あらすじ
「あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです」退職判事・関根多佳雄が立ち寄った喫茶店。上品な婦人が語り始めたのは少女時代に英国で遭遇した、象による奇怪な殺人事件だった……。表題作をはじめ、子供たちの会話、一枚の写真、携帯電話など、なにげないテーマに潜む謎を、鮮やかな手さばきで解き明かすロジックの芳醇なる結晶。幻惑と恍惚の本格推理コレクション!
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ジャンルとしては推理小説、「パズラー」と呼ばれる領域のものだそうです。連作短編集です。シンプルながら味のある装丁に魅せられて買いましたが、しばらく積ん読状態でした。ある時NHKをみてたら曜変天目という陶器が出てきて、そういえばこの本の目次に曜変天目というタイトルの話があったなぁと思い出し、「曜変天目の夜」を読んだところ、一気に引き込まれました。推理小説はあまり読まないのですが、この本にはやられました。犯人探しというわけではなく、出来事について考察するのが話のメインです。「六番目の小夜子」に出てくる人物のお父さんが主人公です。好みが分かれると思いますが、私はとても気に入りました。
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ものすごい久々に読んだ恩田陸先生の作品。
12話収録。
主人公の「元は名の知れた裁判官である」(p121)切れ者で甘いものが好きなイケオジ〈関根多佳雄〉にもうどハマり。顔がどうとかはわかりませんが纏う雰囲気が素敵。息子で「バリバリの現役検事」(p91)である〈関根春(しゅん)〉も登場回数こそ少ないながら印象的な好キャラ。
あとがきに曰く「私がある日古本屋で一目ぼれした東京創元社の三十年前のペーパーバック、バリンジャーの『歯と爪』。是非これと同じ意匠で作りたいと思った」(p305)とあり、調べると確かにそっくり。『歯と爪』にはあったらしい袋とじはさすがに無いですが。
話毎のテーマは色々で、妖しいものから不思議なもの、書簡形式からオマージュまで…と実にとりどり。いずれにせよ謎解きに頭を使う快感が堪らない。
西澤保彦先生の解説も大変参考になったけど「これほど高レベルの作品集は、あるいは恩田本人の力をもってしても生涯に二冊以上は編めないのではないか、と危ぶんでしまう」(p318)という賛辞はやや過剰な気がしてならないが…、「論理による謎」の話はとても面白かった。「論理によって解体される謎」と「論理によって構築される謎」という考え方。なるほど。
折り紙の例えも参考になった。
どの話も良かったけど
《給水塔》…都市伝説的な怖さを孕んだ話。いや、まさか、ひょっとして。。panpanya先生もこういう空気を描かれますが、好き。
《象と耳鳴り》…象を怖いと思ったことはなかったけど、これは…。「針が思い思いの時刻を指したまま止まっている古い柱時計の群れに覆われた壁」(p78)という舞台装置が一瞬で作る不穏な空気。耳キーンなるわ。
《待合室の冒険》…多佳雄・春の父子コンビ回。「まだまだかかりそうだったらビール。三十分以内だったらコーヒーだな。」(p185)っていう多佳雄のセリフは真似したい。
以上が特に好き。
ああ、恩田陸作品も集めてしまいそう。また積読が…。
14刷
2025.2.8
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この本は20年近く前に読んだ。この中にある「曜変天目の夜」という話を読んで初めて曜変天目茶碗を知った。ブラックホールのような茶碗を見てみたいと思って調べると静嘉堂文庫美術館にあることがわかったがいつでも見られるわけではなかった。
それから、しばらくして初めて見ることができ、ブラックホールのような…「あたま山」を連想する茶碗という表現がピッタリだなと思った。
今日、また三菱一号館美術館で曜変天目を見た。
あれから何回か美術館で展示されるたびに見に行っては、この本を出してきて読み返す。今日も読み返した。自分が老いにより壊れていっても自分であることをやめずにいようというラストに救われる。
