あらすじ
鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に2泊3日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、10年以上探しても見つからない稀覯本(きこうぼん)「三月は深き紅の淵を」の話。たった1人にたった1晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー。
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Posted by ブクログ
後世に語り継がれる、本当に面白い至高の一冊と言われて、どんな本が思い浮かぶでしょうか。
まだこの本を読んでいないあなた。幸運です。もしかしたらそんな本が見つかるかもしれません。見つからないかもしれませんが。
人に紹介するならきっとこんな言葉になるのだろうか。読んだ後でないと味わえない不思議な感覚に陥るお話でした。
Posted by ブクログ
『三月は深き紅の淵を』という本をめぐって繰り広げられる物語(笑)1~3章までは読みやすくっていい感じですね(笑)本の秘密にかかわる話が良かった(笑)最終章はいきなり展開が変わって幻想的な雰囲気(笑)ちょっと分かりにくくなっていましたが嫌いではないです(笑)物語全体を包む恩田さんの雰囲気が読んでいると気持ちが良くなりますね(笑)
Posted by ブクログ
久々の恩田陸作品。幻の小説にまつわるミステリー。一章、二章はそこまでクセのない恩田作品だが、三章からはいつもの濃ゆい内容で色んな意味で安心してしまった。本の中にある黒と茶の幻想って実際に書いてるタイトルだよな?って思いながら読んだけど、他のタイトルもそうだったりするんだろうか。どれも面白かったけれど、個人的には三章が好きかな。本人のスタンスが垣間見える四章も結構好き。とても良かった。
創作について
一部ご紹介します。
・「人類の歴史は掃除の歴史なんだって。
ちょっとでもさぼると、文明なんてすぐに埃に埋もれてしまう」
・「誰でも一生に一冊の本を書けるというのは本当よ。あたしたちは毎日書いているでしょう」
「いいものを読むことは書くことよ。
うんといい小説を読むとね、行間の奥の方に、自分がいつか書くはずのもう一つの小説が見えるような気がするってことない?
それが見えると、あたし、ああ、あたしも読みながら書いてるんだなあって思う。」
・ヘンリー・ダーガーという人がいた。病院の清掃員を生涯の仕事にしていた。地味で目立たぬ男だった。
彼の死後、彼が生前書いていたおびただしい小説が発見された。
それは、子供たちの国。たくさんの子供たちが血みどろのむごたらしい戦争をしている国の物語。
その世界ではヘンリー・ダーガーは子供たちを救い出す救世主であった。
彼は美術の勉強をしたことはなく、広告や絵本や雑誌の絵を写しては組み合わせて、
このグロテスクでいつまでも終わらぬ世界を夜な夜な一人で描き続けていた。
彼はその世界に完全に生きていたのである。
・大量のストーリーが消費されている現代、結局のところ、ゲームの中の虚構は一つのテーマに統合されつつある。
英雄伝説、もしくは英雄になるための成長物語。最も古典的なテーマに立ち戻ろうとしているわけだ。
ゲーム制作者という吟遊詩人が作り出す、古典的なストーリーから派生した様々なバージョンをそれぞれのゲーム機でプレイヤーたちが聞いている。
彼らが聞きたがっているものは、大昔から変わっていないのだ。
・なぜ人間は「よくできた話」に感銘を受けるのだろう。
その感動は収まるところに全てが収まったという快感である。
おそらく、人間には何種類もの物語がインプットされているのだろう。
インプットされた物語と一致すると、ビンゴ(!)状態となる。
フィクションを求めるのは人間の第四の欲望かもしれない。
たぶん、想像力という他の動物にはない才能のためだろう。
同作者の中で一番好きなのがこれ。
厳密には、特に2章が素晴らしい。
登場人物二人の、編集者としてのスタンスや
仕事への取組み、物語に対するちょっと過剰な
までの思い入れ、こういったものがギュッと
つまっているシーンがとても好きだ。
Posted by ブクログ
何度も読み返せるスルメのような本。
おいしいもの食べてくだくだおしゃべり。いいな〜。
ずっと読んでいたくなる、読み心地の良い文章。
四つの章が入れ子構造になっている。
この書籍に書かれている四つの章と、幻の「三月は深き紅の淵を」の内容がリンクしている。
一つの章は後に「黒と茶の幻想」に、もう一つの章は「麦の海に沈む果実」に結実した。
大もとのこの本がやっぱり好きだなあ。
Posted by ブクログ
《そう、自分もその過程に加わったに過ぎないのだ。物語が形成されていく過程に。》p.207。
《誰かに見られている。》p.360。
《この書き出しは、どうだろう?》p.431。
>第一章、ミッションは超巨大な屋敷から一冊の謎の本『三月は深き紅の淵を』を探せ!!
