恩田陸のレビュー一覧
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廃墟の島で発見された餓死、墜落死、感電死した3人の死体。無人の島で死亡時刻も限りなく近い奇妙な遺体たち。偶然による事故か殺人か…
冒頭で提示される一見無関係の様に見える謎の記事。一体何を意味しているのか、導入から引き込まれてしまう。
そして、まさにパズルのピースが嵌っていくかの様な中盤の展開。
こんな面白い話をさらっと中編で書いてしまうなんて!もっと読みたかった!と少し物足りなく感じてしまった。
主人公は恩田作品に度々登場する関根家の長男の春。検事である彼の活躍をもっと見たかったと思ってしまう。
しかし、この少し物足りない様な余韻も恩田作品らしくて好み。 -
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5人の小説家の短編と、2人のクリエイティブディレクターのアンソロジー
テーマは九州の特別列車「ななつ星」に乗り込む乗客の物語だ
列車はたくさんの人を一度に運ぶけど、乗客の一人一人はそれぞれ特別な想いを持って列車に乗り込む
5人の作家さんが寄せたとても短い物語には人生という長い長い想いが乗っていることに気が付く
恩田陸さんの「お姉さん」が仕組んだ、複雑で切ない物語も時間の長さと、生きようとする想いの深さが音楽に乗ってやってくる
個人的には小山薫堂氏の言葉が圧巻だった
人から人へ繋ぐ想いが言葉となって、香り高く温かみを持って伝わってくる
「共感」という到達点はその気持ちを理解しようとする意識の量が必要だと思う
秋のコーヒータイムに金木犀の香りを感じながら読みたい一冊 -
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再読完了。
このお話好きなんですよね。
苦手なロマンスなのに、なぜか好きなんですよ。
刹那の出会いと別れを繰り返す男女のお話ですが、これが、時空を超えて結びつく何やら広がりを感じるもので、一つ一つはほんとに切ないながらもポジティブな雰囲気があります。
んで、そのつながりが小気味良いんです。
あれ?さっきこの人出てこなかったっけ?と何度も戻りながら(すぐ忘れる)、ああこの人はこうなるんだあ、と答え合わせをしながら進むのも分かりやすく、ショートや短編も好きな自分に合ってるんだと思います。
また、美術作品や歴史も絡めて物語が紡がれるので、変なリアリティを感じるのです。まさかあの人物が発端だったとは!
そしてそして、見事なハッピーエンド。
この人がそうかなと思ってた人じゃなくて、途中でチョイ役かと思った人がまさかの(自分にとっては)。
気持ちいいです。
私のライオンハート。
言いたくなりました。 -
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人気作家の子ども向け怖い本ということで、期待して手に取る。うーん、表紙含めちょっと微妙かなぁ。文学的な力あるけど、子どもの中で評判になるような面白さではないような気がする…。むしろ、すきな作家いる大人の方にオススメかも。あと、怖い本が好きというより本格的な話の入口にたってる小学生向け。ルビは中学年以上レベル。
「象の眠る山」田中啓文
個人的にこれは好きかも。現代っ子で賢い横道も好きかも。怖いものの正体が本気で気持ち悪い。象っていう伝承ができるなにか。
「とりかえっこ」木犀あこ
60.65cmのすきまにひそむ怪異っていう設定自体なんか、嫌。こどもだと入れ替わり後を具体的に表現してくれた方が怖がりそう。
「誕生日のお祝い」田中哲弥
生きている物を持ってヒメカちゃんのお誕生日に行くショウタ。両親が止めない理由とか、ちょっと入り込みづらかった。雰囲気はかなり怖い。
「おぼえているかい?」黒木あるじ
絵本風になっていたら、低学年に読み聞かせしたい内容。誰が「おぼえているかい?」と問うのかがミソ。
「能面男」恒川光太郎
お面とか、人形とか、もう、出てくるだけで怖い一品。何で繰り返しこの地域に能面男出るのかわかりにくいけど、これは挿し絵が子どもにうけそう。
「爪に関するいやな話」牧野修
おばけより、ビンの爪怖い、てか、気持ち悪い。
「骨もよう」篠たまき
慰霊碑が建つような何かが起こった土地で、転校してきた子に起こったことは…。
「猫屋敷に気をつけて」我孫子武丸
飼っているネコのわらびがいなくなり、それを探していた妹が怪しいネコ屋敷に入って行って…。
このお話も、ネコがうまく活躍するところとか何が起こっているのかちゃんと想像できる内容が好きでした。
「六年一組の学級日誌」
幽霊ではなく。近未来に起こり得るかもしれないお話でした。 -
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「月の裏側」の続きではなく、時間が巻き戻って、多聞が変な出来事を引き寄せるような短編集。時間も巻き戻り色々で、「木守り男」「悪魔を憐れむ歌」の頃はまだ二十代後半過ぎくらいで、ジャンヌとも結婚していない。しかし、「幻影キネマ」ではもう、40代半ばになる。その辺のポーンと世界観が飛ぶところとか、内容的にも幻想と現実の境目軸の置き方をどうしたらいいか分かりにくいところとか、入り込みづらい人は多いかも、と思いました。
「木守り男」
国に災いの起こる時に出てくる、木上にいる亡霊のような木守り男。多聞と友人のロバートはそれを見る。
