恩田陸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ密度の濃い小説だなぁ。でも恩田陸の文章ってこう、しっとりして密度がある、一定のイメージを想起させるよね。本作もテーマからもうかなり恩田陸っぽいなと思った。
学生時代からの友人である4人の男女がひょんなことからY島にJ杉を見に旅行に行くことになる。気の置けない友人同士だが4人の間には過去に消えた一人の女の影がちらついた。彼らの間に横たわる美しい謎を紐解き、過去を見つける4日間の旅についての物語。
本当に個人的な感想ではあるけれど最初の利枝子の章がとにかくきつくて時間がかかった。恋愛というものが人生の基本構造として語られるのって違和感があるので、全然理解できない人間のみっちりした内面に触れるのって嫌なもんなんだなぁと思った。人間適度な距離が大事なんだね。でもそういう感想を抱かせる恩田陸の手腕には本当に舌を巻く。彰彦以降は恋愛感も薄れるので(完全には消えないけど)、だいぶ読みやすくなる。利枝子以外は全員それなりに共感できるものがあった。
憂理と蒔生と利枝子の三角関係、彰彦と姉の確執、その姉と蒔生の暗い繋がり、彰彦と節子のさっぱりした関係、節子の事情……等々。人間って色々な場所で色々繋がっているし、人には思わぬ事情や深みがある。誰もが森を持っていて、本作ではそれを丁寧に拾い上げて描いている。物語の構造上、場面とともに、過去の振り返りと内省がえんえんと続く。内省って面白く読ませるの難しいと思うんだけど、割とずっと面白かったなぁ。
●あらすじ
華麗にして「美しい謎」
恩田陸の全てがつまった最高長編
――目の前に、こんなにも雄大な森がひろがっているというのに、あたしは見えない森のことを考えていたのだ。どこか狭い場所で眠っている巨大な森のことを。
学生時代の同級生だった利枝子、彰彦、蒔生、節子。卒業から十数年を経て、4人はY島へ旅をする。太古の森林の中で、心中に去来するのは閉ざされた「過去」の闇。旅の終わりまでに謎の織りなす綾は解けるのか……?
(講談社HPより引用) -
Posted by ブクログ
先日出雲・松江を旅行し出雲大社や小泉八雲記念館などを周った。そういえばこのあたりが出てくる好きな作品があったなと、ふと思い出したのが本書。
前回読んでから10年以上、初めて読んでからも25年以上たっているが、私の読書人生と読書趣味のなかに色濃く影響を残し続けてる作品だ。4話の中編からなる本書は、「三月は深き紅の淵を」というタイトルの謎の小説を巡る話。
その本は、著者も内容も謎で、自費出版で僅かな冊数が出版され配布されたがのちに謎の男に回収されてしまい、いまは世の中に流通していない。なんともそそられるこの設定と、入れ子式の物語構成と、登場人物たちのおしゃべりや食事がとても魅力的なのだ。
1話目では、若い男が金持ちの老人の館に招かれ2泊3日の休暇を過ごす間に、館の何処かに埋もれているというその本を探す。合間合間に出てくる老人たちの談義と食事が何とも楽しそう。
2話目は、女性編集者2名が寝台列車に乗って出雲を目指し、その本の著者であろう人を尋ねようという話。寝台列車でワクワク遠足気分からの、地方×真夏×じわりと忍び寄る謎の真相、の不穏さがいい。
3話目は、女子高生の家庭教師をしていた女性が、その女子高生が亡くなった事故もしくは事件の真相を明らかにし、いつか三月は紅の淵をという小説を書こうとする話。一番まとまりがよく別の作品のようなテイストでもある。
4話目は、ある小説家がまさにその本を書こうと執筆に試行錯誤する話。執筆中の作家の頭の中をのぞいているようなカオスで断片的な文章のまにまに覗く、物語の生まれる瞬間たち。
そして全ての作品のなかに、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が、謎めいた空気を醸し出すモチーフとして登場する。小泉八雲にこのような役割を負わせるセンス、好きだ。
どの話もおもしろいのだが、恩田陸ファンは別の楽しみ方もできる仕掛けになっている。物語のなかの人物たちが語る様々な小説作品、架空かと思いきや、その後恩田陸が発表する作品たちなのだ。黒と茶の幻想や、麦の海に沈む果実や、ロミオとロミオは永遠にや、おそらく、夜の底の柔らかな幻など…。
それらの作品が生まれる前に、本書のなかで未来の作品たちの断片が語られているのだ。恩田陸をほぼ出版順に追いかけてきた自分としては、作品を超え時空を超えワクワクを何度も本書で味あわせてもらった。数年に一度読み返すと、当時読んでいたときは気づかなかったあの作品の兆しがすでにここにあったのか…!なんて楽しみ方もできる。何重にもおいしい、いぶし銀な作品である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ酒亭DARKNESS
基本的に全国各地の飲み屋を題材とした短編集。
ラインナップは以下の通り。
○跡継ぎの条件〜東京・大森の空席
○夜のお告げ〜神奈川・野毛の都橋商店街
○昭和94年の横丁〜愛知・名古屋の日めくり
○風を除ける〜東京・代田橋の沖縄タウンのマブイ
○黒の欠片〜長野・松本の天守閣
○曇天の店〜富山・高岡のフェーン現象
○三味線の音〜新潟・古町の二口女
○笑うカピタン〜長崎・浜町の絵とナイフレスト
○歌うカステラ〜長崎・ある住宅街のあんと
○祖父の墓〜栃木・日光東照宮
○白の迷路〜兵庫・姫路城の白のマダム
○アトランダムな神々〜大阪・新世界/曾根崎
○空飛ぶ梅〜東京・湯島、稲妻と梅の木
*ムーン・リヴァー〜ななつ星の暗号を解く
ホラーとありますが、ちょっと不思議な話などもあり、趣があって好きです。
恩田さんが飲みたい一心で立てた企画だということが良く伝わってきます。
竹蔵は、昭和94年の横丁とかアトランダムな神々が好きでした。
竹蔵 -
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常野シリーズ第2弾。
前回は短編でしたが今回は長編で個人的には今回の方が良かったです。
不思議な力を持つ常野から来た人々。
主人公は東北の村に住む峰子。
峰子は旧家槇村家の末娘聡子のお話し相手となる。
峰子は生まれつき病弱で学校にも行けず、ずーっとお屋敷での生活を強いられている。
槇村家のお屋敷には色々な人たちが出入りする。
そんなある日、常野から来た家族がやってくる。
前半は峰子と槇村家の家族、そしてそこに出入りする人々とを穏やかに進んでいくが、台風襲来から話は一気に緊迫感が増して聡子が大胆な行動に踏みきる。
物語は二十世紀が始まったばかりの明治時代。
この後、日本はどんどん暗い時代に突入していく。
だから尚更、前半のお話が良き日本の時代という印象が強く感じられた。