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再読。
引退した裁判官、関根多佳雄を主人公にした短編集。
でも、短編ごとに関根さんの印象が変わっていく。
大柄らしいんだけど、わたしには今ひとつ映像として浮かんでこない…
曜変天目茶碗はこの本で覚えました。いつか実物を見たい。
息子の春が好きです。
あとがきによると、本格推理小説への憧れから本書が出来上がったそうです。
本格推理小説にうといので、その観点からはなにも言えませんが、読み物としてとてもおもしろい。
「推理」を楽しんでいる、そんな話。
恩田陸さんの「象と耳鳴り」は、裁判官を退官し、悠々自適の生活を送る関根多佳雄が主人公。
散歩とミステリが好きな彼が、身の回りに起こった、ちょっとした出来事を推理する連作短編集ですね。
はっきりとした白黒をつけずに、曖昧なグレーゾーンで終わる話もあれば、「待合室の冒険」のように、その場ですっきりと気持ちよく決着がつく話が混ざっており、なかなかバリエーションに富んでいますね。
そして、どの話も、ミステリとしてだけでなく、恩田陸さんらしいファンタジー的な雰囲気や映像的な美しさも楽しめますね。
例えば、「曜変天目の夜」に出てくる茶碗。
実際には見ることも触ることもできなくても、情景はありありと思い浮かびますし、茶碗の中の密度までしっかりと感じることができるような気がします。
「ニューメキシコの月」の絵葉書の写真やそこに書かれた宛名、「廃園」の色とりどりの薔薇とその香りなども、まるで実物が目の前にあるようです。
論理的なパズルを楽しめる「机上の論理」ですら、4枚の写真が目の前に浮かんできます。
このような描写は、恩田陸さんならではですね。
その情景故に、どの話も謎が解かれても余韻が残ります。
それが物悲しい余韻のことも多いのですが---------。
多佳雄と妻の桃代、彼らの息子の春と娘の夏の関係もとても素敵ですね。
「六番目の小夜子」に出てきた関根秋は、この家の末っ子なんですね。
多佳雄と桃代の会話はのんびりとして微笑ましく、ミステリ抜きでも十分楽しめますし、一見のんびり者に見える春が出てくる話は、意外なことに論理的なパズル系の推理が楽しめますね。
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退職して刑事である関根多佳雄さんが関わるミステリー短編集。
どれもがこうだ!とすっきり解決する形ではないけれど、深い考察でじんわりと迫ってくる感じが面白い。
息子と娘も魅力的で、現役検事の春くんの鋭いけれど飄々とした感じが好きだった。
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恩田陸のデビュー作「六番目の小夜子」の主人公である秋の父親・関根多佳雄を主人公に据えた、本格ミステリ短編集。
元判事で大のミステリ好きの多佳雄が安楽椅子探偵さながらにさまざまな謎を解いていく連作短編12篇。
それぞれがバラエティに富んでいて飽きさせず、小さな違和感から論理的思考によって謎を解き明かしていく過程がたまらなくゾクゾクする。
多佳雄もさることながら、検事である息子の春(しゅん)のキャラクターもいい。
江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」、「パノラマ島奇談」や中原中也の「北の海」、アンセル・アダムスの「エルナンデスの月の出」など小説や芸術作品をテーマに盛り込んだ話も多く作者の知識の広さはさすが。
「本格ミステリというのは『説得』と『納得』の小説。そこに『驚愕』が加わるようであれば、それは本格ミステリとして傑作と言えるだろう」
と作者あとがきにあるが、その意味では十分に説得され、納得し、驚愕もした傑作短編集でした。
Posted by ブクログ
『自分の死を予期している者は、無意識のうちにその痕跡を残す。それは、セットしていない目覚まし時計であったり、しまいこまれた眼鏡であったり、いつもより多すぎるペットの餌であったり。自分の死を知っている者は、自然とその準備をする』…う〜ん、なんともミステリーの怪しい香りが漂ってくる〈曜変天目の夜〉という短編のこの一説。
さて、あなたは、恩田陸さんという作家さんにどんなイメージをもっているでしょうか?