「悪魔を憐れむ歌」
死にたくなる歌というものがあるが、それについての一般的な考察から、多聞が調べたラジオで流れた死人のでた歌の正体は。
「幻影キネマ」
広島のO市は映画のロケ地に良くなる。そこ出身のアーティストをプロデュースすることになった多聞は、ミュージッククリップの撮影場所となったそこにアーティストとともにいたのだが、アーティストの1人、保は嬉しくなさそうなのだ。
「砂丘ピクニック」
技術翻訳を得意とする巴とともにT市の砂丘を訪れた多聞は、なぜ巴が砂丘に行ってみたかったのか、という話を聞く。訳している文章に砂丘が消えたような記述があるのだという。
「夜明けのガスパール」
多聞は細身で下手の良い服を着る黒田(東京地方検察庁検事)、でっぷりして、ボウズ頭に丸眼鏡の尾上(芸大作曲科卒のミュージシャン)、色付き眼鏡、黒Tシャツに白パンツ、赤くてライオンの鬣のような髪という夜世界ぽい出立ちの水島(外科医)とともに、夜行列車で讃岐うどん目指していた。道中は怪談話をして、帰りは飛行機で戻る酔狂な旅行。しかしこの旅行には多聞だけが知らない目的があった。 -
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作者の恩田陸曰く、
始めは地獄の黙示録をやろうというとこから始まった小説らしい。
そんなダークファンタジー・サイキック大長編の下巻。
下巻は闇月を迎えた山へ、キーマン達が続々と入山していくとこから始まる。
復讐を胸に忌まわしき途鎖国に戻って来た実邦。
実邦に異常なまでに執着し、その後を追う隻眼の入国管理官・葛城。
その葛城の旧友で快楽殺人者の青柳。
屋島風塵を裁判の証言台に立たせる為に日本へやって来た黒塚などなど。
山に君臨する『ソク』と呼ばれる存在。
その現ソクである神山倖秀と山奥に隠された宝を巡って
物語は血なまぐさく一気に加速していく。
サイキック対決、頂上決戦といった感じで
もうどこもかしこも能力者達がすさまじい力を見せていく。
作者は違うが『新世界より』に似た雰囲気はある。
恩田陸作品によくある、結末含め収束地点の曖昧さ。
それがこの作品でも勿論垣間見える。
余白ではない、モヤモヤした終わり方。
中盤までは圧倒的な構成力と面白さに唸らされるんだが、
終盤に入ってきて、いつもこの展開にドキドキさせられる。
また、何もわからせずに終わってしまうのか、と。
今回の作品は難解な専門用語と設定が、最後まで尾を引いている様な気がした。
多分、少し気を緩めればすぐに離脱してしまう内容。
個人的にこういったサイキック路線が好みではあるので
けっこうラストまで楽しめたは楽しめたが、
読む人を選ぶ作品であることは間違いないだろう。 -
恩田陸さんの「象と耳鳴り」は、裁判官を退官し、悠々自適の生活を送る関根多佳雄が主人公。
散歩とミステリが好きな彼が、身の回りに起こった、ちょっとした出来事を推理する連作短編集ですね。
はっきりとした白黒をつけずに、曖昧なグレーゾーンで終わる話もあれば、「待合室の冒険」のように、その場ですっきりと気持ちよく決着がつく話が混ざっており、なかなかバリエーションに富んでいますね。
そして、どの話も、ミステリとしてだけでなく、恩田陸さんらしいファンタジー的な雰囲気や映像的な美しさも楽しめますね。
例えば、「曜変天目の夜」に出てくる茶碗。
実際には見ることも触ることもできなくても、情景はありありと思い浮かびますし、茶碗の中の密度までしっかりと感じることができるような気がします。
「ニューメキシコの月」の絵葉書の写真やそこに書かれた宛名、「廃園」の色とりどりの薔薇とその香りなども、まるで実物が目の前にあるようです。
論理的なパズルを楽しめる「机上の論理」ですら、4枚の写真が目の前に浮かんできます。
このような描写は、恩田陸さんならではですね。
その情景故に、どの話も謎が解かれても余韻が残ります。
それが物悲しい余韻のことも多いのですが---------。
多佳雄と妻の桃代、彼らの息子の春と娘の夏の関係もとても素敵ですね。
「六番目の小夜子」に出てきた関根秋は、この家の末っ子なんですね。
多佳雄と桃代の会話はのんびりとして微笑ましく、ミステリ抜きでも十分楽しめますし、一見のんびり者に見える春が出てくる話は、意外なことに論理的なパズル系の推理が楽しめますね。
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恩田陸によるダークファンタジー。
日本ではあるが、分断され国家権力の及ばぬ隔絶された地『途鎖国』を舞台に
『在色者』と呼ばれる特殊能力を持った者たちが暗躍するという
どちらかと言えばAKIRAの様なサイキック路線のような物語。
在色者である実邦は身分を隠して途鎖国に入国。
闇月といわれる時期、途鎖では多くの者がある目的をもって山深くを目指す。
実邦も山を目指すが、実邦を追う入国管理局の葛城、
謎の男・黒塚の登場など、周囲に不穏な空気が満ちる。
更に謎の殺人者、恩師が残したメッセージ、隠された過去の悲劇など
何重にも要素が重なり始めてきたとこで上巻が終わる。
息を呑む展開の連続で非常に楽しめる内容なのだが、
兎にも角にも専門用語が多い。
在色者、イロ、ヌキ、ソク、タマゲ、闇月などなど。
この辺の専門用語と設定を理解できないと挫折しそうな内容。
さて、これが下巻でどう収束するのか。
まさに作者の腕の見せ所と言ったところであろう。