彼らの間に何かがあったという話ではなく、何もなかった。という物語でもある。
もう少し何とか出来たのではないか?こんな事もしたかったのに出来なかった。
振り返ってみると、学生時代というものは漫然と過ごしてしまいがちで、今思えば後悔ばかり。
「大学生というのはあまり停車駅のない長距離列車に乗っているようなもの」という例えが、じわじわと読み手の胸を抉る。
恩田作品にしては珍しく、自伝 -
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ネタバレ「光の帝国」の続編。常野物語。
ストーリーとしての話の続きではなく、「光の帝国」の「大きな引き出し」の春田家の先祖?の話。
ファンタジー的な要素は少なですが、常野一族(というか春田家の「しまう」能力)の事がよく分かった。
で、ストーリーは身体が弱い聡子様と話し相手にそして友だちになった峰子の交流を中心になんとなく心が温まる話だったんですが。この聡子様は、たぶん遠目の能力があったような感じ。常野の能力が隔世遺伝したのかな?それで先のことを見通せるが故に・・・。
天聴会、書見台などでなるほど、と思いました。
最初は明るくてまぶしい感じで始まったストーリーだったんですが、悲しく切ないエンデ -
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夢札という未知のテクノロジーによって、変容していく世界と人類を描く、一種のとかのエクスキューズが要らない、ストレートなSF。惹句の類いにはどこにもSFと謳われていないが、これはおそらく作者さんじゃなくて、出版社サイドの意向だろうなあ。売れ行きに悪影響が出るってね。そんなわけで、案外と道標的な機能があるジャンルがあいまいなこともあるのだろう、どこへ向かうのかさっぱり解らない五里霧中な感じでお話は進む。その霧が結末に至って晴れるかと言えばそうでもなく、謎の多くは放り出されたままで終る。にもかかわらず、奇妙にすっきり感があるのが不思議。テクノロジーと人との関係を表す、カメラが進歩するまで、昔の人はも