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Posted by ブクログ
ジャンルとしては推理小説、「パズラー」と呼ばれる領域のものだそうです。連作短編集です。シンプルながら味のある装丁に魅せられて買いましたが、しばらく積ん読状態でした。ある時NHKをみてたら曜変天目という陶器が出てきて、そういえばこの本の目次に曜変天目というタイトルの話があったなぁと思い出し、「曜変天目の夜」を読んだところ、一気に引き込まれました。推理小説はあまり読まないのですが、この本にはやられました。犯人探しというわけではなく、出来事について考察するのが話のメインです。「六番目の小夜子」に出てくる人物のお父さんが主人公です。好みが分かれると思いますが、私はとても気に入りました。
Posted by ブクログ
ものすごい久々に読んだ恩田陸先生の作品。
12話収録。
主人公の「元は名の知れた裁判官である」(p121)切れ者で甘いものが好きなイケオジ〈関根多佳雄〉にもうどハマり。顔がどうとかはわかりませんが纏う雰囲気が素敵。息子で「バリバリの現役検事」(p91)である〈関根春(しゅん)〉も登場回数こそ少ないながら印象的な好キャラ。
あとがきに曰く「私がある日古本屋で一目ぼれした東京創元社の三十年前のペーパーバック、バリンジャーの『歯と爪』。是非これと同じ意匠で作りたいと思った」(p305)とあり、調べると確かにそっくり。『歯と爪』にはあったらしい袋とじはさすがに無いですが。
話毎のテーマは色々で、妖しいものから不思議なもの、書簡形式からオマージュまで…と実にとりどり。いずれにせよ謎解きに頭を使う快感が堪らない。
西澤保彦先生の解説も大変参考になったけど「これほど高レベルの作品集は、あるいは恩田本人の力をもってしても生涯に二冊以上は編めないのではないか、と危ぶんでしまう」(p318)という賛辞はやや過剰な気がしてならないが…、「論理による謎」の話はとても面白かった。「論理によって解体される謎」と「論理によって構築される謎」という考え方。なるほど。
折り紙の例えも参考になった。
どの話も良かったけど
《給水塔》…都市伝説的な怖さを孕んだ話。いや、まさか、ひょっとして。。panpanya先生もこういう空気を描かれますが、好き。
《象と耳鳴り》…象を怖いと思ったことはなかったけど、これは…。「針が思い思いの時刻を指したまま止まっている古い柱時計の群れに覆われた壁」(p78)という舞台装置が一瞬で作る不穏な空気。耳キーンなるわ。
《待合室の冒険》…多佳雄・春の父子コンビ回。「まだまだかかりそうだったらビール。三十分以内だったらコーヒーだな。」(p185)っていう多佳雄のセリフは真似したい。
以上が特に好き。
ああ、恩田陸作品も集めてしまいそう。また積読が…。
14刷
2025.2.8
Posted by ブクログ
この本は20年近く前に読んだ。この中にある「曜変天目の夜」という話を読んで初めて曜変天目茶碗を知った。ブラックホールのような茶碗を見てみたいと思って調べると静嘉堂文庫美術館にあることがわかったがいつでも見られるわけではなかった。
それから、しばらくして初めて見ることができ、ブラックホールのような…「あたま山」を連想する茶碗という表現がピッタリだなと思った。
今日、また三菱一号館美術館で曜変天目を見た。
あれから何回か美術館で展示されるたびに見に行っては、この本を出してきて読み返す。今日も読み返した。自分が老いにより壊れていっても自分であることをやめずにいようというラストに救われる。
Posted by ブクログ
退官した判事 関根多佳雄が主人公の連作短編ミステリ
職業柄とミステリ小説好きが高じて繰り広げられる推理
中には無理筋と思えるような推理もあるけれども、それが「当たる」からこそ「名探偵」というメタな存在でもある
まぁ、真相がそうであるかは定かではないという結末でもある
収録12編とその出展
・曜変天目の夜(『ミステリマガジン』1995年11月臨時増刊号)
・新・D坂の殺人事件(『青春と読書』1998年2月号)
・給水塔(『小説NON』1996年1月号)
・象と耳鳴り(『小説NON』1997年12月号)
・海にゐるのは人魚ではない(『小説NON』1997年6月号)
・ニューメキシコの月(『小説NON』1996年8月号)
・誰かに聞いた話(『小説NON』1998年7月号)
・廃園(『小説NON』1998年3月号)
・待合室の冒険(『小説NON』1998年10月増刊号)
・机上の論理(『小説NON』1999年2月号)
・往復書簡(『小説NON』1999年6月号)
・魔術師(書き下ろし)
恩田陸の初期作品
気になった短編は下記
・給水塔
時枝充が出てきてるんだけど、この人って後のMAZEシリーズの?
