あらすじ
「あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです」退職判事・関根多佳雄が立ち寄った喫茶店。上品な婦人が語り始めたのは少女時代に英国で遭遇した、象による奇怪な殺人事件だった……。表題作をはじめ、子供たちの会話、一枚の写真、携帯電話など、なにげないテーマに潜む謎を、鮮やかな手さばきで解き明かすロジックの芳醇なる結晶。幻惑と恍惚の本格推理コレクション!
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Posted by ブクログ
恩田先生が沢山本を読むのは知っていたけれど
芸術系も造詣が深いのだなぁ、と感じた一冊。
『六番目の小夜子』にもちらりと登場した秋の父を主人公にした短編。
物質的証拠ではなく、会話によって謎解きを進めていく感じ。
この小説自体も面白いが
彼自身が読書を趣味としており、作中にミステリー小説が登場したりと、世の中には面白い本がもっともっとあるのだなぁ、と欲求を掻き立てられる。
恩田氏の作品て、短編の方が逆に情報がみっちりつまっていて、ゆっくり読んでいきたくなる。。
Posted by ブクログ
元判事の関根多佳雄による安楽探偵物で全12編の短編集。
この関根さんは、恩田陸のデビュー作『六番目の小夜子』の主人公の父親だそうだがそちらは未読。各々の作品の謎はバラエティーに富んでいるが、解決というよりは仮説の提示に留まっている作品が多く、唐突に感じるものもある。探偵役の関根さんが何とも魅力的な人物で、このキャラで物語が成立していると感じる。奥さんに敬語で話すのが印象に残った。
Posted by ブクログ
再読なのに全然覚えていなかった。しかも主人公の関根多佳雄が『六番目の小夜子』の秋のお父さんだと、あとがきを読んでようやく気が付くなんて、覚えていないにもほどがある・・・。本格ミステリーの面白さは、謎解きをする探偵役のキャラクターだと思っているので、この主人公は私の好みにぴったり。しかも、奥様や子供の春と夏まで出てきて謎解きしてしまうなんて、最高。いちばん好きなのは『机上の論理』。ミステリー好きの兄妹が、真剣に謎解きして真剣に悔しがる姿にニンマリ。あと『ニューメキシコの月』もラストの大きな結末が好み。
Posted by ブクログ
恩田氏デビューから数えて6作目、1999年の作品。これまた結構古めの作品。
でもケータイ(ガラケーと思われますが)も出てくるし、不思議と古く感じさせません。
相変わらず、えも言われぬスリラー的な作品でありました。
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本作、推理小説ということですが、モダンホラー的な恩田テイストが色濃く出ているのが特徴かと思います。
主人公は引退した著名な裁判官の関根多佳雄。彼が遭遇するちょっとした事件と、その謎を解く様子がなかなかスリリングでした。
なお本作、12作の短編からなる短編集となっており、途中から息子の春(検事)、娘の夏(弁護士)も登場し、何だか学歴ドリームチームみたいな華やかな(一種嘘くさい!?)感じもまた、小説(ドラマ的)らしくて良いかもなあと思いました。
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なかでも私のお気に入りは以下の二作品。
旅のさなか、電車の事故により待合室で後続列車を待たざるを得なくなった多佳雄と春が麻薬取引の現場を押さえることになった「待合室の冒険」。
そして、親戚の娘さんと多佳雄との手紙のやり取りから放火事件の犯人がうかびあがる「往復書簡」がお気に入り。
それ以外にもちょっとゾっとするテイストの話も多く、普通の推理小説とは一味ちがうのが良かったと思います。
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ということで恩田氏の初期作品でした。
推理モノが好きな方にはまあまあ読めるのではないかと思います。
短編集なので肩の凝らないエンタメに仕上がっていると思います。