恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
始まりは、とある三面記事。
一緒に暮らしていた女性2人が飛び降り自殺を図ったという内容。
作家である著者は数十年も前に目にしたその記事がずっと心に引っかかっていた。
著者(ノンフィクション)と記事の女性たち(フィクション)を交差させる物語の運び方に夢と現が混じり合うような不思議な気持ちで読み進めた。
"結局自分の理解する範囲でしか物事を見られない。ましてや人間には感情があって、必ずしも合理的な行動を取らないことは証明されているし、他人の考えていることも決して理解できない。記録があっても、それを残したのは勝者と決まっているから、何か事件があっても「どうしてなのか」を知ることは無理だろう。数行の記述にまとめられた事典の内容だけでは、歴史の輪郭にすら触れられない。"
著者の想像で作られた彼女たちの日常、人生…
第三者がいくら頭を捻ろうと真実は分かるはずがない。
そんな虚構の世界。
しかし、どこか他人事とは思えない世界。
限られた情報であらゆる推測を立てて結末へ繋げようとする作家の思考が垣間見えた気がした。
余談だが、著者の書くエッセイが読みたいと思った。 -
Posted by ブクログ
これは少女の持つ、一瞬のはかない繊細さ、その雰囲気を味わう作品なのだ。
だからリアリティを申し立てるのは野暮だということはわかっている。
しかし、舞台の上で明かされた真実はあまりにも机上の空論で、物理的に無理だろう、と何度も突っ込んでしまった。
そうしたら、最後の最後に…。
3章それぞれに違う少女の一人称で語られるのには意味がある。
一人称になると、ほかの人物の心情を書かなくてすむのだから。
最初から不穏な空気があふれていた。
おどろおどろしいとは違う、とらえどころのない違和感。
登場人物の誰もが何かを心に秘めていて、せっかくの高校生の夏休みが、全然きらめいていない。
そもそも両親が不在の先輩の家で合宿って、ありなのでしょうか?
私は部活動をしたことがないからよくわかりませんが、大人の監督のない一週間の合宿って、私が高校生の娘に言われたら、参加を認めません。
いやだから、リアリティはさておいて。
登場人物みんなが少年少女を逸脱した、大人の苦さを持ち合わせているのに、みんなが頼りないくらいにはかなげ。
不穏の正体がわからないから、余計に不安。
作中でダフネ・デュ・モーリアの『レベッカ』について書かれているので、多分にそれをイメージしていると思われる。
っていうことは、これはホラーなのか?
ホラーでもありミステリでもあるかもしれないけれど、これは少年少女が大人になっていく過程をこそ書きたかった作品なんだと私は思う。 -
Posted by ブクログ
古本屋で購入⑹
理瀬シリーズ3作目、スピンオフ。
1作目の、空想上の本『三月は深き紅の淵に』の第一章として語られていた『黒と茶の幻想』が本作に繋がる。この仕掛けが既にロマンチックに感じる。
「美しい謎」をテーマにかつての友人たちとY島を旅するあらすじ。
登場人物それぞれの推理に、各々の個性が感じられて面白かった。
会話を中心に物語が進んでいくので、4人の関係性や性格を把握するのに少々時間がかかったけれど、読むにつれて理解が深まってくる。
上巻は利枝子と彰彦の2人のみの視点だったので、下巻のほうが「謎」に対する展開に大きな動きがありそう。読むのが楽しみです。
印象に残ったフレーズ
・「彼は私にそのことを告げるその日までの間、どんな風に私を見ていたのだろう?嫌悪感か、哀れみか、無関心か。それはどんなスピードで彼の心を塗り替えていったのだろう?私の彼を信じきった笑顔を見ながら、私の笑顔の向こうに彼女の横顔を思い浮かべていたのだろうか。」
・「最初に伴侶に出会ってしまった者は不幸だと思う。それは回数を経たからといって、もっとよいものに出会うわけではないからだ。最初にほんとうの恋に出会ってしまえば、それ以上のものに出会えない限り、いつも物足りなさを感じてしまう。ほんとうの恋の巡ってくる順番はあとの方がいい。」