恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
恩田陸がこのような作品を書くのかと感心した。全く、違ったテイストだ。
主人公の神原恵弥のキャラクターがユニークだ。医学部を卒業し、外資系製薬会社に勤め、事業のシーズハンターである。精悍でタフだが、姉三人と双子の一人で、もう一人は女。都合四人に囲まれて育ったので、お姉言葉を話す。記憶力抜群で、一度見たら覚えてしまい忘れない。映像記憶能力が高い。
双子の一人、菅原和見は、東京の大手弁護士事務所の弁護士であるが、医学研究者の若槻慧と不倫をしていた。若槻が、北海道に移転することで、追いかけてH市に移転した。そんな和見を連れ戻すために、神原恵弥はH市にやってくる。
恵弥がH市で、和見に会った時には、若槻は死んで葬式だった。そこから、和見、そして、若槻の妻、慶子、さらに国立感染症研究所の多田直樹と繋がりができていく。
若槻慧の手帳には、クレオパトラという文字が書かれていた。そして、神原恵弥と会う約束もあった。そのクレオパトラとは、一体何なのか?が、この物語では追いかけられていく。
和見は、医者に対して、惜しみない慈愛を持って接しているのはわかるが、どこか偽物くさい違和感がある。患者にこんなに慈愛を持っている私を愛してる医者がいる。エセ医者らしい雰囲気を若槻にも感じていた。
天然痘は、1980年世界保健機関(WHO)によって、根絶が宣言されている。感染症で根絶が成功した唯一の例である。牛痘は、牛にかかるウイルスだが、人間にも感染する。しかし、牛痘は人間に感染しても、軽い発熱や水疱が出るだけで、軽い症状であり、天然痘に免疫もできる。そのため、牛痘を使って、天然痘の免疫を作ることができる。
天然痘の歴史は古く、紀元前1100年代のエジプト王朝のラムセス五世が天然痘で亡くなった。ローマ帝国のアントニヌスの疫病も天然痘とされ、350万人が死んだ。アメリカインディアンの絶滅に天然痘が大きな役割を果たした。アステカとインカ帝国の滅亡の要因に天然痘が関与したという説もある。
日本には、佐賀藩の藩主、鍋島直正が、最初に種痘を実施した。1849年だった。
本書では、択捉島でロシア人に捕まって、シベリアに抑留され、その後種痘療法技術書を北海道に持ち帰り、翻訳されたのが1820年。幅広く種痘がなされた。北海道には種痘技術が受け継がれていた。
その若槻慧の書いた「クレオパトラ」は、牛痘なのか?天然痘なのか?を神原恵弥は追いかけていく。制約会社にとっても、大きなビジネスチャンスでもある。
H市には、小高い丘があり街が眺望でき、近くには五稜郭もある。ただし、H市は海岸に面して、山に囲まれていて、火事が起きやすい。海上からの風で火災が起こりやすい。そのことも、一つのミステリーともなる。気楽に読めて、神原恵弥の場面の切り替え方のうまさを堪能できる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレトータル3.5くらい。
書き下ろしなので全部新作だったのが良かった。
この中で好きなのは貴志祐介の『猫のいる風景』かな。曖昧オチではなく、きっちりミステリーもしてホラーもやってる。お化け無しで楽しませてくれた。
有栖川有栖『アイソレーテッド・サークル』
クローズドサークルの定義について話をしていて、どこかミステリーな雰囲気はあるものの、結局何かは不明で、結局どこかの異界らしいということで終わる。でも面白かった。
ミステリー小説だったら犯人がいるのに、この話では何かを見つけてはいけない、見てはいけない。犯人を見つけることが禁じられる恐怖。
北沢陶『お家さん』
丁稚奉公目線なので時代がわかりにくかったけど、尋常小学校や電話などで結構最近なんだなと感じるが、最後にスペイン風邪でした、と知らせるのは面白かった。本当に怖いのは怨み節をぶつけてくる幽霊か、それを素通りして恨みを果たそうとする人間か。というか一家全滅して良いのか。
背筋『窓から出すヮ』
恐怖って理不尽で理由なんて無いんですよ、という話だが、まあまあ一貫してて、ちょっと中途半端な印象。
作中の一つ目小僧の一応のオチも怖かったけど、怪奇現象が起きてくれないと困ると切に願う主人公作家もまた恐怖というか。笑い話にもなりそうなあんばいだなあと思った。
櫛木理宇『追われる男』
人間怖いの話の類いだけど、現代においていつとばっちりを食らうかわからないという恐怖を味わえて面白かった。でも最後のサユミは誰に殺されたのか曖昧にしたのはちょっとつまんない。状況的に主人公が殺したというオチにもっていけそうなところもあるが、結局主人公目線でしか読めないので、そこら辺が不明瞭。
貴志祐介『猫のいる風景』
姪がめちゃ頭良い。理詰めで主人公を追い込んでいくところがホラーというよりミステリー。でも最後は猫に舐められ食われるホラーで終わって面白かった。この作品のみお化け要素無しでガチのミステリーと恐怖を味わえて面白かった。
言葉遊びの類いは貴志祐介の好きなやりとりすぎてもはやほほえましい。
恩田陸『車窓』
富士山を見ようとする最初の下りのゾッとした感じは良かったな。幽霊みたいだなと思わせる前フリでめちゃ良い。
でも結局見えたのは隣の男、Nなのか?満面の笑みなのは、ようこそこちら側へ、という意味なのか?
現代に寄せていろいろ見せてくれたが、結局は曖昧オチでそこは残念。
数字もきっと大地震とか、テロとかそういう戦争や災害の日にちなんだろうなと思わせるものだが、最近は陰謀論とかそういうのでよく目にするので、この作品自体ちょっとなあ、という感想持っちゃう。何かを見た気がして、勝手にあれはこのことだったんだという改竄の話にしてしまうのはなんかやだ。