>第二章、出雲に向かう二人の女編集者はそれぞれ『三月』を読んでおり、その著者は誰であるかディスカッションする。
>第三章、一緒に崖から落ちて死んだ二人の美少女の関係は人によって印象が異なっていた。二人の死は事故か自殺が殺人か。
>第四章、この本を書こうとしている女性作家の話と、謎の学園に放り込まれた理瀬の話。
>枠の外側と内側の境界がしだいに曖昧になっていくような、最近わりとありがちなタイプかもしれないけれど、言葉の魅力で月並みではなくなってる。
■理瀬についての簡単な単語集
【彰彦】室田利枝子と旅(安楽椅子探偵紀行)をしていた?
【圷比呂央:あくつ・ひろお】金子さんちを建てた建築家。故人。極度の活字中毒。特に推理小説が好きだったらしい。全ての金を本に費やしたということだが、その割に超巨大な屋敷(今は金子さんち)を持っていた。ダイイング・メッセージとして「ザクロの実」という語を残した。それが広い館のなかにあるとある本へのヒントになるらしい。
【アングラ】水越《今はアングラというものがなくなってしまった。》三月はp.34
【一色】金子さんちのお客さん。ひょろ長い男。大学教授。英国文学。教え子だったNという学生から本を借りた。
【稲垣史朗】篠田美佐緒と林祥子の実父。
【江藤朱音:えとう・あかね】編集者。堂垣隆子とは同僚ではない。キャラクタで作家を摑む。酒は別腹という飲んべえ。自己表現の手段として物語を書いてますという作家は嫌い。
【海老沢】鮫島巧一が勤める会社の秘書課の人。
【おたく】金子さんちに呼ばれた誰かによるとおたくというのはマスターベーションでありそれを互いに見せ合おうとしてるところが気持ち悪いらしい。
【女】水越《女はフィリップ・マーロウになった気持ちでハードボイルドを書こうなんて絶対に思わないわよ。ジゴロやチンピラの気持ちで女を見てみたいと思うことはあってもね》三月はp.64
【金子慎平】鮫島巧一が勤める会社の会長さん。読書好きの社員を呼んでだますのが趣味らしい? 超巨大な屋敷の持ち主。
【鴨志田】金子さんちのお客さん。巨大な男。銀座の天ぷら屋の三男坊で料理人。
【神崎】篠田美佐緒と付き合うことになった男子高校生。そのために廣田啓輔はフラれた。金持ちのお坊ちゃんできれいな顔をしており男子生徒からはバカにされ気味だが、性格はよく努力家。
【小泉】謎の男。『三月は深き紅の淵を』の関わるところに出没する? いつもなんとなく焦っている。
【斉藤玄一郎】文芸評論家。堂垣が考える『三月は深き紅の淵を』の著者候補の一人。
【佐伯嗣瑛:さえき・しえい】純文学の大家。堂垣が考える『三月は深き紅の淵を』の著者候補の一人。雰囲気的にはモデルというかイメージは福永武彦さんあたりで。ミステリ好きやし柳川やし。
【烏山響一】画家。江藤朱音が嫌いな「畏れ」という絵を描いた。
【ザクロ】『三月は深き紅の淵を』でキーワードになっているらしい語。
【鮫島巧一】会長の家に呼ばれて困惑しているサラリーマン。