私にとっての恩田さんはなんといっても「蜜蜂と遠雷」です。文字だけの本の上に音楽が鳴り響いた瞬間、私の心はすっかり恩田ワールドの虜になっていました。この「蜜蜂と」の他にも「夜のピクニック」、「ネバーランド」などの”青春!の煌き”を感じさせてくれる作品はまさに恩田さんの真骨頂です。また、27人と一匹が縦横無尽に活躍する「ドミノ」、美少女剣士が立ち回る「雪月花黙示録」に見られる”エンタメ!祭り”も恩田さんという直木賞作家さんの筆の力をこれでもか!と魅せてくださいます。そして、時空感を飛び越えてゆく「ライオンハート」や異世界に入り込む「ネクロポリス」などの”絶品!ファンタジー”には、そんな不思議な世界に自身も没入できる懐の深さを感じさせてもくれます。他にも、ホラーあり、SFあり、グダグダ呑みまくりなエッセイありと、とにかく多彩な作品を発表し続けるマルチな作家さん、それが恩田陸さんです。そして、そんな恩田さんには、もう一つ忘れてはならないジャンルの作品群があります。
『作家になって十年経ったが、今でも読者として一番好きなのは本格ミステリである』とおっしゃる恩田さん。そう、恩田さんと言えば”不思議世界!のミステリー”作品にもたまらない魅力があります。デビュー作の「六番目の小夜子」、学園ミステリーの傑作「麦の海に沈む果実」など、もう傑作揃いです。そんな恩田さんも、大好きなミステリー作品を生み出すことに苦悩された時代もあったようです。『思えば、当時はまだ駆け出しで、個人的に「本格ミステリの短編集を作りたーい!」という夢を実現することしか頭になく、おのれの能力等は考えもせずに突っ走っていた』と過去を振り返る恩田さん。そんな恩田さんが、苦悩の末に生み出した「象と耳鳴り」というこの作品。恩田ワールド満載の魅力溢れるミステリー短編集です。
…ということで、12編もの短編から構成されるこの作品。恩田さんの夢が実現した世界、つまり、全てがミステリーの世界観で統一された短編集です。そんな中でも秀逸だと思ったのが一編目の〈曜変天目の夜〉です。
『今しも、倒れた老婦人が目の前を運び出されていくところであり』、『一瞬自分がデジャ・ヴを見ているのかと思った』というのは主人公の関根多佳雄。『黒い茶碗。降るような星空』という光景を見て『あの夜と、同じだ』と思う多佳雄。『大丈夫でしょうかねえ、こんなに混んでいますものねえ』と隣で心配そうな妻の桃代。『確かに会場は混んでいた』、『国宝の茶碗の久々の限定公開、しかも本日が最終日』というその会場。『意外と貧弱だな』とその茶碗を見て感じた多佳雄。『もっと大きな茶碗を想像していたのに、目の前の茶碗は大きめの真っ黒な御飯茶碗、くらいのサイズだった』というその茶碗。しかし『中に浮かんだ数々の星紋は、確かに自然の造形物であるとは信じられないほどだった』というその茶碗。そんな中『自分が何かを思い出しかけている』予感のする多佳雄。『ねえ、なんといいましたっけ、あの人。八王子の。十年ほど前に亡くなった』と訊く多佳雄に『ああ、酒寄さんですね』と即答する桃代。『あなた、その場に居合わせたんでしたね。どうしたんですか、急に』と訊く桃代に、多佳雄はあの時の記憶を辿ります。『酒寄順一郎。そうだ、そういう名前だった』と鮮明な記憶が蘇る多佳雄。『彼は司法学者だった』という酒寄の自宅をたびたび訪れる裁判官をしていた頃の多佳雄。『深夜まで熱心に判例の解釈について話し合った』若かりし時代。『その日も、すっかり遅くまで話しこ』み、『一階の客間で眠りこ』んだ多佳雄。『二階の寝室に引き上げ』た順一郎。そして『彼は帰らぬ人となった』というその夜。翌朝『冷たくなった順一郎を発見した』多佳雄。『緑色のカーペットの上に順一郎は倒れており、片手はカーペットの上に転がった黒い抹茶茶碗にかけられていた』というその現場。『死に顔は安らかだった』、そして『離れた板張りのところに、ティーポットとカップが落ちて割れていた』というその現場。『自分のティーセットを非常に大事にしており、決して他人には触らせなかった』順一郎。『最近、抹茶用の茶碗にも興味を持ってね。君、曜変天目茶碗というのを知っているかね?』と聞かれた死の前夜。『中国から伝わり』、『茶碗そのものの美しさが珍重された時代に最上のものとされた』曜変天目茶碗。『すっぽり宇宙が収まっているんだよ。あれにはすっかり魅せられてしまってね』と語った順一郎。『今日は、曜変天目の夜だ』と語った夜に亡くなった順一郎。そんな順一郎の死後に多佳雄は順一郎からの手紙を受け取ります。『自分の衰弱ぶりから、死期が近いことを悟っていたらしい』順一郎からのその手紙。そんな手紙の最後には『年寄りのささやかな感傷。悪いが、君にはこれを持っていてほしい』という言葉。そして、封筒を逆さにすると『ぱさ、と軽いものが机の上に落ち』ました。それは『髪の毛だった』という衝撃。『順一郎の白髪が、数本束ねられてそこに落ちていた』…とまさしくミステリーな展開に魅せられるこの短編。『曜変天目』という、謎に満ちた魅惑の茶碗を巧みに引用しながら、雰囲気感抜群にまとめられた短編でした。