年齢が合わない気がしないでもないけど、多分そうなんだろうな
他にもこの作品の登場人物が他の恩田陸作品に出てたりするんだろうか?
少なくとも関根の子供たちは他作品にも出てる
・ニューメキシコの月
連続殺人を犯した死刑囚が検察官に毎年送ってくる絵葉書
起こした事件そのものは確かに重罪ではあるのだけれど
もしこの推理が正しいとしたら……
この医者はある意味で善意の死神なわけで
もし安楽死の制度があったらこんな事件は起こってないのかもね
こんな話を1990年代に書いていたとはね
まぁ、あくまで推測ですけどね
・机上の論理
関根多佳雄の子供達による、部屋の写真からのプロファイリング
検察官の息子と弁護士の娘
発想がどうしても何らかの刑事事件寄りになってしまう
まぁ、出題者のミスリードもあるわけだけどね
部屋からその人の性格とか人物像ってどれだけ察せられるのでしょうね?
汚部屋に住んでる美人はいるし、だらしないミニマリストがいてもおかしくないと思うんだけど?
もし私の家を誰かに見せて性格を推測してもらったらどうなるだろ?
一応いつでも他人が来ても問題ないくらいに片付けと掃除はしているけれども
見るところによっては掃除がまったくされていない、だらしない部分も伺える
とりあえず、本好きというのはわかるでしょうね
・魔術師
いくつかの都市伝説的な噂話
関根から見ればそれらの関係性も気付いてしまう
それぞれの出来事が微妙に繋がっていたり、場の力が働くという話は後の「ドミノ」っぽさを感じる
あの構図はこんなに前からあったのだなぁと思う
総じて、有名な古典ミステリを知ってたらもっと楽しめたのだろうなと思う
恩田陸さんの「象と耳鳴り」は、裁判官を退官し、悠々自適の生活を送る関根多佳雄が主人公。
散歩とミステリが好きな彼が、身の回りに起こった、ちょっとした出来事を推理する連作短編集ですね。
はっきりとした白黒をつけずに、曖昧なグレーゾーンで終わる話もあれば、「待合室の冒険」のように、その場ですっきりと気持ちよく決着がつく話が混ざっており、なかなかバリエーションに富んでいますね。
そして、どの話も、ミステリとしてだけでなく、恩田陸さんらしいファンタジー的な雰囲気や映像的な美しさも楽しめますね。
例えば、「曜変天目の夜」に出てくる茶碗。
実際には見ることも触ることもできなくても、情景はありありと思い浮かびますし、茶碗の中の密度までしっかりと感じることができるような気がします。
「ニューメキシコの月」の絵葉書の写真やそこに書かれた宛名、「廃園」の色とりどりの薔薇とその香りなども、まるで実物が目の前にあるようです。
論理的なパズルを楽しめる「机上の論理」ですら、4枚の写真が目の前に浮かんできます。
このような描写は、恩田陸さんならではですね。
その情景故に、どの話も謎が解かれても余韻が残ります。
それが物悲しい余韻のことも多いのですが---------。
多佳雄と妻の桃代、彼らの息子の春と娘の夏の関係もとても素敵ですね。
「六番目の小夜子」に出てきた関根秋は、この家の末っ子なんですね。
多佳雄と桃代の会話はのんびりとして微笑ましく、ミステリ抜きでも十分楽しめますし、一見のんびり者に見える春が出てくる話は、意外なことに論理的なパズル系の推理が楽しめますね。
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