【三月は深き紅の淵を】謎の本の書名。昔、圷比呂央が友人の金子さんに貸したことのある本。著名な作家が匿名で書いたという噂の、異なる作品をモザイクのように散りばめた、ミステリと言えなくもないような作品らしい。他者への譲渡は不可、たった一人に一晩だけ貸すのは可。鮫島が金子に呼ばれたのはその本を探すゲームに参加させるため。一部屋ずつ虫干しするとかいう無粋な方法は不可なんだとか。全ての金を本に費やしたという圷比呂央が超巨大な屋敷を持っていたというのはちょっと怪しい気もするのでどこまで本当か不明。第一部の題名は「黒と茶の幻想」てサブタイトルは「風の話」。第二部は「冬の湖」サブタイトルは「夜の話」。第三部は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、サブタイトルは「血の話」。第四部は「鳩笛」、サブタイトルは「時の話」。
【篠田美佐緒】高台の公園の展望台から林祥子とともに落ちて死亡した公立高校二年生。母子家庭で母親は大学教授で地質学者。林祥子とは異母姉妹。一冊の小説を書くのが夢。四部作構成で読んだ人が情けなくなって死んでしまうような本。
【性別】水越《作品を読むという次元で見れば、作者の性別なんて関係ないはずなのに、やっぱり本を読む時、どこかで作者の性を気にしている。意識されていないようでいて、実は作者の性別というのは重大な問題なのよね》三月はp.67
【堂垣隆子】編集者。江藤朱音とは同僚ではない。ビジネスライクなタイプ。
【野上奈央子】篠田美佐緒の親戚? 大学を卒業し、出版社の編集者になる予定。
【ノスタルジア】《彼女にとって、重要な、極めて個人的なテーマはずぼり、『ノスタルジア』である。あらゆる意味での懐かしさ。それは心地好く切ないものであると同時に、同じくらいの忌まわしさにも満ちている。》p.343。
【早坂詠子:はやさか・えいこ】篠田美佐緒の美術部での後輩。野上奈央子と知り合う。
【林祥子】高台の公園の展望台から篠田美佐緒とともに落ちて死亡した私立のお嬢様高校、志村女子高の二年生。篠田美佐緒とは異母姉妹。一年生のとき廣田啓輔とつきあったことがある。
【白夜】堂垣隆子の父が学生時代に参加していた同人誌。その中に『三月は深き紅の淵を』の著者がいるのではないかと堂垣は考えた。候補は作風から、自分の父と、佐伯嗣瑛(さえき・しえい)、両角満生(もろずみ・みつお)、斉藤玄一郎の四人に絞った。父以外はプロの作家になっているようだ。
【聖】理瀬と同じファミリーのメンバー。
【評論】江藤朱音《評論というのは実は完璧な創造なんだけどね。》三月はp.158。それは僕もずっとそう考えてました。評論家って、結局自分のこと書いてるんやから私小説みたいなもんやなあと。
【廣田啓輔】篠田美佐緒と付き合っていたらしい男子高校生。美佐緒が神崎啓輔に鞍替えしフラれたらしい。林祥子とも付き合っていたらしい。吉田秋生さんの『カリフォルニア物語』のヒースをイメージした。
【ファミリー】理瀬の属するファミリーは理瀬を入れて七人。本当は十二人必要だが余った者を集めただけなので半端になっている。理瀬と同じファミリーのメンバーは五年生の光湖、最年長で数字に強いの聖、茶目っ気たっぷりでいとこ同士の俊市と薫、大柄でがっしりしていて豪放磊落な寛、ストレートな黎二。
【穗積槙子】林祥子は篠田美佐緒に殺されたと考えている女子高生。
【水越】金子さんちの女性のお客さん。ボクっ娘小説は嫌い。実家はホテル経営。
【水野理瀬】→理瀬
【光湖:みつこ】理瀬と同じファミリーのメンバー。
【室田利枝子】旅(安楽椅子探偵紀行)をしていた?