そんな12の短編は、一部他の作品と繋がる表現が見られるものの基本的にはそれぞれ独立した短編の集まりとなっています。そして、そんな短編を完全に一本に繋ぎまとめるのが主人公・関根多佳雄の存在です。恩田さんのデビュー作「六番目の小夜子」を読まれた方には、関根と言えばピン!とくるその名前。「小夜子」で大活躍を見せた関根秋、その秋の父親がこの作品の主人公・多佳雄です。『元裁判官』の多佳雄、一見ぼうっとした印象も受けますが、12の短編それぞれにおいて絶妙な推理によってミステリーを解き明かしていきます。また、関根秋というと「小夜子」の中でその兄と姉の存在も語られていましたが、この作品にも『検事』の春、そして『弁護士』の夏という形で兄と姉も登場します。そんな二人から見る多佳雄は『もう既に引退しているが、名判事と言われた人である。立派な人ではあると思うのだが、子供たちから見ると、捕らえどころのない天邪鬼』という側面が語られるなど、関根一家勢揃い!を満喫できる関根ファンにはたまらない作りになっています。そんな兄と姉は短編〈机上の論理〉において、一枚の『古い白黒写真』を元にして、『ある人の部屋を撮った昔の写真なんだ。犯罪に関係した人間なんだけど、どんな人間だか分かるかな』という問題に対しての推理合戦を繰り広げます。それぞれの目の付け所が非常に興味深いこの短編は、そうきたか!という絶妙なオチでサクッと物語を締め括ります。関根一家に親近感がさらに増す好編だと思いました。
そんなこの作品は他にも表題作の〈象の耳鳴り〉の不思議世界も魅力です。『あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです』と言い出す老婦人。『あたくしは七歳でした』、『その日、なぜかあたくしは一人きりでした』というある日。『突然、象の鳴き声がしたのです。あのパォーンという、独特で高らかな鳴き声』と幼き日を語る老婦人。『どしん、どしん、という何か大きくて重たいものがゆっくり移動してくるような音』、そして『あたくしは見たのです』というその瞬間。『細長い曇りガラスに血飛沫がぴしゃりと飛んだ』というその瞬間。そして『その日からあたくしは象が怖くなりました』という、まさかの戦慄が描かれていくこの作品。恩田さんらしい不思議感満載のミステリーホラーといった趣きの好編でした。
そして、さらに、おお、こんなものまであるのか!と驚いたのが〈往復書簡〉という短編です。「往復書簡」というと、湊かなえさんの同名小説が思い浮かびますが、この短編もそれとまさしく同じ構成です。『就職の時には伯父様にはたいへんお世話になりました』という渋谷孝子という人物が送るその手紙の相手が多佳雄です。そんな二人の間の手紙のやり取りだけで展開していくこの作品。一見何の変哲もないやりとりから始まったその手紙は、やがて『奇妙な放火事件が続いていて』と、孝子の身近で発生した事件の話へと展開していきます。そこに、多佳雄が見事な推理を見せていくというこの短編。孝子から多佳雄へは6通、多佳雄から孝子へは4通の計10通の『前略…草々』、『拝啓…敬具』という手紙のやり取りで起承転結が見事に描かれるこの作品。短編なので、湊さんのような凝った展開までは期待できませんが、短い中にミステリー要素がうまく盛り込まれた好編だと思いました。
『こじつけだ、詭弁だ、よくみると論理的でないと言われようとも、小説を読んだ時に読者がその中で「納得」し、「説得」されれば、その本格ミステリは成功しているのだ』と語る恩田さん。物語の世界に入って主人公たちの気持ちを共有していく、それが小説の面白さです。そんな中でもミステリーというジャンルは独特な読書の楽しみがあります。主人公と一緒に、そこで起こった謎を一緒に推理していくというその楽しみ。この作品は短編集なので、凝った仕掛けが用意されているとまでは言えません。短いものでは数ページしかないものもあります。しかし、その中には恩田さんらしい雰囲気感に溢れた、その物語の雰囲気を楽しむための工夫が数多くなされていたように思いました。
『あたしが知りたいのは、あの日あの庭で何が起きたかってことなの』というミステリー世界をサクッと満喫させてくれるこの作品。恩田さんはやっぱりミステリーもいいねぇ!、そう感じた作品でした。
