とても不思議な小説だった。文章は平易でわかりやすいのに、展開や描写が突然切り替わるので混乱する。が、得てして夢ってそういうものなのでわざとそうなっているのかもしれない。
夢は外からやってくる…とても面白い考え方だと思う。大学の哲学の授業で、集合的無意識について何となく聞いたことがあったが、人々の深層意識下で共有されるイメージのようなものらしい。大洪水の伝説や、巨大樹や、巨人伝説、そういったモチーフは遠く離れた世界中の国々になぜか共通した伝承として残っている。国同士が繋がる手段のない時代に共通した話が生まれるのは、記録に残ってないだけで本当に実在していたからだと唱える人もいるが、私は人種問わない人類の無意識下に共通したイメージがあるというほうが納得できる。
作中で、夢札を引くようになった世代とそれ以前の世代感の【無意識】に差異が発生するという描写があるが、これまさに昨今のデジタルネイティブ世代とそれ以前の世代との間の意識のギャップと同様なもののように感じる。SNSが発達し、物理的に一人でもいても常に他人と繋がっていられるようになったことで、孤独の時間は大きく失われたように思う。言葉に言い表すことは非常に難しいが、明らかに感覚の差が世代間に存在している。
もし、作中のように自分だけが見る【夢】が可視化され他人に共有されるようになったら、本当に一人になれる時間が大きく減ることになる。それはかなり人をおかしくさせるだろうなと感じた。
また、夢札酔いの描写も非常に恐ろしい。夢日記をつけると現実と夢の区別ができなくなる、という怪談があるが、脳を通して感じ取っているという意味では現実も夢も同じ。自分にしか見えていない景色に従って行動すると、他人とのズレが発生し、行き過ぎると統合失調症のようになってしまう。自分も深く考え事をするタイプなので、読書後や長い夢を見た後などは軽い夢札酔いみたいな状態になる。
終わり方も、スッキリしない。夢の途中で突然目が覚めたみたいな、中途半端な感じのする終わり方だった。でも、この作品に関してはこの終わり方で正解な気がする。