【森】《森の中には、生者と死者が混在している。》p.430。
【両角満生:もろずみ・みつお】作家。アクの強い、耽美的な作風。堂垣が考える『三月は深き紅の淵を』の著者候補の一人。
【役立たず】鴨志田の相棒。大きな白い犬。
【屋敷】金子さんの超巨大な家。四つの巨大な屋敷林を囲んでいる。鮫島くんが行ったのは冬の家。
【憂理:ゆうり】理瀬のルームメイト。四年生。
【理瀬】水野理瀬。とある学院に来てただの理瀬になった。
【麗子】理瀬と同じ学院の生徒。行方不明にならなければ同じファミリーになった。
【黎二:れいじ】理瀬と同じファミリーのメンバー。
【ワープロ】《ワープロは嘘をつくのである。ワープロは、そういう意味では虚構にふさわしい。》三月はp.337
Posted by ブクログ
これが本当に不思議な話なのだ。
一冊のミステリー、それを巡る話なのだがこの本に関わった人々、その全員を巡る視点が実に魅力的だ。
全く知らない話なのに、どこか郷愁を感じさせる恩田の文体とマッチしている。そう、「あれ? 自分はひょっとしたら人生のどこかでこの物語に触れているのではないか?」そんな風に思わせる力がある。もちろん、そんな物語があるかどうかもわからないのに。
安易な謎解きがセットになっていないのもいい。意地悪で、そのくせ懐かしい。ひと癖もふた癖もある迷路のような小説だ。
Posted by ブクログ
難しかった!特に第四章。作者の思考をそのまま小説にしているような話だった。
四章すべて繋がっているようでいないような不思議な感覚がした。この小説が本当に第一章で語られている稀覯本『三月は深き紅の淵を』の評価、構成になっているのがおもしろい。
第三章がお気に入り。第一章も好事家たちの勢いがすごくて結構すき。
Posted by ブクログ
『三月は深き紅の淵を』という幻の本にまつわる一冊。
一章ではこの本のありかを探していて
二章ではこの本の作者を探していて
三章では二人の少女の死の真相を追い、
(このあたりで、んぬぁ!?ってなる)
四章ではこの本の構想を練っている。
なにを言っているかわからなくなってきたけれど、
これは何度も咀嚼したい作品だった!
印象としてはセピア色でノスタルジック。
最後にガツンと目が覚める物語が差し込まれていて
これが次の『麦の海に沈む果実』に続くというんだから読むしかない。じっくり頭を使って心に落とし込む。これだから恩田さん作品はクセになるんだなぁ。
Posted by ブクログ
大好きな理瀬シリーズの原点(?)のような本。
短編『回転木馬』はそのまま「麦の海」のプロローグだった。
入れ子細工に作中作、あまりにわけのわからない世界観の真ん中に位置する『三月は深き紅の淵を』。
恩田陸のわけのわからなさが癖になってきた今日この頃。
Posted by ブクログ
理瀬シリーズ1作目、と知らず再読。タイトルの三月〜を巡る話で、どの章もめちゃくちゃ面白くて好き。ある家でその小説を探す青年、小説の作者を追って旅をするうちに混沌に迷い込む女性たち、少女2人の転落死を追う人々、理瀬の話と交錯する生み出す作者、どの章も関係なさそうやのに、繋がりどれも興味深く残るのが凄い。恩田陸さんのこの独特の深海ちっくな雰囲気が大好きでこの世界に飲み込まれたい。
Posted by ブクログ
油断した、3章までがすごく綺麗なミステリーだったから4章もその勢いで読んでしまった、恩田陸の怪異的なる文章の海に足を取られてしまった
やーよくこんなメタ発言ばんばんできるな、この作家本当にすごい、十数年ずっと追いかけてしまう
Posted by ブクログ
2025. 2
短編小説。
『三月は深き紅の淵を』という小説を巡り様々な登場人物がその本に対する興味関心を語るストーリー。
その繋がりを最後に集約させ何かが起きることを期待していたが、特になかった。
しかし、三章目の二人の女子高生が展望台から飛び降り死亡する事件が非常に面白かった。
ストーリーが面白い、というよりも序盤に死亡してしまう女子高生の知的で冷静、どこか儚く色気を漂わせる美沙緒の言動や雰囲気が魅力的であった。
彼女を主人公とした長編小説を読む、だけではなく現実に現れほしいと切望するほどに。
Posted by ブクログ
自分が今読んでいる本と話の中に出てくる本がリンクしているのか、
登場人物たちとの感想と一致していて、
だから4章は本当に読みづらく違うお話?