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こういう関連した短編面白いし読みやすい。
小夜子の時の多佳雄は品のある立派な父親という風格があったけど、こちらは元判事という面が強くて、おまけに末息子の秋の名前さえ出てこないので最初全然気づかなかった。
「給水塔」の時枝、この話以降登場しないのがなんとも後味悪い。多佳雄はあの後警察に相談したのかそうじゃないのか。元判事としての勘が働いたなら時枝は悪側の人間ではないんだろうか。
色々登場人物出たけど関根家の面子が濃すぎるな。夏に関しては登場と台詞のせいかキッツイ性格の女にしか見えなかったよ。
Posted by ブクログ
『六番目の小夜子』に出てくる関根秋のお父さんが主人公。お兄さんの春とお姉さんの夏は出てくるのに秋は出ていない‥‥少し残念。
何気ない出来事から事件性を探り出す関根多雄、面白いです。また、この人が出てくる本を読みたい。
Posted by ブクログ
退職判事「関根多佳雄」の短編ミステリー小説で
従前のミステリー小説とはストリー構成が違うもので
よく「これがミステリー」という王道というものでは
ない。
私はこれも有りだし、とても面白かった。
「春と夏」の話も、私にはお見通しであったが、どう
話をつないでいくのかを楽しめた。
彼みたいミステリー好きの親がいたら、楽しめる。
Posted by ブクログ
象が好きなので、手に取った1冊。
さすが恩田陸さん!
久しぶりに恩田さんの作品を読んだけど、絶妙にぞわりとする。それがなんだか心地いい。怖いもの見たさに近いかも。表題作「象と耳鳴り」に出てくる象は、怖い印象だったけど。
短編集だけど、関根多佳雄さんという、引退した判事のおじいさんが主人公。厳格な面と優しい眼差しをもったおじいさんで、魅力的でした。推理力もすごい。
あ、そこがそう繋がるのか…!と、短編集だけどそれぞれの話で驚いてた。
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恩田先生が沢山本を読むのは知っていたけれど
芸術系も造詣が深いのだなぁ、と感じた一冊。
『六番目の小夜子』にもちらりと登場した秋の父を主人公にした短編。
物質的証拠ではなく、会話によって謎解きを進めていく感じ。
この小説自体も面白いが
彼自身が読書を趣味としており、作中にミステリー小説が登場したりと、世の中には面白い本がもっともっとあるのだなぁ、と欲求を掻き立てられる。
恩田氏の作品て、短編の方が逆に情報がみっちりつまっていて、ゆっくり読んでいきたくなる。。
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恩田氏の作品に本格短編集があったとは。
落ち着いた雰囲気で、適度にロジカルで、適度にサプライズも用意されており、誤解を怖れずに言うと女性作家でこんな作品を読んだのは初めてで、改めて恩田氏の多才さに驚かされました。
Posted by ブクログ
元判事の関根多佳雄による安楽探偵物で全12編の短編集。
この関根さんは、恩田陸のデビュー作『六番目の小夜子』の主人公の父親だそうだがそちらは未読。各々の作品の謎はバラエティーに富んでいるが、解決というよりは仮説の提示に留まっている作品が多く、唐突に感じるものもある。探偵役の関根さんが何とも魅力的な人物で、このキャラで物語が成立していると感じる。奥さんに敬語で話すのが印象に残った。
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美しいタイトル。
もっとメインっぽい短編はあるのにと思ったが、象に似合う雄大な景色と、象には似つかわしくない狭小な室内とがいっぺんに頭を駆け巡り、イメージとしては1番面白いのかもしれない。
相変わらず魅力的な登場人物に加え、恩田作品にしては珍しいスカッと感(1つ1つの展開とラストがすっきりする)がある。
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再読なのに全然覚えていなかった。しかも主人公の関根多佳雄が『六番目の小夜子』の秋のお父さんだと、あとがきを読んでようやく気が付くなんて、覚えていないにもほどがある・・・。本格ミステリーの面白さは、謎解きをする探偵役のキャラクターだと思っているので、この主人公は私の好みにぴったり。しかも、奥様や子供の春と夏まで出てきて謎解きしてしまうなんて、最高。いちばん好きなのは『机上の論理』。ミステリー好きの兄妹が、真剣に謎解きして真剣に悔しがる姿にニンマリ。あと『ニューメキシコの月』もラストの大きな結末が好み。