と混乱した。
個人的にそのことが引っかかってマイナス1。
3章までは面白かった。
Posted by ブクログ
混乱と驚きのパレード
『待っている人々』では、あらすじ通りに話が進みましたが、結末は全くの予想外。作中作構成かと思いきや全く別物で『三月は深き紅の淵を』が2冊!?って感じです笑
『出雲夜想曲』は作者を探し求めに行くストーリーでここでも『三月は深き紅の淵を』の正体はイマイチ分からず…。
『虹と雲と鳥と』では、おそらく『三月は深き紅の淵を』の執筆が始まった様子。
そして 『回転木馬』がほか3つと違いすぎて。恩田さん本人が登場しているように感じ読み進めていくとこの短編が有名な理瀬シリーズの1作目になっているらしくまたまた混乱。
結局終始混乱と驚きの繰り返しでしたが、なぜか読後感はスッキリしていて非常に満足感が高い…。『三月は深き紅の淵を』の正体も分からず作者も分からず(読解力がない笑)でしたが、続く『麦の海に沈む果実』も読みたいと思います!
Posted by ブクログ
「麦の海に沈む果実」に登場する「三月は深き紅の淵を」がタイトルにつけられた本書。
これもまた「三月は深き紅の淵を」を巡る物語で、書き方が不思議だけど、それが恩田陸さんっぽいなぁと思います。
第四章で理瀬が登場して、もしかして「麦の海に沈む果実」は最初こういう展開にしようと思っていたのかなぁと想像しました。黎二が生きていてくれるならこちらの展開のほうがよかったかも。
第四章ではもしかしてこれは恩田陸さん本人のことでは?と思うところもありました。
不思議な物語だけど、一章ずつがっつりその世界に入り込んで読めるのが楽しかったです。
Posted by ブクログ
作者初期の作品。
本書と同じ「三月は深き紅の淵を」という題名の架空の本を巡る4章からなる。
架空の「三月」は「黒と茶の幻想」、「冬の湖」、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、「鳩笛」の4章からなり、作者不明、数十部限定的に私版本として出され、譲渡禁止、貸与は1人にのみ1日だけという制限がついている。
本書の4章はそれぞれ、酔狂な老人たちの「三月」を巡る謎解き、「三月」の作者を追う二人の女性編集者の旅路、自殺した異母高校生姉妹の謎を探る編集者志望の女子大生、「三月」を書こうとする作者のの思索、だが、それぞれの関連はあっても曖昧で「三月」の正解(というものがあれば)は示されない。
第1章で語られる「黒と茶の幻想」は作者が数年後に発表した同名の本と内容が酷似する。
第2章の終わりで女性編集者のうちの1人が「三月」の作者であることが示唆されるが、第3章の女子大生、第4章の「私」との関係はわからない。
第3章には「三月」は直接出て来ず、自殺した女子高生の小説家になりたいという夢を家庭教師の女子大生が引き継ぐことで、「三月」との関係が曖昧に示唆される。
第4章は「三月」の作者である「私」による書き出しの習作と独白、これも作者と思われる「彼女」が出雲を旅しながら巡らす思索、これらとは脈略なく提示される水野理瀬ととある学園の物語、と3乃至4つの旋律がロンドのように繰り返し現れる。
ここでの「三月」は架空のものではなく、章名や簡単に示される内容も本書と一致していて、「私」が試行錯誤する書き出しも「鳩笛」ではなく本書にある「回転木馬」のものであり、本書の入れ子構造を多重のものにしている。
水野理瀬の物語は、これも数年後に出版される「麦の海に沈む果実」の習作となっている。
本書はストーリー展開を楽しむというよりは、謎の多い幻惑的な雰囲気を味わうべきもので、それに嵌まる恩田陸ファンは多いのだろうし、ファンにとってはたまらない一冊だろう。本書についての考察も際限なく続くことと思う。
「黒と茶の幻想」を先に読んでしまったが、やはり出版順に読むべきだった。
「麦の海」も「黒と茶」も本書が書かれた時点で原型はあった。
何なら本書巻末に書かれた「三月」四部作の冒頭はそのまま「黒と茶」のものだ。
文庫版には皆川博子による解説が載っているが、その中途半端さが本書を語ることの難しさを物語っている。
Posted by ブクログ
面白いけど、各章のつながりがよくわからない コンセプトが凄く面白いのに、4部構成の各章がきれいに繋がらずにブチブチと切れている印象だった。とはいえ、終始引き込まれるような文章力や、かなりの読書量に裏付けられた厚みのようなものがあるので、読んで後悔はなかった。
Posted by ブクログ
複雑な構成と感じる。麦の海に沈む果実を先に詠んだので、四章の回転木馬はさらに混乱した。だが、三章の虹と雲と鳥、短編でありながら、コレだけで、凄すぎる!というしかない、もともと短編はあまり好みでないが、コレは長編のような衝撃と世界観がある。
Posted by ブクログ
たった一人に、たった一晩だけ貸すことが許された本をめぐるミステリー。そんな本があったら読みたいですか?読んでみたいけど、私は一日で読み切る自信が無い。
Posted by ブクログ
【三月は深き紅の淵を】という幻の小説を横糸として巡らせた入れ子式の四部作。かな。
第一章から三章までは雰囲気のタッチの違う、フツーに読める話。
だけど、第四章が、まあ、ややこしい、というか頭の中のラフを見せられているような深読みさせられているような。どうやら作者の別作品とも繋がっているらしく。
さて脳内配役。
『第一章 待っている人々』
金子会長…小日向文世
水越夫人…手塚理美
一色…大倉孝二
鴨志田…中野英雄
あたりでさらりと。
『第二章 出雲夜想曲』
堂垣隆子…松たか子
江藤朱音…山口智子
これは本っ当に、この二人がドンピシャだと思う。芸風?的に。二十年位前にこの章だけでも実写化したやつを観てみたかったな。
Posted by ブクログ
この本は【三月は深き紅の淵を】という本にまつわるお話でした。
第一章はこの本を"待っている人びと"という、
まだ本は実在せず。
第二章では本は実在しており、
第三章ではこれからこの本を書くという
不思議な話。
そして第四章では本を今まさに書くための構想を練るところ?
【三月は深き紅の淵を】を経て
【麦の海に沈む果実】でこの場面はもう、
出来ていると。
恩田さんの本を執筆する方法?を教えてもらえた感じでした。
それにしても【黒と茶の幻想】もかなり単語が出て来たり、早く読みたいです☺️
Posted by ブクログ
なんとそそられるタイトルでしょうか…。
そんなテンションのまま読み始めたらビックリ、
内容構成がややこしすぎる…!!笑
第二章までは普通のミステリーとして読めてたけど、
第三章で少し方向性が変わり、第四章でアクセル全開。
あらすじ通りに進んできたはずなのに、
気づいたら全く違う出口に出た感じ。
経験が浅いから何とも言えないけど、
ある程度ミステリーを読んでる人向けかな?