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著者の別作品のシリーズ物の登場人物をメインにした短編集だが関連作品を知らなくても問題無し
後書きを読む限り本格ミステリを目指したらしく概ねそんな感じ
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デビュー作『六番目の小夜子』の主人公の父親である、関根多佳雄が主に探偵役を務める短編集です。
収録された十二編はバラエティに富んでいるのですが、読後に奇妙さや不思議さが残る作品が多く、それがいかにも恩田さんらしいと思います。
飄々としてつかみどころのない主人公も魅力的で、いつか続編を発表してほしい、そんな気持ちになりました。
Posted by ブクログ
ちょうど先日、江戸川乱歩傑作集を読んだところだったので、D坂はもちろんのこと、これらの短編もぞくぞくしながら楽しめた(乱歩ほどのグロさはなく、恩田さんぽい女性や情景の艶やかさの方がある)
あとがきにもある通り、秘密の花園や本格ミステリへの憧憬など、好きなものを詰め込んだな〜というのが分かって楽しかった。タマゴマジックを先に読んだけれど、最後の魔術師は、その元になったもののよう。
Posted by ブクログ
恩田氏デビューから数えて6作目、1999年の作品。これまた結構古めの作品。
でもケータイ(ガラケーと思われますが)も出てくるし、不思議と古く感じさせません。
相変わらず、えも言われぬスリラー的な作品でありました。
・・・
本作、推理小説ということですが、モダンホラー的な恩田テイストが色濃く出ているのが特徴かと思います。
主人公は引退した著名な裁判官の関根多佳雄。彼が遭遇するちょっとした事件と、その謎を解く様子がなかなかスリリングでした。
なお本作、12作の短編からなる短編集となっており、途中から息子の春(検事)、娘の夏(弁護士)も登場し、何だか学歴ドリームチームみたいな華やかな(一種嘘くさい!?)感じもまた、小説(ドラマ的)らしくて良いかもなあと思いました。
・・・
なかでも私のお気に入りは以下の二作品。
旅のさなか、電車の事故により待合室で後続列車を待たざるを得なくなった多佳雄と春が麻薬取引の現場を押さえることになった「待合室の冒険」。
そして、親戚の娘さんと多佳雄との手紙のやり取りから放火事件の犯人がうかびあがる「往復書簡」がお気に入り。
それ以外にもちょっとゾっとするテイストの話も多く、普通の推理小説とは一味ちがうのが良かったと思います。
・・・
ということで恩田氏の初期作品でした。
推理モノが好きな方にはまあまあ読めるのではないかと思います。
短編集なので肩の凝らないエンタメに仕上がっていると思います。
Posted by ブクログ
初めて恩田陸作品を読んだ。本当は彼の代表作から入った方がいいのだろうが、この間読んでいた『八本足の蝶』(二階堂奥歯 著)で作者が読んでいた膨大な本の内の一冊だったので気になって読んでみた。
元々ミステリ小説が好きなのもあり、すぐに場面が進むのでするすると読める。文体も説明口調がくどくなくて読みやすいと感じた。主人公の設定も、見事な洞察力で謎を解き進める様子に無理なく、面白かった。本作中では特に「往復書簡」が気に入った。
文の構成と紐解き方が鮮やかで面白い。
短編集なので久々に本を読む気になった人などにもおすすめ。
Posted by ブクログ
連作短編ですが、それぞれに繋がっている部分は、それほどなく、一つずつの独立した短編として楽しめます。
街中で見かけたちょっとした光景や都市伝説から、推理する物語が、独特な読み応えでした。
Posted by ブクログ
この装丁、特別感があって好き。
引退した元判事、関根多佳雄(「六番目の小夜子」に出てきた関根秋の父親)を主人公としたミステリ短編集。秋以外の関根ファミリーが総出演する。
個人的には「曜変天目の夜」と「ニューメキシコの月」が好き。
この作品に刺激されて曜変天目を見に行ったし、西馬込に給水塔見に行ったし、アンセル・アダムスの写真集も見るようになりました。
Posted by ブクログ
再読のはずなのに、何も覚えていなかった。 最初は失敗したかな、と思ったけど、主人公の良さでどんどん読み進められた。 同じ人が出ているのに、色の違う話がたくさんで、楽しめた。謎はいろんなところに潜んでいる。 主人公だけじゃなくて、息子と娘も好き。奥さんもいいキャラ。ちょこちょこ出てくる貝谷も好き。その息子と娘が推理合戦を繰り広げる「机上の論理」と、姪との文通で放火犯を割り出した「往復書簡」が好きだった。唯一、この姪が好きじゃなかったけども。 いつかまた再読するときも、全部忘れていそう。また最初から楽しもう。