言葉にするのが難しい、不思議な体験でした。
Posted by ブクログ
章ごとに雰囲気ががらり変わり、4冊の本を読んだ気分です
第四章は難しかったけれど、恩田さんの頭の中を覗いたよう
小説とはなにか考えさせられる作品でした
Posted by ブクログ
理瀬シリーズと呼ばれてる、この本をとても読みたかった。麦の海に沈む果実から読んで、もう理瀬達がでてくるのが待ち遠しくて待ち遠しくて読み進めていたら、理瀬達が登場するのはちょっとでしたね。
まだ読んでない理瀬シリーズがあるので、どう繋がっていくのか楽しみです。
Posted by ブクログ
大好きな理瀬がなかなか出てこないよーと思いながらも面白くてあっという間に読み終わった。
第四章の彼女は恩田陸のこと?三月は深き紅の淵をの作者?色々考察できて楽しい。第一章では幻の本は存在していないことに、第二章では書いた人も読んだ人も存在していた、第三章は書きたいと思ってる人がいた?ってこと???
Posted by ブクログ
たった1人に一晩だけ貸すことができる本、『三月は深き紅の淵を』。その本を巡る4本の話。
第一章は『待っている人々』。会社の会長宅に招待を受けた男性が、屋敷内にあるとされるが10年以上探しても見つからないという本探しに巻き込まれる。
第二章は『出雲夜想曲』。『三月は深き紅の淵を』の作者を求めて、2人の編集者の女性が夜行列車で出雲へ向かう。
第三章は『虹と雲と鳥と』。2人の少女が公園の展望台から落下して亡くなった。2人の間に何があったのか。少女の元家庭教師の女性と元彼氏の少年が解き明かそうとする。
第四章は『回転木馬』。『三月は深き紅の淵を』を書こうとする女性を描いた話。
確かこの間読んだ『27000冊ガーデン』だったと思うが、タイトルが上がっていたので読んでみた。恩田陸作品は一時嵌って読んでいたけれど、最後が今ひとつはっきりしないと感じたのは相変わらずだった。一章から三章はともかく、四章は何がしたかったのかよくわからなかった。一章が一番後味いい感じ。
Posted by ブクログ
全四章から構成されており、幻想的な作品でした。一章〜三章はギリギリ理解できましたが、四章はとても抽象的で、場面がコロコロ変わるので追っていくことが難しかったです。
一章〜三章の雰囲気は結構好みでしたね。
今回の作品はそこまで私に刺さりませんでしたが、作者の情景描写や感性のレベルは本当に高いと思います。私が作者と同じ景色を見たとしても到底あんな描写はできません。
プロ中のプロだと思いました。
Posted by ブクログ
「三月は深き紅の淵を」という謎の本。4つの短編から構成されている。本当にそんな本はあるのか。いったい誰が書いたのか。1章、2章は興味深い。3章はミステリー仕立て。著者のヒントになるかと思ったが。4章で謎が明らかになるかと思いきや、つながりがまったく見えず。難解。もやっと感の残る恩田作品。
Posted by ブクログ
十数年ぶりの再読なのだがすっかり失念していたので、初読みと変わらず;
「三月は深き紅の淵を」を巡る4つの物語。
現実と空想が入り混じっているような感じを強く受ける。
まさに幻想的。
特に第四章は四苦八苦!
とにかく話が飛ぶ飛ぶ(^_^;)
うっかりしてると置いてきぼり。
(第一章の中で、幻の『三月~』の第四章についてが語られるが、まさに今読んでるこの本の第四章そのものの印象であることにハッとした)
おまけに密度の濃い作品でもある。
適当に読み流したら、あとで(何だっけ?)となるから大変。
…しかし読むのに構えすぎた。
余計なことをたくさん考えてしまってひどく疲れた。
深読み・前知識の気にしすぎというやつである。
純粋に読めば良い。
そして(あれ?)と思ったりデジャ・ビュ的なものを感じたら、それがこの作品の醍醐味なのだろうと思う。
とはいえ、今回読んでみて第一章と第二章の話が興味をそそられた。
そして幻の『三月は深き紅の淵を』がやはり読みたくなるから不思議だ。
※ちなみに私はこの作品の前に、
「麦の海に沈む果実」「黄昏の百合の骨」を読んだ。
他の方のレビューでこの作品に「理瀬」が少し出てくると書いてあったので、その方がいいかも…と独断で。
…次は「朝日のようにさわやかに」を再読予定。